妖魔大決戦

左藤 友大

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第二幕

河童の川丸(三)

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四時限目終了のチャイムが鳴りだした。
生徒達は席を立ち授業を担当している先生に終わりの挨拶をした後、みんな弁当箱やコンビニで買った食べ物を持って昼食を取ろうしていた。

正輝と克己は、隣クラスにいる萩山と同じクラスにいる水原 雄二(みずはら ゆうじ)と住井 智(すみい さとし)と一緒に昼食を取っていた。
「正直に言え。どうやって清水さんと友達になった?」
水原は正輝に訊いた。
「だから、友達になった憶えはないってば」
正輝は答えた。
由夏と正輝が会話していた事はすでに男子達に噂されていた。
正輝は友達になった覚えはないと一点張り。この質問に嫌がっている正輝を見て住井と萩山、克己は面白がっていた。
「草壁氏。清水さんと話していかがでしたか?」
萩山はマイクのつもりで使っている自分の箸を正輝に近づかせた。
「どうって。別に何も」
正輝は表情を変えず嫌々な顔をして答えた。正輝は、由夏と会話する事は普通だと思っているのだ。しかし、克己達にとっては普通でもなかった。
「別にって。あの子自ら声をかけるなんて、なかなかないんだぜ?」
住井は由夏から声をかけてもらえる事は珍しいんだと教えた。
しかし、正輝は無表情で「そうなんだ」と言った。無表情で何とも思っていない正輝を見て克己達は少々呆れていた。相手は、学校一のマドンナ。男子達の憧れでもありアイドル的存在。由夏に声をかけるなんてとても勇気がある人だけしかいない。
しかし、正輝はアイドル的存在である清水由夏を何とも思っていない。アイドルというより普通の女子だと思っている。正輝は恋愛に関しては鈍感みたいだ。清水由夏本人から声をかけてもらえるなんて他の男子達にとってはとても羨ましく思う事だ。しかし、正輝は彼女は爽やかで美人だという事は、知っている。しかし、彼女が美人でも正輝は何とも思っていない。
ズバリ、正輝は全く恋愛には興味ないのだ。
「彼女の良い所が分からないとは。君という奴は・・・」
水野は正輝の女子に対する興味無さに言葉が出なかった。
すると、克己は箸持った手で人差し指を立てた。
「夏といえば、スイカと花火と女だろ?!夏は女子と一緒に熱い青春を作る季節だろ!」
克己の発言に萩山と水原、住井は「それ!」と人差し指で指した。
「スイカと花火で十分だろ」
正輝は学校の自販機で買った水のペットボトルの蓋を開けて飲んだ。
「いやいやいや!女!女も必要だぞ!!」
克己はやたらに女という言葉を主張している。
中学最後の夏に彼女を作ろうと思っているのだろう。

その頃、正輝がいる3年A組の隣、3年B組の教室では清水由夏を含めた女子四人で花を咲かせていた。
「中学最後の夏休みには絶対に彼氏が欲しい!」
由夏のクラスメイトで友人である嶋 明美(しま あけみ)が強調するかのように言った。
「夏休みといえば、スイカと花火と男でしょ?」
嶋は一緒に昼食を取っている三人に訊いた。
「まぁ。そうよね~」
小太りの体格を持つ前野 望(まえの のぞみ)は、嶋の意見に一理あると思っていた。花を咲かせている女子四人組にはまだ彼氏がいないのだ。
「二人は彼氏になって欲しい人っているの?」
由夏の隣の席に座っている高橋 真希(たかはし まき)はどんな彼氏が欲しいのか二人に訊ねた。
嶋は自分の頭の中で理想の彼氏を思い描いた。
「イケメンで彼女を大事にしてくれそうな人かな」
「あたしは、ハンサムで優しくて頭が良い人」
二人はどんな彼氏が欲しいのかあくまで理想として教えた。
「真希は?」
嶋は高橋にどんな彼氏が欲しいのか訊いた。
「私はかっこいいスポーツマンの人がいいな」
嶋は高橋の話を聞いて思い出した。
「かっこいいスポーツマンって言ったら、体育の松代先生なんかいいじゃない?あの先生。イケメンだし」
それを聞いた前野は「確かに!」と頷いた。
「でも、あの先生。もう結婚して子供がいるのよ」
それを聞いた前野と嶋は「マジで?!」と口を揃えて驚いた。
「うん。マジ」
高橋は頷いた。
「由夏はどんな彼氏と付き合いたいの?」
次は由夏が答える番になった。嶋に訊かれ由夏は考えた。
「ん~・・・。特にいないかな」
由夏がそう答えると高橋が何か思い出したかのように彼女に訊いた。
「そういえば由夏。今日の朝、隣クラスにいる草壁くんとお話してたんだって?噂で聞いたよ」
それを言われ由夏は苦笑いをした。
「もう広まってるの?」
三人は頷いた。
男子達が由夏の噂をするといつの間にか広がり女子の耳にも入るのだ。こんなにも早く噂になるとはさすがというか何というか。
由夏に関する噂は男子達の間ではいろいろと広まっている。いつの間にか写真を撮られブロマイドにされている事もある。由夏に対する男子達の強い好意を見て女子達は呆れている。
「草壁くん。今年の麒麟獅子舞で麒麟獅子に噛まれたんだってね」
「そこまで知ってるの?」
「もちろん。で、草壁くんに何て言ったの?」
三人は興味津々に話の内容を訊いた。
由夏は自分が言った言葉を三人に教えた。
「おめでとう。って言っただけよ」
それを聞いた三人はにこやかな顔をしたまま表情を変えなかった。
「それだけ?」
前野がそう訊くと由夏は「それだけ」と答えた。
「もっと他に言う事はなかったの?」
椅子に寄りかかった嶋は他に言う事はなかったのかと由夏に言った。
「だって・・・。他にそれしか思いつかなくて・・・」
由夏は俯いて両手の指先を合わせて弱気な態度を見せた。
「それに、草壁くんは私の事、どう思っているのか分からないし・・・・」
由夏がそれを言った時、高橋は彼女が弱気になるなんて珍しいと思った。すると、高橋は由夏が弱気になった理由に気づいた。もちろん、高橋だけではない前野も嶋も気づいた。
「もしかして、由夏。草壁くんのこと」
すると、由夏は動揺した。
「いや・・・その・・・!」
この慌てようを見てやはりと三人の予想は的中した。
「由夏の気持ちはよく分かるよ。確かに、草壁くんってかっこいいよね。とても優しそうだし」
前野は頷いた。
「うん。草壁くんって成績は割と良いらしいし、サッカー部に入っているからね。なんでも、サッカー部のエースみたいだし」
「そういえば。草壁くんって、妹がいるみたいよ。案外、妹思いの優しいお兄さんだったりして」
高橋は過去に聞いた噂を思い出しながら話した。
三人が正輝の話をしていると由夏は何も言わないまま彼女達の話を聞くだけしかできなかった。でも、由夏の身に一つだけ変化があった。正輝の話になるとポッと頬を赤く染めていた。
「でも、この事を男子達に知られたら面倒になるわね」
嶋は前のめりになって言った。前野も高橋も前のめりになって頷いた。
「これは、私達三人だけの秘密にしよう。由夏の為にも」
そう言って三人は由夏の方を見た。
由夏は三人の顔を見て机の上に手をついて頭を下げた。
「お願いします」
「了解(ラジャ)!」
三人は秘密は守ると由夏に向けて笑顔で親指を立てた。
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