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第八章 お披露目会の後始末
その20 スパルタな王さまは笑う
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20
華やかな打ち上げ花火の饗宴に、大盛り上がりの青竜の弟子たちをよそに、固唾をのんで見守っていたサファイアは、天を仰いだ。
「アイリスお嬢様、いくらなんでも、ほどってもんがありますよ……やりすぎですぅ!」
意識を失ったアイリスは、幸い、アルナシルが受け止めてくれたので大事はなかったのだが、相変わらずの規格外魔力だだもれ。
今、この場にカルナックお師匠様がいたら、どういう反応をしただろうか。
瞬時にサファイアの妄想が爆発する。
(きっとすごく怒られるわ! でもお師匠様は、声を荒げるなんてことは絶対しないの。精霊様のように美しい顔で、冷ややかに言うのよ。『これは何かな。君を護衛につけたというのに、失望したよサファイア』
ああっっつ、これはダメわたしのダメージ大きすぎるぅ。
でも怒られてみたい……冷たい目で見下してくださいお師匠さまあぁ!)
先行きが思いやられるサファイアだった。
※
あっさり意識を手放した、あたし、アイリス。
目の前が暗くなって……。
ピコーン!
突然、頭の中に「聞こえてきた」のは……。
何か聞き覚えのある効果音っていうか。
《レベルが上がりました》《レベルが上がりました》《レベルが上がりました》《レベルが上がりました》《レベルが上がりまし……》
えっ!?
さっきの花火でレベル上がったの?
『おめでとう、アイリス。レベル5になりましたよ。ところで、先ほどのあなたは「たまや」という名称を気にしていましたね』
理想の女性の声を体現したかのように美しい、けれど無機質な声が『胸に』届いた。
『さっきアイリスが口にした言葉は『 』の『 』時代の花火師の『屋号』です。大昔には『すみだがわ』や、そのほかの土地で花火大会というものが盛んに行われていたのですよ』
ところどころ音声データが飛んでる。
ものすごい古代書から引っ張り出してきたのかしら。
あたしは目を開いた。
暗闇の中に、金髪の成人女性の姿があった。
腰まである長い金髪は、重力など素知らぬように浮かび、そのさまはまるで羽衣をまとわせた天女のよう。
あたしも彼女も、浮かんでいるのか登っているのか漂っているだけなのか、さっぱりわからないまま。
ふたりの他には、何も見えない。知覚できない。
とりあえず、挨拶をする。
「おひさしぶりです、システム・イリスさん」
『わたしたちが話すのはひさしぶりかもしれませんね。わたしは現在のところ、意識の表層には出ませんから』
彼女、システム・イリスは、あたしの前世のひとつ。
ほかにも前世の記憶があって、こちらはイリス・マクギリスという21世紀のニューヨーカー。(詳しくは後で)だけど、彼女たちと、あたしは同じ魂のはずなのに意識が別になっちゃってるんだよね。多重人格みたいな?
『ところで忠告です。魔力を使い果たすのは、よくありません。あなたが生命の危機に陥ったら、助けるようにと、わたしはカルナック師から言われています』
「え、魔力を使い果たすとダメなの?」
『あなたは魔力が豊富ですが使い切ってしまえば、その後は体力と生命力を使うことになりますから。せめて身体的にも成長して生命力が多くならないと、危険です』
「そうだったんだ」
『カルナック師も教えたはずですよ。今後は気を付けてください』
「わかったわ」
『この状態は長く保てません。わたしの意識は、もっと深部にありますし、あなたの危機でもなければ、当分は通じ合えませんから。では、そろそろお別れです』
「待って! システム・イリス……!」
※
「おや、お目覚めかな」
至近距離に美形な青年王がいた。
「うえぇぇ!」
心臓に悪いわ!
カルナックお師匠さまといい、自覚がないのは問題じゃないかしら!
「心配したわアイリスちゃん! 魔力枯渇するかと……気が気じゃなくってぇ!」
あたしを抱き上げてたアルナシル王から奪い取ったサファイアさんが、涙声にな っていた。
「アイリスちゃんにもしものことがあったら、わたし一万回くらい殺されるぅ!」
誰に?
って、怖くて聞けない。
「危なかったのう、今後は、おれが目を光らせておこう。問題ない」
いつの間にか口調がずいぶん砕けてる王さまですね。
ところでアルナシル王は、カルナックお師匠さまとは違う意味でスパルタだった。
華やかな打ち上げ花火の饗宴に、大盛り上がりの青竜の弟子たちをよそに、固唾をのんで見守っていたサファイアは、天を仰いだ。
「アイリスお嬢様、いくらなんでも、ほどってもんがありますよ……やりすぎですぅ!」
意識を失ったアイリスは、幸い、アルナシルが受け止めてくれたので大事はなかったのだが、相変わらずの規格外魔力だだもれ。
今、この場にカルナックお師匠様がいたら、どういう反応をしただろうか。
瞬時にサファイアの妄想が爆発する。
(きっとすごく怒られるわ! でもお師匠様は、声を荒げるなんてことは絶対しないの。精霊様のように美しい顔で、冷ややかに言うのよ。『これは何かな。君を護衛につけたというのに、失望したよサファイア』
ああっっつ、これはダメわたしのダメージ大きすぎるぅ。
でも怒られてみたい……冷たい目で見下してくださいお師匠さまあぁ!)
先行きが思いやられるサファイアだった。
※
あっさり意識を手放した、あたし、アイリス。
目の前が暗くなって……。
ピコーン!
突然、頭の中に「聞こえてきた」のは……。
何か聞き覚えのある効果音っていうか。
《レベルが上がりました》《レベルが上がりました》《レベルが上がりました》《レベルが上がりました》《レベルが上がりまし……》
えっ!?
さっきの花火でレベル上がったの?
『おめでとう、アイリス。レベル5になりましたよ。ところで、先ほどのあなたは「たまや」という名称を気にしていましたね』
理想の女性の声を体現したかのように美しい、けれど無機質な声が『胸に』届いた。
『さっきアイリスが口にした言葉は『 』の『 』時代の花火師の『屋号』です。大昔には『すみだがわ』や、そのほかの土地で花火大会というものが盛んに行われていたのですよ』
ところどころ音声データが飛んでる。
ものすごい古代書から引っ張り出してきたのかしら。
あたしは目を開いた。
暗闇の中に、金髪の成人女性の姿があった。
腰まである長い金髪は、重力など素知らぬように浮かび、そのさまはまるで羽衣をまとわせた天女のよう。
あたしも彼女も、浮かんでいるのか登っているのか漂っているだけなのか、さっぱりわからないまま。
ふたりの他には、何も見えない。知覚できない。
とりあえず、挨拶をする。
「おひさしぶりです、システム・イリスさん」
『わたしたちが話すのはひさしぶりかもしれませんね。わたしは現在のところ、意識の表層には出ませんから』
彼女、システム・イリスは、あたしの前世のひとつ。
ほかにも前世の記憶があって、こちらはイリス・マクギリスという21世紀のニューヨーカー。(詳しくは後で)だけど、彼女たちと、あたしは同じ魂のはずなのに意識が別になっちゃってるんだよね。多重人格みたいな?
『ところで忠告です。魔力を使い果たすのは、よくありません。あなたが生命の危機に陥ったら、助けるようにと、わたしはカルナック師から言われています』
「え、魔力を使い果たすとダメなの?」
『あなたは魔力が豊富ですが使い切ってしまえば、その後は体力と生命力を使うことになりますから。せめて身体的にも成長して生命力が多くならないと、危険です』
「そうだったんだ」
『カルナック師も教えたはずですよ。今後は気を付けてください』
「わかったわ」
『この状態は長く保てません。わたしの意識は、もっと深部にありますし、あなたの危機でもなければ、当分は通じ合えませんから。では、そろそろお別れです』
「待って! システム・イリス……!」
※
「おや、お目覚めかな」
至近距離に美形な青年王がいた。
「うえぇぇ!」
心臓に悪いわ!
カルナックお師匠さまといい、自覚がないのは問題じゃないかしら!
「心配したわアイリスちゃん! 魔力枯渇するかと……気が気じゃなくってぇ!」
あたしを抱き上げてたアルナシル王から奪い取ったサファイアさんが、涙声にな っていた。
「アイリスちゃんにもしものことがあったら、わたし一万回くらい殺されるぅ!」
誰に?
って、怖くて聞けない。
「危なかったのう、今後は、おれが目を光らせておこう。問題ない」
いつの間にか口調がずいぶん砕けてる王さまですね。
ところでアルナシル王は、カルナックお師匠さまとは違う意味でスパルタだった。
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