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第二話 透哉「ただの箱」
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「住民税ってマンションの?」
透哉のその台詞が可笑しかったらしい。
奈々が笑う。
その背中を黒い影がしなやかに駆けあがった。肩に落ちついた黒猫を撫でながら、彼女が言う。
「ちがうよ。住民税は、住民票のある自治体に払うの。マンションには払わない」
「ふうん」
三十過ぎまで他人の住居にあちこち転がり込んできた透哉には、馴染みのない話だ。
「未払いだと口座を差し押さえられたりするよ。透哉の住民票はどこ?」
「知らない。生まれて育ったのは三鷹市」
「なら、そこかなあ。市役所に行って訊いてみたら」
「──うん」
その三鷹の家は、ぼろぼろの平屋だった。
父親は最初からいなくて。
母親と姉は、男の元へと消えて。
未払いで電気ガス水道が止まり、もはや家というよりただの箱だった。
家賃も払えなかったが、それでも大家の老婦人は透哉を追い出したりせず、ときには食べ物をくれることさえあった。
あれから、もう十五年以上は経つ。
──まだ生きているのかな。
役所に行くのは面倒だけれど、あの老婦人のことは気になった。
ここの部屋主は真面目だ。
風俗嬢だけどちゃんとしている。漬物を作りアイロンをかけ、税金を払う。
近頃は、透哉と猫の面倒までみる。
奈々の腕の中でくつろぐ大柄な雄の黒猫。
名前は透哉に秘密だという。
※ ※ ※
歌舞伎町にあるビルの一室。
幹部以外が事務所にいることは滅多にない。今も透哉と上司の二人きりだ。
上司はいつもどおり、飾り熊手を磨いている。
ホスト時代にも見たことがある、商売繁盛の縁起物だ。招き猫と小判の装飾がきらりと光る。
早退を報告するだけのつもりが、予想外の話が舞いこんできた。
「え、三桁?」
思わず鸚鵡返しに呟いた。
「僕、三十過ぎたのに。その人、知ってるのかな。若いほうが良いんじゃないの」
自分を、一晩貸切にしたいと申し出ている人がいるらしい。
今、透哉は躰を売って暮らしているわけではない。水商売を斡旋するスカウト業をしている。
とはいえ、全くの潔白ともいえない。
上司から取引先への接待を頼まれた際に、高額を示されれば、応じることもあるからだ。
──それにしても一晩で三桁。
「まあ、伝えたよ。ちゃんと年齢。お前が俺に詐称してなければ」
「してないよ。何の得があるのそれ」
透哉は可笑しくて笑う。
すぐ、まあって言うのが口癖の面倒見の良い上司。
「僕、会ったことある人?」
「池袋の飲み屋で見かけて一目惚れだと。まあ、そこの店長経由で話がきた」
──外見だけで三桁。
物好きな話だ。原価は零なのに。
整形も化粧もしていない。髪も服も適当だ。それでも綺麗だと人は言う。
髪も瞳も色素が薄い。
父親は不明だが、おそらく西洋の血が混じっている。
「まあ、良かったら連絡ほしいってさ。タイと日本を行き来している経営者の人。結構歳だね。五十代かな」
「若い子すきそうな経歴なのに。変なの」
「まあなあ。外人っぽい顔がすきなんかな。後で預かってる相手のデータ送っとくわ」
「うん。ありがとう」
真面目な上司。この会社の二代目だ。
毎朝一番に出社して、事務所の掃除をする。そして、商売繁盛を祈りながら熊手を磨く。
遅刻ばかりの自分とは全然違う。きちんとしている。
──育った家には時計がなかった。
母親も姉もまともに働いたことがなく、食べる時間も、眠る時間も決まっていない。適当で無関心な環境で育った。
学校に通えとも言われない。
手本となる大人がいなくて、透哉の中で基盤となるべき根っこは育たず、ただ茎だけが伸びた。
世間の人たちは、時間通りに起き、行くべき場所へ向かう。
どうして、毎日そんなことができるのだろう。透哉にはとても難しいことのように感じられる。
「そうだ、透哉、あと」
「うん」
「まあ、お前のこと、後をつけてる女いるっぽくて。それも一応データ送っとくから」
「え」
「まあ、刺されるなよ」
上司は冗談めかしたけれど。
なんだろう。
最近は地味に暮らしているのに、久しぶりのストーカーだろうか。
熊手の招き猫さえ、まるでこちらをじっと監視しているかのようで、気が滅入ってくる。
──今日は面倒な話ばかりだ。
朝から、税金、ウリにストーカー。こう立て続けだと嫌になる。
透哉は、重い足取りで事務所を後にした。
冷房の効いたビルを一歩出ると、まだ夏の湿気が纏わりつく。
靖国通りを渡って、少し歩くと新宿駅東口の広場に着いた。
ここがいつもの定位置だ。
透哉は、さっそく携帯を触っているマスクをした女の子に声をかけた。
「マスク逆だよ?」
その常套句《じょうとうく》に女の子は引っかからなかった。前に誰かに言われたのだろう。
けれど、顔が見たいのだと察して、マスクを下げながら、ちょっと笑ってくれた。
優しい子だと思った。
顔は平均点くらいか。透哉の姿をじっと見ると「私、お金ないんで」と言った。
外見からホストの客引きと間違えられたらしい。
「いや、稼がせるほうなんだけど──」
そこまで口にしたとき、ふと眩暈がした。手先もわずかに痺れてくる。幼馴染みの類に「食べりゃ治る」と何度も言われているやつだろう。
低血糖。
貧血もあるか。最近ずっと躰が怠い。
「──少しサボろうかな」
透哉の台詞に女の子は少しだけ眉をひそめた。真面目な性格なのだろう。
透哉は、自分はそうではない癖に、ちゃんとした子を好む。
だから、今日はこの子と食事をしようと決めた。
「おごるからご飯だけつきあって。ひとりで外食するの苦手なんだよね」
後半は本音だ。
「今どき、女の子だっておひとり様で自由に食べ歩いてるのに。変なの」
素直な意見につられて、透哉も本心で返した。
「箸を上手く使えなくて。ひとりだと他人の視線が気になっちゃって」
相手の返事は予想外なものだった。
「あ、もしかして外人さんだからですか?」
透哉は可笑しくて声をたてて笑ってしまった。女の子に悪いと思ったが止まらない。
あの家では、箸の持ち方が変だろうが、偏食だろうが、誰も気にしなかった。
左利きなのもそのせいだろう。
長じても治らず、外食はなるべく避けてきた。けれど、この子となら少しは気楽にやり過ごせそうだ。
透哉は女の子の指先を軽く引いて、駅ビルの上階にある明るいレストランへと足を向けた。
メニューを眺めながら、透哉が口を開く。
「名前、聞いてなかった。僕、透哉」
「加奈江、です」
「酒飲める子?」
「──十八歳なので」
断る仕草をする。
「真面目だなあ」
注文をとった店員が去ると加奈江が訊いてきた。
「ほんとうにホストじゃないんですか」
「すぐ辞めちゃった。さっきはスカウトしてたの。水商売を紹介する仕事。知らない?」
「聞いたことはあります」
「敬語だよね。真面目だなあ」
加奈江は、透哉に何度「真面目だ」と言われても、嫌な感じは受けなかった。
馬鹿にしているわけではなく、素直に感心しているようだ。
それは、仕事中にワインを飲んでいるこの人から見たら、自分は真面目だと思う。
普段なら誘われてついていくようなこともしない。
なのに。
さっきは断れなかった。
──会ったことがあるような気がして。
でも、こんなに目立つ人なのに思い出せない。
勘違いだったのだろうか。
だとしたら、ついてきた自分が恥ずかしい。
加奈江は、綺麗な人と一緒にいることに引け目を感じて、落ち着かなかった。
周囲からの視線が気になる。
化粧室でメイクを直し、前髪を整えて、席に戻るとき。
──あ。
遠目から透哉を見たら判った。華奢で長い手足。そのスタイルの良さが、記憶の動画と一致した。
昔、彩スタジオで踊っていた人だ。
──由宇くんと一緒に。
あなたを知ってます。私は由宇の知り合いです。そう伝えたほうが良いだろうか。
考え込んでしまった加奈江をよそに、透哉はリラックスして酒を飲んでいる。
「一応訊いとくけど水商売は考えられない人?」
「学生なので」
「学生でやってる子いっぱいいるよ。気が変わったら連絡して」
店のナプキンに連絡先を書いているのを見て、左利きが似合うなと思った。
「名刺とかないんですか」
「違法だから。そんなの配ってたら捕まっちゃうよ」
綺麗な顔で子どものように笑う。
年上なのは間違いないけれど、いくつくらいなのだろう。
柔らかそうな髪としなやかな指先が、どこか由宇を連想させた。
「──あの」
「うん」
「もう少しだけ、話せますか」
硬い声になってしまった。
透哉は怪訝そうな顔をしている。
「うん。どうぞ」
「あの、黙ってるのも気が引けるというか、私、中学生のときに」
一気に言った。
「透哉さんを動画で見てました。ずっと気になってたんですけど、さっき思い出して。私、由宇くんと同じ高校なんです」
──そういうことか。
透哉は、どう返そうか迷った。
違法なことに関わってから動画に出るのをやめている。この子が中学に入ってすぐなら、まだ出演しているころか。計算は合う。
──でも。
言いにくそうにしているから何かあるんだろう。「動画で見てました」だけなら気軽に言えるはずだ。
「もしかして由宇が何か迷惑をかけてたら、ごめんね。ちょっと変わっている子だから心配」
透哉に謝られて、今度は加奈江のほうがどこまで話したものか迷った。
※ ※ ※
加奈江は、中学生のころ、偶然見かけた動画で由宇を知った。
小柄な躰。
可愛い顔立ち。
しなやかな指先。
バク転でセンターに移動すると、振り向きざまに手首で軽くジャケットの襟を返す。
裏地が照明に煌々と反射し、その光の中で、八重歯を見せて笑った。
──アイドルみたい。
彩スタジオの公演を撮ったもので、何十人も出ていたけれど、由宇のところばかりを繰り返し見た。
最後のポーズのとき。
息を乱しながら肩が上下する姿に惹かれた。
それは画面越しにでも、どこか「体温」を感じられたからかもしれない。
実際の彼に会ってみたい。
地味な加奈江にしては勇気をだして、イベントを観に行った。
煌びやかな会場は場違いに思えたけれど、一目彼を見た瞬間、周りはどうでもよくなった。
もっと近づきたい気持ちがとめられない。
ネットで情報を掴むと、追いかけるように同じ高校に入学した。
仲良くなりたい、その一心で。
学校での由宇は、借りてきた猫のようだった。
静かでおとなしくて笑わない。
でも、しなやかな指先は動画そのままで心が躍った。
夏休み前。
会えなくなるのが嫌で、待ち伏せて仲良くなりたいと伝えた。
──別に良いけど。
単に断るのが面倒だったのかもしれない。けれど、承諾はされた。
映画は断られたが、ファミレスには来てくれる。
お腹が空いているのか。噂で聞いた通り、家庭の事情が大変らしい。
昼休みにコンビニのおにぎりを渡すと、迷った表情をしたが結局は食べた。ツナのついた指をぺろりと舐める。
猫を餌付けしているような気分だった。
しなやかな指。
触れたい、触ってほしい。
「あのね──」
自室のベッドの上で誘うのが、うまくできなかった。そんなことしたことがない。
由宇はやっぱり少し迷った顔をしてから、淡々と手順を進めた。
ただ、目の前にぶら下げられたものをそのまま受け取っている。
彼の中で、おにぎりをもらうことと誘われることは、きっと大した違いがないのだろう。
それでも終わった後、息を乱している由宇を見てうれしかった。踊っていたときのような「体温」が感じられて。
帰り際、玄関でドアが閉まる直前に言われた。
「一昨年のイベントに来てた子だよね」
頭から冷水を浴びせられた気がした。
アイドルみたいに追いかけ回して。もう気が済んだでしょ。
そう、暗に言われたようで。
何も言い訳はできなかった。
普段おとなしくて真面目な加奈江にしては、背伸びをして。
がんばったけれど。
──ただの自己満足だった。
加奈江は目を伏せて、何かを考え込んでいるようだ。
やっぱり由宇が何かやらかしたのだろう。
その様子を見て、もう一度透哉は謝る。
「あの子、ちょっと変わってるから。ほんとに失礼なことしてたらごめんね」
「いえ、私が悪かったんです。由宇くんを知っていたことを隠して近づいたから」
透哉は加奈江の、次の言葉を待った。
「でも、由宇くんは気づいていて──イベントに来てた子だよねって言われました。ストーカーみたいですよね、私。それから会ってないです」
おどけた言いかたをしたが、実際は傷ついたんだろう。
ストーカーという言葉から、上司に「刺されるなよ」と言われたことを思い出したが、目の前の彼女には関係のないことだ。
気を取り直して加奈江に向き直り、改めて謝った。
「イベントって、舞台から客席が結構見えるんだよね。由宇はやたら記憶力が良いし。嫌な思いさせてごめんね」
「懲りたので、今回、透哉さんには最初から言いました」
そう言って加奈江は微笑んだ。
「もし、由宇くんに会っても、私のことは言わないでください。気まずいですし」
「ちょっと怒っておこうかと思ったけど。加奈江ちゃんがそういうなら」
加奈江は再び「私が悪かったんです」と言って笑った。
──そのとき、地震が来た。
上層階は、地上より大きく揺れる。
透哉は、長く続く振動に耐えきれず気分が悪くなった。酒のせいもありそうだ。
加奈江に再度謝り、テーブルに両肘をついて顔を伏せる。
店員が、新しいおしぼりと水のお代わりを持って駆けつけた。
※ ※ ※
少し回復した透哉は、新宿駅から十番線の電車に乗った。
吉祥寺駅で降りて、井の頭公園口の改札を出る。
三鷹市役所に自分の住民票はあるだろうか。
大家は生きているだろうか。
自分を見てわかるだろうか。
旧スタジオのビルの前を通りかかると、桜の大木の陰に知っている女がいる──ように見えた。
今日何度目かの「ストーカー」という単語が、危険信号のように脳裏で赤く点滅する。
自分のではない。類のだ。歌手の鷺沢茉理。出禁になったその場所にまだ未練があるのか。
海外にいるはずなのに、どうして。
動悸がする。
確かめる間もなく雑踏に紛れて消えた。酒と地震に酔った幻覚だろうか。
眩暈がする。
自分の背後にも、同じように誰かがいるのかもしれない。けれど、もう振り向く気力はなかった。
──少し横になりたい。
この近くには、類の住むマンションがある。
透哉にとって、体調を崩したり、女と揉めたりしたときの避難場所だ。
重い躰を引き摺りながら、そこへと向かった。
類の部屋は四階にある。
なんとかたどり着いたものの玄関に入ってすぐに力尽きた。室内まで這う余力がない。
冷たい廊下が心地良い。
そのまま仰向けに転がっていると部屋主が帰ってきた。
ドアを開けるなり透哉を見下ろして、状況を察したようだ。
「今日は唯が久しぶりに体調良いと思ってたのに、お前のほうが体調不良なの?」
「地震に酔った」
「ああ。あったな。昼過ぎに。どこにいたの」
「新宿の駅ビル」
透哉は、無言で両手を類に向かって伸ばす。
類が呼応して屈みこみ、半病人を抱え上げた。
「お前、また軽くなってんだけど。食えよ」
類は呆れたように言いながら、足でサブの寝室のドアを開け、雑にベッドへ透哉を下ろした。
そして、鍵をひとつ枕元に放り投げる。
「それ、四ツ谷にあるマンションの鍵。後で住所メールしとくから」
「ここで充分だよ」
「ここの鍵、由宇にもやるから。もちろん今まで通り来て良いよ。でも静かに過ごしたいときとか、使って」
透哉が鍵を手遊びしながら訊いた。
「由宇に、唯ちゃんの病気バレたのか。泣いた?」
「泣いて怒った」
類の返事に声を立てて笑う。
「あの子、反応がいちいち意外だよね」
「あと転部するって言ってる」
「テンブ?」
「同じ大学で学部を変わること。医学部に行きたいって」
「ふうん」
よっぽど唯がお気に入りなのだろう。病気の悪化を知って何かしないではいられないのだ。
──自分とは違う。
「えらいね」
自嘲気味に笑った透哉を見て、類が真面目な顔をした。
「医学部って六年あるし。学費足りなそうなら、俺が出そうかと思って」
「そう」
「お前は、何かいらないの。運転免許とかさ。金は出すから。英会話とか何でもいいよ。興味あれば──」
「煩い」
透哉は類の言葉を遮って、背を向けて毛布を被った。
──皆、僕をどんどん置いて行ってしまう。
類は成功して、妹や由宇の生活まで支える余裕がある。
由宇だって自分の道を歩んでいる。
二人とも決して恵まれた家庭で育ったわけではない。
条件は同じようなはずなのに。
類のような強さもない。
由宇のように素直に類を頼れない。
欠けた部分を埋められないまま、ただ時間だけが過ぎている。
──ハンプティを元には戻せなかった。
類の部屋は四階にある。
なんとかたどり着いたが玄関に入ってすぐに力尽きた。室内まで這う余力がない。
冷たい廊下が心地良い。
透哉の機嫌を損ねたことを察した類が、躰を寄せてくる。
「僕、具合悪いんだけど?」
酒を飲んだ後の行為を、透哉はすきではない。
「横になってるだけで良いよ。全部やるから」
「僕、病人なんだけど!」
「気ぃ紛れるだろ」
類が透哉の拒絶を無視して、くちびるを舌で割った。得意な分野に持ちこめばなし崩しにできると踏んでいる。
いつもこのパターンだ。
透哉は、もう抵抗する力もなくただ流された。
「──ワインの味がする」
類が呟いた。
「面白い子と一緒で気分が良かったんだ」
「飲めない癖に」
「グラス一杯だし。外人さんと間違われた」
思い出し笑いをした透哉に、類は「昔より笑うようになって良かった」と再度くちびるを寄せた。
こんな強引なやつをいつまで奈々は想っているのか。
それに、あの女。
「そういえば、さっきスタジオの近くに、なんか茉理っぽい人いた」
「ああ、だろうな」
類は一瞬で合点がいったようだったが、それ以上は何も言わなかった。
ぼうっとなった頭の隅で、お腹を空かせているであろう黒猫のことを思い出す。
夜の餌を頼まれていたのに。
──ごめん、ルイ。
奈々がつける猫の名前なんてとっくに予想はついている。
了
透哉のその台詞が可笑しかったらしい。
奈々が笑う。
その背中を黒い影がしなやかに駆けあがった。肩に落ちついた黒猫を撫でながら、彼女が言う。
「ちがうよ。住民税は、住民票のある自治体に払うの。マンションには払わない」
「ふうん」
三十過ぎまで他人の住居にあちこち転がり込んできた透哉には、馴染みのない話だ。
「未払いだと口座を差し押さえられたりするよ。透哉の住民票はどこ?」
「知らない。生まれて育ったのは三鷹市」
「なら、そこかなあ。市役所に行って訊いてみたら」
「──うん」
その三鷹の家は、ぼろぼろの平屋だった。
父親は最初からいなくて。
母親と姉は、男の元へと消えて。
未払いで電気ガス水道が止まり、もはや家というよりただの箱だった。
家賃も払えなかったが、それでも大家の老婦人は透哉を追い出したりせず、ときには食べ物をくれることさえあった。
あれから、もう十五年以上は経つ。
──まだ生きているのかな。
役所に行くのは面倒だけれど、あの老婦人のことは気になった。
ここの部屋主は真面目だ。
風俗嬢だけどちゃんとしている。漬物を作りアイロンをかけ、税金を払う。
近頃は、透哉と猫の面倒までみる。
奈々の腕の中でくつろぐ大柄な雄の黒猫。
名前は透哉に秘密だという。
※ ※ ※
歌舞伎町にあるビルの一室。
幹部以外が事務所にいることは滅多にない。今も透哉と上司の二人きりだ。
上司はいつもどおり、飾り熊手を磨いている。
ホスト時代にも見たことがある、商売繁盛の縁起物だ。招き猫と小判の装飾がきらりと光る。
早退を報告するだけのつもりが、予想外の話が舞いこんできた。
「え、三桁?」
思わず鸚鵡返しに呟いた。
「僕、三十過ぎたのに。その人、知ってるのかな。若いほうが良いんじゃないの」
自分を、一晩貸切にしたいと申し出ている人がいるらしい。
今、透哉は躰を売って暮らしているわけではない。水商売を斡旋するスカウト業をしている。
とはいえ、全くの潔白ともいえない。
上司から取引先への接待を頼まれた際に、高額を示されれば、応じることもあるからだ。
──それにしても一晩で三桁。
「まあ、伝えたよ。ちゃんと年齢。お前が俺に詐称してなければ」
「してないよ。何の得があるのそれ」
透哉は可笑しくて笑う。
すぐ、まあって言うのが口癖の面倒見の良い上司。
「僕、会ったことある人?」
「池袋の飲み屋で見かけて一目惚れだと。まあ、そこの店長経由で話がきた」
──外見だけで三桁。
物好きな話だ。原価は零なのに。
整形も化粧もしていない。髪も服も適当だ。それでも綺麗だと人は言う。
髪も瞳も色素が薄い。
父親は不明だが、おそらく西洋の血が混じっている。
「まあ、良かったら連絡ほしいってさ。タイと日本を行き来している経営者の人。結構歳だね。五十代かな」
「若い子すきそうな経歴なのに。変なの」
「まあなあ。外人っぽい顔がすきなんかな。後で預かってる相手のデータ送っとくわ」
「うん。ありがとう」
真面目な上司。この会社の二代目だ。
毎朝一番に出社して、事務所の掃除をする。そして、商売繁盛を祈りながら熊手を磨く。
遅刻ばかりの自分とは全然違う。きちんとしている。
──育った家には時計がなかった。
母親も姉もまともに働いたことがなく、食べる時間も、眠る時間も決まっていない。適当で無関心な環境で育った。
学校に通えとも言われない。
手本となる大人がいなくて、透哉の中で基盤となるべき根っこは育たず、ただ茎だけが伸びた。
世間の人たちは、時間通りに起き、行くべき場所へ向かう。
どうして、毎日そんなことができるのだろう。透哉にはとても難しいことのように感じられる。
「そうだ、透哉、あと」
「うん」
「まあ、お前のこと、後をつけてる女いるっぽくて。それも一応データ送っとくから」
「え」
「まあ、刺されるなよ」
上司は冗談めかしたけれど。
なんだろう。
最近は地味に暮らしているのに、久しぶりのストーカーだろうか。
熊手の招き猫さえ、まるでこちらをじっと監視しているかのようで、気が滅入ってくる。
──今日は面倒な話ばかりだ。
朝から、税金、ウリにストーカー。こう立て続けだと嫌になる。
透哉は、重い足取りで事務所を後にした。
冷房の効いたビルを一歩出ると、まだ夏の湿気が纏わりつく。
靖国通りを渡って、少し歩くと新宿駅東口の広場に着いた。
ここがいつもの定位置だ。
透哉は、さっそく携帯を触っているマスクをした女の子に声をかけた。
「マスク逆だよ?」
その常套句《じょうとうく》に女の子は引っかからなかった。前に誰かに言われたのだろう。
けれど、顔が見たいのだと察して、マスクを下げながら、ちょっと笑ってくれた。
優しい子だと思った。
顔は平均点くらいか。透哉の姿をじっと見ると「私、お金ないんで」と言った。
外見からホストの客引きと間違えられたらしい。
「いや、稼がせるほうなんだけど──」
そこまで口にしたとき、ふと眩暈がした。手先もわずかに痺れてくる。幼馴染みの類に「食べりゃ治る」と何度も言われているやつだろう。
低血糖。
貧血もあるか。最近ずっと躰が怠い。
「──少しサボろうかな」
透哉の台詞に女の子は少しだけ眉をひそめた。真面目な性格なのだろう。
透哉は、自分はそうではない癖に、ちゃんとした子を好む。
だから、今日はこの子と食事をしようと決めた。
「おごるからご飯だけつきあって。ひとりで外食するの苦手なんだよね」
後半は本音だ。
「今どき、女の子だっておひとり様で自由に食べ歩いてるのに。変なの」
素直な意見につられて、透哉も本心で返した。
「箸を上手く使えなくて。ひとりだと他人の視線が気になっちゃって」
相手の返事は予想外なものだった。
「あ、もしかして外人さんだからですか?」
透哉は可笑しくて声をたてて笑ってしまった。女の子に悪いと思ったが止まらない。
あの家では、箸の持ち方が変だろうが、偏食だろうが、誰も気にしなかった。
左利きなのもそのせいだろう。
長じても治らず、外食はなるべく避けてきた。けれど、この子となら少しは気楽にやり過ごせそうだ。
透哉は女の子の指先を軽く引いて、駅ビルの上階にある明るいレストランへと足を向けた。
メニューを眺めながら、透哉が口を開く。
「名前、聞いてなかった。僕、透哉」
「加奈江、です」
「酒飲める子?」
「──十八歳なので」
断る仕草をする。
「真面目だなあ」
注文をとった店員が去ると加奈江が訊いてきた。
「ほんとうにホストじゃないんですか」
「すぐ辞めちゃった。さっきはスカウトしてたの。水商売を紹介する仕事。知らない?」
「聞いたことはあります」
「敬語だよね。真面目だなあ」
加奈江は、透哉に何度「真面目だ」と言われても、嫌な感じは受けなかった。
馬鹿にしているわけではなく、素直に感心しているようだ。
それは、仕事中にワインを飲んでいるこの人から見たら、自分は真面目だと思う。
普段なら誘われてついていくようなこともしない。
なのに。
さっきは断れなかった。
──会ったことがあるような気がして。
でも、こんなに目立つ人なのに思い出せない。
勘違いだったのだろうか。
だとしたら、ついてきた自分が恥ずかしい。
加奈江は、綺麗な人と一緒にいることに引け目を感じて、落ち着かなかった。
周囲からの視線が気になる。
化粧室でメイクを直し、前髪を整えて、席に戻るとき。
──あ。
遠目から透哉を見たら判った。華奢で長い手足。そのスタイルの良さが、記憶の動画と一致した。
昔、彩スタジオで踊っていた人だ。
──由宇くんと一緒に。
あなたを知ってます。私は由宇の知り合いです。そう伝えたほうが良いだろうか。
考え込んでしまった加奈江をよそに、透哉はリラックスして酒を飲んでいる。
「一応訊いとくけど水商売は考えられない人?」
「学生なので」
「学生でやってる子いっぱいいるよ。気が変わったら連絡して」
店のナプキンに連絡先を書いているのを見て、左利きが似合うなと思った。
「名刺とかないんですか」
「違法だから。そんなの配ってたら捕まっちゃうよ」
綺麗な顔で子どものように笑う。
年上なのは間違いないけれど、いくつくらいなのだろう。
柔らかそうな髪としなやかな指先が、どこか由宇を連想させた。
「──あの」
「うん」
「もう少しだけ、話せますか」
硬い声になってしまった。
透哉は怪訝そうな顔をしている。
「うん。どうぞ」
「あの、黙ってるのも気が引けるというか、私、中学生のときに」
一気に言った。
「透哉さんを動画で見てました。ずっと気になってたんですけど、さっき思い出して。私、由宇くんと同じ高校なんです」
──そういうことか。
透哉は、どう返そうか迷った。
違法なことに関わってから動画に出るのをやめている。この子が中学に入ってすぐなら、まだ出演しているころか。計算は合う。
──でも。
言いにくそうにしているから何かあるんだろう。「動画で見てました」だけなら気軽に言えるはずだ。
「もしかして由宇が何か迷惑をかけてたら、ごめんね。ちょっと変わっている子だから心配」
透哉に謝られて、今度は加奈江のほうがどこまで話したものか迷った。
※ ※ ※
加奈江は、中学生のころ、偶然見かけた動画で由宇を知った。
小柄な躰。
可愛い顔立ち。
しなやかな指先。
バク転でセンターに移動すると、振り向きざまに手首で軽くジャケットの襟を返す。
裏地が照明に煌々と反射し、その光の中で、八重歯を見せて笑った。
──アイドルみたい。
彩スタジオの公演を撮ったもので、何十人も出ていたけれど、由宇のところばかりを繰り返し見た。
最後のポーズのとき。
息を乱しながら肩が上下する姿に惹かれた。
それは画面越しにでも、どこか「体温」を感じられたからかもしれない。
実際の彼に会ってみたい。
地味な加奈江にしては勇気をだして、イベントを観に行った。
煌びやかな会場は場違いに思えたけれど、一目彼を見た瞬間、周りはどうでもよくなった。
もっと近づきたい気持ちがとめられない。
ネットで情報を掴むと、追いかけるように同じ高校に入学した。
仲良くなりたい、その一心で。
学校での由宇は、借りてきた猫のようだった。
静かでおとなしくて笑わない。
でも、しなやかな指先は動画そのままで心が躍った。
夏休み前。
会えなくなるのが嫌で、待ち伏せて仲良くなりたいと伝えた。
──別に良いけど。
単に断るのが面倒だったのかもしれない。けれど、承諾はされた。
映画は断られたが、ファミレスには来てくれる。
お腹が空いているのか。噂で聞いた通り、家庭の事情が大変らしい。
昼休みにコンビニのおにぎりを渡すと、迷った表情をしたが結局は食べた。ツナのついた指をぺろりと舐める。
猫を餌付けしているような気分だった。
しなやかな指。
触れたい、触ってほしい。
「あのね──」
自室のベッドの上で誘うのが、うまくできなかった。そんなことしたことがない。
由宇はやっぱり少し迷った顔をしてから、淡々と手順を進めた。
ただ、目の前にぶら下げられたものをそのまま受け取っている。
彼の中で、おにぎりをもらうことと誘われることは、きっと大した違いがないのだろう。
それでも終わった後、息を乱している由宇を見てうれしかった。踊っていたときのような「体温」が感じられて。
帰り際、玄関でドアが閉まる直前に言われた。
「一昨年のイベントに来てた子だよね」
頭から冷水を浴びせられた気がした。
アイドルみたいに追いかけ回して。もう気が済んだでしょ。
そう、暗に言われたようで。
何も言い訳はできなかった。
普段おとなしくて真面目な加奈江にしては、背伸びをして。
がんばったけれど。
──ただの自己満足だった。
加奈江は目を伏せて、何かを考え込んでいるようだ。
やっぱり由宇が何かやらかしたのだろう。
その様子を見て、もう一度透哉は謝る。
「あの子、ちょっと変わってるから。ほんとに失礼なことしてたらごめんね」
「いえ、私が悪かったんです。由宇くんを知っていたことを隠して近づいたから」
透哉は加奈江の、次の言葉を待った。
「でも、由宇くんは気づいていて──イベントに来てた子だよねって言われました。ストーカーみたいですよね、私。それから会ってないです」
おどけた言いかたをしたが、実際は傷ついたんだろう。
ストーカーという言葉から、上司に「刺されるなよ」と言われたことを思い出したが、目の前の彼女には関係のないことだ。
気を取り直して加奈江に向き直り、改めて謝った。
「イベントって、舞台から客席が結構見えるんだよね。由宇はやたら記憶力が良いし。嫌な思いさせてごめんね」
「懲りたので、今回、透哉さんには最初から言いました」
そう言って加奈江は微笑んだ。
「もし、由宇くんに会っても、私のことは言わないでください。気まずいですし」
「ちょっと怒っておこうかと思ったけど。加奈江ちゃんがそういうなら」
加奈江は再び「私が悪かったんです」と言って笑った。
──そのとき、地震が来た。
上層階は、地上より大きく揺れる。
透哉は、長く続く振動に耐えきれず気分が悪くなった。酒のせいもありそうだ。
加奈江に再度謝り、テーブルに両肘をついて顔を伏せる。
店員が、新しいおしぼりと水のお代わりを持って駆けつけた。
※ ※ ※
少し回復した透哉は、新宿駅から十番線の電車に乗った。
吉祥寺駅で降りて、井の頭公園口の改札を出る。
三鷹市役所に自分の住民票はあるだろうか。
大家は生きているだろうか。
自分を見てわかるだろうか。
旧スタジオのビルの前を通りかかると、桜の大木の陰に知っている女がいる──ように見えた。
今日何度目かの「ストーカー」という単語が、危険信号のように脳裏で赤く点滅する。
自分のではない。類のだ。歌手の鷺沢茉理。出禁になったその場所にまだ未練があるのか。
海外にいるはずなのに、どうして。
動悸がする。
確かめる間もなく雑踏に紛れて消えた。酒と地震に酔った幻覚だろうか。
眩暈がする。
自分の背後にも、同じように誰かがいるのかもしれない。けれど、もう振り向く気力はなかった。
──少し横になりたい。
この近くには、類の住むマンションがある。
透哉にとって、体調を崩したり、女と揉めたりしたときの避難場所だ。
重い躰を引き摺りながら、そこへと向かった。
類の部屋は四階にある。
なんとかたどり着いたものの玄関に入ってすぐに力尽きた。室内まで這う余力がない。
冷たい廊下が心地良い。
そのまま仰向けに転がっていると部屋主が帰ってきた。
ドアを開けるなり透哉を見下ろして、状況を察したようだ。
「今日は唯が久しぶりに体調良いと思ってたのに、お前のほうが体調不良なの?」
「地震に酔った」
「ああ。あったな。昼過ぎに。どこにいたの」
「新宿の駅ビル」
透哉は、無言で両手を類に向かって伸ばす。
類が呼応して屈みこみ、半病人を抱え上げた。
「お前、また軽くなってんだけど。食えよ」
類は呆れたように言いながら、足でサブの寝室のドアを開け、雑にベッドへ透哉を下ろした。
そして、鍵をひとつ枕元に放り投げる。
「それ、四ツ谷にあるマンションの鍵。後で住所メールしとくから」
「ここで充分だよ」
「ここの鍵、由宇にもやるから。もちろん今まで通り来て良いよ。でも静かに過ごしたいときとか、使って」
透哉が鍵を手遊びしながら訊いた。
「由宇に、唯ちゃんの病気バレたのか。泣いた?」
「泣いて怒った」
類の返事に声を立てて笑う。
「あの子、反応がいちいち意外だよね」
「あと転部するって言ってる」
「テンブ?」
「同じ大学で学部を変わること。医学部に行きたいって」
「ふうん」
よっぽど唯がお気に入りなのだろう。病気の悪化を知って何かしないではいられないのだ。
──自分とは違う。
「えらいね」
自嘲気味に笑った透哉を見て、類が真面目な顔をした。
「医学部って六年あるし。学費足りなそうなら、俺が出そうかと思って」
「そう」
「お前は、何かいらないの。運転免許とかさ。金は出すから。英会話とか何でもいいよ。興味あれば──」
「煩い」
透哉は類の言葉を遮って、背を向けて毛布を被った。
──皆、僕をどんどん置いて行ってしまう。
類は成功して、妹や由宇の生活まで支える余裕がある。
由宇だって自分の道を歩んでいる。
二人とも決して恵まれた家庭で育ったわけではない。
条件は同じようなはずなのに。
類のような強さもない。
由宇のように素直に類を頼れない。
欠けた部分を埋められないまま、ただ時間だけが過ぎている。
──ハンプティを元には戻せなかった。
類の部屋は四階にある。
なんとかたどり着いたが玄関に入ってすぐに力尽きた。室内まで這う余力がない。
冷たい廊下が心地良い。
透哉の機嫌を損ねたことを察した類が、躰を寄せてくる。
「僕、具合悪いんだけど?」
酒を飲んだ後の行為を、透哉はすきではない。
「横になってるだけで良いよ。全部やるから」
「僕、病人なんだけど!」
「気ぃ紛れるだろ」
類が透哉の拒絶を無視して、くちびるを舌で割った。得意な分野に持ちこめばなし崩しにできると踏んでいる。
いつもこのパターンだ。
透哉は、もう抵抗する力もなくただ流された。
「──ワインの味がする」
類が呟いた。
「面白い子と一緒で気分が良かったんだ」
「飲めない癖に」
「グラス一杯だし。外人さんと間違われた」
思い出し笑いをした透哉に、類は「昔より笑うようになって良かった」と再度くちびるを寄せた。
こんな強引なやつをいつまで奈々は想っているのか。
それに、あの女。
「そういえば、さっきスタジオの近くに、なんか茉理っぽい人いた」
「ああ、だろうな」
類は一瞬で合点がいったようだったが、それ以上は何も言わなかった。
ぼうっとなった頭の隅で、お腹を空かせているであろう黒猫のことを思い出す。
夜の餌を頼まれていたのに。
──ごめん、ルイ。
奈々がつける猫の名前なんてとっくに予想はついている。
了
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