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2章

21 フレデリカの幸せ

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「こ、婚約? もう?」

 例の騒ぎが落ち着いたから、急いでそうなることもあるかもしれないけれど、溺愛している娘が傷心中なのに、政略結婚にあの伯爵が使うとは思えない。
 ただ、貴族たちの立場に影響が出ているなら、早期に解決するために政略的婚約が進められるのは当然かもしれなかった。

「フレデリカは、それでいいの?」

  よくないに決まってるのに、あたしはそんな無神経な質問をしてしまった。

「ふふ。心配してくれるのね。でも私にとっても良いお話だと思っているの」
「そうなの?」
「ええ、まだ詳しくは話せないのだけど、お父様からも口止めされていて」
「ああ、うん。そういうことはあるよ」

 婚約が政略的に行われるのならば、発表のタイミングというのもあるのだ。

「ただね、昔から親しくさせていただいていて、私にとってはとても大切な人なの」
「へぇ」

 それって……。
 あたしの頭の中にある可能性が上がった。それは絶対ありえないとはいえない話だった。だって、そうだ。彼女は伯爵令嬢だ。当然、その財力も、影響力も計り知れない。
 それならば、そう、たとえば王子と婚約だって、ない話じゃない。
 ううん。むしろ、他にいないってくらいの立場だ。
 伯爵家と王家に繋がりができれば、だってきっと王家は貴族の力を手にできる。伯爵家も今よりずっと権力を得て、今回のような騒動に巻き込まれることすら無くなるかもしれない。

 ああ、なんて言えばいいんだろう。
 あたしの中ではすでに確定してしまったも同然で、なにもいえない。

「あたしもさ、会ったことある人?」
「……そうね。あるわ」

 ああ、やっぱりそうなのか。
 ツキンって、胸が苦しかったきがしたけど、重たい重りみたいなものが、ずんとお腹に溜まっていくような気さえしたけれど。でも。

「フレデリカは、その人と一緒になれるのは嬉しい?」
「そう、ね。ええ。うれしいわ」
「そっか。よかったねぇ」

 よかった。よかった。本当によかった。

「ありがとう。今度、決まったらちゃんと紹介させてね」
「うん」

 その時は笑顔でおめでとうって言いたい。
 あたしの大好きな友達2人が幸せになれるっていうんだから。もし、アルクスがそれでもあたしがいいとか、もし、万が一言ったら、はっ倒してやろう。
 でもきっとアルクスは浮気とかしない。妾とかとらない。あたしもそんな立場は絶対嫌。とくにフレデリカを悲しませるようなことだけはしたくない。

 フレデリカにとって、イーサンとの婚約は決して喜ばしいことじゃなかった。
 政略結婚で、フレデリカもイーサンのことをよく知らなくて、でもそれが役目だからって受け入れていたのを知ってる。
 だから、今回フレデリカが幸せであることがとても嬉しかった

 うれしいのに。

 なんでかなぁ。

 あたしにあんなことをいったアルクスに怒りたいのに、怒れない。

 なんでかなぁ。


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