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彼らの夏祭り
彼らの夏祭り③
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「ねえねえ、今日はともちゃんいるの?」
栞の家に向かっていると昴がソワソワしながら栞にそう聞いた。
ここ最近、俺と昴はほとんど毎日栞の家に遊びに行っていたので、ともちゃんとはすっかり仲良くなっていた。
「もちろんいますよ~!」
「すばるんは、ともちゃん好きだもんね」
どうやら、マイエンジェルともちゃんは今日もいるらしい。ちなみに由依も何回か栞の家で遊んでいたからともちゃんのことは知っているけど、何か嫉妬しているように見える。……まあ、親友のすばるんを取られたみたいになってるもんなぁ……
みんなでともちゃんの可愛さについて話していると(主に俺と昴の熱意がスゴかった)栞の家に着いた。
「いらっしゃ~い!上がって上がって!」
「「お邪魔します」」
「「ただいま~」」
楓さんが出迎えてくれて俺たちは、部屋に上がる。昴も『ただいま』と言っていた気がするがまあ、いいや。
ミニ夏祭りは、庭で行うらしく部屋を突っ切っていく。
「飛翔さん!心の準備はいいですか~?」
栞が最後の扉の前で俺に聞いてきた。
「もちろん!それより早く始めようぜ」
俺が、返事をすると栞がニッコリ笑って扉を開けた。人生初の夏祭りなので、とても楽しみだ。
「おお~!」
中庭に入ると、焼き鳥の匂いや焼けたとうもろこしの匂いが充満していた。点々と手作りの屋台が並んでおり綿菓子屋には浴衣を着たともちゃんと楓さんが立っており、とうもろこしと焼き鳥を知らない男の人がせっせと焼いていた。もしかしてあの人が栞のお父さんかな?俺の予想とは異なりとても真面目そうな人だった。
「それじゃあ各自持ち場についてくださ~い!」
栞がそう言うと、由依はたこ焼屋、昴は射的屋の前に立った。
「栞は、何で俺に抱きついてきてるの?」
「え?わたしは飛翔さんと一緒にまわる係りなんですよ~!ジャンケンで無事勝ち取りました!」
どうやら、屋台担当と俺とまわる担当があるらしく栞がまわる担当になったようだ。それは、いいんですけどちょっと離れてくれませんかね?君のお父さんの目が怖いんだけど……
「飛翔さんは、どれから行きたいですか?」
「そうだな……」
お昼時でお腹も空いてきたので、何か食べたいところだが最初に栞のお父さんの屋台に行けるほど俺のメンタルは、強くない。ここは、由依のいるたこ焼屋にしとこうかな。
「たこ焼屋で」
「なるほど~!では、焼き鳥を食べましょう!」
「お前!俺の意見は無視かよ~」
栞が俺の意見などガン無視で焼き鳥屋まで引っ張っていく。……まって!お父さんと話すのは、楓さんのフォローがあるときじゃないと!……
「君が栞のダーリンさんかい?」
「ぶふっ!」
焼き鳥屋の前に立つと、初っぱなからスゴいことを栞のお父さんが聞いてきた。楓さんの件があったからもしやと思っていたけど、やっぱりコイツ、お父さんにもメチャクチャなこと吹き込んでやがるな。とりあえず、事実を教えておかないと。
「いいえ、違います」
「「え!?」」
何故か、栞と一緒に栞のお父さんまで驚いている。いや、栞が驚くこともおかしいな。
「あれ?君は飛翔くんだよね?」
「はい、そうですよ」
「つまり……栞のダーリンさんだよね?」
「それは、違います!」
「えぇ~!!!」
さっきまでの真面目そうなお父さんは、何処へ行ったのやら焼き鳥を両手に持ちながら叫んでいる。
「なぁ~んだ。てっきり娘さんを僕に下さい!みたいな展開があると思って堅物なお父さんを貫こうと思ってたのに。あっ、栞はともかくマイエンジェルともちゃんに手を出したら許さないよ」
「は、はい……」
よかった……この人は、栞のお父さんで間違い無さそうだ。きっと栞の変態性は、この人から受け継いだのだろう。だって、ともちゃんのことマイエンジェルとか言ってるし……あれ?どこかの誰かもそんなこと言ってたような……
「そうだ!せっかく色々焼いたからたくさん食べなさい」
「ありがとうございます。」
お父さんから、かなりの量の焼き鳥をもらった。
「お父さん焼きすぎだよ、ちょっとみんなに配って来ますね~」
栞は、焼き鳥をいくつか持って由依たちのところに走っていった。
急にお父さんと二人っきりになってしまった。少し気まずい。
「うんうん、栞も綺麗になってますます楓さんに似てきたなぁ。栞をもらう気はないかい?」
「あはは、確かに栞は綺麗だし良いやつですけど友達ですしね~」
「飛翔くんもまだまだ若いなぁ、友達だと思ってた人が実は、一番大切な人だったなんてことはよくあるよ。僕と楓さんがそうだったしね」
「へぇ~。でもお父さんもやりますよね。楓さん綺麗だから競争率高かったでしょ?」
楓さんは、今でもあれだけ綺麗だから若いときなんて恐ろしい美人だったに違いない。だから、お父さんがどうやって楓さんと結婚するまでに至ったのか気になるところだ。
「確かに、楓さんはモテモテだったから大変だったよ~」
「どうやって付き合うことになったんですか?」
「それは、僕がもうアプローチを仕掛けて楓さんが仕方なくデートしてくれたのが最初だったかな……まあ、楓さんは、僕のこと普通の友達だと思っていたから乗り気じゃなかったけどね。けど、外堀を埋めたりサプライズをたくさんしたりしたら僕の気持ちが本気だってことを分かってくれて……そこからちゃんとお付き合いしてから結婚て感じかな」
栞の訳わからん作戦の数々は、お父さんからの遺伝ですね。まあ、栞の場合は冗談でやっているだけだと思うけどな。
「お父さんも結構苦労したんですね」
「でもそのお陰で、楓さんと結婚できたし栞と、ともちゃんに出会うことができたしよかったよ。それにしても、今日のともちゃんは可愛いなぁ」
「ですよね!いつもは、ツインテールなのに今日は、浴衣を着てるからポニーテールにしてて可愛さ4倍ですよ!」
「お!飛翔くんもよくわかってるね。いつものツインテールも、ともちゃんらしくていいんだけど、ポニーテールは反則に可愛いんだよ!」
「浴衣には、ポニーテールですよね!まあ、ともちゃんが可愛いことは変わらないですけど!」
「もちろんその通りだ!」
俺と栞のお父さんは、ともちゃんの可愛さについて熱く語り合うのであった。
そのあと、戻ってきた栞にドン引きされたのは、言うまでもないが。
栞の家に向かっていると昴がソワソワしながら栞にそう聞いた。
ここ最近、俺と昴はほとんど毎日栞の家に遊びに行っていたので、ともちゃんとはすっかり仲良くなっていた。
「もちろんいますよ~!」
「すばるんは、ともちゃん好きだもんね」
どうやら、マイエンジェルともちゃんは今日もいるらしい。ちなみに由依も何回か栞の家で遊んでいたからともちゃんのことは知っているけど、何か嫉妬しているように見える。……まあ、親友のすばるんを取られたみたいになってるもんなぁ……
みんなでともちゃんの可愛さについて話していると(主に俺と昴の熱意がスゴかった)栞の家に着いた。
「いらっしゃ~い!上がって上がって!」
「「お邪魔します」」
「「ただいま~」」
楓さんが出迎えてくれて俺たちは、部屋に上がる。昴も『ただいま』と言っていた気がするがまあ、いいや。
ミニ夏祭りは、庭で行うらしく部屋を突っ切っていく。
「飛翔さん!心の準備はいいですか~?」
栞が最後の扉の前で俺に聞いてきた。
「もちろん!それより早く始めようぜ」
俺が、返事をすると栞がニッコリ笑って扉を開けた。人生初の夏祭りなので、とても楽しみだ。
「おお~!」
中庭に入ると、焼き鳥の匂いや焼けたとうもろこしの匂いが充満していた。点々と手作りの屋台が並んでおり綿菓子屋には浴衣を着たともちゃんと楓さんが立っており、とうもろこしと焼き鳥を知らない男の人がせっせと焼いていた。もしかしてあの人が栞のお父さんかな?俺の予想とは異なりとても真面目そうな人だった。
「それじゃあ各自持ち場についてくださ~い!」
栞がそう言うと、由依はたこ焼屋、昴は射的屋の前に立った。
「栞は、何で俺に抱きついてきてるの?」
「え?わたしは飛翔さんと一緒にまわる係りなんですよ~!ジャンケンで無事勝ち取りました!」
どうやら、屋台担当と俺とまわる担当があるらしく栞がまわる担当になったようだ。それは、いいんですけどちょっと離れてくれませんかね?君のお父さんの目が怖いんだけど……
「飛翔さんは、どれから行きたいですか?」
「そうだな……」
お昼時でお腹も空いてきたので、何か食べたいところだが最初に栞のお父さんの屋台に行けるほど俺のメンタルは、強くない。ここは、由依のいるたこ焼屋にしとこうかな。
「たこ焼屋で」
「なるほど~!では、焼き鳥を食べましょう!」
「お前!俺の意見は無視かよ~」
栞が俺の意見などガン無視で焼き鳥屋まで引っ張っていく。……まって!お父さんと話すのは、楓さんのフォローがあるときじゃないと!……
「君が栞のダーリンさんかい?」
「ぶふっ!」
焼き鳥屋の前に立つと、初っぱなからスゴいことを栞のお父さんが聞いてきた。楓さんの件があったからもしやと思っていたけど、やっぱりコイツ、お父さんにもメチャクチャなこと吹き込んでやがるな。とりあえず、事実を教えておかないと。
「いいえ、違います」
「「え!?」」
何故か、栞と一緒に栞のお父さんまで驚いている。いや、栞が驚くこともおかしいな。
「あれ?君は飛翔くんだよね?」
「はい、そうですよ」
「つまり……栞のダーリンさんだよね?」
「それは、違います!」
「えぇ~!!!」
さっきまでの真面目そうなお父さんは、何処へ行ったのやら焼き鳥を両手に持ちながら叫んでいる。
「なぁ~んだ。てっきり娘さんを僕に下さい!みたいな展開があると思って堅物なお父さんを貫こうと思ってたのに。あっ、栞はともかくマイエンジェルともちゃんに手を出したら許さないよ」
「は、はい……」
よかった……この人は、栞のお父さんで間違い無さそうだ。きっと栞の変態性は、この人から受け継いだのだろう。だって、ともちゃんのことマイエンジェルとか言ってるし……あれ?どこかの誰かもそんなこと言ってたような……
「そうだ!せっかく色々焼いたからたくさん食べなさい」
「ありがとうございます。」
お父さんから、かなりの量の焼き鳥をもらった。
「お父さん焼きすぎだよ、ちょっとみんなに配って来ますね~」
栞は、焼き鳥をいくつか持って由依たちのところに走っていった。
急にお父さんと二人っきりになってしまった。少し気まずい。
「うんうん、栞も綺麗になってますます楓さんに似てきたなぁ。栞をもらう気はないかい?」
「あはは、確かに栞は綺麗だし良いやつですけど友達ですしね~」
「飛翔くんもまだまだ若いなぁ、友達だと思ってた人が実は、一番大切な人だったなんてことはよくあるよ。僕と楓さんがそうだったしね」
「へぇ~。でもお父さんもやりますよね。楓さん綺麗だから競争率高かったでしょ?」
楓さんは、今でもあれだけ綺麗だから若いときなんて恐ろしい美人だったに違いない。だから、お父さんがどうやって楓さんと結婚するまでに至ったのか気になるところだ。
「確かに、楓さんはモテモテだったから大変だったよ~」
「どうやって付き合うことになったんですか?」
「それは、僕がもうアプローチを仕掛けて楓さんが仕方なくデートしてくれたのが最初だったかな……まあ、楓さんは、僕のこと普通の友達だと思っていたから乗り気じゃなかったけどね。けど、外堀を埋めたりサプライズをたくさんしたりしたら僕の気持ちが本気だってことを分かってくれて……そこからちゃんとお付き合いしてから結婚て感じかな」
栞の訳わからん作戦の数々は、お父さんからの遺伝ですね。まあ、栞の場合は冗談でやっているだけだと思うけどな。
「お父さんも結構苦労したんですね」
「でもそのお陰で、楓さんと結婚できたし栞と、ともちゃんに出会うことができたしよかったよ。それにしても、今日のともちゃんは可愛いなぁ」
「ですよね!いつもは、ツインテールなのに今日は、浴衣を着てるからポニーテールにしてて可愛さ4倍ですよ!」
「お!飛翔くんもよくわかってるね。いつものツインテールも、ともちゃんらしくていいんだけど、ポニーテールは反則に可愛いんだよ!」
「浴衣には、ポニーテールですよね!まあ、ともちゃんが可愛いことは変わらないですけど!」
「もちろんその通りだ!」
俺と栞のお父さんは、ともちゃんの可愛さについて熱く語り合うのであった。
そのあと、戻ってきた栞にドン引きされたのは、言うまでもないが。
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