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第二章 アイリス三歳『魔力診』後
その34 レベル、ゼロにリセットされた!?
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34
口から盛大な火を吐いた、ルシファーと言う名前のドラゴン。
お師匠さまがあたしを抱いてよけてくれなかったら、危うく火を浴びるところだったかも。
でも、ちょっぴり疑問がないでもないわ。
だって、あたしとお師匠さまは、果てしもなく深い穴の中を落ちているところだったはずだから。
一緒に、同じように落ちている真っ最中にもかかわらず、あたしをどうやって助けてくださったのかとか。
でも、お師匠さまだもんね。なにがあっても不思議じゃないわ!
ここでちょっと、状況を整理します。
セラニス・アレム・ダルに、穴に落とされた。
あまりに地の底が遠くていつまでも到達しないから、なんだか落ちているのか浮かんでいるのか止まっているのかも、わからなくなってきていた。
ルシファーの吐いた炎は、(あたしたちが避けたので)まるでレーザービームみたいにまっすぐに地底へと吸い込まれていった。
「これはまずいな」
お師匠さまはつぶやいた。全然、困っていなさそうに、あっさりと。
「まずいって?」
「バックファイアだ」
その言葉の終わらないうちに、あたしは、「下を」見てしまった。
地底から、膨大な熱気が噴き上がってくるのを感じたから。
「あんなちびドラゴンの炎など微々たるものだが、この世界そのものに攻撃を加えたことは事実。怒りをかわないわけがない」
「そ、そんな冷静におっしゃいますけど! お師匠さま! あんなすごいの! あたしたちも巻き添えに!?」
「まあ、そうなるかな」
「えええええええ~!!!」
「だが、まあ、大丈夫だろう。前を見てごらん」
お師匠さまのおっしゃる通りに、前を向いた。
あら?
何もない銀色の光に満ちた空間だったはず。
そこには、大きな鏡があったの。
「鏡!? でも、さっきまでは何も!?」
驚いている、あたし。
黒い髪と目、水色のワンピースに白いエプロンドレス。
これって、前世の……月宮アリスの姿だ。十歳くらいのときの。
セラニス・アレム・ダルが言ってた、この空間に落ちることで、転生してからのレベルをゼロにリセットするって、こういうことかしら。
もっとも、アイリス・リデル・ティス・ラゼルは転生してからずっと虚弱ってことでおうちの中にばかりいたし、魔法も習ってないし。レベルが上がった経験なんて、もともと、まったく、ないですけどね。
そしてお師匠さまは、黒の魔法使いカルナックさま、ではなくて、前世で出会った『並河香織』さんの姿でした。長い黒髪で背が高くて超絶美形で、つまりは、ほとんどカルナックお師匠さまと同じ。(違うのは、カルナックさまは多分、男性? なのかな? なぜか断定できない自分がいます。)
鏡に映っているのは、そんな二人の姿だったのですが。
けれど、ふしぎなことが起こった。
鏡の中の、長身の美女と、少女が、みるみる、別の姿に変わっていくの。
床まで届く銀色の長い髪、青い光をたたえた瞳。長身に純白の衣をまとった、この世のモノならぬ美貌の女性。
黒い髪と、青い目で、黒いメイド服に白いエプロンをした、十歳くらいの少女。
やだ、この子。月宮アリスよりも、ずっと、かわいいわ!
「おや、そいつはどうも、正直な感想、ありがとね、お嬢ちゃん」
少女の口元が動いて。
にかっと、笑った。
そして、銀髪美女は、艶然と、微笑んで。
「なかなか面白そうなことになってるようじゃないか、わが弟子よ。ピンチなんじゃないのかな?」
「いえ、別に」
イヤそうに答えたお師匠さま。
「あなたの助けを借りたら大変なことになりそうですから、グラウケー。それに、アーテル」
すると、黒髪の少女が、細い手をのばして、ゆっくりと、手招きをした。
「まあそう言わずに。迎えにきてやったよ。友達のよしみでね」
そして、ウィンクしたのでした。
絶対、この子ってば、トップアイドルになれるわ!
口から盛大な火を吐いた、ルシファーと言う名前のドラゴン。
お師匠さまがあたしを抱いてよけてくれなかったら、危うく火を浴びるところだったかも。
でも、ちょっぴり疑問がないでもないわ。
だって、あたしとお師匠さまは、果てしもなく深い穴の中を落ちているところだったはずだから。
一緒に、同じように落ちている真っ最中にもかかわらず、あたしをどうやって助けてくださったのかとか。
でも、お師匠さまだもんね。なにがあっても不思議じゃないわ!
ここでちょっと、状況を整理します。
セラニス・アレム・ダルに、穴に落とされた。
あまりに地の底が遠くていつまでも到達しないから、なんだか落ちているのか浮かんでいるのか止まっているのかも、わからなくなってきていた。
ルシファーの吐いた炎は、(あたしたちが避けたので)まるでレーザービームみたいにまっすぐに地底へと吸い込まれていった。
「これはまずいな」
お師匠さまはつぶやいた。全然、困っていなさそうに、あっさりと。
「まずいって?」
「バックファイアだ」
その言葉の終わらないうちに、あたしは、「下を」見てしまった。
地底から、膨大な熱気が噴き上がってくるのを感じたから。
「あんなちびドラゴンの炎など微々たるものだが、この世界そのものに攻撃を加えたことは事実。怒りをかわないわけがない」
「そ、そんな冷静におっしゃいますけど! お師匠さま! あんなすごいの! あたしたちも巻き添えに!?」
「まあ、そうなるかな」
「えええええええ~!!!」
「だが、まあ、大丈夫だろう。前を見てごらん」
お師匠さまのおっしゃる通りに、前を向いた。
あら?
何もない銀色の光に満ちた空間だったはず。
そこには、大きな鏡があったの。
「鏡!? でも、さっきまでは何も!?」
驚いている、あたし。
黒い髪と目、水色のワンピースに白いエプロンドレス。
これって、前世の……月宮アリスの姿だ。十歳くらいのときの。
セラニス・アレム・ダルが言ってた、この空間に落ちることで、転生してからのレベルをゼロにリセットするって、こういうことかしら。
もっとも、アイリス・リデル・ティス・ラゼルは転生してからずっと虚弱ってことでおうちの中にばかりいたし、魔法も習ってないし。レベルが上がった経験なんて、もともと、まったく、ないですけどね。
そしてお師匠さまは、黒の魔法使いカルナックさま、ではなくて、前世で出会った『並河香織』さんの姿でした。長い黒髪で背が高くて超絶美形で、つまりは、ほとんどカルナックお師匠さまと同じ。(違うのは、カルナックさまは多分、男性? なのかな? なぜか断定できない自分がいます。)
鏡に映っているのは、そんな二人の姿だったのですが。
けれど、ふしぎなことが起こった。
鏡の中の、長身の美女と、少女が、みるみる、別の姿に変わっていくの。
床まで届く銀色の長い髪、青い光をたたえた瞳。長身に純白の衣をまとった、この世のモノならぬ美貌の女性。
黒い髪と、青い目で、黒いメイド服に白いエプロンをした、十歳くらいの少女。
やだ、この子。月宮アリスよりも、ずっと、かわいいわ!
「おや、そいつはどうも、正直な感想、ありがとね、お嬢ちゃん」
少女の口元が動いて。
にかっと、笑った。
そして、銀髪美女は、艶然と、微笑んで。
「なかなか面白そうなことになってるようじゃないか、わが弟子よ。ピンチなんじゃないのかな?」
「いえ、別に」
イヤそうに答えたお師匠さま。
「あなたの助けを借りたら大変なことになりそうですから、グラウケー。それに、アーテル」
すると、黒髪の少女が、細い手をのばして、ゆっくりと、手招きをした。
「まあそう言わずに。迎えにきてやったよ。友達のよしみでね」
そして、ウィンクしたのでした。
絶対、この子ってば、トップアイドルになれるわ!
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