286 / 360
第八章 お披露目会の後始末
その7 レベル1から始める全力魔法
しおりを挟む
7
『ここでは魔法を使っても、外に影響が出ないようにシールドしてあるの。さあ、全属性のアイリスちゃん。こころおきなく、ぶっ放して!』
ものすごくサファイアさんらしい暴言です。
あたし、アイリス・リデル・ティス・ラゼルは、魔法の使い方がよくわかっていないってことを、サファイアさんに説明したの。
「レベルがまだ『1』なんです!」
「ああ、それねー」
サファイアさんはなぜか視線を泳がせた。
あれ? レベルがあがらなかったのは、なにか事情があるの?
「ごめんね、説明遅れちゃって。これまではチュートリアルだったの。アイリスちゃんの『お披露目』も済んだことだし、シロとクロも帰ってきたし。そろそろ本格的にやりましょうね」
「チュートリアル!? そんなあ。エステリオ叔父さまから教わった魔法の理論、ティーレさん伝授の肉体強化っていうか普通に体力づくりと、サファイアさん直伝の『魔力を纏わせたこぶしで殴る』って、けっこうハードな授業だったんですけど!」
幼女にはついてけない。
それでもレベルは1のまま……。
「今までは守護精霊がいたからなのよ」
「え?」
「ふつうはねー、守護精霊がついてたらラッキーなんだけど。アイリスちゃんは……規格外だからねー」
「そこで納得しないでください~! 説明求めます!」
「アイリスちゃんは全属性あるから。守護精霊は、光、風、水、土でしょ。これもまぁ、十分すぎるくらい、すごいけどね。守護精霊に助けられてるからレベルが上がらなかったとも言えるわけなの」
「助けられているから?」
「そうそう。困ったことに、過保護なのよー彼ら。ヒトは自力で苦労しないとレベル上げできないのにねー」
「……あー、納得しました……」
「だから、守護精霊たちが卵に戻って離れている今が、一から鍛えなおす、いい機会なの!」
「あたし……甘えてたんですね……」
守護精霊たちに助けられて、家族に守られて、カルナックさまからもシロとクロを貸していただいて、ぬくぬくとしていた。その間、経験を積めなくてレベルが上がらなかった。
よーく考えて、思い返してみた。
「思い返してみました。サファイアさん。あたし、守護精霊さんたちには、感謝しかありません。みんなに守られていなかったら、きっと、今頃は生きてなかったですもの」
だから。
ありがとう、シルル、イルミナ、ディーネ、ジオ。
あたしを守って、そのあげくに、消えてしまうかもしれないってわかってて、世界の一番深いところまで、助けをもとめに行ってくれた。力を使い果たして、卵に戻ってしまって。
「うんうん、やっぱりアイリスちゃんはステキね!」
サファイアさんは、にんまり笑った。
「じゃあ始めましょうか! 守護精霊たちが孵化して、再会できたときに、前より強くなったところを見てもらいたいでしょ?」
「はいっ!」
特訓開始です!
※
「この世界(セレナン)では、世界の構成要素は、火・水・風・土・光・闇・木。アイリスちゃんは前世の記憶持ちの『先祖還り』だからわかるんじゃない? 端的に言うと四大元素に五行思想が加わって、ファンタジーのお約束の光と闇を足したようなもの。ここまではエステリオ・アウルに教わってるかしら?」
「教わりましたけど……あ、あまり、よくは……むずかしくて」
「ああ、そっか。アイリスちゃんは、まだ六歳の幼女だったわね」
ごめんなさい、とサファイアさんは笑った。
「ときどき忘れちゃうのよねー幼児だってこと」
「忘れないで、ください……」
「じゃ、理論は後回しで、実践しましょ!」
サファイアさんが言うと『実践』が『実戦』に聞こえるのは、あたしの気のせいかしら……。
「まずは攻撃魔法の、でっかいのからね! ばばーんと大盤振る舞いで!」
……気のせいじゃ、なかった。
『ここでは魔法を使っても、外に影響が出ないようにシールドしてあるの。さあ、全属性のアイリスちゃん。こころおきなく、ぶっ放して!』
ものすごくサファイアさんらしい暴言です。
あたし、アイリス・リデル・ティス・ラゼルは、魔法の使い方がよくわかっていないってことを、サファイアさんに説明したの。
「レベルがまだ『1』なんです!」
「ああ、それねー」
サファイアさんはなぜか視線を泳がせた。
あれ? レベルがあがらなかったのは、なにか事情があるの?
「ごめんね、説明遅れちゃって。これまではチュートリアルだったの。アイリスちゃんの『お披露目』も済んだことだし、シロとクロも帰ってきたし。そろそろ本格的にやりましょうね」
「チュートリアル!? そんなあ。エステリオ叔父さまから教わった魔法の理論、ティーレさん伝授の肉体強化っていうか普通に体力づくりと、サファイアさん直伝の『魔力を纏わせたこぶしで殴る』って、けっこうハードな授業だったんですけど!」
幼女にはついてけない。
それでもレベルは1のまま……。
「今までは守護精霊がいたからなのよ」
「え?」
「ふつうはねー、守護精霊がついてたらラッキーなんだけど。アイリスちゃんは……規格外だからねー」
「そこで納得しないでください~! 説明求めます!」
「アイリスちゃんは全属性あるから。守護精霊は、光、風、水、土でしょ。これもまぁ、十分すぎるくらい、すごいけどね。守護精霊に助けられてるからレベルが上がらなかったとも言えるわけなの」
「助けられているから?」
「そうそう。困ったことに、過保護なのよー彼ら。ヒトは自力で苦労しないとレベル上げできないのにねー」
「……あー、納得しました……」
「だから、守護精霊たちが卵に戻って離れている今が、一から鍛えなおす、いい機会なの!」
「あたし……甘えてたんですね……」
守護精霊たちに助けられて、家族に守られて、カルナックさまからもシロとクロを貸していただいて、ぬくぬくとしていた。その間、経験を積めなくてレベルが上がらなかった。
よーく考えて、思い返してみた。
「思い返してみました。サファイアさん。あたし、守護精霊さんたちには、感謝しかありません。みんなに守られていなかったら、きっと、今頃は生きてなかったですもの」
だから。
ありがとう、シルル、イルミナ、ディーネ、ジオ。
あたしを守って、そのあげくに、消えてしまうかもしれないってわかってて、世界の一番深いところまで、助けをもとめに行ってくれた。力を使い果たして、卵に戻ってしまって。
「うんうん、やっぱりアイリスちゃんはステキね!」
サファイアさんは、にんまり笑った。
「じゃあ始めましょうか! 守護精霊たちが孵化して、再会できたときに、前より強くなったところを見てもらいたいでしょ?」
「はいっ!」
特訓開始です!
※
「この世界(セレナン)では、世界の構成要素は、火・水・風・土・光・闇・木。アイリスちゃんは前世の記憶持ちの『先祖還り』だからわかるんじゃない? 端的に言うと四大元素に五行思想が加わって、ファンタジーのお約束の光と闇を足したようなもの。ここまではエステリオ・アウルに教わってるかしら?」
「教わりましたけど……あ、あまり、よくは……むずかしくて」
「ああ、そっか。アイリスちゃんは、まだ六歳の幼女だったわね」
ごめんなさい、とサファイアさんは笑った。
「ときどき忘れちゃうのよねー幼児だってこと」
「忘れないで、ください……」
「じゃ、理論は後回しで、実践しましょ!」
サファイアさんが言うと『実践』が『実戦』に聞こえるのは、あたしの気のせいかしら……。
「まずは攻撃魔法の、でっかいのからね! ばばーんと大盤振る舞いで!」
……気のせいじゃ、なかった。
10
お気に入りに追加
277
あなたにおすすめの小説

生贄から始まるアラフォー男の異世界転生。
紺野たくみ
ファンタジー
事故死して異世界転生したアラフォー男。転生した直後、生贄の聖なる泉「セノーテ」に突き落とされたところから始まる冒険譚。雨の神様である青竜に弟子入り。加護を得て故郷に戻る。やがて『大森林の賢者』と呼ばれるように。一目惚れした相手は、前世の妻?
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる