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シーズン1 春夏秋冬の出会い

2話 異世界で喫茶店へ行く3

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 カランカラン――。

 新しい客が入ってきたようだ――さっきのウェイトレスが申し訳なさそうな顔でこちらに来た。
 
「すいませんニャ。ただいま店内満席で――お客様がよろしければ相席をお願いしますニャ」
「別にいいですよ」

 今言ったように俺は食事が楽しめれば誰かが同席しようと気にしない性分だ。

「ありがとうございますニャ。あっ、パトラさん――こちらへお願いしますニャ」
「ありがとうね」
「わーい。何食べようかな」

 2人の猫獣人が俺の正面に座った。

 片方は体毛が三毛柄だ。フリルの付いた上品そうな、それでいて鮮やかな色合いのドレスを着ている。

 もう片方は他の客とは一線を画す雰囲気のある、黒く毛並みも美しい女性だった。鼻筋も高く、猫というよりヒョウに近いだろう。さらに服も身体のラインが出ているピッチリとしたドレスである。
 
「ごめんなさいね。相席をお願いしちゃって」
「パトラさん。人種族の方ですよね。アタシ、初めて見ました」
「タマさん。失礼ですよ」
「……ごめんなさいニャ」
「いえいえ。気になさらず――」

 声の感じからして三毛柄のタマは若く、パトラさんと呼ばれた品の良さそうな方はそれなりの歳のようだ。

 しかし俺は気にせずクリームサンデーの星型のゼリーを口に運ぶ。
 ゼリーかと思えば、そういう形の木の実のようだ。これも砂糖か何かに漬け込んだモノなのだろう。味はジュースが浸み込んでいてよく分からなかった。

「――相席して下さったお詫びに、1つ奢らせて下さい」
「いえいえ。そんな悪いですよ」
「ここで会ったのも何かの縁です……私達の国では、『今日会った旅人は、明日に砂になることもある』と言われ、二度の会う事の無いような旅人の方にも、精一杯の御もてなしをするんですよ」
「国の中の旅人ならまだしも、外国の人なんて滅多に来ないからニャー」

 そんな厳しい環境にある国なのか。
 いや、あの砂漠を見ればそれも分かる気もする。

「そうですか――では1つだけなら」

 それでも断ることは出来るが、さすがにそれを無視して食事を続ける事はいくら俺でも出来なかった。

「ご面倒おかけして申し訳ないわね」
「今日はパトラさんのお誕生日でもあるニャ。お店でみんなで盛大にお祝いするって言ってるのに……」
「――そう言ってくれるのは有難いけれど。誕生日はここのお店の、特別メニューって決めてるのよ」
「特別、メニューですか」

 パトラさんはどうやらこの店の常連みたいだ。折角だしその特別メニューとやらも食べてみたい。
 しかし甘い物が続いたので、出来ればそれ以外が望ましいが――店のメニューを思い出し、少し諦めた。

「パトラさんはウチの店のエースをずっとやっている凄い人ニャ」
「エースは貴女でしょ。私、最近は常連さんしかお相手してないのよ」

 口ぶりからして彼女らはキャバクラ的なお店のキャストなんだろうか。
 そう考えれば妙に色気を感じさせる雰囲気と格好にも説明がつく。

「はいっ。今日はパトラさんの大好物の特別メニュー……バロメッツピリピリパスタですニャ」

 そういってウェイトレスが運んで来たのは、見た目にはトマトソースと唐辛子を一緒に和えたパスタだ。黒い木の実とトマトみたいな果肉も見える。
 皿の上には骨付きの肉がソテーしてある。匂いは――完全に羊のラム肉だ。
 これは嬉しい誤算である。
 甘い物が入り、身体も少し落ち着いてきたら腹が減ってきたのだ。

「これは私がお店でデビューした時に――そう。貴方みたいな人種族の方に、ここのお店でごちそうして貰ったの」
「そうなんですニャ? じゃあ、今日は本当に記念日みたいニャ」
「そう言われると、光栄です」

 2人が食事の前に手を合わせるので、俺も真似して合わせる。

「今年も良い1年でありますように――いただきます」
「いただきますニャ」
「……いただきます」

 まず香ばしい香りのラム肉のソテーを頂く事にする。
 作法がなってないと怒られそうだが、そのままかぶりつく。
 噛むと、胡椒こしょうのような少し舌と鼻を刺激するような香りと羊特有の匂いが口の中に溢れる。
 肉の繊維から出た汁が喉の奥へと流れ込み、み切ることで肉と一緒くたになり――。

「嗚呼――美味い」

 次はパスタ――スパゲッティの方だ。
 バロメッツというのが何かは知らないが、もしかしてこのトマトのような果肉の事だろうか。よく麺に絡ませてから食べると――果肉の味というより、なんだろうか。
 これは食べた事がある味だ。そうだ……カニだ。カニのような味がするのだ。

「カニパスタか。この唐辛子みたいな辛い薬味もよく合って――美味いなぁ」
「ふふっ。そんなに美味しそうに食べて貰えると、奢った甲斐があるわ」
「――そんな顔してました?」
「えぇ……。昔を思い出すわ。あの人も、よくそんな顔をしてたわ」

 懐かしように遠くを見るパトラ。
 タマはそんな彼女に構わずガツガツと食べている。
 
 もしかしたら俺みたいに鍵を使ってやってきた現代人だったり――しないか。

「パトラさん、これすっごい美味しいニャ!」
「……タマさん。袖が汚れていますわよ」
「げっ。支配人に怒られるニャ」
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