[完結]『姉と妹』全てをうしなって、彼女は全てを奪うことにした。

日向はび

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妹 1

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「マリアンヌのようにはなるな」

 それが両親の口癖でした。
 私はいつもそれに頷きました。そして心の中で嫌悪しました」。
 私は姉を愛していたのです。

 優しい人でした。
 臆病で、強く出れなくて、いつも誰かの後ろに隠れて、1人で悲しんでいて。
 なのに、私には憎しみの篭った笑顔を見せる。
 子供なのに、そんな姿が私の心を打ちました。
 嫌われていても構わなかったのです。ただ私は愛する姉を守ろうときめました。

 姉は、母の子ではありませんでした。
 姉はそれを知らなかったけれど、私はこっそり知ってしまったのです。姉はだから母に嫌われていたのです。
 父が姉に冷たくするのは、母に嫌われないためです。そのためなら、娘のことなど蹴りつけることもできる邪悪な人だったのです。
 いつもいつも冷たくて、暴力を振るう。
 けれど時々、母が姉に優しくすることがありました。
 私はそれが恐ろしかった。

 なぜなら姉に優しくする時はいつも、恐ろしい策略があるからです。
 誕生日のプレゼント。そう言って渡されたケーキを私は奪うように食べました。
 体が重くなり、吐き気はひどく、熱もでて、起きていることおも苦痛でした。
 
 毒が入っていたのです。

 姉が見舞いに来てくれました。うれしかった。私は気丈に振る舞いました。
 母が姉に毒をもったことを気づかれたくなかった。
 これ以上悲しんでほしくなかった。
 でもそれは姉の私への憎しみを高めるだけ。
 それでも私は、同じことを繰り返しました。
 姉を守るためです。
 私は頻繁に身体を壊すようになりました。毒のせいでしょう。それでも私は姉を守りました。
 もはや使命でした。
 他にできることも何もなかったのです。
 私はそのためだけに生きていたのです。

 そんな私を邪魔する存在がいました。
 王太子です。
 最初、王太子が姉を選んでくれたことを私は心から喜びました。
 これで、姉は恐ろしい地獄のような公爵家から解放されると。しかしそれは間違いでした。
 ある伯爵が言いました。
 王太子は狂人であると。

 私は半信半疑で王太子に近づきました。
 そしてすぐに気づきました。
 目が笑っていない。私を見る目のなんと恐ろしいこと。殺人鬼のような目でした。
 姉のどこが気に入ったのかと訊ねると、清楚で優しいところと言いました。
 私には「大人しく従いそうで、愚鈍そうなところ」そう言っているように聞こえました。
 
 姉に恨まれるのは覚悟の上で、私は王太子を誘惑しました。
 王太子が私に夢中になるのはすぐでした。
 そして姉が私を恨むのもすぐでした。

 
 王太子は私を叩きました。ひどく楽しそうに。
 なんでこんなに恐ろしい人なのか、私にはわかりません。
 彼は手ひどく私を扱いました。けれど私はそれでもよかった。姉を守れたから。
 もはやこれも狂気だと気づきながら、わたしは姉を守ったことに満足していました。

 姉から手紙が届いた時。私は恐ろしかった。
 姉があの伯爵と恋人になっていることも、その伯爵の言葉を全て鵜呑みにしていることも、王太子を失脚しようとしていることも。
 私は恐ろしかった。
 私はもうだめだと思いました。
 きっと何をいっても姉は聞いてくれないでしょう。でも私は姉を救いたくて、正直に手紙を書きました。
 わかってほしかった。
 無事でいてほしかった。
 笑っていてほしかった。

 でも無理でした。


 

 
 
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