15 / 19
魔王軍幹部も大変なようで。
2
しおりを挟む
「シノ、後で話があるから庭に来てくれ」
カロスにそう言われたのは、ところどころ焦げた夕ご飯(リイリお手製)を食べていたときだった。おかげで、リイリが一生懸命作ってくれた料理の味がが全然分からなかった。ライラも「味がない……」なんて言っていたが、別にカロスに呼び出されたわけでもないのにどういうことだろう。
そんなこともあって俺は食後の眠たい体に鞭打って、庭に来ていた。
夜の庭は朝リイリと手入れしたときとは雰囲気がすっかり変わって、空気が冷えきっており森の中に迷いこんだような感覚がした。ときどき魔物の鳴き声が聞こえてくるしカサカサと木が風で揺れる音がこれまた不気味で、できることなら早く部屋に戻りたかった。
「待たせたなシノ。魔王さまに捕まってしまってな……遅れて申し訳ない」
「ぎゃー!!」
しばらく庭に咲いている花に襲われていると、カロスがやって来た。急に角からカロスの顔が出てきたものだから悲鳴をあげてしまったが、これはカロスの顔が怖いので、別に俺がビビりという訳ではないと思う。
「うむ?なんだ、シノはすっかり花たちと仲良くなってしまったのだな」
「いや、これはどう見ても襲われてませんか?」
「そうか?私には花たちがシノになついているようにしか見えんが」
俺の腕には枝が絡みついているし、頭には変な粉を吹きかけられているのにカロスはそんなことを言う。リアにしろカロスにしろ、ここの人たちのじゃれてるのレベルはおかしいと思う。
「えっと、それでカロスが俺に何の用なの?」
「ああそうだった。お主は魔王さまの召し使いだからな。今からその仕事をしてもらう」
「あっ、そうか。今日したのって全部手伝いだったわ……俺の仕事て終わってなかったのね」
「まあ、そう落ち込むな。仕事と言っても魔王さまの話相手をするくらいだ。大したことはせん」
「そうなの!?仕事というよりご褒美じゃん。俄然やる気出てきたー!」
「では、魔王さまの部屋まで案内する。ついてこい」
「あいあいさー!」
「……それはなんだ?」
「気にすんなって。俺の世界での返事みたいなもんだから」
「そうか」
しばらくカロスと世間話をしながら歩いていると、前から疲れた様子のルンルンが歩いてきた。
「あれ、ルンルンさん何かあったの?」
「うむ、またライラにでもちょっかいをかけられたのか?」
「あ、シノさんにカロスさん……ちょっと魔王さまに用があったんですけど、例のアレでして」
「なに、それは本当か?」
「はい。今日は機嫌が良かったのかいつも以上に……」
「なるほど……」
なんだか分からないが、ルンルンとカロスの間で話が進んでいく。
「シノ……すまないがここから先は一人で頼む。私は怖い……じゃなくて、仕事を思い出したのでな。魔王さまの部屋はこの廊下の奥の部屋だ。では、達者でな」
カロスはそれだけ言うと、溶けるように影のなかに消えていった。
ルンルンも「頑張って下さい」とだけ言って行ってしまった。
「え?なにこれ……もしかして俺ってかなりヤバイんじゃ?」
仕方なくリアの部屋に行くことにした。
しばらく歩くと、突き当たりに大きな扉があった。恐る恐る、豪華な装飾のされた扉を押すと……
「シぃ~ノ~!待ってたよ~ん!!」
中からそんなことを言う幼女……もとい、リアが飛び付いてきた。
「……って、幼女!?」
カロスにそう言われたのは、ところどころ焦げた夕ご飯(リイリお手製)を食べていたときだった。おかげで、リイリが一生懸命作ってくれた料理の味がが全然分からなかった。ライラも「味がない……」なんて言っていたが、別にカロスに呼び出されたわけでもないのにどういうことだろう。
そんなこともあって俺は食後の眠たい体に鞭打って、庭に来ていた。
夜の庭は朝リイリと手入れしたときとは雰囲気がすっかり変わって、空気が冷えきっており森の中に迷いこんだような感覚がした。ときどき魔物の鳴き声が聞こえてくるしカサカサと木が風で揺れる音がこれまた不気味で、できることなら早く部屋に戻りたかった。
「待たせたなシノ。魔王さまに捕まってしまってな……遅れて申し訳ない」
「ぎゃー!!」
しばらく庭に咲いている花に襲われていると、カロスがやって来た。急に角からカロスの顔が出てきたものだから悲鳴をあげてしまったが、これはカロスの顔が怖いので、別に俺がビビりという訳ではないと思う。
「うむ?なんだ、シノはすっかり花たちと仲良くなってしまったのだな」
「いや、これはどう見ても襲われてませんか?」
「そうか?私には花たちがシノになついているようにしか見えんが」
俺の腕には枝が絡みついているし、頭には変な粉を吹きかけられているのにカロスはそんなことを言う。リアにしろカロスにしろ、ここの人たちのじゃれてるのレベルはおかしいと思う。
「えっと、それでカロスが俺に何の用なの?」
「ああそうだった。お主は魔王さまの召し使いだからな。今からその仕事をしてもらう」
「あっ、そうか。今日したのって全部手伝いだったわ……俺の仕事て終わってなかったのね」
「まあ、そう落ち込むな。仕事と言っても魔王さまの話相手をするくらいだ。大したことはせん」
「そうなの!?仕事というよりご褒美じゃん。俄然やる気出てきたー!」
「では、魔王さまの部屋まで案内する。ついてこい」
「あいあいさー!」
「……それはなんだ?」
「気にすんなって。俺の世界での返事みたいなもんだから」
「そうか」
しばらくカロスと世間話をしながら歩いていると、前から疲れた様子のルンルンが歩いてきた。
「あれ、ルンルンさん何かあったの?」
「うむ、またライラにでもちょっかいをかけられたのか?」
「あ、シノさんにカロスさん……ちょっと魔王さまに用があったんですけど、例のアレでして」
「なに、それは本当か?」
「はい。今日は機嫌が良かったのかいつも以上に……」
「なるほど……」
なんだか分からないが、ルンルンとカロスの間で話が進んでいく。
「シノ……すまないがここから先は一人で頼む。私は怖い……じゃなくて、仕事を思い出したのでな。魔王さまの部屋はこの廊下の奥の部屋だ。では、達者でな」
カロスはそれだけ言うと、溶けるように影のなかに消えていった。
ルンルンも「頑張って下さい」とだけ言って行ってしまった。
「え?なにこれ……もしかして俺ってかなりヤバイんじゃ?」
仕方なくリアの部屋に行くことにした。
しばらく歩くと、突き当たりに大きな扉があった。恐る恐る、豪華な装飾のされた扉を押すと……
「シぃ~ノ~!待ってたよ~ん!!」
中からそんなことを言う幼女……もとい、リアが飛び付いてきた。
「……って、幼女!?」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる