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さようなら

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 その日は突然やってきた。
 目の前にいるのは憔悴しきったウィリアムだ。

「リレイナ」
「なんでしょうか」
「アデリーナに婚約者がいるというのは、本当なのか」

 やはり、アデリーナは言っていなかったらしい。そしてどうやらとうとう知られてしまったようだ。

「そうですね。お伝えしようとしたんですけれど、うるさいと言われてしまったので……」

 しらじらしく言ってみるが、言おうと思えばその後会った時に言えたことである。それを言わなかったのは意趣返しだ。

「まさか……そんな……」

「本人に聞けばよろしいじゃないですか」
「それが……。聞いたら、知らなかったの? って言うんだ。なんの邪気もない顔で……」
 
 なるほど。

「あんなに色々あげたのに。たくさんいろんな所にも連れて行った。指輪も首飾りも、ドレスもプレゼントした。なのに……俺は浮気相手だったのか」

 ウィリアムは落ち込んでいる。

「ついでに申しますと、浮気相手は他にも何人かいますわよ」
「は!?」
「それから婚約相手は侯爵様です。どこの。と言わなくても、この国の侯爵はお一人ですからわかりますわよね」

 ウィリアムは真っ青になった。
 身分としては完全に下である。おそらく侯爵が怒ればどうなるか……。想像しただけでも身の毛がよだつ。
 いまさら遅いが。

「侯爵様がいつ動かれるのか、私も気になっている所です」

 主に楽しんでいる方向で。
 ウィリアムは泣きそうになっていた。

「た、たすけてくれ! リレイナ! 婚約者じゃないか!」
「呆れて物が言えませんね。婚約はすでに破棄されておりますし、私ももう別の婚約者がおりますの。あなたを助ける義理もありません。ああそれと、もう他人なんですから、気安く名前を呼ばないでくださいます?」
「リレイナぁ!」

 泣き喚いても、もうどうしようもないのだ。

「変な気など起こさずに私で諦めておけばよかったのに。かわいそうな人」

 私は微笑んで彼を家から追い出した。



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