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第十幕
神災(二十)
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すると、正輝は麒麟の頭上から勢いよく飛んだ。
牙をむく樹木の大蛇に向かって天帝主を大きく構える。
聖炎の火力を上げ激しい炎が燃え盛った時、一匹目の大蛇が大きな口を開けて迫って来た。
正輝は火力を上げた聖炎を纏う天帝主を強く握りしめ鋭い牙をむいて口を大きく開けている大蛇の方へ飛んで行く。
ガブリ。
一匹目の大蛇が正輝を喰らった。
大きな口を閉じ正輝を口の中へ入れ食べた。あまりの呆気なさに言葉が出ない。
まさか、何の反撃もなしに食べられるなんてマヌケにもほどがある。
世界を救えるのは彼しかいないというのに、食べられて最期を迎えてしまうなんて冗談にしてほしいぐらいだ。
そのうえ、正輝が取った行動は思い出してみると大胆な行動をしていたので食べられてもおかしくはないだろう。
樹木の大蛇を倒す前に食われて終わるなんて一体、何を考えているのやら。
正輝を食らった大蛇は口を閉じたまま飲み込もうとした。その時だ。
突然、大蛇の頭後ろから炎が出た。炎は飲み込んだ大蛇の後頭部を突き抜け損傷を与えた。
後頭部が破れたことによって大蛇の顔は崩れ大破した。大蛇は樹木でできているので、崩れた顔が割れた木片へと化して首ごと崩壊した。
炎の中から現れたのは、大蛇に食べられた正輝だった。
そうだ。正輝はわざと大蛇に食べられたフリをして口の中から攻撃をしたのだ。
正輝の思惑通りに喰らうとはまるで、鴨が葱を背負って来るような大蛇の哀れさ。
宙を舞っている正輝は態勢を崩さぬよう整えていたが、すぐ次の攻撃がやって来た。
残り3匹の大蛇が宙に飛ぶ正輝を狙って来たのだ。
そして、聖炎によってできた麒麟は巨人に向かって突進してくる。
巨人は突進してきた麒麟を押さえる。
2匹目の大蛇が迫って来た時、正輝は宙に浮きながら身体を回しアクロバティックな動きで襲ってきた大蛇の攻撃を避けた。そして、大蛇の背に着地し身体を沿って真っすぐ走り出す。
3匹目の大蛇が2匹目の大蛇の頭上にいる正輝を狙って襲い来るも正輝は一切怯みもせず高く飛んだ。
口を大きく開けて牙を剥き出す3匹目の大蛇に向かって天帝主を横に振るう。
勢いが強まって大きく燃え盛る聖炎が鋭いナイフのように尖った天帝主が3匹目の大蛇の口を切り裂いた。
大きく開いた口から後頭部までスライスするかのように斬り顎下と顎上が離れ口が真っ二つになると萎(しお)れて枯れ身体が崩れた。
3匹目を撃退。すると、飛び台にして利用した2匹目の大蛇がこちらに迫ってくる。
再び宙に舞う正輝が振り向くと2匹目の大蛇が突進して襲いかかってきた。正輝は突進の勢いを利用して身体を左に捻って避ける。そして、隙をついた所を聖炎の斬撃を放つ。
斬撃は長く伸びた胴体にヒットし真っ二つに斬れた。斬れた2匹目の大蛇も朽ちて倒れた。
4匹中3匹を倒した。残りは一匹。
最期の一匹である大蛇が勢いよく宙に浮く正輝を狙う。その勢いはまるで仲間を倒した正輝に対する怒り、仲間の仇を討つようなそんな風に見えた。
勢いが増し怒りを覚える大蛇の姿に正輝は一切怯みをせず天帝主を前に出した。
刃先を大蛇の顔に向け燃え盛る聖炎が火炎放射となって凄まじい炎を放った。
大蛇は火炎放射の餌食となって炎に包まれた。
凄まじく強力で勢いがすごい天帝主による火炎放射は大蛇の身体を燃やし尽くした。
やがて爆炎が起き四匹目の大蛇は跡形もなく散った。
これでやっと片付いた。
正輝が息を吹いた瞬間、背後に黑緋神之命の姿が見えた。
黑緋神之命は自分の存在に気づいていない正輝に装着している金と土でできた猛獣の爪を振り下ろす。
猛獣の爪が正輝の背中を切り裂き本人を地上へ落とした。
正輝は強く身体を叩きつけられうつ伏せになったまま動かなかった。
これで死んだ。
と思いきや、正輝の身体が聖炎に包まれ消えた。
正輝の変わり身の術。黑緋神之命はこの程度で死ぬような奴じゃないと既に分かっていた。
すると、黑緋神之命の未来予知が発動した。
見えたその光景は麒麟と戦っている巨人が落ちるというビジョン。
そのビジョンを見てすぐさま黑緋神之命の手から炎の弓が現れた。
美しく紅色に燃える炎の弓を手に持ち静かに燃える火の矢を引いて構えた。
激しく交戦する巨人と麒麟は互いの身体をぶつけ合い一歩も引かず立ち向かっている。
麒麟の口から放つ光弾が巨人の身体にヒットするも巨人は倒れず休むこともなくナックルをかます。
そのナックルはとても重い一撃で麒麟は殴られた衝撃で体制を崩れかけるも踏ん張って倒れなかった。
お返しにと麒麟は強く頭突きをして食らわした。
頭突きで攻撃されても巨人は倒れず麒麟の前に立ち塞がる。
すると、巨人の後ろに聖炎と共に正輝の姿が現れた。
正輝は力強く天帝主を握ると聖炎の勢いが増し金色から赤金の色に染まり炎が大きくなった。
そして、赤金色に染まる聖炎の刃が巨人の首に届き勢いに乗せて綺麗な曲線を引いた。
刎ねた巨人の首は落ちて巨大な体も倒れ崩れ去った。
麒麟との対戦によって生み出された隙。正輝と麒麟の連係プレーが勝利を掴んだ。
巨人戦はこれにて一件落着。と思いきや突然、ドスッという何かに突き刺さった重い音が聞こえた。
正輝の胸に火の矢が刺さっていた。
突き刺された正輝は火のやら伝って来た炎が体中に巡り周りこの世の痛みとは思えないぐらい焼けるように熱く激しい痛みが体中に広がり口から大量の血が流れた。
そして、意識が朦朧とした彼の目に火の矢を放った黑緋神之命の姿が映る。
火の矢はちゃんと心臓に命中していて虫の息にまで追い込んだ。
射抜かれた後の正輝の姿を見て黑緋神之命は表情を全く変えず彼の死に様を見届けた。
正輝に関するビジョンは何も映っていないし見えない。未来予知は火の矢に射抜かれた正輝がまだ生きているという展開と様子は全く無いと判断し黑緋神之命には伝えなかった。
あの火の矢が正輝の息の根を止めたということになり、正輝の今後の未来はこれにて途絶えたのだ。
正輝が息を引き取れば聖炎により作られた麒麟は姿を消すであろう。
勝負あったと黑緋神之命は勝利感を噛み締めながら正輝の最期を見届ける。
後は、肉体から離れた正輝の魂を消去するだけだ。
そう思った矢先、火の矢に射抜かれた正輝の姿が炎と化し崩れた。
炎となって姿を消したという予想外の事態に黑緋神之命は「なにっ?!」と驚きを隠せなかった。
その時だ。麒麟がいきなり黑緋神之命を襲い頭突きしたのだ。
頭突きを受けた黑緋神之命は浮遊しながら止まった。
麒麟の姿形が消え流星の如くに大きな火の玉が黑緋神之命に向かって一直線で飛んできた。
その火の玉を見て黑緋神之命は気づいた。火の玉の中心に正輝がいたのだ。
正輝は火の玉の中で天帝主を構え迫りつつあった。突然の出来事に反撃する事はな黑緋神之命は身に付けている魔獣の爪を前に出して身を守った。
天帝主を構えた正輝は斬り込むのではなく身を固めた黑緋神之命を強く押した。
押されている黑緋神之命は彼の勢いに乗せられ壁に激突。気のせいだと言いたいが、背中に強い痛みを感じ激突した反動で身を守っていた体勢が崩れると火の玉から抜け出した正輝が連携を取るように彼の身体に斬り込みを入れた。
今、生れて初めて黑緋神之命にダメージを与えた。
黑緋神之命の表情が歪んだ。今まで冷酷非道で冷静であまり表情を変えなかった黑緋神之命の顔が今、歪んだのだ。
彼が初めて顔に感情が出たのは、未来予知に小日向と一反木綿の姿が映らなかったうえトコヤミ大神の心臓を破壊するよう正輝が仕向けたと思い抱いた怒りの感情。そして今は、正輝に受けた傷が疼き痛みを感じている歪みの表情。再び正輝を睨むと持ち前の神通力で彼を自分の側から離れさせた。
神通力を受けた正輝は吹き飛ばされるもうまく地上に着地した。
黑緋神之命は受けた傷を自らの手で触れついた血を見た。彼の手には真っ赤に染まった血がリアルに映る。
浮遊していた彼だったがゆっくりと地上に着地した。正輝に斬られた傷がはっきりと見えた。
神にもちゃんと血がある。
一発傷を与えたとはいえ、まだ油断はできない。
たった傷一つだけでは黑緋神之命を倒せないのだから。
すると、黑緋神之命は両手に身に着けていた猛獣の爪を解除した。そして、両手をクロスして指先に光が灯った。
クロスした両手を大きく動かし魔法陣を描いた。
その魔法陣は正輝が見て来たものとは少し違う気配を感じた。
「私に傷を負わせるとは敵ながら見事だな。だが、私の進撃は止まらん」
今回は詠唱がなく普通に話していた。
「未来予知というものを持って生まれたとはいえ、まさか私の能力を二度も陵駕するとは想像はつけなかった。能力にも欠点があるというのを今、思い知らせた」
黑緋神之命を傷を負わせたのは未来予知を逆らう方法を考えたからだ。でも、小日向と一反木綿がトコヤミ大神の体内にいて心臓を壊してくれたのは想定外中想定外の事態。本人も小日向と一反木綿が来ていたとは全く知らなかったのだから。
「私はこの禁呪で決着をつける。これは、神々に対抗する際、窮地に陥った時に使おうと思っていたが出し惜しみする必要はなくなった」
禁呪。あまりいい響きではない。
まさか、そんな隠し玉を持っていたとは。
禁呪の魔法陣が光り出した時、正輝は異様な空気を感じた。
怪しく光る魔法陣の前に正輝は強いプレッシャーを肌身にピリピリと感じる。
「正輝はーん!!」
どこかで聞き覚えのある声。ふと振り向くと頭上に一反木綿がいた。そして、背中には小日向がいる。
「小日向さん?!一反木綿!?」
正輝は驚きが隠せない顔で彼らの名を呼ぶ。
小日向は一反木綿の背に乗って大きな声で今の状況を教えようとした。
「正輝くん!今すぐここを脱出しよう!もうすぐ爆炎が─」
言いかけた途端、彼らの後ろから爆炎がこちらに押し寄せてきた。
爆炎がこの広間に入ろうとした瞬間、魔法陣が強く光り出し辺り一帯を飲み込んだ。
激しい衝撃と強風に正輝と一反木綿、小日向は風に煽られながらも吹き飛ばされないよう必死に耐えた。
牙をむく樹木の大蛇に向かって天帝主を大きく構える。
聖炎の火力を上げ激しい炎が燃え盛った時、一匹目の大蛇が大きな口を開けて迫って来た。
正輝は火力を上げた聖炎を纏う天帝主を強く握りしめ鋭い牙をむいて口を大きく開けている大蛇の方へ飛んで行く。
ガブリ。
一匹目の大蛇が正輝を喰らった。
大きな口を閉じ正輝を口の中へ入れ食べた。あまりの呆気なさに言葉が出ない。
まさか、何の反撃もなしに食べられるなんてマヌケにもほどがある。
世界を救えるのは彼しかいないというのに、食べられて最期を迎えてしまうなんて冗談にしてほしいぐらいだ。
そのうえ、正輝が取った行動は思い出してみると大胆な行動をしていたので食べられてもおかしくはないだろう。
樹木の大蛇を倒す前に食われて終わるなんて一体、何を考えているのやら。
正輝を食らった大蛇は口を閉じたまま飲み込もうとした。その時だ。
突然、大蛇の頭後ろから炎が出た。炎は飲み込んだ大蛇の後頭部を突き抜け損傷を与えた。
後頭部が破れたことによって大蛇の顔は崩れ大破した。大蛇は樹木でできているので、崩れた顔が割れた木片へと化して首ごと崩壊した。
炎の中から現れたのは、大蛇に食べられた正輝だった。
そうだ。正輝はわざと大蛇に食べられたフリをして口の中から攻撃をしたのだ。
正輝の思惑通りに喰らうとはまるで、鴨が葱を背負って来るような大蛇の哀れさ。
宙を舞っている正輝は態勢を崩さぬよう整えていたが、すぐ次の攻撃がやって来た。
残り3匹の大蛇が宙に飛ぶ正輝を狙って来たのだ。
そして、聖炎によってできた麒麟は巨人に向かって突進してくる。
巨人は突進してきた麒麟を押さえる。
2匹目の大蛇が迫って来た時、正輝は宙に浮きながら身体を回しアクロバティックな動きで襲ってきた大蛇の攻撃を避けた。そして、大蛇の背に着地し身体を沿って真っすぐ走り出す。
3匹目の大蛇が2匹目の大蛇の頭上にいる正輝を狙って襲い来るも正輝は一切怯みもせず高く飛んだ。
口を大きく開けて牙を剥き出す3匹目の大蛇に向かって天帝主を横に振るう。
勢いが強まって大きく燃え盛る聖炎が鋭いナイフのように尖った天帝主が3匹目の大蛇の口を切り裂いた。
大きく開いた口から後頭部までスライスするかのように斬り顎下と顎上が離れ口が真っ二つになると萎(しお)れて枯れ身体が崩れた。
3匹目を撃退。すると、飛び台にして利用した2匹目の大蛇がこちらに迫ってくる。
再び宙に舞う正輝が振り向くと2匹目の大蛇が突進して襲いかかってきた。正輝は突進の勢いを利用して身体を左に捻って避ける。そして、隙をついた所を聖炎の斬撃を放つ。
斬撃は長く伸びた胴体にヒットし真っ二つに斬れた。斬れた2匹目の大蛇も朽ちて倒れた。
4匹中3匹を倒した。残りは一匹。
最期の一匹である大蛇が勢いよく宙に浮く正輝を狙う。その勢いはまるで仲間を倒した正輝に対する怒り、仲間の仇を討つようなそんな風に見えた。
勢いが増し怒りを覚える大蛇の姿に正輝は一切怯みをせず天帝主を前に出した。
刃先を大蛇の顔に向け燃え盛る聖炎が火炎放射となって凄まじい炎を放った。
大蛇は火炎放射の餌食となって炎に包まれた。
凄まじく強力で勢いがすごい天帝主による火炎放射は大蛇の身体を燃やし尽くした。
やがて爆炎が起き四匹目の大蛇は跡形もなく散った。
これでやっと片付いた。
正輝が息を吹いた瞬間、背後に黑緋神之命の姿が見えた。
黑緋神之命は自分の存在に気づいていない正輝に装着している金と土でできた猛獣の爪を振り下ろす。
猛獣の爪が正輝の背中を切り裂き本人を地上へ落とした。
正輝は強く身体を叩きつけられうつ伏せになったまま動かなかった。
これで死んだ。
と思いきや、正輝の身体が聖炎に包まれ消えた。
正輝の変わり身の術。黑緋神之命はこの程度で死ぬような奴じゃないと既に分かっていた。
すると、黑緋神之命の未来予知が発動した。
見えたその光景は麒麟と戦っている巨人が落ちるというビジョン。
そのビジョンを見てすぐさま黑緋神之命の手から炎の弓が現れた。
美しく紅色に燃える炎の弓を手に持ち静かに燃える火の矢を引いて構えた。
激しく交戦する巨人と麒麟は互いの身体をぶつけ合い一歩も引かず立ち向かっている。
麒麟の口から放つ光弾が巨人の身体にヒットするも巨人は倒れず休むこともなくナックルをかます。
そのナックルはとても重い一撃で麒麟は殴られた衝撃で体制を崩れかけるも踏ん張って倒れなかった。
お返しにと麒麟は強く頭突きをして食らわした。
頭突きで攻撃されても巨人は倒れず麒麟の前に立ち塞がる。
すると、巨人の後ろに聖炎と共に正輝の姿が現れた。
正輝は力強く天帝主を握ると聖炎の勢いが増し金色から赤金の色に染まり炎が大きくなった。
そして、赤金色に染まる聖炎の刃が巨人の首に届き勢いに乗せて綺麗な曲線を引いた。
刎ねた巨人の首は落ちて巨大な体も倒れ崩れ去った。
麒麟との対戦によって生み出された隙。正輝と麒麟の連係プレーが勝利を掴んだ。
巨人戦はこれにて一件落着。と思いきや突然、ドスッという何かに突き刺さった重い音が聞こえた。
正輝の胸に火の矢が刺さっていた。
突き刺された正輝は火のやら伝って来た炎が体中に巡り周りこの世の痛みとは思えないぐらい焼けるように熱く激しい痛みが体中に広がり口から大量の血が流れた。
そして、意識が朦朧とした彼の目に火の矢を放った黑緋神之命の姿が映る。
火の矢はちゃんと心臓に命中していて虫の息にまで追い込んだ。
射抜かれた後の正輝の姿を見て黑緋神之命は表情を全く変えず彼の死に様を見届けた。
正輝に関するビジョンは何も映っていないし見えない。未来予知は火の矢に射抜かれた正輝がまだ生きているという展開と様子は全く無いと判断し黑緋神之命には伝えなかった。
あの火の矢が正輝の息の根を止めたということになり、正輝の今後の未来はこれにて途絶えたのだ。
正輝が息を引き取れば聖炎により作られた麒麟は姿を消すであろう。
勝負あったと黑緋神之命は勝利感を噛み締めながら正輝の最期を見届ける。
後は、肉体から離れた正輝の魂を消去するだけだ。
そう思った矢先、火の矢に射抜かれた正輝の姿が炎と化し崩れた。
炎となって姿を消したという予想外の事態に黑緋神之命は「なにっ?!」と驚きを隠せなかった。
その時だ。麒麟がいきなり黑緋神之命を襲い頭突きしたのだ。
頭突きを受けた黑緋神之命は浮遊しながら止まった。
麒麟の姿形が消え流星の如くに大きな火の玉が黑緋神之命に向かって一直線で飛んできた。
その火の玉を見て黑緋神之命は気づいた。火の玉の中心に正輝がいたのだ。
正輝は火の玉の中で天帝主を構え迫りつつあった。突然の出来事に反撃する事はな黑緋神之命は身に付けている魔獣の爪を前に出して身を守った。
天帝主を構えた正輝は斬り込むのではなく身を固めた黑緋神之命を強く押した。
押されている黑緋神之命は彼の勢いに乗せられ壁に激突。気のせいだと言いたいが、背中に強い痛みを感じ激突した反動で身を守っていた体勢が崩れると火の玉から抜け出した正輝が連携を取るように彼の身体に斬り込みを入れた。
今、生れて初めて黑緋神之命にダメージを与えた。
黑緋神之命の表情が歪んだ。今まで冷酷非道で冷静であまり表情を変えなかった黑緋神之命の顔が今、歪んだのだ。
彼が初めて顔に感情が出たのは、未来予知に小日向と一反木綿の姿が映らなかったうえトコヤミ大神の心臓を破壊するよう正輝が仕向けたと思い抱いた怒りの感情。そして今は、正輝に受けた傷が疼き痛みを感じている歪みの表情。再び正輝を睨むと持ち前の神通力で彼を自分の側から離れさせた。
神通力を受けた正輝は吹き飛ばされるもうまく地上に着地した。
黑緋神之命は受けた傷を自らの手で触れついた血を見た。彼の手には真っ赤に染まった血がリアルに映る。
浮遊していた彼だったがゆっくりと地上に着地した。正輝に斬られた傷がはっきりと見えた。
神にもちゃんと血がある。
一発傷を与えたとはいえ、まだ油断はできない。
たった傷一つだけでは黑緋神之命を倒せないのだから。
すると、黑緋神之命は両手に身に着けていた猛獣の爪を解除した。そして、両手をクロスして指先に光が灯った。
クロスした両手を大きく動かし魔法陣を描いた。
その魔法陣は正輝が見て来たものとは少し違う気配を感じた。
「私に傷を負わせるとは敵ながら見事だな。だが、私の進撃は止まらん」
今回は詠唱がなく普通に話していた。
「未来予知というものを持って生まれたとはいえ、まさか私の能力を二度も陵駕するとは想像はつけなかった。能力にも欠点があるというのを今、思い知らせた」
黑緋神之命を傷を負わせたのは未来予知を逆らう方法を考えたからだ。でも、小日向と一反木綿がトコヤミ大神の体内にいて心臓を壊してくれたのは想定外中想定外の事態。本人も小日向と一反木綿が来ていたとは全く知らなかったのだから。
「私はこの禁呪で決着をつける。これは、神々に対抗する際、窮地に陥った時に使おうと思っていたが出し惜しみする必要はなくなった」
禁呪。あまりいい響きではない。
まさか、そんな隠し玉を持っていたとは。
禁呪の魔法陣が光り出した時、正輝は異様な空気を感じた。
怪しく光る魔法陣の前に正輝は強いプレッシャーを肌身にピリピリと感じる。
「正輝はーん!!」
どこかで聞き覚えのある声。ふと振り向くと頭上に一反木綿がいた。そして、背中には小日向がいる。
「小日向さん?!一反木綿!?」
正輝は驚きが隠せない顔で彼らの名を呼ぶ。
小日向は一反木綿の背に乗って大きな声で今の状況を教えようとした。
「正輝くん!今すぐここを脱出しよう!もうすぐ爆炎が─」
言いかけた途端、彼らの後ろから爆炎がこちらに押し寄せてきた。
爆炎がこの広間に入ろうとした瞬間、魔法陣が強く光り出し辺り一帯を飲み込んだ。
激しい衝撃と強風に正輝と一反木綿、小日向は風に煽られながらも吹き飛ばされないよう必死に耐えた。
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★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
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