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第五幕
襲撃(四)
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しかし、天帝主(あまのみかどぬし)は抜けなかった。
何度も力を入れて引き抜こうとしてもビクともしないし肝心の結晶玉が光らない。
なぜ、抜けないのか正輝は分からなかった。
「なんで、抜けないんだ?」
疑問に思いながらも天帝主(あまのみかどぬし)が抜けない正輝に妖怪達はざわついた。
その様子を見る長老はその理由を教えた。
「今のお主に足りないものがあるからじゃ」
「足りないもの?」
「天帝主(あまのみかどぬし)が抜けない原因。それは、お主の勇気と覇気が足りないからじゃ」
勇気と覇気が足りない。
その答えに正輝は納得していないか認めていない。
「そんな・・・。僕は十分、勇気と覇気はあるはず」
そう。愛菜やみんなを守る為に悪霊軍団と戦う。その覚悟と勇気は十分あると思っている。
でなければ、わざわざ猩々達の頼みを応えていないし烏天狗の里にも来ていない。
しかし、長老は正輝がみんなと戦う勇気と覇気があることを否定した。
「お主には、悪霊軍団と立ち向かう勇気と覇気が足りないのじゃ。戦うことの恐怖と不安に支配されているせいで天帝主(あまのみかどぬし)の結晶玉が光らず抜けないのだ」
その言葉に正輝は動揺した。
長老が言った事は全て正しかったのだ。正輝は烏天狗の里に辿り着く前に悪霊軍団との戦いが怖くいうえ、日本また世界の運命は自分がかかっていることに強い不安とプレッシャーが襲い正輝の自信をどんどんなくしているのだ。
妖怪達から正輝の事を大いに期待しているし一つ目小僧を襲っていたあの凶暴な悪霊みたいな怪物がたくさんいると考えると恐ろしく怖くて自信がなくただ単に不安が募りに募って悪霊軍団に挑む勇気と立ち向かおうとする覇気が弱くなってしまい正輝の強い気持ちが天帝主(あまのみかどぬし)に届かなかった。
勇気と覇気が足りない軟弱な正輝を見て妖怪達は心配の声が飛び交いさっきまでの熱気に溢れた空気がガラリと変わった。
「聖剣が抜けないなんて・・・」
「どうするんだ?このままじゃ」
「俺達、負けるのかな?」
「外神真太郎の子孫なのに・・・」
「こいつが聖戦士で間違いないのか?」
妖怪達の不安と疑問が里中に飛び交う中、川丸と亀姫は淋しさを感じる正輝の背中を見て何も言えず声も出ずただ、見ることしかできなかった。
猩々は困った顔をして正輝を見る。正輝の表情は暗くじっと抜けない天帝主(あまのみかどぬし)を見つめていた。
まるで、期待を裏切られたかのような重い空気が広がり妖怪達の視線が正輝を襲う。
天帝主(あまのみかどぬし)が抜けないなら正輝はただの人間の子供だ。外神真太郎の血だけを持つ普通の男の子だ。つまり、猩々達が彼を連れて来たことは無駄だったというわけだ。
困った猩々達はどうすればいいいのか考えたが、良い案が浮かばない。
すると、ぬらりひょんが
「まぁ、無理もない。突然、世界を救ってくれと言われたら誰だって戸惑う。今のお主は勇気と覇気は足りないが、外神真太郎の子孫だという事は変わりない。聖戦士 草壁正輝よ。もう一度、抜いてみるんだ。次は本当の勇気と覇気を持ってばきっと─」
「無理だよ」
「なに?」
正輝が言いかけた途端、ぬらりひょんは眉間を寄せる。
「僕には無理だ。だって、あんな恐ろしい奴らと戦うなんて僕にはできない。猩々達と出会った時は、日本と世界を守ろうって決心ついていたけど、思い返すとあんな凶暴な怪物みたいな奴らがたくさんいてそいつらと戦う事を想像すると怖くなるんだ。それに、僕のせいで負けたらどうしようって思っちゃうし、本物の剣を触った事も使った事もない。本当は、断りたかった。断って家に帰ればよかったんだ。僕が外神真太郎の子孫だから聖戦士だからって、そんなの僕には関係ない」
正輝は心の中で思っていた本音を口に出す。
本当は怖くて不安で嫌だったこと。断ってそのまま家に帰ればよかったと後悔したこと。
募りに募った正輝の気持ちをぬらりひょんと妖怪達にぶつける。
「関係なくはない。お主は外神真太郎の血を引いていてこの日本を世界を救う聖戦士なのは間違いない」
ぬらりひょんが説得しようとすると正輝は迷惑そうな表情を滲ませながら言った。
「それは、あんた達の都合でしょ?こんなにたくさん妖怪がいるなら僕がいなくても大丈夫でしょ?あんた、妖怪の総大将だろ?だったら、僕がいなくても悪霊軍団に打ち勝つ方法があるはずだ。こんな臆病な聖戦士がいるんじゃ、みんなの足手まといになるだろう?」
「しかし」
「それに、先祖はすごい人だったらしいけど僕は違う。僕は先祖とは違ってそんなにすごい人間じゃない。普通の人間で普通の子供だ。特別な血を引いているとしても普通の人間だという事は変わりないんだ。それに、こっちは貉に騙されながらもいろいろ遭って大変だったんだ。人を騙して世界を日本を救ってほしいなんて話が上手すぎる」
諦めかけている正輝に猩々は言った。
「確かに、お前さんを騙した事は深く詫び申し上げる。だが、本当にお前さんの力が必要なのだ。先代の聖戦士もお前さんと年が近い子供だった。特に三代目は歴代最年少を誇る8歳で日本を守る為に戦った。わしらもここにいる妖怪達も先代達のすごさを十分知っている。そして、お前さんと同様、最初は恐れて逃げ出したいという聖戦士もいた。だが、その弱さを克服したからこそ歴代の聖戦士達は立派に戦い世界の平穏を守ってくれたのだ。お前さんが戦う勇気がないのは十分承知。だが、勇気と覇気がなくても間違いなくお前さんは七代目─」
「もういい」
猩々が言いかけた話を正輝はかき消した。
「聖戦士だろうが子孫だろうが、僕は僕だ。せっかく期待していたところ悪いけど、やっぱり僕には無理だ。僕より別の子に頼んだほうがいいよ」
悪霊軍団と戦う事を諦める正輝に猩々達は何も言わなかった。
里中は静まり沈黙の空気が広がっていた。このままでは、妖怪達は悪霊軍団に勝つ見込みがなくなってしまう。
そして、日本も世界も終末へと進んでしまう。これだけは、何としてでも避けたいが、肝心の聖戦士が諦めてしまっては示しがつかない。
過去にも不安に襲われて弱音を吐いた聖戦士もいたが、正輝は別だ。ここまで抵抗するとは猩々達は思わなかっただろう。
川丸は彼を元気づける言葉はないか探したが何も見つからなかった。
天帝主(あまのみかどぬし)を持ちながらも俯いている正輝はそれ以上、何も言わなかった。はっきりと本音を言ったもののあまり心は軽くなかった。
沈黙の時間はしばらく続いた。
その時だ。長老が突然、空を見上げた。ぬらりひょんも空を見上げる。
「長老」
ぬらりひょんが言いかけると長老は分かっているかのように
「わかっておる。何か来る」
その一言に正輝は俯いていた顔を上げた。
音が聞こえる。風の音だと思ったが、少し違う。
その音は、正輝が聞いた事がある音だった。
妖怪達が里の空を見上げると強い風が吹いてきた。そして、風と共に現れたのは、プロペラを回転させている怪物の姿だった。上空には、翼を生やした怪物の姿も見える。
妖怪達がどよめいた瞬間、翼の生えた怪物が地上に降りてきた。
正輝が見たのと姿形は違うが、はっきりと分かる。
悪霊だ。
そして、その悪霊達の中に一人の女が飛び降りてきた。
烏天狗の里に降り立った女はとても冷たく鋭い目をしていた。美しくもあって冷酷さを感じる人間の女だ。
その女を見た瞬間、空気がピリッとなり長老とぬらりひょん、猩々が怖い顔を見せた。
女の妖気を感じたか亀姫達は一歩後退った。
「ここが烏天狗の里か。思っていたよりわんさかいるじゃないか」
女は笑みを浮かべる。その笑みは冷たかった。女の周りには、悪霊達が囲み里にいる妖怪達を睨んでいる。
正輝は何も言わずとも彼女を一目見た瞬間、背筋がゾッとした。
彼女は普通の人間じゃないと。
長老は険しい顔で目の前にいる女に問う。
「お主、何者だ!?」
大三郎が腰に掛けた刀を抜き構える。
しかし、女は長老の質問に答えない。
「あのお方の道具になるお前達に名乗る必要はない」
女は目の前にいる妖怪達を見て気づいた。
「ほお。まさか、ここで総大将と呼ばれているぬらりひょんに霊獣 猩々とここで遭遇するとは運が良いな。それに、そこのひげ面の爺は烏天狗の長だな?」
「いかにも」
長老は女の問いに答えた。
「烏天狗の長も然り、ぬらりひょんと猩々は大変貴重な妖怪。悪霊化させればより強力な兵士にする事ができるだろう。ここで仕留めたいものだ」
女の言葉に猩々は反応した。
「今、悪霊と言ったか?」
冷酷な笑みを浮かべる女は悪霊達に号令をかけた。
「里中の妖怪どもをひっ捕らえろ!!」
すると、悪霊達が女の指示通りに動き出し妖怪達を捕まえ始めた。
妖怪達は悪霊達に襲われながら悲鳴を上げ押し寄せる波のように一斉に逃げ出した。
里中は大混乱。警備をしていた烏天狗は逃げる妖怪達を守ろうと必死に悪霊と立ち向かう。
しかし、悪霊の数が多いせいか空から次々と悪霊達が下りてきて逃げ惑う妖怪を片っ端から捕まえて鉄の牢にぶち込んだりしていた。
「なぜじゃ。里の周りには侵入者を防ぐよう結界を張ったうえ多くの烏天狗に見張らせていたはず」
烏天狗の里の周りには何人たりとも侵入者を里内に入らせないよう部下の見張りと結界を張って警備を固めていたはずが、悪霊軍団に里の侵入を許してしまった事態を知った長老は動揺した。
動揺する長老を見て女は得意げに言う。
「あんな役に立たない手下共と結界で私達の進軍を止められるとも?」
すると、大三郎が長老に
「長老。ぬらりひょん殿達と共にお逃げください。ここは私にお任せを」
そう言い地面蹴って女の方へ真っ直ぐ向かった。
「待つんじゃ!」
長老は奇襲をかける大三郎を止めようとしたがもう遅かった。
何度も力を入れて引き抜こうとしてもビクともしないし肝心の結晶玉が光らない。
なぜ、抜けないのか正輝は分からなかった。
「なんで、抜けないんだ?」
疑問に思いながらも天帝主(あまのみかどぬし)が抜けない正輝に妖怪達はざわついた。
その様子を見る長老はその理由を教えた。
「今のお主に足りないものがあるからじゃ」
「足りないもの?」
「天帝主(あまのみかどぬし)が抜けない原因。それは、お主の勇気と覇気が足りないからじゃ」
勇気と覇気が足りない。
その答えに正輝は納得していないか認めていない。
「そんな・・・。僕は十分、勇気と覇気はあるはず」
そう。愛菜やみんなを守る為に悪霊軍団と戦う。その覚悟と勇気は十分あると思っている。
でなければ、わざわざ猩々達の頼みを応えていないし烏天狗の里にも来ていない。
しかし、長老は正輝がみんなと戦う勇気と覇気があることを否定した。
「お主には、悪霊軍団と立ち向かう勇気と覇気が足りないのじゃ。戦うことの恐怖と不安に支配されているせいで天帝主(あまのみかどぬし)の結晶玉が光らず抜けないのだ」
その言葉に正輝は動揺した。
長老が言った事は全て正しかったのだ。正輝は烏天狗の里に辿り着く前に悪霊軍団との戦いが怖くいうえ、日本また世界の運命は自分がかかっていることに強い不安とプレッシャーが襲い正輝の自信をどんどんなくしているのだ。
妖怪達から正輝の事を大いに期待しているし一つ目小僧を襲っていたあの凶暴な悪霊みたいな怪物がたくさんいると考えると恐ろしく怖くて自信がなくただ単に不安が募りに募って悪霊軍団に挑む勇気と立ち向かおうとする覇気が弱くなってしまい正輝の強い気持ちが天帝主(あまのみかどぬし)に届かなかった。
勇気と覇気が足りない軟弱な正輝を見て妖怪達は心配の声が飛び交いさっきまでの熱気に溢れた空気がガラリと変わった。
「聖剣が抜けないなんて・・・」
「どうするんだ?このままじゃ」
「俺達、負けるのかな?」
「外神真太郎の子孫なのに・・・」
「こいつが聖戦士で間違いないのか?」
妖怪達の不安と疑問が里中に飛び交う中、川丸と亀姫は淋しさを感じる正輝の背中を見て何も言えず声も出ずただ、見ることしかできなかった。
猩々は困った顔をして正輝を見る。正輝の表情は暗くじっと抜けない天帝主(あまのみかどぬし)を見つめていた。
まるで、期待を裏切られたかのような重い空気が広がり妖怪達の視線が正輝を襲う。
天帝主(あまのみかどぬし)が抜けないなら正輝はただの人間の子供だ。外神真太郎の血だけを持つ普通の男の子だ。つまり、猩々達が彼を連れて来たことは無駄だったというわけだ。
困った猩々達はどうすればいいいのか考えたが、良い案が浮かばない。
すると、ぬらりひょんが
「まぁ、無理もない。突然、世界を救ってくれと言われたら誰だって戸惑う。今のお主は勇気と覇気は足りないが、外神真太郎の子孫だという事は変わりない。聖戦士 草壁正輝よ。もう一度、抜いてみるんだ。次は本当の勇気と覇気を持ってばきっと─」
「無理だよ」
「なに?」
正輝が言いかけた途端、ぬらりひょんは眉間を寄せる。
「僕には無理だ。だって、あんな恐ろしい奴らと戦うなんて僕にはできない。猩々達と出会った時は、日本と世界を守ろうって決心ついていたけど、思い返すとあんな凶暴な怪物みたいな奴らがたくさんいてそいつらと戦う事を想像すると怖くなるんだ。それに、僕のせいで負けたらどうしようって思っちゃうし、本物の剣を触った事も使った事もない。本当は、断りたかった。断って家に帰ればよかったんだ。僕が外神真太郎の子孫だから聖戦士だからって、そんなの僕には関係ない」
正輝は心の中で思っていた本音を口に出す。
本当は怖くて不安で嫌だったこと。断ってそのまま家に帰ればよかったと後悔したこと。
募りに募った正輝の気持ちをぬらりひょんと妖怪達にぶつける。
「関係なくはない。お主は外神真太郎の血を引いていてこの日本を世界を救う聖戦士なのは間違いない」
ぬらりひょんが説得しようとすると正輝は迷惑そうな表情を滲ませながら言った。
「それは、あんた達の都合でしょ?こんなにたくさん妖怪がいるなら僕がいなくても大丈夫でしょ?あんた、妖怪の総大将だろ?だったら、僕がいなくても悪霊軍団に打ち勝つ方法があるはずだ。こんな臆病な聖戦士がいるんじゃ、みんなの足手まといになるだろう?」
「しかし」
「それに、先祖はすごい人だったらしいけど僕は違う。僕は先祖とは違ってそんなにすごい人間じゃない。普通の人間で普通の子供だ。特別な血を引いているとしても普通の人間だという事は変わりないんだ。それに、こっちは貉に騙されながらもいろいろ遭って大変だったんだ。人を騙して世界を日本を救ってほしいなんて話が上手すぎる」
諦めかけている正輝に猩々は言った。
「確かに、お前さんを騙した事は深く詫び申し上げる。だが、本当にお前さんの力が必要なのだ。先代の聖戦士もお前さんと年が近い子供だった。特に三代目は歴代最年少を誇る8歳で日本を守る為に戦った。わしらもここにいる妖怪達も先代達のすごさを十分知っている。そして、お前さんと同様、最初は恐れて逃げ出したいという聖戦士もいた。だが、その弱さを克服したからこそ歴代の聖戦士達は立派に戦い世界の平穏を守ってくれたのだ。お前さんが戦う勇気がないのは十分承知。だが、勇気と覇気がなくても間違いなくお前さんは七代目─」
「もういい」
猩々が言いかけた話を正輝はかき消した。
「聖戦士だろうが子孫だろうが、僕は僕だ。せっかく期待していたところ悪いけど、やっぱり僕には無理だ。僕より別の子に頼んだほうがいいよ」
悪霊軍団と戦う事を諦める正輝に猩々達は何も言わなかった。
里中は静まり沈黙の空気が広がっていた。このままでは、妖怪達は悪霊軍団に勝つ見込みがなくなってしまう。
そして、日本も世界も終末へと進んでしまう。これだけは、何としてでも避けたいが、肝心の聖戦士が諦めてしまっては示しがつかない。
過去にも不安に襲われて弱音を吐いた聖戦士もいたが、正輝は別だ。ここまで抵抗するとは猩々達は思わなかっただろう。
川丸は彼を元気づける言葉はないか探したが何も見つからなかった。
天帝主(あまのみかどぬし)を持ちながらも俯いている正輝はそれ以上、何も言わなかった。はっきりと本音を言ったもののあまり心は軽くなかった。
沈黙の時間はしばらく続いた。
その時だ。長老が突然、空を見上げた。ぬらりひょんも空を見上げる。
「長老」
ぬらりひょんが言いかけると長老は分かっているかのように
「わかっておる。何か来る」
その一言に正輝は俯いていた顔を上げた。
音が聞こえる。風の音だと思ったが、少し違う。
その音は、正輝が聞いた事がある音だった。
妖怪達が里の空を見上げると強い風が吹いてきた。そして、風と共に現れたのは、プロペラを回転させている怪物の姿だった。上空には、翼を生やした怪物の姿も見える。
妖怪達がどよめいた瞬間、翼の生えた怪物が地上に降りてきた。
正輝が見たのと姿形は違うが、はっきりと分かる。
悪霊だ。
そして、その悪霊達の中に一人の女が飛び降りてきた。
烏天狗の里に降り立った女はとても冷たく鋭い目をしていた。美しくもあって冷酷さを感じる人間の女だ。
その女を見た瞬間、空気がピリッとなり長老とぬらりひょん、猩々が怖い顔を見せた。
女の妖気を感じたか亀姫達は一歩後退った。
「ここが烏天狗の里か。思っていたよりわんさかいるじゃないか」
女は笑みを浮かべる。その笑みは冷たかった。女の周りには、悪霊達が囲み里にいる妖怪達を睨んでいる。
正輝は何も言わずとも彼女を一目見た瞬間、背筋がゾッとした。
彼女は普通の人間じゃないと。
長老は険しい顔で目の前にいる女に問う。
「お主、何者だ!?」
大三郎が腰に掛けた刀を抜き構える。
しかし、女は長老の質問に答えない。
「あのお方の道具になるお前達に名乗る必要はない」
女は目の前にいる妖怪達を見て気づいた。
「ほお。まさか、ここで総大将と呼ばれているぬらりひょんに霊獣 猩々とここで遭遇するとは運が良いな。それに、そこのひげ面の爺は烏天狗の長だな?」
「いかにも」
長老は女の問いに答えた。
「烏天狗の長も然り、ぬらりひょんと猩々は大変貴重な妖怪。悪霊化させればより強力な兵士にする事ができるだろう。ここで仕留めたいものだ」
女の言葉に猩々は反応した。
「今、悪霊と言ったか?」
冷酷な笑みを浮かべる女は悪霊達に号令をかけた。
「里中の妖怪どもをひっ捕らえろ!!」
すると、悪霊達が女の指示通りに動き出し妖怪達を捕まえ始めた。
妖怪達は悪霊達に襲われながら悲鳴を上げ押し寄せる波のように一斉に逃げ出した。
里中は大混乱。警備をしていた烏天狗は逃げる妖怪達を守ろうと必死に悪霊と立ち向かう。
しかし、悪霊の数が多いせいか空から次々と悪霊達が下りてきて逃げ惑う妖怪を片っ端から捕まえて鉄の牢にぶち込んだりしていた。
「なぜじゃ。里の周りには侵入者を防ぐよう結界を張ったうえ多くの烏天狗に見張らせていたはず」
烏天狗の里の周りには何人たりとも侵入者を里内に入らせないよう部下の見張りと結界を張って警備を固めていたはずが、悪霊軍団に里の侵入を許してしまった事態を知った長老は動揺した。
動揺する長老を見て女は得意げに言う。
「あんな役に立たない手下共と結界で私達の進軍を止められるとも?」
すると、大三郎が長老に
「長老。ぬらりひょん殿達と共にお逃げください。ここは私にお任せを」
そう言い地面蹴って女の方へ真っ直ぐ向かった。
「待つんじゃ!」
長老は奇襲をかける大三郎を止めようとしたがもう遅かった。
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