[完結]姉から妹に乗り換えたら殴られたって知りませんけど

日向はび

文字の大きさ
上 下
2 / 11

2諦め

しおりを挟む
 たしかに、姉妹どちらと結婚しても、侯爵家は伯爵家の援助を変わらず受けられる。ただしそれは「オフィーリアと婚約する」という契約が不履行であった時に、伯爵側が受け入れればの話だ。
 父である伯爵ならどうするだろうか。
 
 ――怒りそう。

 娘2人を溺愛する父が爽やかに同意する姿は想像できなかった。

「お父様がお許しにならないかと……」
「そうだな。だから君にお願いしたい」

 嫌な予感というのは、当たってほしくない時ほど当たるものである。

「お願い……」
「伯爵に、怒らないでほしいと、許してほしいと君から言ってくれ」

 笑ってアドランは言った。
 
 ――いや、それ当人に頼む人普通いませんよ。

 ここまで阿呆な人だったろうか。恋は人を愚者に変えるらしい。恐ろしい。

「妹のためなら、そのくらいできるだろう?」

 アドランはそう言う。
 姉妹の仲が良いとどうして確信を持って言えるのか、甚だ疑問である。すくなくとも姉妹で仲が悪い貴族というのは知人に数人はいる。
 仲が異様にいいか、異様に悪いかのどちらかだ。
 オフィーリアとアイリーンもその一方に当てはまる。どちらに当てはまったところで、こうなってしまうと大概は良くない方向に進ものだとは思われるが。

 ――アイリーンのため、か……。

 アイリーンのためならできるだろう? その言葉、実はというと昔から耳がタコになるほど聞かされてきた。もう言われなくてもわかっていると言いたくなるほどには。
 今回のこともそうだ。
 アイリーンのためなら、オフィーリアは身をひく。
 それがオフィーリアであり、姉妹の形だからだ。
 今更、それにどうこう文句を言うつもりは毛頭ない。とっくに諦めていた。

 オフィーリアは嬉しそうなアドランを見て一抹の不安を感じていた。

 アイリーンは悪戯好きである。
 今回のことも悪戯程度に思っているかもしれない。アドランはそれがわかっているのだろうか。
 悪戯で姉のものを奪ってしまうアイリーンもアイリーンだが、たかが悪戯でオフィーリアを傷つける結論を出してしまうアドランもアドランである。

 最後に叩いてやろうか。そんな気持ちが起きたが、オフィーリアはそれを押さえつけた。
 
 ――まぁいいか。なるようになるわ。どうせアドラン様のこと好きじゃないし。

 何かと悩むのは向いてないのだ。
 オフィーリアは早々に説得するのをやめて、婚約破棄に同意した。
 投げやりな感情だった。



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】『婚約破棄』『廃嫡』『追放』されたい公爵令嬢はほくそ笑む~私の想いは届くのでしょうか、この狂おしい想いをあなたに~

いな@
恋愛
婚約者である王子と血の繋がった家族に、身体中をボロボロにされた公爵令嬢のレアーは、穏やかな生活を手に入れるため計画を実行します。 誤字報告いつもありがとうございます。 ※以前に書いた短編の連載版です。

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

妹への復讐と私の幸せ

ぴぴみ
恋愛
ざまぁ “ざまぁの後~妹への復讐と私の幸せ~”でハッピーエンド

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

自ら魔力を枯渇させた深窓の令嬢は今度こそ幸せになる

下菊みこと
恋愛
タイトルの通り。 小説家になろう様でも投稿しています。

姉にざまぁされた愚妹ですが何か?

リオール
恋愛
公爵令嬢エルシーには姉のイリアが居る。 地味な姉に対して美しい美貌をもつエルシーは考えた。 (お姉様は王太子と婚約してるけど……王太子に相応しいのは私じゃないかしら?) そう考えたエルシーは、自らの勝利を確信しながら動き出す。それが破滅への道とも知らずに…… ===== 性懲りもなくありがちな話。だって好きだから(•‿•) 10話完結。※書き終わってます 最初の方は結構ギャグテイストですがラストはシリアスに終わってます。 設定は緩いので何でも許せる方向けです。

逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます

黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。 ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。 目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが…… つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも? 短いお話を三話に分割してお届けします。 この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。

やっと婚約破棄してくださいますのね!

ねここ
恋愛
この国の王族・貴族は、生まれてすぐ「仮婚約」が決まってしまうことが多い。 ソフィアが生まれてすぐ仮婚約を結ばされたのは第一王子だったが、これがありえないくらいの頭お花畑のお馬鹿さんに育った。 一方、私にくっついて王城に通っていた妹ミリアが仲良くなった第五王子は、賢王になること間違いなしと噂されていた。 1貴族から王家に嫁げるのは1人だけ。 妹ミリアを賢王に嫁がせるため、将来性皆無の第一王子から「仮婚約」破棄を言い渡させるため、関係者の気持ちが一つになった。

処理中です...