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第2章 甦った王子
その1 心機一転、まずは新生児から
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心機一転。
逆境からの起死回生。
前世で21世紀の東京で会社経営をしていたおれの、大好きな言葉だった。
とはいうものの。
異世界転生の影響か、前世の記憶も穴だらけ。今度の人生に至っては、記憶喪失かっていうくらいに、1%ほども覚えていない、残念な、おれは。
並河泰三、享年45歳。
この異世界セレナンでの名前は、ティトゥ。
ティトゥは6歳で生贄として聖なる泉に突き落とされた。
泉の底で出会った《雨神》である《青 竜》様は、おれを保護してくれた。
おれは従者として竜神様にお仕えし、知識を学び、ふたたび現世に戻る。
失われた人生を取り戻すために。
※
こうしておれは、輪廻転生した。
赤ん坊からの再出発だ。
この前の短い人生では、生贄として聖なる泉に突き落とされたショックのためか、記憶喪失になっていたので両親の顔も覚えていない。
むしろ、長年、お仕えしていた《青 竜》様のもとで仲間たちと憶えたことのほうが、鮮明に記憶に残っている。
この知識と経験をもって、自分の部族を救うのだ!
それが《青 竜》様との約束だからな。
※
新生児からやり直すというのは、なかなか、しんどい。
生まれた時点では何も見えていないし、身体も自由に動かないのだ。
意思を伝えたくとも、口を開けば「おぎゃあ」である。
あきらめて、ぼうっとしてしまった。
たぶんそれが正解だったのだろう。
温かいものに包まれる。
良い匂いがした。
ゆさゆさと揺すぶられて、うとめく。
母さん?
子守歌。
おぼえてる、母さんは、声がきれいで、歌がうまかったんだ。
目が開いたときに、最初に見たのは、母さんだった。
「よしよし、よく頑張ったねセーア。まあ~、身体の大きいこと。じょうぶな子になるよ!」
母さんではない、しわがれた声。
あとで、神殿に仕える巫女である母さんの先輩で巫女頭である、ばあちゃんだと知った。
「生まれてきてくれて、ありがとう……もう、わたしには子どもを授かる資格はないと思っていたのに」
涙ぐんでいる、母さん。
きれいだ。
銀髪と、黄色人種の肌色。目の色は黒い。
「よかった。本当に、よかった!」
こう言ったのは、父。
驚いたことに、部族の長である父が、母さんの出産に立ち会っていたのである。それ以降も、たびたび、母さんとおれに会いにきてくれた。
父は、正式に母さんを后として迎えていたのだ。
白い肌と銀髪、青い目をした、イケメンだった。
もちろん母さんも、すげえ美人である。
生まれてすぐは、産屋とかいう建物に、母子で住んでいたのだが、生後半年過ぎると、父さんのいる宮殿に戻ることになった。
といってもそれほど大きなものではないようだが。
長としての忙しい仕事の合間をぬって、父はたびたび、母さんの顔を見に帰ってきた。
「最初の子を失って、二度目に授かった。もう、失わせはしない。ともに、育てていこう」
おもいのほか子煩悩だったことに、おれは驚いた。
最初の子というのは、つまり、この、おれなのだが。
生贄にしたのは、深い事情でもあったのだろうか。
そんなことを考えた。
そうであってほしかった。
どうにも、そうするよりほかにない、やむにやまれぬ事情で、おれを生贄にしたのだと。
干ばつや飢饉だろうか。
天災だろうか。
最初の、おれは。
雨神である《青 竜》様につかえる従者となるようにと、生贄として捧げられたのだから。
その災いから部族を救う。
おれは、そのために再び生まれてきたのだ。
そして、前世で妻だった《沙織》と再会して、結婚して、娘をもうけて。(娘の香織も、きっと転生してきてくれると、おれは根拠もないのに思っていた)
おれは今度こそ、家族みんなで(部族も含めて)幸せになる!
心機一転。
逆境からの起死回生。
前世で21世紀の東京で会社経営をしていたおれの、大好きな言葉だった。
とはいうものの。
異世界転生の影響か、前世の記憶も穴だらけ。今度の人生に至っては、記憶喪失かっていうくらいに、1%ほども覚えていない、残念な、おれは。
並河泰三、享年45歳。
この異世界セレナンでの名前は、ティトゥ。
ティトゥは6歳で生贄として聖なる泉に突き落とされた。
泉の底で出会った《雨神》である《青 竜》様は、おれを保護してくれた。
おれは従者として竜神様にお仕えし、知識を学び、ふたたび現世に戻る。
失われた人生を取り戻すために。
※
こうしておれは、輪廻転生した。
赤ん坊からの再出発だ。
この前の短い人生では、生贄として聖なる泉に突き落とされたショックのためか、記憶喪失になっていたので両親の顔も覚えていない。
むしろ、長年、お仕えしていた《青 竜》様のもとで仲間たちと憶えたことのほうが、鮮明に記憶に残っている。
この知識と経験をもって、自分の部族を救うのだ!
それが《青 竜》様との約束だからな。
※
新生児からやり直すというのは、なかなか、しんどい。
生まれた時点では何も見えていないし、身体も自由に動かないのだ。
意思を伝えたくとも、口を開けば「おぎゃあ」である。
あきらめて、ぼうっとしてしまった。
たぶんそれが正解だったのだろう。
温かいものに包まれる。
良い匂いがした。
ゆさゆさと揺すぶられて、うとめく。
母さん?
子守歌。
おぼえてる、母さんは、声がきれいで、歌がうまかったんだ。
目が開いたときに、最初に見たのは、母さんだった。
「よしよし、よく頑張ったねセーア。まあ~、身体の大きいこと。じょうぶな子になるよ!」
母さんではない、しわがれた声。
あとで、神殿に仕える巫女である母さんの先輩で巫女頭である、ばあちゃんだと知った。
「生まれてきてくれて、ありがとう……もう、わたしには子どもを授かる資格はないと思っていたのに」
涙ぐんでいる、母さん。
きれいだ。
銀髪と、黄色人種の肌色。目の色は黒い。
「よかった。本当に、よかった!」
こう言ったのは、父。
驚いたことに、部族の長である父が、母さんの出産に立ち会っていたのである。それ以降も、たびたび、母さんとおれに会いにきてくれた。
父は、正式に母さんを后として迎えていたのだ。
白い肌と銀髪、青い目をした、イケメンだった。
もちろん母さんも、すげえ美人である。
生まれてすぐは、産屋とかいう建物に、母子で住んでいたのだが、生後半年過ぎると、父さんのいる宮殿に戻ることになった。
といってもそれほど大きなものではないようだが。
長としての忙しい仕事の合間をぬって、父はたびたび、母さんの顔を見に帰ってきた。
「最初の子を失って、二度目に授かった。もう、失わせはしない。ともに、育てていこう」
おもいのほか子煩悩だったことに、おれは驚いた。
最初の子というのは、つまり、この、おれなのだが。
生贄にしたのは、深い事情でもあったのだろうか。
そんなことを考えた。
そうであってほしかった。
どうにも、そうするよりほかにない、やむにやまれぬ事情で、おれを生贄にしたのだと。
干ばつや飢饉だろうか。
天災だろうか。
最初の、おれは。
雨神である《青 竜》様につかえる従者となるようにと、生贄として捧げられたのだから。
その災いから部族を救う。
おれは、そのために再び生まれてきたのだ。
そして、前世で妻だった《沙織》と再会して、結婚して、娘をもうけて。(娘の香織も、きっと転生してきてくれると、おれは根拠もないのに思っていた)
おれは今度こそ、家族みんなで(部族も含めて)幸せになる!
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