こんなわたしでもいいですか?

五月七日 外

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彼女の失われた青春

彼女の失われた青春①

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 わたしこと雛田 由依 ひなだ ゆいはかなりのスポーツ少女だった。子供の頃から男子に混じってサッカーをしたり兄とはよくケンカをしたり……
 え?お兄さんいるの?って、赤城君に教えてなかったっけ……一個上のお兄ちゃんがいるよ。(あれ?赤城君が少し落ち込んでいる?まあいいっか)

 といった感じで両親からも「女の子なんだからもう少し大人しくしてくれるとなぁ……」と言われるほどには元気な子だった。小学校に上がると元々兄が通っていたテニススクールにも一緒に通うようになり……そこからはテニスばっかりするようになった。

 どうやらわたしはかなりテニスが気に入ったようで兄が途中で止めてもお構いなしにテニスを続けていたし、自分で言うのは何だけど運動神経もあったので大会でも成績はけっこう良かった。あっ、もちろん全国で優勝とまではいかなかったよ……良くても県大会優勝位だったかな……赤城君が誉めてくれる。少し恥ずかしいなぁ///

 とまあ、そんな感じで小学校時代はテニスばっかりだったかなぁ……今にして思うと全然女の子っぽくないね……
 そして、中学校に上がるとわたしがそれなりにテニスが出来ることを知っていた顧問の先生に誘われるままテニス部に入部。期待の新人として頑張ろうとしてたんだけど、大会前の練習試合で怪我しちゃって……「大会には間に合わない」ってお医者さんに言われて、そのときわたしはかなり落ち込んでいたんだよなぁ……

 ちょうどその頃かな……わたしがクラスで昴と話すようになったのは……


 そこまでわたしが話すと赤城君がツッコんできた。

「昴と同じクラスだったのかよ!!!」
「うん、そうだよ」

 わたしは当然のことなのでそう答える。すると、赤城君は慌てたように……

「えっ?大会って大体夏休み前に始まるよな。ってことは一学期の終わりまで一言も昴と話さなかったの?」
「そのときまでわたしテニスのことしか考えてなかったからさ昴どころかクラスメイトと一言も話してないと思う……」
「恐ろしいな……スポーツ少女……」

 赤城君が少し引いてる気がする……

「と、とにかく!続き話すよ!」
「お、おう……」


 わたしはテニスが好きすぎて、怪我をするまでまともにクラスメイトと話していなかった……怪我をしてからはテニスも出来なかったので始めは仕方なくクラスメイトと話していた。だからかな……わたしは少しクラスから浮いていた。

 すると、わたし意外にもう一人クラスから浮いている人がいた。

 そう。その子こそわたしの元親友暁 昴あかつきすばるだった。
 昴はいつも一人で絵を書いていた。当時のわたしはテニスだけが楽しいと思っていたからいつも絵を書いてて可愛そうな子だなぁと思っていて……少しは話してあげよう!と今にして思えばかなりお節介というか思い上がりも甚だしいと言うか……
 とにかく、そんなことを考えながらわたしは昴に話かけてみた。

「暁さん、何書いてるの?」


「お!スゴいこと考えてるわりには普通の話かけ方だな!」

 また、話の途中で赤城君が割り込んできた。

「また、話に入ってくる!まあ、いいや……じゃあ問題!
 比較的普通に話しかけたわたしに昴は何と返してきたでしょう?」
「う~ん、そうだな……アイツ何て答えるだろ?シカトとか?」
「まあ……最初はシカトされたんだけど……その……こっちに気付いた後に何て答えたでしょう?」

 赤城君がシカトという当時の昴が最初にしたことを当てたので少し昴に嫉妬してしまった。(……わたしのことはあまり知らないのに昴のことはわかるんだね……)
 わたしが少し嫉妬に燃えていると赤城君が思い付いたのか答えてくれた。

「じゃあ……お腹すいたから、ご飯の絵だよ!とか……」
「ある意味……昴なら言いそうだけど残念、不正解!」
「クソッー!間違えたか!」

 ……赤城君が間違えて少し喜んでいる自分がいた……こんなことを喜ぶなんて、わたしって嫌なヤツだなぁ……(それに、もし昴だったら一緒に悔しがるんだろうな……) 

「さて!それでは答え合わせも含めて続きを話すよ!」
「お!待ってました」
「それじゃあ、わたしが昴に話しかけたところから」
 

「暁さん、何書いてるの?」

 わたしがそう尋ねると

「…………」

 ……シカトされた。少しカチンときた。

「暁さん!ねえ、暁さん!聞こえますかぁ!」  

 イラっときたわたしは大きな声でそう言った。

「……は、……はい?」

 ……もしかして今気付いたの?どれだけ絵なんかに集中してるの?

「その、暁さん今何書いてたの?」  

 先程までとは違って何を書いているとそこまで集中出来るのか気になったわたしはもう一度同じ質問をした。

「テニスバカの雛田さんにはわからないものです……」 

 暁さんはわたしの目を見ながらそう言った。これには、カチンときた。

「だ、誰がテニスバカよ!そっちだって絵ばっかり書いてる……えっと、絵バカよ!」
「絵をばかにするのは許しません!このテニスバカ!」
「「バーカバーカ!ふんっ!」」


 こうして、わたしと昴は最悪の形で始めての会話を終わらせた。
 けれど、不思議とわたしはこの口喧嘩が嫌いじゃなかった……
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