10 / 76
第二章 半透明な令息と、初めてだらけの二日間
10.お嫁に行けない
しおりを挟む
「君の体を使う? 俺が?」
「はい、そうです」
ララが試してみたいこととは、これだった。
「もう何年もやっていないので提案するか悩んだのですが。小さい頃は、たまに霊に体を貸していたんです」
「……なぜそんな危なそうなことを」
「なぜと言われましても、困っている霊がいたからとしか」
「お人好しめ。悪いやつだったらどうするんだ」
「大丈夫ですよ。悪いことを頼むような霊は私の周りにはいませんでしたから。庭師の霊が花の水やりをしたいと言ったので私の体でやってみたり、餓死したと言う霊に体を貸してお腹いっぱいになるまで食べてみたり。そのくらいです」
「変なことされてないだろうな」
「変なこととは?」
「……なんでもない、忘れてくれ。君の体に悪影響は?」
「体を貸した日の夜はもの凄く眠たくなりますが、問題というほどではありません。寝ればいつも通りです」
「本当か?」
「グラント卿、意外と心配性ですね。それは容疑者を尋問する時の顔ですか?」
「容疑者より俺を困らせるのが上手い女性に振り回されてる顔だ」
「ふふっ、なんですかそれ」
どちらかと言うと困らせるのも振り回すのも、彼の方が上手いと思うのだが。
「私の体は本当に大丈夫なので、信じてください」
テオドールを見上げて言うと、彼はやっと折れてくれた。
「分かったよ、君を信じる。俺としても体を借りれた方がありがたいしな。早速試してみたいところだが、昔はどうやって貸してたんだ? 手順でもあるのか?」
「小さい頃はなんとなくでやっていたので、決まり事とかは分からなくて。霊とお喋りをしていただけのような……」
「難しい条件はないってことか。じゃあ体を貸してる時はどんな感じだった?」
「んー……。これは完全にイメージなのですが、魂が触れ合っているような……」
いざ言語化しようとすると、難しいものである。
「へえ。魂ってことは、心臓に触れる、とかか?」
テオドールが閃いたように、ララの心臓の方を指差した。
「霊体じゃあ、心臓に触れるのは難しそうだが」
すり抜けると分かっているからなのか、テオドールが心臓に向かって手を伸ばしてくる。体を貫かれそうで落ち着かない。
「そうですよね。グラント卿の体は、私をすり抜けちゃいますもん――」
そこまで言って、ララは言葉を止めた。
(あれ……?)
なぜだろう。突然襲ってきた、圧迫感。
見てはいけないような気がしたが、視線は素直だ。違和感に向かって下がっていく。行き着く先は、自分の胸元。
「…………」
どう見ても、押し潰されている。テオドールの手によって。彼は霊体なのに、ララの体をすり抜けていない。
……すり抜けて、いない。
「ひ、ひやぁっ⁉︎」
なんということだ。自分の間抜けな声を嘆く暇もない。一瞬で体中の血が沸騰した。
急に後ろに飛び退いたせいで体がバランスを崩す。そのまま背中から倒れるかと思いきや、テオドールの右手がララの左腕を掴んだ。
(また、触った……!)
テオドールのおかげで転倒は避けられた。しかし腕を引かれたことで今度は前向きに勢いがつき、彼の胸元に顔から突っ込んだ。自分の意思とは関係なく、彼の体の逞しさを感じてしまう。
おまけに腰に腕を回されたものだから、今にも心臓が口から出てきそうだ。
(落ちついて。これは保護、保護よ)
暴れ狂う鼓動を抑え込もうと必死なララ。テオドールの「なぜだ?」という声が頭上から聞こえたが、彼の胸元しか見えないララには状況が分からない。
彼がもぞもぞと動いていることから察するに、おそらく片手で近くの物に触れられるか試し、見事にすり抜けているのだろう。
その度に感触を確かめるようにララの体に触れ直すテオドール。腰に回された腕に力が込められ、息の仕方を忘れてしまう。
(もう、無理……)
とうとう耐えきれなくなったララは、テオドールの制服を控えめに引っ張った。腰がゆっくりと解放され、体がやっと自由になった。
ひとまず落ち着かなくては。そう思い俯いた途端、テオドールの手に顔を包まれ、至近距離で覗き込まれる。大きな手と海のような瞳が、逃がしてくれない。
「どうして君にだけ触れるんだ⁉︎」
困惑の表情で聞かれても、こっちだって分からない。霊に触れたこともなければ、まともに男性と触れ合った経験もないのだ。
だから、今はただ、――熱いだけだ。
「…………お嫁に、行けない」
やっとの思いで絞り出した声は、テオドールにぎりぎり届いて、溶けていった。自分が今どんな顔をしているのかくらい、鏡を見なくても分かる。
瞠目したテオドールが、これまでの自分の行いを思い出すように視線を斜め上に動かす。そのままそろーっと両手を顔の横に上げ、こちらから距離をとった。
「……今のは、俺が悪い」
彼の耳がほんのり赤く染まったものだから、ララの心臓は無駄に脈打つ羽目になった。
しばらくして顔の熱が引いたララは、先ほどの醜態は忘れる方向で話を切り出した。
「で、では……気を取り直してもう一度、体をお貸しする方法を考えましょうか。グラント卿が私に触れられる理由は、考えても答えが出そうにないですし」
「そ、そうだな。それが良い」
やや気まずそうなテオドールも、ララの意を汲んだように浅く頷く。
「ララが昔霊に体を貸してた時は、話をしてただけなんだよな?」
「はい。霊の悩みや望みを聞いて、体を貸してあげたいなぁって思ったら、できていた……という感じだったかと」
「具体的に許可はしたか? 言葉や仕草で」
「体を貸すことについてですか? んー、意識はしていなかったのですが……話の中で『はい』とか『どうぞ』とかは言っていたかも」
「それが条件かもしれないな」
「なるほど。やってみましょうか」
今度こそ上手くいってほしい。テオドールの視線を受け止め、ララは気合を入れる。
「俺は君に、仕事を手伝ってもらいたい。……ララ、体を貸してくれ」
「はい、どうぞ――っ⁉︎」
許可した瞬間、自分の体がわずかに浮かび上がった気がして、声がうわずった。
ああ、懐かしい。この感覚だ。
目の前にいたテオドールの姿が消え、自分と同じ器に入っていると分かる。
「……思ったより簡単に」
研究室に落ちた声はララのものだが、つぶやいたのは、ララではなくテオドールだ。
『できちゃいましたね。体動かせますか?』
ララが聞くと、テオドールは手を握って開いてを繰り返す。作業台にも問題なく触れられるようだ。
「凄いな、自分の体みたいだ」
『おそらくですが、動きの癖みたいなものはグラント卿のままだと思います』
「ほう。君が話しても声は出ていないみたいだが、俺が入ってる時は君は何もできないのか?」
『どうなんでしょう? 試したことがなかったので……』
今はテオドールに頭の中で話しかけている状態だ。
彼が体に入っていても、自分の意思で動くことは可能なのだろうか。疑問に思ったララは、口元だけ動かせるか試してみた。
「……あー、あー」
「声、出せたな」
「ですね。私が意識すれば、体の一部分だけ動かしたりもできるみたいです。こっちの方がお話ししてる感じがあって楽しいですね。全部私の声ですけど。……せっかく体に入ったことですし、何かやってみますか?」
「いや。体を借りれることは分かったし、一回出る」
「え、もうですか?」
ララの質問と同時に、テオドールが体から出た。出るのは入るよりも簡単なようだ。
「色々試さなくて良かったのですか? 文字を書いたりとか」
「その辺は実際に仕事をしながら慣れていくことにする。あまり長く入ったままだと、君が眠たくなるんだろ?」
「それは、そうですけど」
昔と違って体も成長しているし、限界まで試しても良かったのに。そう思ったのが顔に出ていたのか、テオドールが苦笑いを浮かべる。
「君には今夜、大事な任務があるはずだ」
「あー……」
意味を理解したララは、窓の外を確認する。そろそろ日が沈み始める時間だ。
早く家に帰って、両親に婚約破棄の報告をしなくてはならない。
「いっそのこと、全部忘れて眠ってしまいたかったです……」
ララはぽつりと、本音を漏らした。
「はい、そうです」
ララが試してみたいこととは、これだった。
「もう何年もやっていないので提案するか悩んだのですが。小さい頃は、たまに霊に体を貸していたんです」
「……なぜそんな危なそうなことを」
「なぜと言われましても、困っている霊がいたからとしか」
「お人好しめ。悪いやつだったらどうするんだ」
「大丈夫ですよ。悪いことを頼むような霊は私の周りにはいませんでしたから。庭師の霊が花の水やりをしたいと言ったので私の体でやってみたり、餓死したと言う霊に体を貸してお腹いっぱいになるまで食べてみたり。そのくらいです」
「変なことされてないだろうな」
「変なこととは?」
「……なんでもない、忘れてくれ。君の体に悪影響は?」
「体を貸した日の夜はもの凄く眠たくなりますが、問題というほどではありません。寝ればいつも通りです」
「本当か?」
「グラント卿、意外と心配性ですね。それは容疑者を尋問する時の顔ですか?」
「容疑者より俺を困らせるのが上手い女性に振り回されてる顔だ」
「ふふっ、なんですかそれ」
どちらかと言うと困らせるのも振り回すのも、彼の方が上手いと思うのだが。
「私の体は本当に大丈夫なので、信じてください」
テオドールを見上げて言うと、彼はやっと折れてくれた。
「分かったよ、君を信じる。俺としても体を借りれた方がありがたいしな。早速試してみたいところだが、昔はどうやって貸してたんだ? 手順でもあるのか?」
「小さい頃はなんとなくでやっていたので、決まり事とかは分からなくて。霊とお喋りをしていただけのような……」
「難しい条件はないってことか。じゃあ体を貸してる時はどんな感じだった?」
「んー……。これは完全にイメージなのですが、魂が触れ合っているような……」
いざ言語化しようとすると、難しいものである。
「へえ。魂ってことは、心臓に触れる、とかか?」
テオドールが閃いたように、ララの心臓の方を指差した。
「霊体じゃあ、心臓に触れるのは難しそうだが」
すり抜けると分かっているからなのか、テオドールが心臓に向かって手を伸ばしてくる。体を貫かれそうで落ち着かない。
「そうですよね。グラント卿の体は、私をすり抜けちゃいますもん――」
そこまで言って、ララは言葉を止めた。
(あれ……?)
なぜだろう。突然襲ってきた、圧迫感。
見てはいけないような気がしたが、視線は素直だ。違和感に向かって下がっていく。行き着く先は、自分の胸元。
「…………」
どう見ても、押し潰されている。テオドールの手によって。彼は霊体なのに、ララの体をすり抜けていない。
……すり抜けて、いない。
「ひ、ひやぁっ⁉︎」
なんということだ。自分の間抜けな声を嘆く暇もない。一瞬で体中の血が沸騰した。
急に後ろに飛び退いたせいで体がバランスを崩す。そのまま背中から倒れるかと思いきや、テオドールの右手がララの左腕を掴んだ。
(また、触った……!)
テオドールのおかげで転倒は避けられた。しかし腕を引かれたことで今度は前向きに勢いがつき、彼の胸元に顔から突っ込んだ。自分の意思とは関係なく、彼の体の逞しさを感じてしまう。
おまけに腰に腕を回されたものだから、今にも心臓が口から出てきそうだ。
(落ちついて。これは保護、保護よ)
暴れ狂う鼓動を抑え込もうと必死なララ。テオドールの「なぜだ?」という声が頭上から聞こえたが、彼の胸元しか見えないララには状況が分からない。
彼がもぞもぞと動いていることから察するに、おそらく片手で近くの物に触れられるか試し、見事にすり抜けているのだろう。
その度に感触を確かめるようにララの体に触れ直すテオドール。腰に回された腕に力が込められ、息の仕方を忘れてしまう。
(もう、無理……)
とうとう耐えきれなくなったララは、テオドールの制服を控えめに引っ張った。腰がゆっくりと解放され、体がやっと自由になった。
ひとまず落ち着かなくては。そう思い俯いた途端、テオドールの手に顔を包まれ、至近距離で覗き込まれる。大きな手と海のような瞳が、逃がしてくれない。
「どうして君にだけ触れるんだ⁉︎」
困惑の表情で聞かれても、こっちだって分からない。霊に触れたこともなければ、まともに男性と触れ合った経験もないのだ。
だから、今はただ、――熱いだけだ。
「…………お嫁に、行けない」
やっとの思いで絞り出した声は、テオドールにぎりぎり届いて、溶けていった。自分が今どんな顔をしているのかくらい、鏡を見なくても分かる。
瞠目したテオドールが、これまでの自分の行いを思い出すように視線を斜め上に動かす。そのままそろーっと両手を顔の横に上げ、こちらから距離をとった。
「……今のは、俺が悪い」
彼の耳がほんのり赤く染まったものだから、ララの心臓は無駄に脈打つ羽目になった。
しばらくして顔の熱が引いたララは、先ほどの醜態は忘れる方向で話を切り出した。
「で、では……気を取り直してもう一度、体をお貸しする方法を考えましょうか。グラント卿が私に触れられる理由は、考えても答えが出そうにないですし」
「そ、そうだな。それが良い」
やや気まずそうなテオドールも、ララの意を汲んだように浅く頷く。
「ララが昔霊に体を貸してた時は、話をしてただけなんだよな?」
「はい。霊の悩みや望みを聞いて、体を貸してあげたいなぁって思ったら、できていた……という感じだったかと」
「具体的に許可はしたか? 言葉や仕草で」
「体を貸すことについてですか? んー、意識はしていなかったのですが……話の中で『はい』とか『どうぞ』とかは言っていたかも」
「それが条件かもしれないな」
「なるほど。やってみましょうか」
今度こそ上手くいってほしい。テオドールの視線を受け止め、ララは気合を入れる。
「俺は君に、仕事を手伝ってもらいたい。……ララ、体を貸してくれ」
「はい、どうぞ――っ⁉︎」
許可した瞬間、自分の体がわずかに浮かび上がった気がして、声がうわずった。
ああ、懐かしい。この感覚だ。
目の前にいたテオドールの姿が消え、自分と同じ器に入っていると分かる。
「……思ったより簡単に」
研究室に落ちた声はララのものだが、つぶやいたのは、ララではなくテオドールだ。
『できちゃいましたね。体動かせますか?』
ララが聞くと、テオドールは手を握って開いてを繰り返す。作業台にも問題なく触れられるようだ。
「凄いな、自分の体みたいだ」
『おそらくですが、動きの癖みたいなものはグラント卿のままだと思います』
「ほう。君が話しても声は出ていないみたいだが、俺が入ってる時は君は何もできないのか?」
『どうなんでしょう? 試したことがなかったので……』
今はテオドールに頭の中で話しかけている状態だ。
彼が体に入っていても、自分の意思で動くことは可能なのだろうか。疑問に思ったララは、口元だけ動かせるか試してみた。
「……あー、あー」
「声、出せたな」
「ですね。私が意識すれば、体の一部分だけ動かしたりもできるみたいです。こっちの方がお話ししてる感じがあって楽しいですね。全部私の声ですけど。……せっかく体に入ったことですし、何かやってみますか?」
「いや。体を借りれることは分かったし、一回出る」
「え、もうですか?」
ララの質問と同時に、テオドールが体から出た。出るのは入るよりも簡単なようだ。
「色々試さなくて良かったのですか? 文字を書いたりとか」
「その辺は実際に仕事をしながら慣れていくことにする。あまり長く入ったままだと、君が眠たくなるんだろ?」
「それは、そうですけど」
昔と違って体も成長しているし、限界まで試しても良かったのに。そう思ったのが顔に出ていたのか、テオドールが苦笑いを浮かべる。
「君には今夜、大事な任務があるはずだ」
「あー……」
意味を理解したララは、窓の外を確認する。そろそろ日が沈み始める時間だ。
早く家に帰って、両親に婚約破棄の報告をしなくてはならない。
「いっそのこと、全部忘れて眠ってしまいたかったです……」
ララはぽつりと、本音を漏らした。
1
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
大嫌いなんて言ってごめんと今さら言われても
はなまる
恋愛
シルベスタ・オリヴィエは学園に入った日に恋に落ちる。相手はフェリオ・マーカス侯爵令息。見目麗しい彼は女生徒から大人気でいつも彼の周りにはたくさんの令嬢がいた。彼を独占しないファンクラブまで存在すると言う人気ぶりで、そんな中でシルベスタはファンクアブに入り彼を応援するがシルベスタの行いがあまりに過激だったためついにフェリオから大っ嫌いだ。俺に近づくな!と言い渡された。
だが、思わぬことでフェリオはシルベスタに助けを求めることになるが、オリヴィエ伯爵家はシルベスタを目に入れても可愛がっており彼女を泣かせた男の家になどとけんもほろろで。
フェリオの甘い誘いや言葉も時すでに遅く…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」
***
ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。
しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。
――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。
今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。
それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。
これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。
そんな復讐と解放と恋の物語。
◇ ◆ ◇
※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。
さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。
カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。
※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。
選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。
※表紙絵はフリー素材を拝借しました。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる