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Historia Ⅲ
異食(1)
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灰白色の厚い壁に囲まれた空間と黄緑色に灯る蝋燭。正面には翼を広げた女神の像が立っていて中は広くまるで礼拝堂みたいだがどこか神秘的かつ怪しい雰囲気が漂っている。
地面には大きな魔法陣が描かれておりその構図は緻密で複雑かつ細かく施されていた。
円には変わった文字がずらりと並んでいて周りには数人の魔法使いと魔女が魔法陣を囲み呪文を唱えている。とても緊張した面持ちで全員一丸となって一言一句、間違わぬようみんなと合わせて詠唱を続ける。魔法陣に向けて呪文を唱える魔法使いや魔女は全員外国人で精神と魔力を削りながらも目的を達成させる為に根気よく意識を集中して成功してやるという強い執念を抱きつつあった。
複数の魔法使いと魔女が呪文を唱えている姿を男は別の部屋で画面越しに映る彼らを見守っていた。片手にワイングラスを回しながら椅子に寄りかかる男はまだかまだかと期待に胸を膨らませながら静かに彼らの動きを見る。
その時。礼拝堂の床に刻まれた魔法陣が光り出した。その眩い光は魔法使い達を包み込むかのように広がった。これで彼らの役目は終わった。と思いきや突然、その光は妖しく輝きだした。蝋燭の火は揺らぎ灰白色の壁は妖しい光の色に染まる。そして、呪文を唱えていた魔法使いと魔女は魔法陣の異変に戸惑いを見せた。すると、イギリスから来た一人の魔法使いが頭を抱えて突然苦しみだし倒れた。そしたら、イギリス人の男に続き次々と他の魔法使いと魔女も苦しみだし悶えるよう倒れた。身体から感じる奇妙な違和感が彼らを襲いかかった途端、彼らが異形の姿に変貌した光景が広がった。魔法使いと魔女の呻き声と一緒に彼らの変わり果てた姿は壁に投影された。
そんな異常な光景を目の当たりにした男は不満げに映像を切った。
厚い雲に覆われた夜の始め頃。長野県のとある山の近くに来た魔法使いシンとユータ。
二人は今日事務所に届いた手紙を読んで山の麓にある依頼主の別荘へ向かっていた。夜の山は真っ暗で黒く染まり外見を見ただけでもその不気味さは感じられた。シンとユータは長野駅からタクシーを使って麓にある別荘まで移動していた。長野駅までの道のりは依頼主が手紙と一緒に新幹線の乗車券を同封してくれたおかげで少しは出費を抑えることができた。家賃が溜まっていて依頼者が来ない事が続いていたので新幹線代が浮いたのはラッキーだった。
そして、賀茂探偵事務所に手紙を出した送り主はベゼル・ビュートルというフランスの魔法使いだった。彼は魔法界では有名な美食家兼美食評論家。魔法界だけでなく人間界、世界中の料理を食べ歩いた美食家にして様々な雑誌に載り数多くの料理を評論し続けそのうえ自身の本を出版し世界に名を残している有名人。
そんな有名人から東京の傍ら小さな貧乏事務所にわざわざ手紙を出してくれたのだ。
肝心の依頼内容は手紙には書かれていなかったがそれは別荘に着いてからのお楽しみといったところだろう。名高い美食家からの依頼。きっとすごい依頼に違いないとユータは期待に胸を膨らませていた。
「こんなすごい人から依頼をしてくれるなんて。有名人だからきっと報酬もたんまり貰えるに違いない。シンもそう思うだろ?」
タクシーの後部座席に座っているユータは名高い美食家からの依頼と貰える報酬に期待していて目を輝かせていた。きっと、今まで貰って来た普通の依頼料より数十倍いや数百倍の金額でこれなら溜まった家賃も光熱費、電気代も一気に払えると思うと嬉しくなる。これで、ミウの「家賃コール」地獄から抜け出せる。しかも、新幹線代も払ってくれるなんて正に一石二鳥だとユータは浮かれていた時、シンは肘を付いて車窓から見える真っ暗な景色を見ていた。シンは何かを思い耽っている様子が見られた。
*
昨日の昼下がりの時間。シンは東京都調布市にある深大寺に出掛けていた。そこで人と会う約束があったのだ。草木ある自然豊かな深大寺の参道を歩いて人を探していたシンは一軒の店から自分の名を呼ぶ声に気づいた。顔を向けた先にはロングコートとメトロ調のジャズハットといった渋めの格好をした龍厘寺が屋外席に座っていた。
龍厘寺に誘われてシンも屋外席に座り店員が持って来てくれたコップ一杯の水を飲んで一息ついた。マホウトコロ魔法魔術学校の校長で現魔法副大臣でもある龍厘寺の席には団子のお皿が置いてあった。全部で三本あってその内の一本は食べ終えて今は二本目に入っていた。丸顔で髭を生やし優しそうな目をしていて容姿端麗で貫禄で大人な品格を兼ね揃えた正に「校長」と呼ぶに相応しい人だ。そしてイケオジでもある。しっかり者でありながら温厚な性格で人望も厚いうえ人脈が広く魔法の才を見抜く天才とか呼ばれており次の日本魔法大臣になるのではという噂もあったりする。だが、自由奔放なところがあってたまに校長室を留守にすることが多く自由過ぎるところが玉のキズだが彼を支持する人がとても多い。これまでの活躍とキャリアからすれば龍厘寺は学校にとっても魔法省にとっても偉大な魔法使いなのだ。
「それで、いかがでしたか?例の悪魔召喚術の件」
シンは先日の遠藤幸子が起こした連続不審死事件を解決した後、今回の事件に悪魔が関わっていたことを龍厘寺に報告したのだ。シンはなぜ彼女が悪魔召喚術をどこで知って使えたのか謎が残っていた為、龍厘寺にその出所を探ってもらえないか頼んだのだ。
「調べてみたが悪魔召喚術に関してのデータはなかった。ネットや魔法歴史学に詳しい知り合いにも頼んでみたがそれらしい情報はなかったそうだ」
団子を噛みながら龍厘寺は喋る。噛むと団子に弾力を感じて甘じょっぱい御手洗(みたらし)のタレが口の中に広がる。
「本物のグリモワールの書がどこかに現存されていたという可能性は?」
「それはないだろう。グリモワールは19世紀に一つ残らず処分された為、原本はこの世界のどこにも残っていない。過去にあの書物で命を落とした者もいたそうだ。だが、まさか悪魔アラストルを召喚していたとは予想外だった」
龍厘寺もシンと同様で遠藤幸子が悪魔アラストルを召喚し娘に成り済ましていたと話した時は、本人も驚いて茶を零してしまったぐらい衝撃を受けていた。上級悪魔を呼び出すのはかなりのリスクを伴わないぐらいとても恐ろしいことなのだ。魔法界では悪魔や精霊といった召喚術は伝説に過ぎないと思っている。しかし、その伝説が現実に起きたのだ。それにグリモワールは闇の魔術と精通しているとも云われているので悪魔を召喚する事態が闇の魔術だという事は頷ける。昔、龍厘寺がこんな話しをしていたのを憶えている。
放つ黒に白で制す。黒の魔は陵駕する力で死を呼び白の魔は命の尊さで生を与える。魔法は黒と白の表裏一体で神秘的な力で人を救うこともあれば時には牙を向くこともある。
闇の魔術が「黒魔法」と呼ぶならば白魔術は「防衛呪文」と呼ぶかもしれない。
我々は、「魔法」という奇跡の力を手に入れたと同時に大きな責任も背負っているんだ。
魔法は決して私利私欲の為に使うものではなく。大切な仲間や家族を守る為にあると龍厘寺から教わった。シンのかつての友は力を欲するが為に自ら犠牲にしてまで「支配」と「勝利」を選んだ。シンにとって友との戦いはまだ記憶に新しい。
グリモワールの原本がこの世にない事は知っている。だが、悪魔召喚術を使えるとしたらそれしか方法がない。それか、もっと他に別の手があるのだろうか?
グリモワールではなければとシンが考え付いたのは「何者かの陰謀か組織による犯行でしょうか?悪魔崇拝者の集団とか」と思い立った。遠藤幸子は崇拝者に唆されて悪魔の召喚方法を知った。シンはそう推理する。龍厘寺は最後の団子を味わいながら「合点が点きそうな推理だね」と言った。
「まだはっきりとは言えないが、仮に崇拝組織による犯行だとしたらグリモワールが無くても悪魔の召喚ができるのは頷ける。彼女がどこで召喚魔術を覚えたかは魔法省が聞いているはずだ。私も引き続き召喚魔術の出所を調べてみるとしよう」
調査を続行しようとする龍厘寺に「お願いします」とシンは軽く頭を下げた後、付け加えて「それと、調査もいいですが学校と副大臣の仕事の方もちゃんとやってくださいね。」と指摘すると龍厘寺は笑った。本人は「分かってる」と言ってはいるが分かっている試しがない。一応、真面目な人だという事は理解しているけど仕事中にいなくなる事もあったりするので大臣や副校長は彼の性格上は理解している。特に副校長は初め自由過ぎる龍厘寺に困ってよく注意していたが今はもう諦めている。この人が校長になったのは、彼への厚い人望とその才能と実力、そして寛大さを認めているからだろう。
でも、学校の校長はまだいいとしてこの自由人が次期魔法大臣候補で大丈夫なのだろうかと心配する自分もいた。
*
あの日以来、龍厘寺からまだ連絡は着ていない。どうやら、まだ悪魔の召喚魔術の出所を見つけていないようだ。校長と魔法副大臣という重要な仕事があるにも関わらず龍厘寺は調査に乗り出しかつての教え子の願いを請け負ってくれた。あの人には知り合いが多いので今頃はその人達に頼って行動を取っているのだろう。
暗い外を見つめつつ黙秘するシンにユータは呼びかける。話を聞いていないようにも見えたシンは相棒の呼びかけに気づいて、ん?と振り向いた。
「あれじゃないか?ビュートルさんの別荘って」
ユータがタクシーのフロントガラスを見て指を差す。目の前に建物らしき影が見えてきた。大きくて立派なお屋敷。中世ヨーロッパ時代を感じさせるような建物で二人が想像していたよりもでかくまるで城のようだ。こんな山の麓に大きな屋敷があったとは誰も知らなかったであろう。タクシーの運転手だって驚いていた。
地面には大きな魔法陣が描かれておりその構図は緻密で複雑かつ細かく施されていた。
円には変わった文字がずらりと並んでいて周りには数人の魔法使いと魔女が魔法陣を囲み呪文を唱えている。とても緊張した面持ちで全員一丸となって一言一句、間違わぬようみんなと合わせて詠唱を続ける。魔法陣に向けて呪文を唱える魔法使いや魔女は全員外国人で精神と魔力を削りながらも目的を達成させる為に根気よく意識を集中して成功してやるという強い執念を抱きつつあった。
複数の魔法使いと魔女が呪文を唱えている姿を男は別の部屋で画面越しに映る彼らを見守っていた。片手にワイングラスを回しながら椅子に寄りかかる男はまだかまだかと期待に胸を膨らませながら静かに彼らの動きを見る。
その時。礼拝堂の床に刻まれた魔法陣が光り出した。その眩い光は魔法使い達を包み込むかのように広がった。これで彼らの役目は終わった。と思いきや突然、その光は妖しく輝きだした。蝋燭の火は揺らぎ灰白色の壁は妖しい光の色に染まる。そして、呪文を唱えていた魔法使いと魔女は魔法陣の異変に戸惑いを見せた。すると、イギリスから来た一人の魔法使いが頭を抱えて突然苦しみだし倒れた。そしたら、イギリス人の男に続き次々と他の魔法使いと魔女も苦しみだし悶えるよう倒れた。身体から感じる奇妙な違和感が彼らを襲いかかった途端、彼らが異形の姿に変貌した光景が広がった。魔法使いと魔女の呻き声と一緒に彼らの変わり果てた姿は壁に投影された。
そんな異常な光景を目の当たりにした男は不満げに映像を切った。
厚い雲に覆われた夜の始め頃。長野県のとある山の近くに来た魔法使いシンとユータ。
二人は今日事務所に届いた手紙を読んで山の麓にある依頼主の別荘へ向かっていた。夜の山は真っ暗で黒く染まり外見を見ただけでもその不気味さは感じられた。シンとユータは長野駅からタクシーを使って麓にある別荘まで移動していた。長野駅までの道のりは依頼主が手紙と一緒に新幹線の乗車券を同封してくれたおかげで少しは出費を抑えることができた。家賃が溜まっていて依頼者が来ない事が続いていたので新幹線代が浮いたのはラッキーだった。
そして、賀茂探偵事務所に手紙を出した送り主はベゼル・ビュートルというフランスの魔法使いだった。彼は魔法界では有名な美食家兼美食評論家。魔法界だけでなく人間界、世界中の料理を食べ歩いた美食家にして様々な雑誌に載り数多くの料理を評論し続けそのうえ自身の本を出版し世界に名を残している有名人。
そんな有名人から東京の傍ら小さな貧乏事務所にわざわざ手紙を出してくれたのだ。
肝心の依頼内容は手紙には書かれていなかったがそれは別荘に着いてからのお楽しみといったところだろう。名高い美食家からの依頼。きっとすごい依頼に違いないとユータは期待に胸を膨らませていた。
「こんなすごい人から依頼をしてくれるなんて。有名人だからきっと報酬もたんまり貰えるに違いない。シンもそう思うだろ?」
タクシーの後部座席に座っているユータは名高い美食家からの依頼と貰える報酬に期待していて目を輝かせていた。きっと、今まで貰って来た普通の依頼料より数十倍いや数百倍の金額でこれなら溜まった家賃も光熱費、電気代も一気に払えると思うと嬉しくなる。これで、ミウの「家賃コール」地獄から抜け出せる。しかも、新幹線代も払ってくれるなんて正に一石二鳥だとユータは浮かれていた時、シンは肘を付いて車窓から見える真っ暗な景色を見ていた。シンは何かを思い耽っている様子が見られた。
*
昨日の昼下がりの時間。シンは東京都調布市にある深大寺に出掛けていた。そこで人と会う約束があったのだ。草木ある自然豊かな深大寺の参道を歩いて人を探していたシンは一軒の店から自分の名を呼ぶ声に気づいた。顔を向けた先にはロングコートとメトロ調のジャズハットといった渋めの格好をした龍厘寺が屋外席に座っていた。
龍厘寺に誘われてシンも屋外席に座り店員が持って来てくれたコップ一杯の水を飲んで一息ついた。マホウトコロ魔法魔術学校の校長で現魔法副大臣でもある龍厘寺の席には団子のお皿が置いてあった。全部で三本あってその内の一本は食べ終えて今は二本目に入っていた。丸顔で髭を生やし優しそうな目をしていて容姿端麗で貫禄で大人な品格を兼ね揃えた正に「校長」と呼ぶに相応しい人だ。そしてイケオジでもある。しっかり者でありながら温厚な性格で人望も厚いうえ人脈が広く魔法の才を見抜く天才とか呼ばれており次の日本魔法大臣になるのではという噂もあったりする。だが、自由奔放なところがあってたまに校長室を留守にすることが多く自由過ぎるところが玉のキズだが彼を支持する人がとても多い。これまでの活躍とキャリアからすれば龍厘寺は学校にとっても魔法省にとっても偉大な魔法使いなのだ。
「それで、いかがでしたか?例の悪魔召喚術の件」
シンは先日の遠藤幸子が起こした連続不審死事件を解決した後、今回の事件に悪魔が関わっていたことを龍厘寺に報告したのだ。シンはなぜ彼女が悪魔召喚術をどこで知って使えたのか謎が残っていた為、龍厘寺にその出所を探ってもらえないか頼んだのだ。
「調べてみたが悪魔召喚術に関してのデータはなかった。ネットや魔法歴史学に詳しい知り合いにも頼んでみたがそれらしい情報はなかったそうだ」
団子を噛みながら龍厘寺は喋る。噛むと団子に弾力を感じて甘じょっぱい御手洗(みたらし)のタレが口の中に広がる。
「本物のグリモワールの書がどこかに現存されていたという可能性は?」
「それはないだろう。グリモワールは19世紀に一つ残らず処分された為、原本はこの世界のどこにも残っていない。過去にあの書物で命を落とした者もいたそうだ。だが、まさか悪魔アラストルを召喚していたとは予想外だった」
龍厘寺もシンと同様で遠藤幸子が悪魔アラストルを召喚し娘に成り済ましていたと話した時は、本人も驚いて茶を零してしまったぐらい衝撃を受けていた。上級悪魔を呼び出すのはかなりのリスクを伴わないぐらいとても恐ろしいことなのだ。魔法界では悪魔や精霊といった召喚術は伝説に過ぎないと思っている。しかし、その伝説が現実に起きたのだ。それにグリモワールは闇の魔術と精通しているとも云われているので悪魔を召喚する事態が闇の魔術だという事は頷ける。昔、龍厘寺がこんな話しをしていたのを憶えている。
放つ黒に白で制す。黒の魔は陵駕する力で死を呼び白の魔は命の尊さで生を与える。魔法は黒と白の表裏一体で神秘的な力で人を救うこともあれば時には牙を向くこともある。
闇の魔術が「黒魔法」と呼ぶならば白魔術は「防衛呪文」と呼ぶかもしれない。
我々は、「魔法」という奇跡の力を手に入れたと同時に大きな責任も背負っているんだ。
魔法は決して私利私欲の為に使うものではなく。大切な仲間や家族を守る為にあると龍厘寺から教わった。シンのかつての友は力を欲するが為に自ら犠牲にしてまで「支配」と「勝利」を選んだ。シンにとって友との戦いはまだ記憶に新しい。
グリモワールの原本がこの世にない事は知っている。だが、悪魔召喚術を使えるとしたらそれしか方法がない。それか、もっと他に別の手があるのだろうか?
グリモワールではなければとシンが考え付いたのは「何者かの陰謀か組織による犯行でしょうか?悪魔崇拝者の集団とか」と思い立った。遠藤幸子は崇拝者に唆されて悪魔の召喚方法を知った。シンはそう推理する。龍厘寺は最後の団子を味わいながら「合点が点きそうな推理だね」と言った。
「まだはっきりとは言えないが、仮に崇拝組織による犯行だとしたらグリモワールが無くても悪魔の召喚ができるのは頷ける。彼女がどこで召喚魔術を覚えたかは魔法省が聞いているはずだ。私も引き続き召喚魔術の出所を調べてみるとしよう」
調査を続行しようとする龍厘寺に「お願いします」とシンは軽く頭を下げた後、付け加えて「それと、調査もいいですが学校と副大臣の仕事の方もちゃんとやってくださいね。」と指摘すると龍厘寺は笑った。本人は「分かってる」と言ってはいるが分かっている試しがない。一応、真面目な人だという事は理解しているけど仕事中にいなくなる事もあったりするので大臣や副校長は彼の性格上は理解している。特に副校長は初め自由過ぎる龍厘寺に困ってよく注意していたが今はもう諦めている。この人が校長になったのは、彼への厚い人望とその才能と実力、そして寛大さを認めているからだろう。
でも、学校の校長はまだいいとしてこの自由人が次期魔法大臣候補で大丈夫なのだろうかと心配する自分もいた。
*
あの日以来、龍厘寺からまだ連絡は着ていない。どうやら、まだ悪魔の召喚魔術の出所を見つけていないようだ。校長と魔法副大臣という重要な仕事があるにも関わらず龍厘寺は調査に乗り出しかつての教え子の願いを請け負ってくれた。あの人には知り合いが多いので今頃はその人達に頼って行動を取っているのだろう。
暗い外を見つめつつ黙秘するシンにユータは呼びかける。話を聞いていないようにも見えたシンは相棒の呼びかけに気づいて、ん?と振り向いた。
「あれじゃないか?ビュートルさんの別荘って」
ユータがタクシーのフロントガラスを見て指を差す。目の前に建物らしき影が見えてきた。大きくて立派なお屋敷。中世ヨーロッパ時代を感じさせるような建物で二人が想像していたよりもでかくまるで城のようだ。こんな山の麓に大きな屋敷があったとは誰も知らなかったであろう。タクシーの運転手だって驚いていた。
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