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第一章 先祖還り

その30 スペック高すぎアイリス。脳内会議?

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         30

 例えばアイリス・リデル・ティス・ラゼル。

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 個人名……アイリス・リデル・ティス・ラゼル

 年齢………3歳

 種族名……人間(先祖還り)

 生命力……50(三歳幼児の平均値に比較して50パーセント)

 魔力量……2000(平均に比較して20倍。成長上限なし)

 魔力適性……全属性に適性対応(魔力の色・白・クリアカラー)

 特殊スキル……応援(半径10メートル以内の人間の能力を上げる)
        スマイルは無料(笑顔を向ける相手に幸福感を与える)
        ハーモニー(誰かと一緒に行動すると相手の能力を向上させる)

 加護…………光の妖精の守護
       風の妖精の守護
      (成長すれば妖精フェアリーから精霊スピリットに進化)
      (枠はまだ空いている。一属性につき守護になれる精霊は一つ)

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 そして、月宮アリス。

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 個人名……月宮アリス

 年齢………15歳

 種族名……人間

 職業………女子高校生

 ジョブ……アイドル(中学生から、親友『相田紗耶香』とデュエット)

 生命力……100(一般的な同年代女子の平均値100)

 魔力量……2000(平均に比較して20倍)

 魔力適性…全属性に適性対応(魔力の色・白・クリアカラー)

 スキル……応援 (半径10メートル以内の人間の能力を上げる)
      スマイルは無料 (笑顔を向ける相手に幸福感を与える)
      ハーモニー (誰かと一緒に行動すると相手の能力を向上させる)
       
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 そして、イリス・マクギリス。

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 個人名………イリス・マクギリス

 年齢…………25歳

 種族名………人間(アイルランドから、曾祖父の代でアメリカに移民)

 生命力………3000(成人女性の平均値に比較して300パーセント)

 魔力量………0/∞(魔力が存在しない世界である)

 魔力適性……全属性に適性あり(魔力の色・白・クリアカラー)

 職業…………会社員。広報部営業

 スキル………営業能力・時間管理・洗脳・対人・歌唱(カラオケで100点)

 加護…………商売の神様・親友の友情

 持病…………心臓に難あり(死因・ストレスと過労に起因する心不全)

 家族…………なし。両親に先立たれ天涯孤独。配偶者、子供はいない。

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 そして、システム・イリス。

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 個人名……イリス

 年齢………10000歳

 種族名……レプリカノイド(合成人間)

 生命力……100000000/∞

 魔力量……0/ ∞

 魔力適性……全属性に適性あり(魔力の色・白・クリアカラー)

 職業…………人類の管理者。執政官コンスル

 権限…………人類保護プログラムにおけるルート管理者権限・最上位を所有する

 加護…………古き園ティエラ白き太陽ソルの愛情。
       世界セレナンの根源(世界の大いなる意思)のお気に入り
       四大精霊の加護。大地の女神の加護。真月の女神の加護

      『魔眼の王セラニス・アレム・ダル』の想い人

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「せっかくの機会だからって、女神さまがおっしゃったでしょ。とりあえず、あたし、イリス・マクギリスから提案します。みんな、お互いの情報をもっと見てみない?」

「月宮アリスです。賛成します。情報共有、だいじでっす」

「アイリスっていいます。どうしたらいいのか、わかりません」

「システム・イリス。……眠ってていいかな」

 眠いとしか言ってないイリス。
 考えてみたら、彼女は10000歳だったよ。眠いのも仕方ないかな。

「それにしても、あたしたちの基本スペック、高いんじゃない? アリスちゃん、アイドルだったのか~」

「マクギリスさん、アイドルなんて、恥ずかしいです。親友のサヤカと一緒だったから。でもほんと、能力とか魔力とか、高すぎる気がするんですけど。あのステータスに書いてあること全然わからない言葉だらけで。わかるときがくるのかしら」

「……ぐぅ」
 システム・イリス、寝てる?

         ※

「ふぅん。こうしてみると、けっこう、外見が違うものなのね。女神さま、本当に、あたしたちは同じ魂が転生した姿なんですか?」
 いつのまにかイリス・マクギリスが自然にリーダー的に仕切っている。

『ええ、そうよ。みなさん共通していることもあるのよ。魔法がない世界にも関わらず保有魔力が高いとか、周囲の人々を幸せにするとか、ね? だから月宮さんはアイドルに向いていたし』

「そういえば、アイーダが言ってたっけ。あたしがステージを観にいったらいつもの何倍もパワーが出るって。あ、アイーダっていうのは、マンハッタンでの親友で、歌手でした」

「アイーダ?」
 驚いたように、月宮アリスがいう。
「あの、あたしの親友、あいださやか、っていうんです。二人で一緒にアイドルやって。歌ってました。なんか、名前の響き、似てるみたいな気がします。偶然かもしれないけど」

「へえ? それは、何か縁みたいなものがあるのかしら」

「アイーダって言った?」
 それまで「眠い」としか口にしなかったシステム・イリスが、反応した。

「親しかった同僚の名前と同じだわ。アイーダ。本名は、クリスティーナ・アイーダ・アンブロジオ・ロペス。昔の有名な歌手の遺伝情報をもとに合成されたサンプロイドだったの」

「「えええええ!?」」
「はにゃ?」
「もしかしたら、彼女……アイーダも、転生しつづけているんじゃ……?」

『それには、まだ答えられないわ』
 あどけない少女の姿をした女神スゥエは、謎めいた微笑みを浮かべた。
『そうね。あなたたちを導く師匠となったカルナックと、コマラパに、たずねてごらんなさい。いつか時が来たら、きっと応えてくれることでしょう』

 それって、肯定の意味じゃあないかしら、と。
 イリス・マクギリスは、思うのだった。

「スゥエさま。もしかしたら、カルナックさまも、転生者、なの?」
 月宮アリスが、思いあぐねたように尋ねた。

『さあ、それは、やっぱり、わたしが答えるべきではないわ。それより、そろそろ、この夢も終わる。わたしから、最後にアドバイスを。まわりをよく見ていなさいね。あなたたちの味方は、いるわ。同じ「先祖還り」ではなくとも、両親や乳母やも、メイドさんたちもみんな。それに、エステリオ・アウルのことも、気に掛けてあげてね。あれで遠慮しがちな、良い子なのよ』

「「はい、わかりました」」
 アリスとイリス・マクギリス。

「眠いけど。考えてみるわ」
 システム・イリス。

「おかあさま、おとうさま、サリー、おじさま、どこぉ」
 アイリスは、ぐずりだしてしまった。

「あらら。しょうがないね、アイリスちゃんはまだ三歳だもん」
 アリスはアイリスに駆け寄った。
 
「ごめんね、もうちょっとだから。……たぶん」
 イリス・マクギリスも近寄って、アイリスの頭を撫でる。

『アイリスの身体は三歳ですが前世の影響もあって、平均よりもかなり保有魔力が高い。それはとても危険なこと。いろんな意味で。だからカルナックが師匠をかって出たし、護衛もつけた。ほら、この子たちもいるわ、アイリス。ごらんなさい』

 スゥエ女神さまの足元に、大きな二頭の獣が現れた。
 純白の毛皮を持った巨大な犬と、漆黒の毛皮の巨大な犬だ。
 けれど二頭は、アイリスに近寄っていくに連れて、少しずつ縮んで、小さく、幼くなっていったのだ。

 宴会場に現れた二匹の子犬だった!
 ただし、毛並みがすごい。
 銀色に灰色の縞が入り、口から小さな牙がのぞく、白い幼獣。
   もう一匹は夜の闇みたいに光を吸い込む、漆黒の体毛をしていた。細く鋭い牙が口の端からこぼれている。

「シロ! クロ!」
 喜んで二頭に飛びつくアイリス。
   さっそく、もふもふだ。

「あれ? 会場で見たのと違う」
 首をかしげるイリス・マクギリス。

「もっと、ラブラドールとかの子犬みたいだったわ」
 と、月宮アリス。

『この子たちはカルナックが幼い頃に従えた魔獣。あなたたちに『縁』を結んで、この世界で存在を維持するための魔力をわけてもらっているから、あなたたちの魔力のレベルに合った姿になる。これからアイリスが成長していけば、この二頭も、成獣になるわ。楽しみね』

「ねむい」
 システム・イリスは呟いた。

『カルナックが、あなたたちの意識構造を整えた。ピラミッドの頂上はアイリス。すぐ下に月宮アリス。その下にイリス・マクギリス。そしてシステム・イリス。これが最も安定した状態なの。いずれ、アイリスが成長していけば、自然に融合していくことでしょう。意識しないうちにね。でも、それまでは。表層のアイリスに対応できない事態が起こったときは、助けてあげてね。それが自分たちをも救うことなの』

 女神スゥエの周囲に、銀色のもやが生じて、姿が霞んでいく。

『今はここまで。また会いましょう、アイリスたち。もしも、とても困ったら。いつでも、わたしの名前を呼んで。心で思い浮かべるだけで、じゅうぶんだから……』

「シロとクロは、いっしょにいてくれる?」
『もちろんよ』

「ありがとうございます」
「スゥエさま、またお会いしたいです」
「……眠い」

 全てが、銀色のとばりに包まれていった。

『どうか、みんな、幸せに……』
 最後に聞こえてきたのは、女神スゥエの声だった。
 かすれた囁き。空気に溶けて消える。かなわぬ思いを、こいねがうように……。

          ※

「アイリスは眠ってしまったみたいだね、兄さん、義姉さん」

「アクシデントがあって、宴席の始まりが遅くなったからなあ」

「もうしばらくは寝かせておいてあげましょうね」

 家族の声が、聞こえる。
 だいすきな、かぞく。

「わふん!」「わふ!」
 ああ~、シロと、クロの鼻息がっっ! あつい!
 ぺろぺろ舐めるぅ!

「聞こえているだろう、アイリス・リデル・ティス・ラゼル。そろそろ起きる頃合いだよ」
 やさしくて、きびしい、おししょうさまの、こえがきこえて。
 あたしは、ねむいめをこすって、またたきをして。
 ゆっくりとからだをおこすの。

 おししょうさまって、ようしゃないわぁって、あたしの中の、だれかが言って。
 くすくすと笑い出す。
 囁きも笑い声も、三人分。

           ※

 
 あたしはアイリス・リデル・ティス・ラゼル。いつか大きくなったら、りっぱなレディになるの。

 みんなで、しあわせになりたいな。
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