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第五幕
襲撃(六)
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異様に輝きだす天帝主(あまのみかどぬし)に正輝は息を飲んだ。
刃は鋭く輝きが消えると刃先がキラリと光った。天帝主(あまのみかどぬし)を持つと何だか力強く感じる。そして、勇気が溢れ出してくる。
そして、温かくこの剣があれば大丈夫だとなぜか安心感が出る。
正輝は天帝主(あまのみかどぬし)という最強の剣を今、自分の手の中にあるのだ。
悪霊は異様に輝きだす聖剣に動揺したが、態勢を整え襲いかかろうとする。
聖剣 天帝主(あまのみかどぬし)の輝きは女にも届いていた。
あの輝きを見て女の虫の知らせを感じた。さっきの正輝とは少し違う。そんな気がしたのだ。
すると、悪霊の背中から一筋の光が差し込む。
悪霊は雄叫びを上げ体が崩れ始め塵となって散っていた。あの光が悪霊が持つ邪悪な闇の力を浄化させたのだ。
そして、塵となって消えた悪霊の前に天帝主(あまのみかどぬし)を手にした正輝の姿が見えた。
女は冷静に正輝を見るが、悪霊の死に全く怒りを覚えなかった。彼女は、悪霊化した妖怪はただの道具としか見えていない。悪霊が一匹二匹殺されようが特に何も思っていない。自分には全く関係ないという冷たい態度を示している。しかし、その道具が正輝の手で葬られた。
女は鋭い目つきで彼を見る。正輝は少し緊張した表情でこちらを睨む女を見る。両者は目を逸らさず静かにただ真っ直ぐ視線を送っていた。
沈黙の空気を破ったのは、女の方だ。
「お前。私と戦う気か?」
冷たい声で緊張を抱いている正輝に問う。
正輝自身は、今どう思っているのか?そして、覚悟が出来ているのか女はそれを訊ねる。
とても弱そうでただ見ているだけしかできない軟弱者が自分に歯向かおうなんて思ってもいない。
しかし、彼は天帝主(あまのみかどぬし)を抜いた瞬間、迫りに迫っていた悪霊を葬ったのだ。
悪霊を葬る勇気があったのなら、正輝は彼女に歯向かう勇気だってあるはず。
力がある者だけが全ての弱者を支配する。力ある者が女だということは、弱者は妖怪に当たる。
答えが出ない正輝に諭す。
「この世は今も尚、弱肉強食で強き者が弱き者を制する時代。力がある者が力無き者を支配するのは当然。お前みたいな人間もかつては、多くの命を奪い合い生きる為に争いを続けた。今の現時代でも弱き者を虐げ強き者が上に立つことが続いている。この世は不公平で汚く、愚かで嘘が充満し何も変わっていない。そして、人間は勝手な生き物で愚かで罪深く、生を授ける資格はない失敗作。バカな争いをし仲間を裏切り蹴落とし自分の事だけしか考えていない。そう。妖怪を苦しめているのも人間のせい。闇を奪われた妖怪は数多く人間を憎む者さえいる。そして、いつしか人間に忘れ去られた。〝欲望〟という人間の醜さのせいでな」
正輝は何も言わないまま彼女の話を聞き続けた。
「だが、私は妖怪なんてどうでもいい。この世の全ての人間を滅ぼし世界をリセットする為、妖怪を狩り兵器として使っている。妖怪の力を利用してな」
冷たい微笑みを浮かべる女。ぬらりひょん達は静かに女の言葉に耳を貸しながら黙視する。
「そんな愚かで軟弱な人間の貴様が、なぜ古臭い時代遅れの遺物である妖怪に就く?お前達がどう足掻(あが)こうとも戦況は変わらない。それでも、この私に挑むのか?貧弱で道具になるしか生きられない妖怪の為に?」
とても冷酷な発言に正輝は表情を強張りながらも彼女の問いに答えた。
「別に妖怪の為だけじゃない。お母さんや愛菜・・・一生懸命に生きている人達を守りたいだけ。明日が来ない明日なんて、僕は嫌だ!」
何のひよりもない勇気ある一言で反発する正輝に女は何の温もりもない冷たい目で
「つまり、この私に挑むという解釈でいいんだな?」
正輝は唾を飲み込み天帝主(あまのみかどぬし)を構える。
女は手を前に出した。すると、掌から黒紫色の炎が出てきた。暗黒の炎は激しく燃える。
「いいだろう。今、ここで1100年分の恨みを晴らしてやる」
そう言い女は激しく燃える暗黒の炎から火炎弾を放った。
火炎弾は勢いよく正輝の方へ襲う。
正輝は素早く天帝主(あまのみかどぬし)を振るい火炎弾を弾き返した。
しかし、女は止めることもなく火炎弾を放ち正輝を攻め続けた。正輝は容赦ない火炎弾の猛攻に抗いながらも攻撃を弾き返す。
手を休めてしまえば、火炎弾は正輝に当たり下手すればぬらりひょん達が巻き添えを喰らってしまう。天帝主(あまのみかどぬし)は重くて振るうだけで大変だが正輝は決して手を休めようとはしなかった。
火炎弾の猛攻が止むと続けて女が紫電の鞭を正輝に目掛けて放つ。
正輝はガードしようとするが、天帝主(あまのみかどぬし)が紫電の鞭に絡まってしまった。
鞭から紫電が流れる。このままでは、感電してしまうと思いきや天帝主(あまのみかどぬし)から金色の炎が出てきた。聖なる炎、つまり聖炎だ。
聖炎は鞭に伝って燃える。そして、流れていた紫電と混ざり合った。炎と雷の接触。燃え盛る炎の中に紫電が放出し広がる。
女は紫電の鞭を振りほどした。天帝主(あまのみかどぬし)は鞭から解放した。
正輝は覚悟を決めて女へ目掛けて走り出した。
両手に天帝主(あまのみかどぬし)を持って女の方へ走ると女は近寄らないよう紫電の鞭を放ち遠距離で攻めた。
正輝は足を止め放たれた紫電の鞭を天帝主(あまのみかどぬし)で弾いた。
女の猛攻が襲い正輝は紫電の鞭の攻撃を防ぐのが手一杯だった。初めて本物の剣を振るうとはいえ、問題なく天帝主(あまのみかどぬし)をうまく扱っていた。
激しい攻防戦を目の当たりにしているぬらりひょん達はただ呆然と見ているだけ。
川丸が正輝の所へ駆け寄ろうとすると猩々に止められた。猩々は正輝の邪魔をするなと首を振る。
正輝は女が鋭く放つ紫電の鞭を受け流しながすだけで疲れが出てきた。
息を切らし汗を滲ませているのは、正輝だけではない。女もそうだ。
このままでは埒が明かないと思った女は攻撃を止めた。
正輝は天帝主(あまのみかどぬし)を構えながら一歩も動こうとしない。
息を切らしながら正輝は強い眼差しで女を見る。
気に食わないのか女は舌打ちをした。
「私と対等にやり合うとは、生意気な・・・」
すると、天帝主(あまのみかどぬし)の刃から聖炎が噴き出した。
激しく燃え盛り強く光る聖炎は今でも闇を飲み込みそうな勢いで強く輝き燃え上がっている。
正輝は女に向けて聖炎を放とうとしたその時だ。
「わーーーーーっ!!」
後ろから悲鳴が上がった。
聖炎は消え正輝が振り返るとなんと、正輝とぬらりひょん達の後ろに悪霊がいたのだ。
しかも、悪霊の手の中には貉と太朗丸がいた。
いつの間にか、悪霊が彼らの後ろに近づいて来たのだ。
太朗丸と貉は悪霊の手の中でもがきながら叫んだ。
「くそーっ!離せー!!」
「離さんかい!このアホンダラ!!」
二人がどんな事を言ってもそう簡単に離さない悪霊。ぬらりひょん達は何とか助けてやりたいが、二人が捕まってしまったら太刀打ちができない。
すると、紫電の鞭が首に絡まった。女が隙をついて紫電の鞭で正輝を捕まえたのだ。
正輝は解こうと抵抗すると紫電の鞭から流れ出てきた電流が正輝の体に感電した。
感電した正輝は悲鳴を上げた。
その悲鳴を聞きつけたぬらりひょんと猩々は正輝の方へ走った。
「正輝!!」
紫電の鞭が解けた瞬間、正輝は気を失い倒れた。駆け寄った猩々は正輝は抱き起した。
「正輝!しっかりしろ!」
気を失った正輝の姿にぬらりひょんは険しい顔をして女を睨んだ。
女は紫電の鞭をしまいながら冷静な表情で言う。
「所詮は子供。そいつが子供だろうと奴の転生者なのは変わりない」
「転生者じゃと?」
「それよりもあいつをほっといていいのか?」
女が向いている視線を追うとそこには、太朗丸と貉を助けようとする川丸の姿が映った。
川丸は悪霊の体をよじ登ってしがみつき小さな手で顔を殴りながら叫んだ。
「兄(あん)ちゃんを離せ!!この!この!」
体にへばりつく川丸がしつこいのか悪霊は太朗丸を離した。その代わり、体にしがみつき顔を殴る川丸を捕まえた。
川丸は手足をジタバタしながら暴れる。
「そいつらでいい。戻って来い!」
女が声を上げると悪霊は高くジャンプし指示通り彼女の側へ行った。
そして、上空からヘリコプターの姿をした悪霊が降りてきた。
「そのガキを殺すのはまたの機会する。それと、ぬらりひょん、猩々。お前達を捕らえるのは諦めよう。だが、その代わりこの二人はいただくぞ」
悪霊に捕まった川丸は叫んだ。
「兄(あん)ちゃん!!」
自分の代わりに弟が捕まった太朗丸は体を起こし走り出す。
「川丸!!」
女は里内にいる悪霊達に号令をかけた。
「撤退だ!戻れ!」
すると、里内にいる悪霊達はぞろぞろと烏天狗の里を出て行った。川丸と貉を捕まえた悪霊も里の外へと走り去った。図体がでかい割に速い。
そして、女を乗せたヘリコプターの悪霊も上へと浮上した。
「もうすぐ、人間と妖怪の時代が終わる。お前達はもうこの世に必要ない愚物だ。この現時代は終わり我々の新時代が幕を開ける!材料が足りなくなったらまた来てやるからせいぜい怯えて待つがいい」
ヘリコプターの姿をした悪霊は空へと上昇し飛び去ろうとした。
すると、猩々が荒々しい声で叫んだ。
「待て!なぜ、貴様が正輝を殺そうとしている!?この子が一体何をした?貴様は何者だ!!」
叫ぶ猩々に女は自分の名を明かした。
「私の名は、滝夜叉姫。その小僧に伝えておけ!今度会ったら、貴様を殺してやると!」
刃は鋭く輝きが消えると刃先がキラリと光った。天帝主(あまのみかどぬし)を持つと何だか力強く感じる。そして、勇気が溢れ出してくる。
そして、温かくこの剣があれば大丈夫だとなぜか安心感が出る。
正輝は天帝主(あまのみかどぬし)という最強の剣を今、自分の手の中にあるのだ。
悪霊は異様に輝きだす聖剣に動揺したが、態勢を整え襲いかかろうとする。
聖剣 天帝主(あまのみかどぬし)の輝きは女にも届いていた。
あの輝きを見て女の虫の知らせを感じた。さっきの正輝とは少し違う。そんな気がしたのだ。
すると、悪霊の背中から一筋の光が差し込む。
悪霊は雄叫びを上げ体が崩れ始め塵となって散っていた。あの光が悪霊が持つ邪悪な闇の力を浄化させたのだ。
そして、塵となって消えた悪霊の前に天帝主(あまのみかどぬし)を手にした正輝の姿が見えた。
女は冷静に正輝を見るが、悪霊の死に全く怒りを覚えなかった。彼女は、悪霊化した妖怪はただの道具としか見えていない。悪霊が一匹二匹殺されようが特に何も思っていない。自分には全く関係ないという冷たい態度を示している。しかし、その道具が正輝の手で葬られた。
女は鋭い目つきで彼を見る。正輝は少し緊張した表情でこちらを睨む女を見る。両者は目を逸らさず静かにただ真っ直ぐ視線を送っていた。
沈黙の空気を破ったのは、女の方だ。
「お前。私と戦う気か?」
冷たい声で緊張を抱いている正輝に問う。
正輝自身は、今どう思っているのか?そして、覚悟が出来ているのか女はそれを訊ねる。
とても弱そうでただ見ているだけしかできない軟弱者が自分に歯向かおうなんて思ってもいない。
しかし、彼は天帝主(あまのみかどぬし)を抜いた瞬間、迫りに迫っていた悪霊を葬ったのだ。
悪霊を葬る勇気があったのなら、正輝は彼女に歯向かう勇気だってあるはず。
力がある者だけが全ての弱者を支配する。力ある者が女だということは、弱者は妖怪に当たる。
答えが出ない正輝に諭す。
「この世は今も尚、弱肉強食で強き者が弱き者を制する時代。力がある者が力無き者を支配するのは当然。お前みたいな人間もかつては、多くの命を奪い合い生きる為に争いを続けた。今の現時代でも弱き者を虐げ強き者が上に立つことが続いている。この世は不公平で汚く、愚かで嘘が充満し何も変わっていない。そして、人間は勝手な生き物で愚かで罪深く、生を授ける資格はない失敗作。バカな争いをし仲間を裏切り蹴落とし自分の事だけしか考えていない。そう。妖怪を苦しめているのも人間のせい。闇を奪われた妖怪は数多く人間を憎む者さえいる。そして、いつしか人間に忘れ去られた。〝欲望〟という人間の醜さのせいでな」
正輝は何も言わないまま彼女の話を聞き続けた。
「だが、私は妖怪なんてどうでもいい。この世の全ての人間を滅ぼし世界をリセットする為、妖怪を狩り兵器として使っている。妖怪の力を利用してな」
冷たい微笑みを浮かべる女。ぬらりひょん達は静かに女の言葉に耳を貸しながら黙視する。
「そんな愚かで軟弱な人間の貴様が、なぜ古臭い時代遅れの遺物である妖怪に就く?お前達がどう足掻(あが)こうとも戦況は変わらない。それでも、この私に挑むのか?貧弱で道具になるしか生きられない妖怪の為に?」
とても冷酷な発言に正輝は表情を強張りながらも彼女の問いに答えた。
「別に妖怪の為だけじゃない。お母さんや愛菜・・・一生懸命に生きている人達を守りたいだけ。明日が来ない明日なんて、僕は嫌だ!」
何のひよりもない勇気ある一言で反発する正輝に女は何の温もりもない冷たい目で
「つまり、この私に挑むという解釈でいいんだな?」
正輝は唾を飲み込み天帝主(あまのみかどぬし)を構える。
女は手を前に出した。すると、掌から黒紫色の炎が出てきた。暗黒の炎は激しく燃える。
「いいだろう。今、ここで1100年分の恨みを晴らしてやる」
そう言い女は激しく燃える暗黒の炎から火炎弾を放った。
火炎弾は勢いよく正輝の方へ襲う。
正輝は素早く天帝主(あまのみかどぬし)を振るい火炎弾を弾き返した。
しかし、女は止めることもなく火炎弾を放ち正輝を攻め続けた。正輝は容赦ない火炎弾の猛攻に抗いながらも攻撃を弾き返す。
手を休めてしまえば、火炎弾は正輝に当たり下手すればぬらりひょん達が巻き添えを喰らってしまう。天帝主(あまのみかどぬし)は重くて振るうだけで大変だが正輝は決して手を休めようとはしなかった。
火炎弾の猛攻が止むと続けて女が紫電の鞭を正輝に目掛けて放つ。
正輝はガードしようとするが、天帝主(あまのみかどぬし)が紫電の鞭に絡まってしまった。
鞭から紫電が流れる。このままでは、感電してしまうと思いきや天帝主(あまのみかどぬし)から金色の炎が出てきた。聖なる炎、つまり聖炎だ。
聖炎は鞭に伝って燃える。そして、流れていた紫電と混ざり合った。炎と雷の接触。燃え盛る炎の中に紫電が放出し広がる。
女は紫電の鞭を振りほどした。天帝主(あまのみかどぬし)は鞭から解放した。
正輝は覚悟を決めて女へ目掛けて走り出した。
両手に天帝主(あまのみかどぬし)を持って女の方へ走ると女は近寄らないよう紫電の鞭を放ち遠距離で攻めた。
正輝は足を止め放たれた紫電の鞭を天帝主(あまのみかどぬし)で弾いた。
女の猛攻が襲い正輝は紫電の鞭の攻撃を防ぐのが手一杯だった。初めて本物の剣を振るうとはいえ、問題なく天帝主(あまのみかどぬし)をうまく扱っていた。
激しい攻防戦を目の当たりにしているぬらりひょん達はただ呆然と見ているだけ。
川丸が正輝の所へ駆け寄ろうとすると猩々に止められた。猩々は正輝の邪魔をするなと首を振る。
正輝は女が鋭く放つ紫電の鞭を受け流しながすだけで疲れが出てきた。
息を切らし汗を滲ませているのは、正輝だけではない。女もそうだ。
このままでは埒が明かないと思った女は攻撃を止めた。
正輝は天帝主(あまのみかどぬし)を構えながら一歩も動こうとしない。
息を切らしながら正輝は強い眼差しで女を見る。
気に食わないのか女は舌打ちをした。
「私と対等にやり合うとは、生意気な・・・」
すると、天帝主(あまのみかどぬし)の刃から聖炎が噴き出した。
激しく燃え盛り強く光る聖炎は今でも闇を飲み込みそうな勢いで強く輝き燃え上がっている。
正輝は女に向けて聖炎を放とうとしたその時だ。
「わーーーーーっ!!」
後ろから悲鳴が上がった。
聖炎は消え正輝が振り返るとなんと、正輝とぬらりひょん達の後ろに悪霊がいたのだ。
しかも、悪霊の手の中には貉と太朗丸がいた。
いつの間にか、悪霊が彼らの後ろに近づいて来たのだ。
太朗丸と貉は悪霊の手の中でもがきながら叫んだ。
「くそーっ!離せー!!」
「離さんかい!このアホンダラ!!」
二人がどんな事を言ってもそう簡単に離さない悪霊。ぬらりひょん達は何とか助けてやりたいが、二人が捕まってしまったら太刀打ちができない。
すると、紫電の鞭が首に絡まった。女が隙をついて紫電の鞭で正輝を捕まえたのだ。
正輝は解こうと抵抗すると紫電の鞭から流れ出てきた電流が正輝の体に感電した。
感電した正輝は悲鳴を上げた。
その悲鳴を聞きつけたぬらりひょんと猩々は正輝の方へ走った。
「正輝!!」
紫電の鞭が解けた瞬間、正輝は気を失い倒れた。駆け寄った猩々は正輝は抱き起した。
「正輝!しっかりしろ!」
気を失った正輝の姿にぬらりひょんは険しい顔をして女を睨んだ。
女は紫電の鞭をしまいながら冷静な表情で言う。
「所詮は子供。そいつが子供だろうと奴の転生者なのは変わりない」
「転生者じゃと?」
「それよりもあいつをほっといていいのか?」
女が向いている視線を追うとそこには、太朗丸と貉を助けようとする川丸の姿が映った。
川丸は悪霊の体をよじ登ってしがみつき小さな手で顔を殴りながら叫んだ。
「兄(あん)ちゃんを離せ!!この!この!」
体にへばりつく川丸がしつこいのか悪霊は太朗丸を離した。その代わり、体にしがみつき顔を殴る川丸を捕まえた。
川丸は手足をジタバタしながら暴れる。
「そいつらでいい。戻って来い!」
女が声を上げると悪霊は高くジャンプし指示通り彼女の側へ行った。
そして、上空からヘリコプターの姿をした悪霊が降りてきた。
「そのガキを殺すのはまたの機会する。それと、ぬらりひょん、猩々。お前達を捕らえるのは諦めよう。だが、その代わりこの二人はいただくぞ」
悪霊に捕まった川丸は叫んだ。
「兄(あん)ちゃん!!」
自分の代わりに弟が捕まった太朗丸は体を起こし走り出す。
「川丸!!」
女は里内にいる悪霊達に号令をかけた。
「撤退だ!戻れ!」
すると、里内にいる悪霊達はぞろぞろと烏天狗の里を出て行った。川丸と貉を捕まえた悪霊も里の外へと走り去った。図体がでかい割に速い。
そして、女を乗せたヘリコプターの悪霊も上へと浮上した。
「もうすぐ、人間と妖怪の時代が終わる。お前達はもうこの世に必要ない愚物だ。この現時代は終わり我々の新時代が幕を開ける!材料が足りなくなったらまた来てやるからせいぜい怯えて待つがいい」
ヘリコプターの姿をした悪霊は空へと上昇し飛び去ろうとした。
すると、猩々が荒々しい声で叫んだ。
「待て!なぜ、貴様が正輝を殺そうとしている!?この子が一体何をした?貴様は何者だ!!」
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