花嵐の丘 宵

ミナト

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類 大学生編「君の躰がすき」

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 同軸リバ/睡眠姦/セフレ
 
 ※ ※ ※
 
 ──アラームより早く目が醒めてしまった。
 
 類は、隣で死んだように眠っている透哉の左胸に手を当てる。
 心臓の音。
 
 ──生きてる。
 
 当たり前なのだけれど。
 透哉は、寝ている間、呼吸音は聞こえないし身動きもしないし、いつものことながら心配になる。
 
 女と揉めるか体調が悪くなるとふらっとやってくる。
 類の部屋を避難場所と認識しているのだろう。
 別にそれはそれで構わないけれど。
 
 天使のような寝顔。
 起きているときは、髪を触られるのをいやがるので今のうちに勝手にいて遊ぶ。
 柔らかい巻き毛を指に絡ませて。
 
 ──美人は三日で飽きるって嘘だよな。
 
 知り合ってもう十年以上は経つけれど全然飽きない。
 
 人差し指で、半裸で寝ている透哉の細い腰のラインを辿ると、くすぐったいのか僅かに身をよじった。
 
 ──起きないし。
 
 窓のカーテンの隙間から差し込む朝日に、綺麗な躰を無防備に晒している。
 淡い色の乳首を撫でさすると透哉の小さな吐息が聞こえた。
 
 ──遊んでると黒くなるって嘘だよな。
 
 くすぐったり軽く摘んだりしているとつんと尖ってきた。
 長い睫毛がぴくりと動く。
 
 ──全然起きないし。
 
 類としては、別に透哉が起きても構わないと思っている。
 
 ──もう朝なのだし。
 
 透哉の服の上から太腿を撫で上げ股間にそろりと手を添えた。
 陰嚢の手触りを楽しんで、陰茎の形をそっとなぞる。
 少しずつ反応して勃ちあがりスウェットの中で張りだす。
 透哉の躰がぴくんと跳ねた。
 
「ん、ぅ」
 
 薄く目が開く。
 自分が悪戯されているとすぐに察した様子で。
「まだ、眠い──」
 起きぬけで掠れた声。
 類の手を退けて躰を丸め背を向けた。 
 
「そう」
 類は聞き流す。
 後ろから透哉を抱き込んで、下着の中に指先をいれる。
 
「もぅ、眠いってば──」
 
 抗議は無視して太腿を膝で割り、指先で会陰を優しく刺激すると、透哉は類の腕を力なく掴んだ。
 
「んっ──ゃ」
 
 透哉は、このあたりを触られるとすぐ欲に流される。
 発情させるのは簡単だ。 
 顔を火照ほてらせて身をよじる。
 
「──ぁ、んっ──」
 
 会陰を指で柔らかく何度も押しあげると、案の定、我慢できなくなったらしい。
 半眼のまま躰をひねって、類の上に覆い被さってきた。
 
 類の耳にくちづけして首を舐めてくる。
 たぶん寝ぼけて脳が混線しているのだろう。
 女じゃないって。
 
「俺に愛撫したって濡れないよ。意味ないぞ」
「──ん」
 
 相手が女じゃなくて類だと理解したらしく腕の力を抜いて全体重をかけてきた。
 別に大して重くないから良いけれど。
 
 類の脚の間に、透哉が挟まるような形で腰から下が重なった。
 硬くなっている透哉の陰茎が類の股間に当たる。

 発情させられた透哉がもう一度、類の耳にくちづけしてきて、さらに首には痕をつけようとする。くちゅ、と吸いつく音が部屋に響いた。
 
 今日、二限から授業があるんだけど。夏場だから痕目立つし。まあ良いのだけれど。
 透哉の柔らかい髪が耳に当たってくすぐったい。
 
「お前、そろそろ髪切ったら」
「──ん」
 
 透哉が自分の髪を触った後、枕元を探すそぶりをする。
 そういえば昨夜こいつ髪縛ってたっけ。
 シーツを横目で見ると髪ゴムが落ちていて。拾って渡すとまだ眠そうに結ぶ。
 白くて細いうなじに乱れた髪がかかる。
 
 ──艶っぽい。
 
 類は吸い寄せられる。
 手を伸ばして透哉の首筋に触れると、肩がぴくと揺れた。綺麗な形のくちびるが小さく動いて声が漏れる。
 
「ゃっ──」
 
 そのままそっと鎖骨まで撫でると赤く染まった顔で首を振って拒否の仕草をするので煽られた。
 
 類の視覚が反応する。
 股間に熱が集まりだしたのが自分で解った。
 
 下半身が重なっているのだから寝起きとはいえ、そこに透哉が気づかないわけはなくて。
 
 類の下着の中に、細い長い指が入り込み猫のように擦り寄ってきた。
 優しすぎてくすぐったい。
 
「ん」

 声がどんなに小さくても聞こえるし、ほんの少しの身じろぎも伝わってしまう距離。
 別にいいのだけれど。
 今さらだし。
 
 透哉の指先が繊細な動きでするすると類の陰茎にまとわりついてくる。
 類を弄って遊びたい気分なのだろうか。
 すきにしたら良いけれど。
 
 下着の中のことなので見えるわけはないのに、脳内に透哉の長くて細い綺麗な指が自分のものに巻きついている様がちらつく。
 
 自分が透哉の容姿に引っ張られてしまっているとは思う。
 綺麗な姿の者に性的に触れられたら抗いがたい。
 透哉本人がどこまで自覚してやっているのかは解らないが。
 
 緩々と上下に扱かれるのは別に特別なことなんかじゃなくて。
 ごく一般的な愛撫なのに透哉の白くて細長い指先でされると堪らない気持ちになる。
 
「──んっ、ぅ」
 
 類が背中をベッドに押しつけて軋んだ音がした。
 透哉が耳元で囁く。
「駄目。イったらやだ」
 類が潤んだ瞳で、透哉の顔を見る。
「それは、もっと、早く言って」

 透哉が少し笑う。
「いや」
 
 無理矢理、射精感を抑えつけようとしてみたけれど、透哉の手がちょっかいをかけてきて邪魔をした。
 
 長い指を広げて類の陰嚢を優しく押し上げてくる。
 くすぐったくて内腿に力が入る。
 間にはまっている透哉の躰をぎゅうと挟んでしまう。

 その類の反応を見て楽しかったらしく、もう片手で陰茎も柔らかく揉み込まれる。
 脚が突っ張って震えた。
 
「──ッ、透哉、一旦、ゆび、とめて」
「いや」
 
 透哉は近頃、最中によく解らない我儘を言う。
 
 ──あれして。
 ──これして。
 ──それはしないで。
 
 泣いて、と言われたこともある。
 類は子役の経験もあるのだし容易たやすいことだ。
 もともと涙は出やすい体質で。
 
 でも、無理なこともある。
 類がイくのをいやと言うなら、もうちょい手前で伝えてほしい。
 今からはさすがにちょっと。
 
 ──自分を試してるな、これ。
 
 妹の唯が小さかったときに、不安な気持ちがあると類にしていた試し行為を思い出す。
 
 わざと我儘に振る舞って。
 相手が許容してくれるかで愛情を測る。
 
 それとそっくりだ。
 透哉も何か今──不安なのだろうか。
 
「イかないでよ」
 楽しげに類の陰茎を両手で捕まえてもてあそびながら、透哉が重ねて子供が唄うように言う。
 
「んっ、むり、だって」
 
 躰が重なっているので透哉がくすくす笑うと布地を伝い、敏感になっている陰茎の先端が下着に擦れる。
 
「──ッ、んっ、あんまり、上で、うごか、なっ──」
「わざとじゃないよ」
 
 透哉に笑いながら逆手で上下に扱かれた。
 細い小指が尿道口を掠めてびくんと腰がよじれた。
  
「──やめっ、指、とめろって」
「いや。駄目──ゆっくりにするのならいいよ」 
 
 類の陰茎は、透哉の指に絡みつかれ緩く揉まれながら、敏感になっている尿道口や裏筋を気まぐれに弄られた。
 
 たしかにゆっくりになったけれど。
 もどかしくて余計、下腹部の射精感が近づいて。
 類は悶えてシーツを二、三度蹴った。
 
 それを見て透哉が可笑おかしそうに言う。
「じっとしててよ」
「──ん、ぅ──むりっ、もう、飽きただろ」
「まだ。飽きてない。楽しい」
 
 上機嫌で良かったね。
 ──なるべく我儘をきいてやりたいけれど。 

 手のひらで柔らかく陰茎を捏ねられ先端からの粘液を塗られる。
 ぐちゅ、と濡れた音が腰の奥に甘く響いた。強制的に背中が反るのをこらえてシーツを掴む。
  
「むりっ、でるっ、から、さきに、脱がして。誰が、洗濯すると、思ってんだよっ」
「──類が」
 
 透哉が笑いながら、類のズボンを下着ごと引きおろした。
 シャツも脱がされる。
 
「じゃあ、そこは触らないから」
 
 じゃれて脇をくすぐってくる。
 直接股間を弄られているよりはましだけど。
 楽しそうだからいいのだけれど。

 類は、もう子供でもないし笑うほどの発作的な刺激はあまり感じなさそうで。
 くすぐったいというより──切ないような感覚に背がしなる。

「なんか──じれっ、たい、これ」
「柔らかくて触っていると気持ち良いよ」
「そんな、ところにっ、筋肉、つくわけねぇだろっ」

 感触を気に入ったらしい透哉にいたずらに指を動かされていたら、まだくすぐったさを覚えていた箇所があって。
 久しいぞわぞわする感覚に類は反射的に脇を閉じた。
 
「んっ──」
「腕、上げてよ」
「なんか場所によっては、うっかり、お前を吹っ飛ばしそうで怖いんだけど」
「そんなにいや?」
 
 声を立てて透哉が笑った。
「ちょっとだけしか触らないから大丈夫」 

 ──仕方ないな。
 結局負ける。
 透哉が楽しそうにしているので自分の頭の下で手を組んで脇を差しだす。
 
 透哉の指先が、脇の手触りを楽しんで遊びだす。そっと試すようになぞっていく。
 同じ箇所にくるとそこだけやっぱりくすぐったくて。
 
 それに加えて、位置的に直接、目で透哉の綺麗な指先が、自分の躰を這うのを追えてしまうのがまずい気がする。
 視覚に引っ張られているように思う。
 
 ──その白い細い指先が。脇の窪みに。
 
「さっき、ここ?」
「んっ──や、め」
 
 見なきゃいいのだけど。
 指先から目が離せなくなる。

 思ったより我慢できなくて焦りながら腕を下げようとしたら体勢的に肘を曲げたまま閉じようとしてしまって。
 危惧したように透哉に当たるところだった。
 
 本人はあまり気にしてないようで笑いながら言う。
「ちょっとだけだよ。ね、腕、上げて」
 
「無茶ばっかり言うなって」
「ちょっとだけ」
 
 ちょっとだけって唯も良く言ってたな。

 ──ちょっとだけ遊ぼ。
 ──ちょっとだけ食べたい。
 ──ちょっとだけ一緒にいて。
 
 ちょっとだけ、もうちょっと、と要求を通しては。
 自分が受け入れられたことに安心するのだろう。
 
 ──我儘をきいてやりたいけど限界はあって。
 
 腕を上げたら、一応配慮してるつもりなのか優しく──触れるか触れないかくらいで同じところを撫でてくる。
 躰が勝手に逃げようとよじれる。息が上がってきた。
 
「それ、んっ──やめっ」
「ちょっとだけって約束したし──気をつかっているんだけど」
「わかる、ん、だけど──んんっ」
 
「類、躰、逃げてる」
 くすくす笑う透哉に腋窩えきかをつつかれて背中が跳ねた。
 
「やめっ──勝手に、なるん、だって」
 
 さっき強引に抑えこんだ股間の熱がじわじわ反応してくる。
 
「も、やめっ」
 
 ぎゅうと脇を閉じたら、透哉の関心は、再び硬くなった類の陰茎に移った。
 
 上がった息を整える間も無く、緩く撫でまわされて──陰嚢の裏あたりから後孔にかけてくすぐられた。
 
「ぅあっ、ばか、やめっ──」
 
 透哉の躰が、脚の間に挟まっているので閉じれなくて。
 膝が内に曲がってがくがく震える。
 
 ちょっとだけでは手は離れず執拗にくすぐられて。
 快感を引き摺りだされる。
  
「ッ、う──ぁあっ」
 
 悲鳴をあげた類を見る、透哉の目の色が変わっていく。
 興奮していたり、事後とか、変わる──気がする。比喩ではなく。
 瞳孔が開いている。色素が薄いから目立つのだろうか。

 透哉がヤってすぐ帰ってきたら自分は解ると思う。
 解ったところで意味はないけれど。

 類の陰茎がひくひくと震えている。
 熱が高まる。
 もう抑えきれない。
 
「──たのし、い?」
「うん」
 
 綺麗に笑った顔に一瞬みとれたら、するりと陰茎を握り込まれた。
 
「──ッ」
 
 上下に扱かれながらどくどくと体液が溢れる。変に抑え込んだからか痙攣が妙に長い。

 ──類は目を閉じて呼吸を整える。

 透哉は最中は我儘を言うようになったけれど、普段は昔のまま肝心なことは何も口にしてくれなくて。
 
 類より背が高くなって、もう苛められたりはしていないと思うけれど。
 
 小さいときよりよく笑うようになって安心していたのだけれど。
 
 ──試すようなことをするのは。
 不安なのだろうか。
 
 たぶん、何か困っていても、口に出して助けてとは──言ってくれない。
 
 腹に零れた白濁液をそのまま透哉の陰茎にまとわせていたら、もう腰を浮かせて類の手に押しつけてくる。
 
「ん、んっ──」
 
 たぶん、反射的にそうなっている。
 寝起きが悪いから半分くらいまだ寝ぼけてそうだし。
 
「いいよ。おいで」
 
 類は上半身を起こし、腰の下に枕を敷いて透哉のやりやすいようにしてやった。
 
 根元ねもとまで入ると透哉は、小さく喘いで、背中を綺麗に反らした。
 これも無意識なのだろう。
 
 ──踊っている透哉を見て心臓が鳴るときがある。
 
 ダンスのジャンルによっては、背中を大きく反らせたり、躰を部分的に波打たせる振りがあって。
 
 ちょっとこれ白昼堂々、衆人環視の中、いいのかなと焦る。
 正視できなくなるのは、実際にこうなる透哉を見ているからなのだろうか。
 
 透哉は、すき勝手に動いている。
 
 類の前立腺の位置は当然知っているだろうが、透哉は、全然無視して目をぎゅっと瞑ってすきにしている。
 
 そういう気分なのだろう。
 それで構わないと思う。
 自由にしてたら良い。
 
 ──類はただ眺めている。
 
 朝日の中で透ける髪。
 うごめく折れそうな腰。
 あおのけた喉仏。
 支える細い指。
 上気した顔。
 荒い呼吸。
 
 良くできた見せ物のようだ。
 ぱたぱたと透哉の汗が類の腹部に落ちる。
 
 ナカの感覚でもう近いと判断して、類は透哉の腰をぐっと自分に引き寄せた。
 
「ぁ、んッ──」
 
 透哉は、本能的に抵抗して類の胸を手で押し返したが、離れられず、全身を痙攣させてナカに吐きだした。
 そのまま弛緩してベッドに沈み込む。
 
 枕に顔を埋めて息を整えながら透哉が文句を言う。
「エアコン、寒い」
 本当に困ってることは言わない癖に。

「汗そのままにするからだろ。拭けよ」
 投げてやったタオルが透哉の肩に引っかかった。

 そのふわふわした感触が気に入ったのか、透哉は枕から離れ、タオルに頬を寄せて目を瞑る。
「うん」
 返事は良いけど用途違うだろ。
 それ枕にすんな。

「お前、風邪ひきやすいんだから──」
 タオルを取りあげて、透哉の額や背中を拭く。
 
「二限あるから行ってくる」
 
 類は、後始末をして身支度しながら最近流行りの曲を口遊くちずさむ。
 腕や胸でヒットを打って適当に踊りながら。
 
『──I'm in love with the shape of you
 ──We push and pull like a magnet do
 ──Although my heart is falling too』
 
 ベッドに仰向けになっている透哉と逆さまに目が合う。
 そのまま類は最後のフレーズを口にした。

『──I'm in love with your body』
 
 透哉が訊く。
「shape of you──君の──形?」
 
 鞄に担当教授の著書を入れながら類が応える。
 
「そうだね──君の姿形がすきで、磁石のようにくっついちゃう、心も引っ張られちゃう」
 
 英語は得意科目ではなくて。
 大雑把な意訳だけれど。
 
「in love with your body──君の躰がすき」
 
 それを口にしたとき、あきらかに透哉の瞳が曇った。
 そのまま毛布に潜ろうとする。
 類はちょっと笑ってしまった。
 
「別に流行ってるだけで、他意があって歌ったわけじゃないし──何、お前、俺に躰目当てにされてると思ったの?」
 
 毛布を剥ぐと透哉は思ったより深刻な表情で目線を逸らした。
 類は、透哉の顎を掴んでこちらを向かせくちびるを寄せる。
 
「別にお互い様じゃん──女みたいに拗ねるなよ」
 
 透哉がきゅ、とくちびるを噛みしめて拒むので無理矢理、舌を捩じ込んだ。
 噛まれてもいいし。
 
「──っ」
 
 予想どおりだったけれど、そのまま噛ませといた。
 暫く疵に滲みるものは食べられないけどいいし。
 
 透哉はいつも一回だしたら体力尽きてすぐ眠ってしまうのに、今日は起きている。
 
 やっぱり何か──不安なことがあるのだろうか。
 気が済んだのか噛むのをやめて口を離した透哉に訊いた。
 
「眠れない?」
「お前が起こしたんじゃん!」
 
 それは、そう。
「じゃあ責任もって寝かせてから行くよ──もっかいだしたらさすがに眠れるだろ」
 
「いらないっ、や──だっ、ゃ」
 
 すぐ流される癖に。
 抵抗する力なんて弱くて。
 
「──もう、別にお前、小さくもないし苛められてもないだろ。今でも自分の外見いやなの?」
 
 責める手をめても応えないので何も言いたくないのだろう。
 
 背が高くて。
 手足が長くて。
 薄い色素の髪と瞳で。
 綺麗な顔の造形をして。
 何が気に入らないのか解らない。
 
 透哉の陰茎の根元を緩く撫でる。殆ど毛がなくて、その手触りを類はすきだ。
 舐めやすいし気に入っている。
 
 薄い色合いの性器。
 ほとんど他の皮膚と色が変わらないくらいの。
 
 ──遊んでると黒くなるって本当に嘘だよな。
 
 陰茎のまだ柔らかい感触をそのままにして会陰を優しく揉み込む。
 そこを苦手な透哉がみるみる発情して口元を押さえ、顔を赤くして肩を上下させた。
 
「んっ──ゃ、そこ、ぁ──」
「最中の我儘も良いけどさ。普通に──何かしてほしいことはないの」
 
 欲に抗えなくなった透哉が膝を擦り合わせ腰を揺らす。
 勃ってきた陰茎を緩く上下に扱くと躰を震わせた。
 
「何か不安? 何か困ってないの。俺にしてほしいことはないの」 
「いかな、いで」
 
 ──また?
 いやでも、今の状況的には話が合わなくて。
 
 ──あ。
 
 もう一度、透哉がうわ言のように口にした。
「いかないで」 
 
 ──行かないで、なのか。
  
 それで気が済むなら別に単位の一つや二つ棒に振っても構わない。追試もあるし。
 自分が頼んだら類が応じてくれると、透哉が解ってくれるほうが重要だ。
  
「いいよ。行かないよ。いるよ」
 
 理由は言ってくれないけれど。
 そのうち言えるようになってくれたら良いけれど。
 
 もう欲に夢中で聞こえてはいない。
 だから返事はない。
 
 やがて類の腕の中で深く痙攣した透哉は、また死んだように眠りに落ちていく。
 
 後には類が透哉の髪を撫でながら口遊む、その歌声が室内に響き──静かに消えていった。
 
『──Come on now, follow my lead』
 
 了
 
 ※ ※ ※

 引用元

 曲名:Shape of You
 作詞・作曲:Ed Sheeran
 英語歌詞:Steve Mac/Johnny McDaid

 2017年/アルバム『÷』より
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