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魔性

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 数日後、伯爵家は侯爵の婚約者に手を出したとして、十分な罰を受けることになった。
 ウィリアムはそれまでの奔放さもあり、伯爵家を追われてしまったそうな
 アデリーナに貢ぎまくって金もないため、平民として暮らしていくのも大変だろう。
 私の知ったことではないけれど。

「本当に、騒がしい数日でした」
「でもお姉さまも楽しんでいたでしょう?」
「たのしかったのはあなたでしょう」

 私は隣に座るアデリーナの肩を押した。それの何が楽しいのか、アデリーナはきゃっきゃと笑っている。赤ん坊みたいである。

「ああ。たのしかったわ。やっぱりお姉さまのものはいいわね」
「私のというか、私のお下がりでしょう」
「そうとも言うわ」

 そう。いつもアデリーナは私のものを奪う。
 私の物だった物を。

「今回はまぁまだ私の物だったけど……」
「あら、どうせ彼が言い出さなくても婚約破棄は目前だったじゃない。お父様が彼の浮気癖を知って怒っていたから。私はそれを早めて、結果的にたのしく遊んだだけよ」

 可愛らしい顔で、アデリーナは言う。
 邪気のない顔は恐ろしくすらあって、こういうのを魔性というのかもしれない。

「お姉さまも好きだった方と婚約できたし、よかったじゃない」

 そうだ。ウィリアムとの婚約がなくなったことで、私は幼馴染と婚約することになった。
 望んでいたことで嬉しかった。
 しかもアデリーナが早めに事を起こしたおかげで、彼が他の人の婚約者になる前にその位置におさまる事ができたのだ。

「結果的にはありがとう。でもこんなこと続けていると愛想つかされるわよ」

 侯爵に。

「それはないわ。だって彼は私を愛しているし、私も愛しているのは彼だけだもの。あ、お姉さまのことも愛しているわよ。世界で一番!」
「魔性だわ」
「何が?」
「なんでも……」

 お茶を飲んで私は言葉を濁す。この子のこの癖は多分一生治らない気がした。

「心配しないで。今度の婚約者は私奪わないから」
「心配してないわ。お下がりにするつもりもないもの」

 二人はくすくすと笑った。

 ああ本当に、こんな姉妹と関わってしまって、ウィリアムも幼馴染も侯爵も、御愁傷様。


 

 
 

 
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