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第七章 アイリス六歳

その4 ルイーゼロッテ

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「お初にお目に掛かります。ただいまご紹介にあずかりました、ルイーゼロッテです」

 完璧なカーテシーを披露したのは、二十歳過ぎくらいの若い女性だった。
 ゆっくりと顔をあげる。
 思わず息をのんでみとれてしまった。それくらい、きれいな人だった。

 背は高いほう、均整の取れた体つき、モデルさんみたいにスタイルよくて清楚な美人なの。背筋をしゃんと伸ばした立ち姿のかっこいいこと。
 柔らかな長い髪はふわふわ巻き毛の縦ロール。この世界で初めて見たわ。縦ロールってほんとにあったのね。
 そして髪の色は、スイートピーみたいなピンクだった!

「シ・イル・リリヤに名高い『伝説の千家族』ラゼル家の一粒種、虹の申し子アイリスお嬢様、その六歳のお披露目のドレスを仕立てさせていただけるとのお話、このうえない光栄でございます」
 にっこりと、笑った。
「このわたくしに、準備万端お任せくださいませ」

「ちょっとそこ取るの!?」
 異議を唱えたのはサファイアだった。
「今回のプロジェクトは、わたしたち魔導士協会が全面協力するって決まってるのよ! お師匠様だって、黙ってないわよ!」

「あらサファイア。しばらくですわね。クラシックなメイド服、お似合いですわ。ルビーには丈の短いほうが似合いますのね。あらそうそう、カルナックお師匠様とはわたくし個人的に昔から親しくお付き合いしてますもの、ご心配には及びませんことよ」

「わたしのほうが、昔からのつきあいなんだから!」
「やめろよサファイア、ルイーゼロッテ。どっちが先に弟子になってたっていいじゃん! それこそどっちがババアかって自爆合戦にすりかわってるぞ」
「あらやだ。争うまでもないのにね。おほほほほほほ」
「わたくしは永遠の18歳ですから。おほほほほほほ」

「寒いからやめてくれませんか、大先輩がた」
 エルナトさまがおっしゃった。
 すると二人とも、エルナトさまのほうを向いて、そろって、怖い顔をしたのです。
 案外、仲がいいのじゃないかしら。

「兄さまそれ言っちゃダメ!」
 焦ったのはヴィーア・マルファさん。
「女性に年のことは禁句なのよ!」

「ヴィーこそ追い打ちかけてるってば……」
 ルビーさんは肩をすくめた。

 お父さまとお母さまは、急展開に戸惑っている。きっと後でエルナトさまが説明してくださると思うから、心配はしていないの。

 打ち合わせの場は微妙なかんじになっちゃったけど。

 我が家としては、よかったわ。
 大公さま御用達のすてきなデザイナー、ルイーゼロッテさんが、あたし、アイリスのドレスを作ってくれることになったのだし! 魔導士協会も全面協力してくれるって!

 ただ、サファイアさんとルイーゼロッテさんの間には何か、こだわりがありそうなのよね……。

「だいじょうぶ。もうじきカルナック師匠とコマラパ老師がきてくれるから、二人ともおとなしくなる!」
 って。
 ルビーさんは楽しそうに笑ってた。 


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