君が好きだと気づいたら

霰月

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授業中。

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授業を面白いと思って受ける人は少ないだろう。
俺も面白くないと思ってるうちの一人だ。
退屈さを紛らわせるためにノートの端に絵を描く。
完成したら消しゴムで消して、また別の絵を描く。
この繰り返しだった。

ふと、顔を上げるとかなの姿が目に入った。
かなは真摯に授業に取り組んでいた。

真面目に授業を受ける姿にまた俺は見惚れていた。
ノートに文字を書くため下を向くと、綺麗な髪がサラサラと顔を隠した。
髪が邪魔だと感じたのか、耳に髪をかけ直す。
再び露わになった顔をみてトクンと胸が弾む。

「あれ…。」

今まで俺はこんなこと経験したことなかったけど、いつか誰かが言っていた気がする。

『恋をしたら胸が弾む』と。

これは恋なのだろうか。
いや、俺はきっと恋なんてできない。

ずっと好きでなんていられない。
女なんてほとんど信じてないんだから。

そう言い聞かせる自分に、心の中のどこかから“かなにをして変わりたい”と聞こえた。

ここ数日、かな達と過ごした日を思い出した。
短いけど、すごく楽しかった。
遊び終えてもどこか気疲れするのだが、全く感じられなかった。
ずっと笑顔でいれて、時間が経つのは一瞬だった。


もしかしたら、人はこれを恋と言うのかも知れない。

彼女はできたことはあっても、本気で好きになったことの無い俺にはいくら自問自答しても答えは出なかった。

後で、樹也に聞こう、そう思ってもう一度かなの方を見た。


向こうもこちらを見たようで、目があった。
俺は驚いて硬直してしまったが、逆に彼女は俺に向かって微笑んだ。
そのあと何かせっせと書いている。

『ちゃんと集中しなさい!』

そう彼女のノートに書かれていた。

『ごめんなさい』

俺もノートで返事をした。

そして、二人でまたこっそり笑った。
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