死霊使いと精霊姫

五月七日 外

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ルベール国

ルベール国④

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「それで、組織はマスターに何をさせてるんです?」
 ましろたちは団子屋の店主=マスター(マスターと呼べと言われた)に話を聞いていた。組織はゼフレンやスカーレットと同じ連中らしく、マスターの娘を人質にして脅していたらしい。
「俺はこう見えて元死霊殺しなんだよ。やつらはそれを知って俺にこれを作らせてるんだ」
 マスターはそう言って小さな箱のようなものを見せてくれた。
「なんだこれ?」
「やつらが言うには残留思念  オーブを集めるものらしい……で、それを俺に作らせてから毎回色んな所に置いてかせて回収してる」
「組織はこんな箱を作らせて何をする気なんだろ?」
「さあな……だが、明日で必要な箱の量は十分らしい」
「えっと、いくつくらい作ったんですか?」
「千個くらいだなぁ」
「千個も!?」
「ああ……だが、やつらがちゃんと娘を返してくれるかが分からないんだ……それで俺も困っててなぁ団子を作る暇も無えって訳だ」
「それならわたしたちがマスターの娘を助けてあげる!その代わりに団子を食べさせて」
 せつなが立ち上がりそんなことを言う。
「まてまて!今会ったばかりのお前たちにそんな危険なことはさせられねえよ」
「団子が食べられるならこれくらいのこと平気。それに、ましろが頑張るから」
 せつなが当然のことのように言う。
「やっぱり俺もやるのね……」
 
 このあと30分ほど、せつなが助けると言い、マスターが危ないからダメだと言い張り口論になったがマスターが根負けしたようだ。
「わかったよ……だが、お前たちが動くのは最悪の場合だけだからな」
「わかりました」
 ましろたちは、マスターが組織に箱を渡して娘を返してもらえなかった場合に組織を尾行して娘を取り返すことになった。


 そうして迎えた作戦実行日
 マスターが組織に箱を渡すのは夜のことらしいので今日もましろたちは井戸の修理をしていた。
 マスターの話によると、今日は噴水の前で組織に箱を渡し、そのときに娘を返してもらえるらしい。
 
「無事に返してもらえるといいんだけど……」
 ましろは噴水から少し離れた場所でそう呟いた。
「別に返してもらえなかったら取り返しに行くだけ」
 せつなも隣でそんなことを呟く。
「前から気になってたんだけど、せつなの髪って夜になると少し光るよな」
 せつなの髪は昼間は真っ黒だが今は淡い緑色に光っていた。
「ましろは何で光らないの?」
「普通は光らないよ!もしかして精霊の特徴なのかな……」

「やあ、約束通り持ってきてくれたかい?」
 ましろたちがそんなことを話していると、噴水の前に一人の男が現れた。
「(アイツ……ゼフレンじゃないか……)」
 現れた組織の男はゼフレンだった。
「ああ……これで最後だ!早くウチの娘を返してもらおうか」
 マスターはそう言って箱の入った袋をゼフレンに向かって投げた。
「明日の朝には店の前につれていくよ」
 ゼフレンは箱が入っているのを確認してから興味無さそうにそう言う。
「おい!話が違くないか?今娘を返せよ」
「いやいや、今君に娘を返したらわたしの身が危ないだろ……なあ、スコーピオンさん?」
「その通り名は恥ずかしいから捨てたよ、今はただの団子屋店主だ」
「そうですか……かつて最強の毒使いと呼ばれたあなたが団子屋なんて勿体ないですね……」
 ゼフレンはそう言って立ち去ろうとする。
「おい!話はまだ終わってないぞ!」
「全く……店で大人しくしててくださいよ、明日にはきちんと返しますから……あんまりしつこいようなら娘さんも無事ではすみませんよ」
 ゼフレンはそう言って立ち去ってしまった。

「お前らすまないがあとは任せたぞ」
 マスターは落ち込みながらましろたちにそう頼んだ。
「任せてください!マスターは店で待っててくださいよ。行くぞせつな」
「ええ、マスターは店で団子を作ってなさい。じゃないとわたしは頑張らないわよ」
「せつなはもう少し空気を読もうな……」
「なにが?」
 ましろたちはそんなことを言いながらゼフレンを追いかけて走っていった。

「小僧は苦労してそうだな……さて、俺もアイツらに任せっぱなしはよくないよな……」
 マスターはそう呟いて、店に向かって歩き始めた。




 
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