114 / 360
第四章 シアとアイリス
その17 アイちゃんって、誰?
しおりを挟む
17
「遅いよ。どこに行ってたの? 待ってたんだから……! ずっと、ずっと!」
「ごめんごめん。途中で、この子を見つけてさ」
「?」
クイブロくんに抱きついていた黒髪の美少女、ルナちゃんは、顔をあげて、こちらを見た。
カントゥータさんに抱っこされていた、あたし、アイリスを。
ルナちゃんは、大きく目を見開いた。
「あ……アイちゃん!?」
はい?
ルナちゃんの顔が、ぱあっと明るくなった。
「アイちゃん、なんでここに!」
華奢な両手を、あたしにさしのべて。
「ん? この子のことか?」
カントゥータさんは、あたしを下ろして、ルナちゃんに渡した。
「アイちゃんアイちゃん! 帰ってきたんだね!」
ルナちゃんは、あたしをぎゅーっと抱きしめた。
えっと、アイちゃんって誰?
なんて、なんだか、聞けない雰囲気です。
それよりも、問題なのは……
く、苦しい!?
華奢なのに意外と腕力あるっっ!!
すごく強くぎゅーっとされたから、
あたし、
「くるしい」
って、つい、言っちゃったの。
「あれ? しゃべった? それにあたたかい! 生きてる女の子なの!?」
「ごめんなさい」
なぜか謝ってしまった。
「そうだよ。人間の女の子だ。なんだと思ったんだい」
カントゥータさんが優しく問いかける。
「それは……この子……小さい頃に持ってた、大好きだったお人形にそっくりなんだ……だから、クイブロが見つけてくれたのかって思った。だけど、よく考えたら、そんなはずないんだよね。アイちゃんは……ガルデルに取り上げられて……燃やされて……」
顔を伏せたまま。
細い肩と、声が震えていた。
くわしいことはわからないけど、もしかしてルナちゃん、誰かに、ひどいことされた?
いじめ?
「あっ、あのね!!」
黙っていられなくなってあたしは思わず声をあげていた。
「もしも、あたしを抱っこして少しでも気持ちがらくになるのだったら、いいよ! あなたが、すごく、そのお人形さんを大事にしてたんだって、わかるもの!」
そして胸をはる。
「いくらでも、おいでなさい! あたし、こう見えても、おうちでは、みんなに、そばにいると『幸福』な気持ちになるって評判なのよ!」
「い、いいの?」
おずおずと、たずねる、ルナちゃん。
「結果オーライよ! それと、あたし、アイリスっていうの。だから。あたしのこと『アイちゃん』って呼んでも、かまわなくてよ」
言い終えるが早いか、ルナちゃんはあたしを再び、ぎゅーっと強く抱きしめたの。
「ありがとう! アイちゃん。ううん。アイリスちゃん!」
いじらしい!
おともだちになりたいな。
あたしのほうが身体は少し幼いけど精神年齢は、四歳と八ヶ月以上のつもり。前世の記憶があるから!
もっとも。
最近では、十五歳だった月宮アリスの意識も、幼女アイリスの身体の年齢にちょっぴり引きずられちゃったりするところも、ときどきあるんだけれどね。
あたしの中で覚醒しているイリス・マクギリスは、ビジネスウーマンだったなんて、格好つけてるけど、本音は、もふもふな動物とか、かわいいものが、大好きだし。
「かわいい……」
あたしを抱っこして、ルナちゃんはうっとり呟いた。
「ほんとうにお人形さんみたい! ちっちゃくて、金髪で緑の目で色が白くて。あたまもいいし、やさしいね。……いいなぁ。ねえ、クイブロ! この子、迷子なの? じゃあ、うちの子にしようよ!」
「そうだな、そりゃあいい考えだ」
カントゥータさん、嬉しそうに。
「これから披露宴なの! アイちゃん、ごちそうをいっぱい作るから、楽しみにしてて!」
ルナちゃんが満面の笑みで、誘う。
「おう! ルナの料理は世界一だぞ!」
クイブロくん、デレデレしてます。
※
あれ?
また、とんでもない展開になってない!?
あたしは、はぐれてしまったカルナックさま、ティーレさん、リドラさん、それにトミーさんとニコラさんにも、会いたいのに!
それに、おうちに帰れなくなっちゃう……!?
お父さま、お母さま。エステリオ・アウル叔父さまに、もう会えない!?
大切な、あたしの守護妖精たちにも……?
謎は、さらに深まるばかり。
なんで、シロとクロは、成獣になってるの?
なんで、ルナちゃんになついているの?
「遅いよ。どこに行ってたの? 待ってたんだから……! ずっと、ずっと!」
「ごめんごめん。途中で、この子を見つけてさ」
「?」
クイブロくんに抱きついていた黒髪の美少女、ルナちゃんは、顔をあげて、こちらを見た。
カントゥータさんに抱っこされていた、あたし、アイリスを。
ルナちゃんは、大きく目を見開いた。
「あ……アイちゃん!?」
はい?
ルナちゃんの顔が、ぱあっと明るくなった。
「アイちゃん、なんでここに!」
華奢な両手を、あたしにさしのべて。
「ん? この子のことか?」
カントゥータさんは、あたしを下ろして、ルナちゃんに渡した。
「アイちゃんアイちゃん! 帰ってきたんだね!」
ルナちゃんは、あたしをぎゅーっと抱きしめた。
えっと、アイちゃんって誰?
なんて、なんだか、聞けない雰囲気です。
それよりも、問題なのは……
く、苦しい!?
華奢なのに意外と腕力あるっっ!!
すごく強くぎゅーっとされたから、
あたし、
「くるしい」
って、つい、言っちゃったの。
「あれ? しゃべった? それにあたたかい! 生きてる女の子なの!?」
「ごめんなさい」
なぜか謝ってしまった。
「そうだよ。人間の女の子だ。なんだと思ったんだい」
カントゥータさんが優しく問いかける。
「それは……この子……小さい頃に持ってた、大好きだったお人形にそっくりなんだ……だから、クイブロが見つけてくれたのかって思った。だけど、よく考えたら、そんなはずないんだよね。アイちゃんは……ガルデルに取り上げられて……燃やされて……」
顔を伏せたまま。
細い肩と、声が震えていた。
くわしいことはわからないけど、もしかしてルナちゃん、誰かに、ひどいことされた?
いじめ?
「あっ、あのね!!」
黙っていられなくなってあたしは思わず声をあげていた。
「もしも、あたしを抱っこして少しでも気持ちがらくになるのだったら、いいよ! あなたが、すごく、そのお人形さんを大事にしてたんだって、わかるもの!」
そして胸をはる。
「いくらでも、おいでなさい! あたし、こう見えても、おうちでは、みんなに、そばにいると『幸福』な気持ちになるって評判なのよ!」
「い、いいの?」
おずおずと、たずねる、ルナちゃん。
「結果オーライよ! それと、あたし、アイリスっていうの。だから。あたしのこと『アイちゃん』って呼んでも、かまわなくてよ」
言い終えるが早いか、ルナちゃんはあたしを再び、ぎゅーっと強く抱きしめたの。
「ありがとう! アイちゃん。ううん。アイリスちゃん!」
いじらしい!
おともだちになりたいな。
あたしのほうが身体は少し幼いけど精神年齢は、四歳と八ヶ月以上のつもり。前世の記憶があるから!
もっとも。
最近では、十五歳だった月宮アリスの意識も、幼女アイリスの身体の年齢にちょっぴり引きずられちゃったりするところも、ときどきあるんだけれどね。
あたしの中で覚醒しているイリス・マクギリスは、ビジネスウーマンだったなんて、格好つけてるけど、本音は、もふもふな動物とか、かわいいものが、大好きだし。
「かわいい……」
あたしを抱っこして、ルナちゃんはうっとり呟いた。
「ほんとうにお人形さんみたい! ちっちゃくて、金髪で緑の目で色が白くて。あたまもいいし、やさしいね。……いいなぁ。ねえ、クイブロ! この子、迷子なの? じゃあ、うちの子にしようよ!」
「そうだな、そりゃあいい考えだ」
カントゥータさん、嬉しそうに。
「これから披露宴なの! アイちゃん、ごちそうをいっぱい作るから、楽しみにしてて!」
ルナちゃんが満面の笑みで、誘う。
「おう! ルナの料理は世界一だぞ!」
クイブロくん、デレデレしてます。
※
あれ?
また、とんでもない展開になってない!?
あたしは、はぐれてしまったカルナックさま、ティーレさん、リドラさん、それにトミーさんとニコラさんにも、会いたいのに!
それに、おうちに帰れなくなっちゃう……!?
お父さま、お母さま。エステリオ・アウル叔父さまに、もう会えない!?
大切な、あたしの守護妖精たちにも……?
謎は、さらに深まるばかり。
なんで、シロとクロは、成獣になってるの?
なんで、ルナちゃんになついているの?
11
お気に入りに追加
277
あなたにおすすめの小説

半神の守護者
ぴっさま
ファンタジー
ロッドは何の力も無い少年だったが、異世界の創造神の血縁者だった。
超能力を手に入れたロッドは前世のペット、忠実な従者をお供に世界の守護者として邪神に立ち向かう。
〜概要〜
臨時パーティーにオークの群れの中に取り残されたロッドは、不思議な生き物に助けられこの世界の神と出会う。
実は神の遠い血縁者でこの世界の守護を頼まれたロッドは承諾し、通常では得られない超能力を得る。
そして魂の絆で結ばれたユニークモンスターのペット、従者のホムンクルスの少女を供にした旅が始まる。
■注記
本作品のメインはファンタジー世界においての超能力の行使になります。
他サイトにも投稿中

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?


憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる