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亜人族の超絶美形と傷心旅行中の僕とのエロエロ恋愛模様【1】
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「ここはどこだろう?」
と呟くと同時に盛大な溜め息を吐く。
……や、わかっているはずなんだけど。
僕はショルダーバッグからパンフレットを取り出して改めて確認する。
「……おかしい」
いくらぼんやり考え事をしていたとはいえ、道に迷った覚えはない。
ショルダーバッグ一つで右往左往する僕、葉生風芽はトランクを置いた宿泊中のホテルに戻れるのだろうかと不安になった。
「サンタクロースヴィレッジにいたはずなのに」
だって、さっき室内のサンタクロースと写真を撮った。その写真を一緒に来るはずだった元彼女に送りつけてやるつもりで。
ここはフィンランドのロバニエミ近郊サンタクロースヴィレッジ。緯度の高い国のせいか日本より風が冷たい。今の僕の心情を表すかのように。彼女に振られたのは一週間前。
……有休とったのに。この旅行中にプロポーズしようと思っていたのに。
フィンランドは彼女の希望。ファンタジー好きな彼女はサンタクロースがいる国がいいとフィンランドを選んだ。そんな彼女のために下調べをしてロマンティックなプロポーズになるようにコースも考えていた。
だけど全部水の泡だ。
旅行をキャンセルすることもできた。だけど言っちゃったんだよ、同僚に『彼女とフィンランドに行く予定で……』と。にやけ顔で言っていた当時の僕へ『プライベートな事は会社で話すな!』と忠告してやりたい。そんな訳で僕は有給休暇を使って予定通りフィンランドに来たのだ。婚前旅行じゃなく傷心旅行になったけど。
だからぼんやり歩いていた事は否定しない。だけど、道に迷うほどぼんやりしていたとは思えない。
「どこなんだ、ここは?」
なぜ僕は森の中にいる?
ぐるりと周囲を見渡すも誰も……あんなにいた観光客もいない。特徴的な尖った屋根の可愛い建物も見当たらない。
……引き返そう。
でも、どこへ? わからない。ただ、このままむやみに歩き回るよりはおそらく通って来たであろう方向へ戻った方がいい。そう思って踵を返す。すると、さっき見渡した時にはなかった小屋があった。
「え? なんで?」
……さっきは動揺して焦っていたから見落としたんだろうか?
サンタクロースヴィレッジでも見かけなかった気がする。小屋というよりは納屋のようだ。でもそんな疑問より今は人の気配がする方へ行くのがいいと思った。百メートルほど駆けてその小屋の玄関らしき扉の前に着く。
「……ッハァ、……よかった。消えなくて」
蜃気楼の類だったら消える恐れがある。
「す、すみません! 誰かいますか?」
行儀悪いかもしれないが大声で叫ぶ。
と呟くと同時に盛大な溜め息を吐く。
……や、わかっているはずなんだけど。
僕はショルダーバッグからパンフレットを取り出して改めて確認する。
「……おかしい」
いくらぼんやり考え事をしていたとはいえ、道に迷った覚えはない。
ショルダーバッグ一つで右往左往する僕、葉生風芽はトランクを置いた宿泊中のホテルに戻れるのだろうかと不安になった。
「サンタクロースヴィレッジにいたはずなのに」
だって、さっき室内のサンタクロースと写真を撮った。その写真を一緒に来るはずだった元彼女に送りつけてやるつもりで。
ここはフィンランドのロバニエミ近郊サンタクロースヴィレッジ。緯度の高い国のせいか日本より風が冷たい。今の僕の心情を表すかのように。彼女に振られたのは一週間前。
……有休とったのに。この旅行中にプロポーズしようと思っていたのに。
フィンランドは彼女の希望。ファンタジー好きな彼女はサンタクロースがいる国がいいとフィンランドを選んだ。そんな彼女のために下調べをしてロマンティックなプロポーズになるようにコースも考えていた。
だけど全部水の泡だ。
旅行をキャンセルすることもできた。だけど言っちゃったんだよ、同僚に『彼女とフィンランドに行く予定で……』と。にやけ顔で言っていた当時の僕へ『プライベートな事は会社で話すな!』と忠告してやりたい。そんな訳で僕は有給休暇を使って予定通りフィンランドに来たのだ。婚前旅行じゃなく傷心旅行になったけど。
だからぼんやり歩いていた事は否定しない。だけど、道に迷うほどぼんやりしていたとは思えない。
「どこなんだ、ここは?」
なぜ僕は森の中にいる?
ぐるりと周囲を見渡すも誰も……あんなにいた観光客もいない。特徴的な尖った屋根の可愛い建物も見当たらない。
……引き返そう。
でも、どこへ? わからない。ただ、このままむやみに歩き回るよりはおそらく通って来たであろう方向へ戻った方がいい。そう思って踵を返す。すると、さっき見渡した時にはなかった小屋があった。
「え? なんで?」
……さっきは動揺して焦っていたから見落としたんだろうか?
サンタクロースヴィレッジでも見かけなかった気がする。小屋というよりは納屋のようだ。でもそんな疑問より今は人の気配がする方へ行くのがいいと思った。百メートルほど駆けてその小屋の玄関らしき扉の前に着く。
「……ッハァ、……よかった。消えなくて」
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「す、すみません! 誰かいますか?」
行儀悪いかもしれないが大声で叫ぶ。
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よろしくお願いします!
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