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第四章 シアとアイリス
その17 アイちゃんって、誰?
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17
「遅いよ。どこに行ってたの? 待ってたんだから……! ずっと、ずっと!」
「ごめんごめん。途中で、この子を見つけてさ」
「?」
クイブロくんに抱きついていた黒髪の美少女、ルナちゃんは、顔をあげて、こちらを見た。
カントゥータさんに抱っこされていた、あたし、アイリスを。
ルナちゃんは、大きく目を見開いた。
「あ……アイちゃん!?」
はい?
ルナちゃんの顔が、ぱあっと明るくなった。
「アイちゃん、なんでここに!」
華奢な両手を、あたしにさしのべて。
「ん? この子のことか?」
カントゥータさんは、あたしを下ろして、ルナちゃんに渡した。
「アイちゃんアイちゃん! 帰ってきたんだね!」
ルナちゃんは、あたしをぎゅーっと抱きしめた。
えっと、アイちゃんって誰?
なんて、なんだか、聞けない雰囲気です。
それよりも、問題なのは……
く、苦しい!?
華奢なのに意外と腕力あるっっ!!
すごく強くぎゅーっとされたから、
あたし、
「くるしい」
って、つい、言っちゃったの。
「あれ? しゃべった? それにあたたかい! 生きてる女の子なの!?」
「ごめんなさい」
なぜか謝ってしまった。
「そうだよ。人間の女の子だ。なんだと思ったんだい」
カントゥータさんが優しく問いかける。
「それは……この子……小さい頃に持ってた、大好きだったお人形にそっくりなんだ……だから、クイブロが見つけてくれたのかって思った。だけど、よく考えたら、そんなはずないんだよね。アイちゃんは……ガルデルに取り上げられて……燃やされて……」
顔を伏せたまま。
細い肩と、声が震えていた。
くわしいことはわからないけど、もしかしてルナちゃん、誰かに、ひどいことされた?
いじめ?
「あっ、あのね!!」
黙っていられなくなってあたしは思わず声をあげていた。
「もしも、あたしを抱っこして少しでも気持ちがらくになるのだったら、いいよ! あなたが、すごく、そのお人形さんを大事にしてたんだって、わかるもの!」
そして胸をはる。
「いくらでも、おいでなさい! あたし、こう見えても、おうちでは、みんなに、そばにいると『幸福』な気持ちになるって評判なのよ!」
「い、いいの?」
おずおずと、たずねる、ルナちゃん。
「結果オーライよ! それと、あたし、アイリスっていうの。だから。あたしのこと『アイちゃん』って呼んでも、かまわなくてよ」
言い終えるが早いか、ルナちゃんはあたしを再び、ぎゅーっと強く抱きしめたの。
「ありがとう! アイちゃん。ううん。アイリスちゃん!」
いじらしい!
おともだちになりたいな。
あたしのほうが身体は少し幼いけど精神年齢は、四歳と八ヶ月以上のつもり。前世の記憶があるから!
もっとも。
最近では、十五歳だった月宮アリスの意識も、幼女アイリスの身体の年齢にちょっぴり引きずられちゃったりするところも、ときどきあるんだけれどね。
あたしの中で覚醒しているイリス・マクギリスは、ビジネスウーマンだったなんて、格好つけてるけど、本音は、もふもふな動物とか、かわいいものが、大好きだし。
「かわいい……」
あたしを抱っこして、ルナちゃんはうっとり呟いた。
「ほんとうにお人形さんみたい! ちっちゃくて、金髪で緑の目で色が白くて。あたまもいいし、やさしいね。……いいなぁ。ねえ、クイブロ! この子、迷子なの? じゃあ、うちの子にしようよ!」
「そうだな、そりゃあいい考えだ」
カントゥータさん、嬉しそうに。
「これから披露宴なの! アイちゃん、ごちそうをいっぱい作るから、楽しみにしてて!」
ルナちゃんが満面の笑みで、誘う。
「おう! ルナの料理は世界一だぞ!」
クイブロくん、デレデレしてます。
※
あれ?
また、とんでもない展開になってない!?
あたしは、はぐれてしまったカルナックさま、ティーレさん、リドラさん、それにトミーさんとニコラさんにも、会いたいのに!
それに、おうちに帰れなくなっちゃう……!?
お父さま、お母さま。エステリオ・アウル叔父さまに、もう会えない!?
大切な、あたしの守護妖精たちにも……?
謎は、さらに深まるばかり。
なんで、シロとクロは、成獣になってるの?
なんで、ルナちゃんになついているの?
「遅いよ。どこに行ってたの? 待ってたんだから……! ずっと、ずっと!」
「ごめんごめん。途中で、この子を見つけてさ」
「?」
クイブロくんに抱きついていた黒髪の美少女、ルナちゃんは、顔をあげて、こちらを見た。
カントゥータさんに抱っこされていた、あたし、アイリスを。
ルナちゃんは、大きく目を見開いた。
「あ……アイちゃん!?」
はい?
ルナちゃんの顔が、ぱあっと明るくなった。
「アイちゃん、なんでここに!」
華奢な両手を、あたしにさしのべて。
「ん? この子のことか?」
カントゥータさんは、あたしを下ろして、ルナちゃんに渡した。
「アイちゃんアイちゃん! 帰ってきたんだね!」
ルナちゃんは、あたしをぎゅーっと抱きしめた。
えっと、アイちゃんって誰?
なんて、なんだか、聞けない雰囲気です。
それよりも、問題なのは……
く、苦しい!?
華奢なのに意外と腕力あるっっ!!
すごく強くぎゅーっとされたから、
あたし、
「くるしい」
って、つい、言っちゃったの。
「あれ? しゃべった? それにあたたかい! 生きてる女の子なの!?」
「ごめんなさい」
なぜか謝ってしまった。
「そうだよ。人間の女の子だ。なんだと思ったんだい」
カントゥータさんが優しく問いかける。
「それは……この子……小さい頃に持ってた、大好きだったお人形にそっくりなんだ……だから、クイブロが見つけてくれたのかって思った。だけど、よく考えたら、そんなはずないんだよね。アイちゃんは……ガルデルに取り上げられて……燃やされて……」
顔を伏せたまま。
細い肩と、声が震えていた。
くわしいことはわからないけど、もしかしてルナちゃん、誰かに、ひどいことされた?
いじめ?
「あっ、あのね!!」
黙っていられなくなってあたしは思わず声をあげていた。
「もしも、あたしを抱っこして少しでも気持ちがらくになるのだったら、いいよ! あなたが、すごく、そのお人形さんを大事にしてたんだって、わかるもの!」
そして胸をはる。
「いくらでも、おいでなさい! あたし、こう見えても、おうちでは、みんなに、そばにいると『幸福』な気持ちになるって評判なのよ!」
「い、いいの?」
おずおずと、たずねる、ルナちゃん。
「結果オーライよ! それと、あたし、アイリスっていうの。だから。あたしのこと『アイちゃん』って呼んでも、かまわなくてよ」
言い終えるが早いか、ルナちゃんはあたしを再び、ぎゅーっと強く抱きしめたの。
「ありがとう! アイちゃん。ううん。アイリスちゃん!」
いじらしい!
おともだちになりたいな。
あたしのほうが身体は少し幼いけど精神年齢は、四歳と八ヶ月以上のつもり。前世の記憶があるから!
もっとも。
最近では、十五歳だった月宮アリスの意識も、幼女アイリスの身体の年齢にちょっぴり引きずられちゃったりするところも、ときどきあるんだけれどね。
あたしの中で覚醒しているイリス・マクギリスは、ビジネスウーマンだったなんて、格好つけてるけど、本音は、もふもふな動物とか、かわいいものが、大好きだし。
「かわいい……」
あたしを抱っこして、ルナちゃんはうっとり呟いた。
「ほんとうにお人形さんみたい! ちっちゃくて、金髪で緑の目で色が白くて。あたまもいいし、やさしいね。……いいなぁ。ねえ、クイブロ! この子、迷子なの? じゃあ、うちの子にしようよ!」
「そうだな、そりゃあいい考えだ」
カントゥータさん、嬉しそうに。
「これから披露宴なの! アイちゃん、ごちそうをいっぱい作るから、楽しみにしてて!」
ルナちゃんが満面の笑みで、誘う。
「おう! ルナの料理は世界一だぞ!」
クイブロくん、デレデレしてます。
※
あれ?
また、とんでもない展開になってない!?
あたしは、はぐれてしまったカルナックさま、ティーレさん、リドラさん、それにトミーさんとニコラさんにも、会いたいのに!
それに、おうちに帰れなくなっちゃう……!?
お父さま、お母さま。エステリオ・アウル叔父さまに、もう会えない!?
大切な、あたしの守護妖精たちにも……?
謎は、さらに深まるばかり。
なんで、シロとクロは、成獣になってるの?
なんで、ルナちゃんになついているの?
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