312 / 358
第八章 お披露目会の後始末
閑話 黒竜アーくんの優雅なモラトリアム
しおりを挟む
※ この物語をひもといている『あなた』へ。※
黒髪に黒い目の、白い肌の少年が登場する。
年齢は十二、三歳かそこら。
もちろんそれは外見の年齢にすぎない。
その証拠に、『あなた』を見上げる少年の顔は、妙におとなびた表情をしている。
落ち着き払い、王者のような風格を漂わせている。
けれども同時に、人をくったような蠱惑的な笑みさえ浮かべている。
彼にとってこの世のすべては、遊び。本気になっても、つらいだけ。
自分たち『色の名前を持つ竜』だけを取り残して、ヒトなんて存在は、いつかは皆、塵に還ってしまうのだと。
無常感に包まれている少年。
ここは、とある亜空間。
エナンデリア大陸の東を南北に貫く二つの山脈のうち東に位置する『夜の神の座』と呼ばれる黒の山脈ソンブラの、地下深く、または遙か上空に位置する場所だ。
※
やあ、ようこそ。
はるばる、ぼくを訪ねてきてくれたのかい?
さてさて、どこから話そうか、お客人?
ぼくは、黒竜アーテル・ドラコー……ater draco……。
ぼくの活躍、見てくれた?
うん、まだ、ちょっとしか話には登場してないけどね。
竜たちのご多分に漏れず、ぼくも、ものぐさだから。
積極的に『ヒト』の歴史に介入するとか、面倒くさいよ。
そんなのはセラニス・アレム・ダルにでも、まかせとけばいいのさ。
ねえ知ってる?
あいつと、ぼくのプログラムは、元々は同じなんだよ。
だけどあいつは、生まれるときに、ひどい『怨み』を抱えているから。
歪んじゃったわけだ。
ぼくは、そういうの無いから、自由に、引きこもり生活を楽しんでるよ。
他人事みたいだって?
だって他人だもん。
ぼくはセラニス・アレム・ダルじゃない。向こうは、ぼくのこと知らないしね。
……え、ぼくがあいつのスペアだって?
そんな言い方、きらいだな。
いつか、責任ってやつが降りかかってくるかもしれないけど。
まだモラトリアムを享受していたいんだよね。
お昼寝、午後寝、朝寝、朝風呂も大好き。
おいしいものを食べて、面白そうな『漂着物』を集めるのが好きさ。
青竜が住んでる水底の異界には、どこかから面白い道具とか本とか服とか流れ着くんだ。
こんなぼくを、いつか引っ張り出すようなことがあるとしたら。
よっぽどのことだよ。
はあぁ。
この世界(セレナン)を揺るがすような大事件?
やだな。
そんな日は来ないといいな~。
なんちゃって。
ま、いつかは起こるんだろうけど。
そのときは、ぼくも活躍しちゃうから、よろしくね!
自分で言うのもなんだけど、ぼく、けっこう可愛いし、役に立てる、いいヤツだよ!
ふふん。
セラニス・アレム・ダルが、ぼくを、どう思うかは、わからない。
対決してみたいって気持ちも、ちょっとは、あるんだ。
そうそう、さっきまでここで、『あなた』が見ていた物語についても、触れよう。
「そして、みんな、いつまでも幸せに暮らしました」
ざっくりすぎる?
そうだね、この続きは…。
物語の主人公アイリスの物語が、彼女自身の口から語られることになる。
あの子も苦労しているけど、良い子だから。
幸せになってほしいなぁ。
あ、時々っていうか、かなり頻繁にカルナックも絡んでくるんだけど、あいつは自分で勝手に出番を増やしてるんだよね……ボクが主人公の話はないのに。
まったく、「精霊の愛し子」では主役なんだし……自重しろって。
そうそう、
今のサファイアとルビーではない初代のサファイアとルビー、のちに「エメラルド」になる「魔女と呼ばれた少女ルース」と、初代ルーナリシア姫は「リトルホークと黒の魔法使いカルナックの冒険」に出てくるよ。あっちはまだ、その時点までは記されていないけど。
よかったら見てみてね。
これは、ほんの、黒竜の独り言、ってことで。
ばいばい。
いつかまた、急に出てくるから、よろしくね!
黒髪に黒い目の、白い肌の少年が登場する。
年齢は十二、三歳かそこら。
もちろんそれは外見の年齢にすぎない。
その証拠に、『あなた』を見上げる少年の顔は、妙におとなびた表情をしている。
落ち着き払い、王者のような風格を漂わせている。
けれども同時に、人をくったような蠱惑的な笑みさえ浮かべている。
彼にとってこの世のすべては、遊び。本気になっても、つらいだけ。
自分たち『色の名前を持つ竜』だけを取り残して、ヒトなんて存在は、いつかは皆、塵に還ってしまうのだと。
無常感に包まれている少年。
ここは、とある亜空間。
エナンデリア大陸の東を南北に貫く二つの山脈のうち東に位置する『夜の神の座』と呼ばれる黒の山脈ソンブラの、地下深く、または遙か上空に位置する場所だ。
※
やあ、ようこそ。
はるばる、ぼくを訪ねてきてくれたのかい?
さてさて、どこから話そうか、お客人?
ぼくは、黒竜アーテル・ドラコー……ater draco……。
ぼくの活躍、見てくれた?
うん、まだ、ちょっとしか話には登場してないけどね。
竜たちのご多分に漏れず、ぼくも、ものぐさだから。
積極的に『ヒト』の歴史に介入するとか、面倒くさいよ。
そんなのはセラニス・アレム・ダルにでも、まかせとけばいいのさ。
ねえ知ってる?
あいつと、ぼくのプログラムは、元々は同じなんだよ。
だけどあいつは、生まれるときに、ひどい『怨み』を抱えているから。
歪んじゃったわけだ。
ぼくは、そういうの無いから、自由に、引きこもり生活を楽しんでるよ。
他人事みたいだって?
だって他人だもん。
ぼくはセラニス・アレム・ダルじゃない。向こうは、ぼくのこと知らないしね。
……え、ぼくがあいつのスペアだって?
そんな言い方、きらいだな。
いつか、責任ってやつが降りかかってくるかもしれないけど。
まだモラトリアムを享受していたいんだよね。
お昼寝、午後寝、朝寝、朝風呂も大好き。
おいしいものを食べて、面白そうな『漂着物』を集めるのが好きさ。
青竜が住んでる水底の異界には、どこかから面白い道具とか本とか服とか流れ着くんだ。
こんなぼくを、いつか引っ張り出すようなことがあるとしたら。
よっぽどのことだよ。
はあぁ。
この世界(セレナン)を揺るがすような大事件?
やだな。
そんな日は来ないといいな~。
なんちゃって。
ま、いつかは起こるんだろうけど。
そのときは、ぼくも活躍しちゃうから、よろしくね!
自分で言うのもなんだけど、ぼく、けっこう可愛いし、役に立てる、いいヤツだよ!
ふふん。
セラニス・アレム・ダルが、ぼくを、どう思うかは、わからない。
対決してみたいって気持ちも、ちょっとは、あるんだ。
そうそう、さっきまでここで、『あなた』が見ていた物語についても、触れよう。
「そして、みんな、いつまでも幸せに暮らしました」
ざっくりすぎる?
そうだね、この続きは…。
物語の主人公アイリスの物語が、彼女自身の口から語られることになる。
あの子も苦労しているけど、良い子だから。
幸せになってほしいなぁ。
あ、時々っていうか、かなり頻繁にカルナックも絡んでくるんだけど、あいつは自分で勝手に出番を増やしてるんだよね……ボクが主人公の話はないのに。
まったく、「精霊の愛し子」では主役なんだし……自重しろって。
そうそう、
今のサファイアとルビーではない初代のサファイアとルビー、のちに「エメラルド」になる「魔女と呼ばれた少女ルース」と、初代ルーナリシア姫は「リトルホークと黒の魔法使いカルナックの冒険」に出てくるよ。あっちはまだ、その時点までは記されていないけど。
よかったら見てみてね。
これは、ほんの、黒竜の独り言、ってことで。
ばいばい。
いつかまた、急に出てくるから、よろしくね!
10
お気に入りに追加
277
あなたにおすすめの小説
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる