252 / 360
第七章 アイリス六歳
その30 アフタヌーンティー(6)デビュー
しおりを挟む
30
「アイリス、安心しなさい。魔導士協会が君の後ろ盾についたことを、今夜の招待客は知ることになる。誰にも、手は出させないよ」
カルナックお師匠さまが、頼もしい笑みを浮かべて、おっしゃった。
『『『『アイリス、あたしたちもついてるわ。だいじょうぶ、守護精霊の姿は一般人には見えなくても、加護は、絶対にあなたを守るの』』』』
守護精霊のシルル、イルミナ、ディーネ、ジオが、あたしの頭上を飛んで、光の粉をまき散らす。
すると、お父さまとお母さまの表情も、安心したように、やわらいだ。ふたりは精霊を見ることはできない。守護精霊たちが言ったように。
「お父さま、お母さま。守護精霊たちが、加護の力を、降り注いでくれているのよ」
「見えないけれど、確かに感じたよ」
「素晴らしいことね。安心したわ」
あたしは二人と、両側から手をつないでもらった。
護衛メイドさんたち、サファイアさんとルビーさんもいる。
きっと、だいじょうぶ。
「では、会場へ」
重い樫の無垢材でできた扉を、カルナックさまが押し開ける。
外の空気と、音が。
どよめきが、一気に、流れ込んできた。
すぐ目の前に、一段高くなったところに席が設けてあった。お客さま方から見れば、一番奥になるところだ。
お父さまとお母さまに挟まれて、椅子に腰掛ける。
ぎっしりのお客さま。
テーブル席について、あるいは立って、立食形式みたい。
(なあんだ、たいしたことないじゃない)
呟いたのは、あたしの中のイリス・マクギリス。
(ニューヨーカーでキャリアウーマンのイリスさんにはそうでしょうけど)
(あら、月宮アリスちゃんだって、前世はアイドルでコンサートもしてたんでしょ。だったら、このくらいは屁でもないんじゃ)
(イリス・マクギリスさん屁はないです! せめてオナラです!)
あたしとイリス・マクギリスさんは、思わず、しょうもない突っ込みをしてしまったのは、内心の緊張をおさえるためだった。
怖くないわけない。人数の問題じゃない。
この世界に生まれて、初めて会う、善意の人かそうでないかも知らない人たちだもの。
怖いけど、両脇にはお父さまとお母さまがいて、サファイア=リドラさんとルビー=ティーレさんも守ってくれてる。他にも魔法使い達が集まってきていて、エルナトさんと妹のヴィーア・マルファさんも、それに、エステリオ・アウルがいた。やっと彼の姿を見て、あたしは、ほっとした。
「皆様、今日の良き日に、お集まり頂きましてありがとうございます。我が家の一人娘、アイリスは、無事に六歳の誕生日を迎えることができました。本日のお披露目に、ささやかな祝宴をご用意致します。まずは午後の茶会から、休憩を挟みまして夕刻より晩餐会をもうけます。どうぞごゆるりとお楽しみください。ラゼル家一同、心よりおもてなしさせて頂きます。また、この席上にて、かねてよりお伝えしておりましたアイリスの許婚も披露したしますので、どうぞ、よしなにお願い申し上げます」
お父さまが壇上からご挨拶すると、観客から盛大な拍手が巻き起こる。
集まった招待客たちは、ラゼル商会の顧客や取引先、銀行の方たち。
皆、どちらかと言えばアイリス本人より当主であるお父さまとよしみを結びたくていらしているのだ。
そう思うと少し気が楽。
次々と、一人ずつやってきて、会釈してお父さまと手を握って、祝いの言葉をのべて人垣の間に戻っていく。
中にはこんな人も居た。
「ヴェールでご尊顔を見ることがかなわず残念でございます。お母上そっくりの、実にお美しいお嬢さまに違いないことでしょうに。もう許婚がいらっしゃるそうで。めでたいことです。我が家の愚息など、紹介するもおこがましいですわい」
息子さんを連れてきていたのかな。
「これからもよろしくお引き立てのほど、お願い致します」
お父さまはさらりと受け流す。
あらかじめ、アイリスには既に許婚がいると、招待客たちに情報を流しておいたので、スムーズ。その方が、面倒が起こらなそう。さすがお父さま。
「許婚はどのような方でいらっしゃるので? どの家の、お幾つぐらいの方ですかな」
食い下がって情報を引き出そうとする人もいる。目がぎらぎらしてて、ちょっとイヤ。ヒューゴーお爺さまと同類な感じ。
「さきほどお知らせしましたように、のちほど紹介いたしますので、お席につかれてお待ちください」
許婚に対して微妙に敬語を控えめにするあたりで、身内だと、わかる人にはわかるかな。
果てしがないように思えた、顔見せの人たちが、ようやく終わった。
お爺さまは来なかった。
プライドが高そうだったし、今さら招待客と同列に挨拶に来るわけもないかも。
ここでシャンパンみたいに発泡している飲み物のグラスが配られ乾杯。お酒は出さないってルビー=ティーレさんが言ってたから、ペリエみたいなものかな。
乾杯が終わると拍手。
そして、再びお父さまは壇上から、「アイリスの許婚を紹介させて頂きます」と言う。
お客さま達の視線が集まる。
進み出た人物が、一人前の魔法使い『覚者(かくしゃ)』の白いローブを纏った魔法使いだったことに、驚きと、納得したような声とが混じる。
「許婚は成人の魔法使いか。残念だ。相手が同年代の子どもなら、我が家のつけいる隙もあったのに」
誰かの独り言を、風の精霊シルルが拾って、あたしの耳に届けてくれた。
こう考える人が多いだろうとカルナック師が提案し、彼らへの牽制として、この婚約を計らってくれていたのだ。生まれた時点でとは知らなかったけれど。
あたしにとっては、むしろ喜ばしいことだった。
おかげで、ずっと大好きだったエステリオ・アウル叔父さまと許婚になれたのだもの。
「アイリスが生まれた時からの許婚、エステリオ・アウル」
お父さまが言う。
声を張り上げる必要はなかった。この時には客達はしんと静まりかえっていたのだ。
進み出たエステリオ・アウルは、一同に頭を垂れる。言葉は述べない。
魔法使いは寡黙なもの。それは誰でも心得ている共通認識らしい。
「ふん、茶番だわい!」
ふいに声があがって、一同はそちらを向く。
ああ、お爺さまだ。やっぱりね。
お爺さまが何も仕掛けてこないわけがなかった。
それにしても捕まっているはずなのに。カルナックさまがおっしゃていたように、影武者とかいたのかしら。
「生まれた時からの許婚? どうせ魔法使いどもの入れ知恵だろうが」
お爺さま、それ当たってます。魔法使いの長カルナック様の取り計らいです。
「当人達の意思はどうなのだ」
お爺さまがこれを言い出すのはちょっと不思議。貴族や、大きな家では、本人の意思と関係なく婚約が結ばれたりするものではなかったかしら。
ところがそれに対して「そうだ本人の意思は」「まだ六歳なのだから」と、尻馬に乗るような発言が続いた。ひそひそと、表だって声を上げはしないが。
雰囲気が悪い。こんなのイヤだ。
せっかくエステリオ・アウルとあたしは許婚になれたのに。
あたしはうつむいてしまう。
「アイリス。お顔を上げて」
お母さまの声に、あたしは上を向く。
すぐそばに、エステリオ・アウルの顔があって、驚いた。
「わたしはアイリスの許婚だ。きみを護ることを誓う」
え?
これは後で、晩餐会のときにカルナック師とコマラパ老師の前で誓うはずだった言葉では?
驚くあたしに、エステリオ・アウルは、顔を寄せて。
彼は微笑んで、あたしの頬にキスをした。
そのときあたしは悟った。
あたし、月宮アリスは。
エステリオ・アウルに捕らわれた。
もうずっと、これから、死ぬまで。
「アイリス、安心しなさい。魔導士協会が君の後ろ盾についたことを、今夜の招待客は知ることになる。誰にも、手は出させないよ」
カルナックお師匠さまが、頼もしい笑みを浮かべて、おっしゃった。
『『『『アイリス、あたしたちもついてるわ。だいじょうぶ、守護精霊の姿は一般人には見えなくても、加護は、絶対にあなたを守るの』』』』
守護精霊のシルル、イルミナ、ディーネ、ジオが、あたしの頭上を飛んで、光の粉をまき散らす。
すると、お父さまとお母さまの表情も、安心したように、やわらいだ。ふたりは精霊を見ることはできない。守護精霊たちが言ったように。
「お父さま、お母さま。守護精霊たちが、加護の力を、降り注いでくれているのよ」
「見えないけれど、確かに感じたよ」
「素晴らしいことね。安心したわ」
あたしは二人と、両側から手をつないでもらった。
護衛メイドさんたち、サファイアさんとルビーさんもいる。
きっと、だいじょうぶ。
「では、会場へ」
重い樫の無垢材でできた扉を、カルナックさまが押し開ける。
外の空気と、音が。
どよめきが、一気に、流れ込んできた。
すぐ目の前に、一段高くなったところに席が設けてあった。お客さま方から見れば、一番奥になるところだ。
お父さまとお母さまに挟まれて、椅子に腰掛ける。
ぎっしりのお客さま。
テーブル席について、あるいは立って、立食形式みたい。
(なあんだ、たいしたことないじゃない)
呟いたのは、あたしの中のイリス・マクギリス。
(ニューヨーカーでキャリアウーマンのイリスさんにはそうでしょうけど)
(あら、月宮アリスちゃんだって、前世はアイドルでコンサートもしてたんでしょ。だったら、このくらいは屁でもないんじゃ)
(イリス・マクギリスさん屁はないです! せめてオナラです!)
あたしとイリス・マクギリスさんは、思わず、しょうもない突っ込みをしてしまったのは、内心の緊張をおさえるためだった。
怖くないわけない。人数の問題じゃない。
この世界に生まれて、初めて会う、善意の人かそうでないかも知らない人たちだもの。
怖いけど、両脇にはお父さまとお母さまがいて、サファイア=リドラさんとルビー=ティーレさんも守ってくれてる。他にも魔法使い達が集まってきていて、エルナトさんと妹のヴィーア・マルファさんも、それに、エステリオ・アウルがいた。やっと彼の姿を見て、あたしは、ほっとした。
「皆様、今日の良き日に、お集まり頂きましてありがとうございます。我が家の一人娘、アイリスは、無事に六歳の誕生日を迎えることができました。本日のお披露目に、ささやかな祝宴をご用意致します。まずは午後の茶会から、休憩を挟みまして夕刻より晩餐会をもうけます。どうぞごゆるりとお楽しみください。ラゼル家一同、心よりおもてなしさせて頂きます。また、この席上にて、かねてよりお伝えしておりましたアイリスの許婚も披露したしますので、どうぞ、よしなにお願い申し上げます」
お父さまが壇上からご挨拶すると、観客から盛大な拍手が巻き起こる。
集まった招待客たちは、ラゼル商会の顧客や取引先、銀行の方たち。
皆、どちらかと言えばアイリス本人より当主であるお父さまとよしみを結びたくていらしているのだ。
そう思うと少し気が楽。
次々と、一人ずつやってきて、会釈してお父さまと手を握って、祝いの言葉をのべて人垣の間に戻っていく。
中にはこんな人も居た。
「ヴェールでご尊顔を見ることがかなわず残念でございます。お母上そっくりの、実にお美しいお嬢さまに違いないことでしょうに。もう許婚がいらっしゃるそうで。めでたいことです。我が家の愚息など、紹介するもおこがましいですわい」
息子さんを連れてきていたのかな。
「これからもよろしくお引き立てのほど、お願い致します」
お父さまはさらりと受け流す。
あらかじめ、アイリスには既に許婚がいると、招待客たちに情報を流しておいたので、スムーズ。その方が、面倒が起こらなそう。さすがお父さま。
「許婚はどのような方でいらっしゃるので? どの家の、お幾つぐらいの方ですかな」
食い下がって情報を引き出そうとする人もいる。目がぎらぎらしてて、ちょっとイヤ。ヒューゴーお爺さまと同類な感じ。
「さきほどお知らせしましたように、のちほど紹介いたしますので、お席につかれてお待ちください」
許婚に対して微妙に敬語を控えめにするあたりで、身内だと、わかる人にはわかるかな。
果てしがないように思えた、顔見せの人たちが、ようやく終わった。
お爺さまは来なかった。
プライドが高そうだったし、今さら招待客と同列に挨拶に来るわけもないかも。
ここでシャンパンみたいに発泡している飲み物のグラスが配られ乾杯。お酒は出さないってルビー=ティーレさんが言ってたから、ペリエみたいなものかな。
乾杯が終わると拍手。
そして、再びお父さまは壇上から、「アイリスの許婚を紹介させて頂きます」と言う。
お客さま達の視線が集まる。
進み出た人物が、一人前の魔法使い『覚者(かくしゃ)』の白いローブを纏った魔法使いだったことに、驚きと、納得したような声とが混じる。
「許婚は成人の魔法使いか。残念だ。相手が同年代の子どもなら、我が家のつけいる隙もあったのに」
誰かの独り言を、風の精霊シルルが拾って、あたしの耳に届けてくれた。
こう考える人が多いだろうとカルナック師が提案し、彼らへの牽制として、この婚約を計らってくれていたのだ。生まれた時点でとは知らなかったけれど。
あたしにとっては、むしろ喜ばしいことだった。
おかげで、ずっと大好きだったエステリオ・アウル叔父さまと許婚になれたのだもの。
「アイリスが生まれた時からの許婚、エステリオ・アウル」
お父さまが言う。
声を張り上げる必要はなかった。この時には客達はしんと静まりかえっていたのだ。
進み出たエステリオ・アウルは、一同に頭を垂れる。言葉は述べない。
魔法使いは寡黙なもの。それは誰でも心得ている共通認識らしい。
「ふん、茶番だわい!」
ふいに声があがって、一同はそちらを向く。
ああ、お爺さまだ。やっぱりね。
お爺さまが何も仕掛けてこないわけがなかった。
それにしても捕まっているはずなのに。カルナックさまがおっしゃていたように、影武者とかいたのかしら。
「生まれた時からの許婚? どうせ魔法使いどもの入れ知恵だろうが」
お爺さま、それ当たってます。魔法使いの長カルナック様の取り計らいです。
「当人達の意思はどうなのだ」
お爺さまがこれを言い出すのはちょっと不思議。貴族や、大きな家では、本人の意思と関係なく婚約が結ばれたりするものではなかったかしら。
ところがそれに対して「そうだ本人の意思は」「まだ六歳なのだから」と、尻馬に乗るような発言が続いた。ひそひそと、表だって声を上げはしないが。
雰囲気が悪い。こんなのイヤだ。
せっかくエステリオ・アウルとあたしは許婚になれたのに。
あたしはうつむいてしまう。
「アイリス。お顔を上げて」
お母さまの声に、あたしは上を向く。
すぐそばに、エステリオ・アウルの顔があって、驚いた。
「わたしはアイリスの許婚だ。きみを護ることを誓う」
え?
これは後で、晩餐会のときにカルナック師とコマラパ老師の前で誓うはずだった言葉では?
驚くあたしに、エステリオ・アウルは、顔を寄せて。
彼は微笑んで、あたしの頬にキスをした。
そのときあたしは悟った。
あたし、月宮アリスは。
エステリオ・アウルに捕らわれた。
もうずっと、これから、死ぬまで。
10
お気に入りに追加
277
あなたにおすすめの小説

もう、今更です
ねむたん
恋愛
伯爵令嬢セリーヌ・ド・リヴィエールは、公爵家長男アラン・ド・モントレイユと婚約していたが、成長するにつれて彼の態度は冷たくなり、次第に孤独を感じるようになる。学園生活ではアランが王子フェリクスに付き従い、王子の「真実の愛」とされるリリア・エヴァレットを囲む騒動が広がり、セリーヌはさらに心を痛める。
やがて、リヴィエール伯爵家はアランの態度に業を煮やし、婚約解消を申し出る。

侯爵夫人の手紙
桃井すもも
恋愛
侯爵夫人ルイーザは、王都の邸を離れて湖畔の別荘にいた。
別荘は夫の祖父が終の棲家にしていた邸宅で、森と湖畔があるだけの静かな場所だった。
ルイーザは庭のブランコを揺らしながら、これといって考えることが何もないことに気が付いた。
今まで只管忙しなく暮らしてきた。家の為に領地の為に、夫の為に。
ついつい自分の事は後回しになって、鏡を見る暇も無かった。
それが今は森と湖畔以外は何もないこの場所で、なんにもしない暮らしをしている。
何故ならルイーザは、家政も執務も社交も投げ出して、王都の暮らしから飛び出して来た。
そうして夫からも、逃げ出して来たのであった。
❇後半部分に出産に関わるセンシティブな内容がございます。関連話冒頭に注意書きにて表記をさせて頂きます。苦手な方は読み飛ばして下さいませ。
❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく公開後に激しい修正が入ります。
「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。
❇登場人物のお名前が他作品とダダ被りしておりますが、皆様別人でございます。
❇相変わらずの100%妄想の産物です。妄想なので史実とは異なっております。
❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた妄想スイマーによる寝物語です。
疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。
❇座右の銘は「知らないことは書けない」「嘘をつくなら最後まで」

人形となった王妃に、王の後悔と懺悔は届かない
望月 或
恋愛
「どちらかが“過ち”を犯した場合、相手の伴侶に“人”を損なう程の神の『呪い』が下されよう――」
ファローダ王国の国王と王妃が事故で急逝し、急遽王太子であるリオーシュが王に即位する事となった。
まだ齢二十三の王を支える存在として早急に王妃を決める事となり、リオーシュは同い年のシルヴィス侯爵家の長女、エウロペアを指名する。
彼女はそれを承諾し、二人は若き王と王妃として助け合って支え合い、少しずつ絆を育んでいった。
そんなある日、エウロペアの妹のカトレーダが頻繁にリオーシュに会いに来るようになった。
仲睦まじい二人を遠目に眺め、心を痛めるエウロペア。
そして彼女は、リオーシュがカトレーダの肩を抱いて自分の部屋に入る姿を目撃してしまう。
神の『呪い』が発動し、エウロペアの中から、五感が、感情が、思考が次々と失われていく。
そして彼女は、動かぬ、物言わぬ“人形”となった――
※視点の切り替わりがあります。タイトルの後ろに◇は、??視点です。
※Rシーンがあるお話はタイトルの後ろに*を付けています。

最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

都合のいい女は卒業です。
火野村志紀
恋愛
伯爵令嬢サラサは、王太子ライオットと婚約していた。
しかしライオットが神官の娘であるオフィーリアと恋に落ちたことで、事態は急転する。
治癒魔法の使い手で聖女と呼ばれるオフィーリアと、魔力を一切持たない『非保持者』のサラサ。
どちらが王家に必要とされているかは明白だった。
「すまない。オフィーリアに正妃の座を譲ってくれないだろうか」
だから、そう言われてもサラサは大人しく引き下がることにした。
しかし「君は側妃にでもなればいい」と言われた瞬間、何かがプツンと切れる音がした。
この男には今まで散々苦労をかけられてきたし、屈辱も味わってきた。
それでも必死に尽くしてきたのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか。
だからサラサは満面の笑みを浮かべながら、はっきりと告げた。
「ご遠慮しますわ、ライオット殿下」

離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
【R18/完結】強面騎士団長の慰め係〜こんなに絶倫なんて聞いてません!!〜
河津ミネ
恋愛
第三騎士団のリスはクマより強い――最近王城ではそんな笑い話がよく聞かれる。
子リスこと事務官のクラリスが、強面クマ男のジークベルトと毎日のように言い合いをしているからだ。
「うるせえぞ、チビ!」
「私が小さいんじゃなくて団長がデカいんですよ! もう、このデカブツ!!」
そんな子どもじみた言い合いをしていたある日、クラリスが罠にはまったところをジークベルトに助けられる。一見怪我はないように見えたが、その夜からジークベルトの身体に異変が起こり――!?
★R18なシーンには※を付けます。

木曜日生まれの子供達
十河
BL
毒を喰らわば皿まで。番外編第四弾。
五十四歳の誕生日を迎えたアンドリムは、ヨルガと共に残された日々を穏やかに過ごしていた。
年齢を重ねたヨルガの緩やかな老いも愛おしく、アンドリムはこの世界に自らが招かれた真の理由を、朧げながらも理解しつつある。
しかし運命の歯車は【主人公】である彼の晩年であっても、休むことなく廻り続けていた。
或る日。
宰相モリノから王城に招かれたアンドリムとヨルガは、驚きの報告を受けることになる。
「キコエドの高等学院に、アンドリム様の庶子が在籍しているとの噂が広まっています」
「なんと。俺にはもう一人、子供がいたのか」
「……面白がっている場合か?」
状況を楽しんでいるアンドリムと彼の番であるヨルガは、最後の旅に出ることになった。
賢妃ベネロペの故郷でもある連合国家キコエドで、二人を待つ新たな運命とはーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる