妖魔大決戦

左藤 友大

文字の大きさ
上 下
11 / 86
第二幕

河童の川丸(四)

しおりを挟む
六時限目の授業終了のチャイムが鳴り生徒達は教科書と筆箱を机の中にしまい席を立ちあがった。
掃除タイムが始まったのだ。
生徒達は掃除する各教室へ行った。正輝は、自分の教室の掃除当番なので椅子を机の上に乗せた。自分が座っている机だけではなく他の子達の机の上にも椅子を乗せ後ろへ運んだのだ。

同じ教室当番である二人の男子が濡れた雑巾で教室の床を拭いていると正輝は箒で床に落ちているゴミを掃きちりとりに掃いたゴミを集めていた。男子三人が雑巾や箒で掃除しているとクラスメイトの女子は窓の外で汚れた黒板消しの裏側を叩いていた。黒板消しの裏側は叩いた衝撃で白とピンク、黄色に緑が混じった煙が宙に舞った。
いよいよ明後日は、一学期の終業式が行われその翌日は夏休みに入る。
正輝は夏休みどこへ行こうかまだ決めていない。もしかすると、受験勉強の毎日を過ごすかも知れない。
受験は今年の12月行われる。担任の先生にもちゃんと受験対策するようにと言われている。正輝にとって今回が初の受験勉強なので本当はやりたくない気持ちでいっぱいだった。でも、否が応でも高校受験に合格する為に勉強しなければならない。
最期の中学生活だというのに勉強漬けなのは受験生の一番辛いところだ。

教室の掃除が終わりホームルーム後、部活があるので体育着に着替えようとした時、廊下から担任の先生が正輝を呼んだ。
「草壁くん」
正輝は半袖ワイシャツのボタンを外していたところだった。
すると、衝撃な言葉が出た。
「さっき、君のお母さんから連絡が着てお爺さんが緊急入院したそうだ」
「えっ!?」
あまりの唐突に正輝は驚いた。
「お母さんが病院で待っているから今日は、部活に出ないでそのまま帰りなさい。松本先生には俺が伝えておく」
「わ、分かりました!」
有蔵が緊急入院!?
正輝はあまりの驚きに激しく動揺した。そして、外していたボタンをとめて学生鞄とサブバッグを手に取り教室を出た。

学校を出た後、正輝は必死で自転車を立ち漕ぎしながら有蔵が入院している病院へ向かっていた。
顔には大粒の汗が額から流れ息を切らしていた。
晴れている空はまだ青かったが太陽は少しずつ沈んでいた。
セミの鳴き声に包まれながら正輝は急いで病院へ向かった。

駐輪場に自転車を置き病院に着くと正輝はスマホを取り出した。すると、スマホのロック画面に母 真理子からのLINEメッセージが着ていた。
急いで自転車を漕いでいたもんだから全く気づかなかった。LINEメッセージの通知をスワイプしロックを解除するとLINE画面が映った。
真理子から着たメッセージの内容では手術室の出入口前にいるみたいだ。きっと、有蔵が手術を受けているんだと思った正輝は、メッセージを読んだ後、手術室の出入口前へ向かった。

病院内を走るのはよくないので正輝は心を落ち着かせながら真理子がいる手術室の出入口前へ目指して歩いていた。
すると、真理子の姿が見えた。真理子は長椅子に座っていた。そして、手術室の出入口前には真理子だけではなく橋本夫婦もいた。
「お母さん」
正輝が声をかけると真理子は病院に来た息子の方に顔を向けた。
「正輝」
「爺ちゃんは?」
真理子は長椅子から立ち上がった。
「今、手術を受けているわ」
「爺ちゃん。なんで、緊急入院したの?」
「分からない。お爺ちゃんの手術が終わったら詳しい話をしてくれるわ」
正輝は橋本夫婦に目を遣った。
「どうして、友一さんと雅さんがここに?」
正輝の質問に友一は答えた。
「今日、君のお爺さんと将棋を指す約束をしていて家に行ったら倒れていたんだよ」
真理子は言った。
「友一さんが家に来て病院に連絡してくれなかったら手遅れになってたかもしれない。本当に連絡していただきありがとうございます」
真理子がお礼を言うと友一はいやいやと手を軽く振った。
正輝は手術室の方を見ると手術室のランプが赤くなっていた。あの中に、有蔵が手術を受けているのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...