雪梛の一閃

雪梛

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原初編

雪梛の一閃

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「あんな終わり方納得がいかないんだけど」
珍しく文句を言いながら雪梛せつなはてんちょうに話しかけた。
「しゃーないやろ。あのままやっていたら一生書けてまうやないか」
てんちょうは言い訳っぽくない言い訳を言っていた。
「まあとりあえず全員帰ってきたな。おつかれちゃん。まあここからまたわたしとの再戦をしてもええなおもーとったんやが、面倒なんで全員雪梛と一騎打ちでいこーかとおもーとる。ああ、拒否権は無いかんな」
てんちょうは一方的に告げて何故か持っている飲み物を飲んだ。
「そしたらさっきと同じ順番でどうかしら?文句を言ったら心臓を休ませてあげるわよ」
「拒否権ないやないか…」
てんちょうが軽くつっこんだ。
「それにしても随分と強く…いや本気の試合をしにきたってことかしら?」
朝月さつきは持ち前の観察眼で見抜けたようだ。
ちなみに亜空間から戻された際に自分以外の亜空間での成果は脳内から消えるようになっているっていうことなんでよろしゅうおなしゃす。(香澄かすみは別)
「まあそうね。久々にこの状態になるわ。ようやくあなたも50%から解放ってわけね」
「そうだよ。とは言っても見てたでしょ?久しぶりにやろうじゃないか。最後の時を楽しみに待っているよ」
雪梛は楽しそうにしている。
「というわけでさっさと香澄とやりたいから瞬殺していくよ」
「久々の対戦だね」
言映ことはは抜刀して構えた。
シュン カチ バタ
言映は瞬殺された。
「あーなしやなし」
てんちょうが文字を打ち込むと言映が生き返ってきた。
「あれ?死んだんじゃないの?」
「何してんのてんちょう?斬り捨てるよ?」
雪梛はにっこりしながら言った。
「まあまあ落ち着きーや。香澄はコピーを持っとるやろ?そいつにこいつらの亜空間の成果を取らせればさらにいい試合ができるんじゃないか?」
「アホだねぇ。今の香澄と私は拮抗しているんだよ。実力がね。だからあまりにも強くなりすぎると勝てない。はっきり言っとこう、勝てない。だからこそこのままいきたいんだよ」
雪梛はため息しながら言った。
「まあなんにせよや。こいつらの修行の成果から学べや。観察眼のトレーニングにもなるやろ」
てんちょうは強引に話を持っていった。
「まあいいよ。さっきはごめんね言映。ちょっと気持ちが早まってたよ」
「まあこっちの油断もあったからね。というわけで新技だけでいくわよ」
言映は雪梛と間合いをとって見切りに全振りして刀を構えた。
「面白いね。まさかあの言映がカウンター系の技なんてね。じゃあこっちは無月乱舞でいこうかな」
雪梛はそういうと通常モードのまま突進しては離れてのヒットアンドアウェイを死角からおこなう無月乱舞をいきなり始めた。
パチパチパチ
言映は正確に流していき雪梛の行動をパターン化をした。
(ここだ)
言映は一番隙が大きいであろう場所に鋭い刀を振りおろした。
「演舞:新月斬」
雪梛はかなり正確に隙をつかれたが急激に速度を上昇させて受け流しをしてそこからカウンターをして言映の胸に刀がはしった。
「いい動きだったぜ相棒」
「誰が相棒だ」
死ぬ時まで言映は冗談を言っていた。
「じゃあてんちょうもどしといて。死人は自分で退くことができないからね」
「相変わらず感情が薄いねぇ。まあ死人を気にできるような上質な感情はもう持ち合わせているやつがいなさすぎるからね」
てんちょうは再び言映を蘇生しながら言った。
「さてと、次はりえだっけ?まあやろうよ」
「思いっきりやっちゃうよー」
りえは抜銃せずに2+を身体に入れ始めた。
「フルブレイクだね。まあ同じ技を亜空間で私がやっちゃったから色が薄いかもね」
「全くタイミングがわるいよー」
りえは2+を5発入れてから2+の構えで雪梛を見ている。
「いつでもきな。タネが割れちゃってるからね」
「もうかよ。どんな眼してるんだよー」
りえは地面を速撃で蹴って全エネルギーを拳に集結させてそこに速撃を入れて殴った。
ドーーン
「もう…無…理」
りえはぶっ倒れた。
「よく壊れなかったね。反発させたってのに」
雪梛は猛スピードで帰ってきた。
雪梛はインパクトの瞬間に少しだけ自分の身体で体当たりをしてから衝撃透過をさせたのだ。
雪梛からの予想外の反発がおきて威力が跳ね上がって相殺しきれなかったのだ。
「次は朝月だね。この私と香澄を含めても屈指の観察眼の使い手だね。師匠よ、観察眼の精度は戻ったかい?」
「ええ。亜空間のおかげでね。まあかなりいい感じになったわよ」
朝月は非常に落ち着いていて抜刀せずにただひたすらに雪梛を観察している。
「非常にいい状態ね。まあほとんどは知っている技だけどなんか2個ぐらい吸収しているわね?」
雪梛は面白そうに頷いた。
「その通りだよ。確かに私はショートマイゾーンと立体的視認を習得したよ。流石だね。昔程までに精度が戻ってきたんじゃないの?」
朝月は微笑んでいて何も答えない。
「じゃあこっちからいくよ。どうもATがいなくなってきている気がするんだけどね」
雪梛は速撃で近づいてシンプルな斬撃を朝月に振った。
朝月は事前に知っていた軌道から外れるように最小限の最効率で避けた。
「いいね。私の刀が見切れるなんてね」
「どれだけ見たと思っているのかしら?」
朝月は懐かしむような表情をしながら避けている。
「マイゾーンはやらないのかしら?」
「ふふ、いいよ。やってあげるよ」
雪梛は距離をとってから納刀して重心を低くして構えた。
スッ
雪梛は低い姿勢のまま朝月に突っ込み鞘から滑らせるかのように抜刀して朝月の胸目掛けた静かな鋭い刀をはしらせた。
朝月は立体的視認をかなり弱いが発動させることに成功させて薄い線から一つを選んでそこから回避した。
太刀筋すらも脳内で今までのものから形成してその太刀筋に対して見切りを発動させることにより成功させた。
「すごい速度ね。普通にやったら避けられるわけないわよね」
「すごいよ朝月。これは非常に驚いたよ。どんな方法かは大体の予想はついているけどもしそれができたのならば朝月はついに私たちの領域まで辿り着いたことになるよ」
雪梛は嬉しそうにしゃべている。
「まあこれはずるみたいなものだからね。それはそうと、わたしの新技気にならない?」
雪梛は距離をとってから納刀して頷いた。
「シンプルな斬撃じゃないんだからすごく面白そうだね。朝月といったら基本っていうぐらいには印象に残ってるからね」
雪梛は脱力の構えをしている。
「受けてみなさい。もっとももうネタは割れているだろうけどね」
朝月は刀を思いっきり振りかぶって最高速度で3回振り下ろした。
ビューン ビューンビューン
雪梛は立体的視認を擬似発動させて軌道を読み取り一つづつ丁寧に受け流して最後の1発は刀で相殺した。
「いい技だね。これの名前は?」
「そうね…空破斬よ」
「いいね。破壊してこその朝月だからね」
2人は笑いながら納刀した。
「おいおいー続きはやらねえのかよー」
りえが野次を飛ばしてきた。
「いいのよ。負ける試合はしないのが鉄則よ」
朝月はなだめるように言った。
「次は霊斬だね。私との対戦用にチューニングしてきたのかな?」
「本当になんでもお見通しなんだね全く」
霊斬れいきは抜刀せずに間合いをとった。
「亜空間ではいい試合ができたのかな?とてもいい顔をしているよ」
「うんそうだね。最高だったよ。だからこっちでも最高の試合にしようじゃないか」
霊斬はそう言って集中力を高めて気配を薄くした。
「コンセントレムだね。まあ亜空間の私のおかげで私はそれを使わないで同じような状態になれるようになったからね」
雪梛は抜刀して中段構えで準備万端のようだ。
「それじゃあそろそろいくよ」
雪梛は速撃で接近して霊斬に鋭い刀をはしらせた。
霊斬は最小限の最効率で回避しつつ雪梛を見ている。
「観察眼までは無理だったんだね。まあ鍛錬が足らなかっただけか」
雪梛はパターン化が図られていることを知りながら同じような太刀筋を出し続けている。
最も刀の振り方から角度までもが洗練されすぎていて霊斬はそれにすぐには気づけなかったようだが。
雪梛は一旦距離をとって納刀して重心を低くした。
「受け流してみな」
「もちろん」
雪梛は通常モードで本気のマイゾーンを放った。
非常に小さい音で動き出して霊斬の胸に線をはしらせた。
霊斬は立体的視認を疑似発動させて軌道を読み取りそこに合わせて素手による精密な受け流しを発動させて流し切った。
「流石だね。通常とはいえ本気のマイゾーンを流されるなんてね。まあ見切りでやっているわけじゃないから完璧とはいえないけどね」
「本当になんでもお見通しだね」
「いやこれに関しては非常に簡単な考察だよ。単純に動きに無駄があったってわけだよ。私だって見切りを使わないと少しの無駄ぐらい出ちゃうからね」
「なるほどね。技の特性から考えればわかるなどの柔軟な視点を持つことが大切なんだね」
霊斬は感心しながら言った。
「まあ私のマイゾーンを流したんだ。流してくれたお礼に50%の刹那モードで見してあげるよ」
雪梛はようやく雰囲気が切り替わって瞬時に刹那モードへと変わった。
「見切れるかな?」
「多分無理」
霊斬は苦笑いしながら集中して雪梛をみている。
カチ
霊斬は倒れていた。
雪梛は亜空間での大幅強化によっていよいよ本当に見えないような速度を出すことが可能となっていた。
「流石ね。ようやくあの頃に戻った感じがするわ。さあ早速私とやろうじゃないの」
香澄は嬉しそうに言った。
「まあまあ一旦落ち着いて。とりあえずてんちょう、亜空間まで私たちを飛ばしてくれない?」
「なんでや?ちょっと面倒なんやであれ」
てんちょうは首を傾げながら言った。
「さっき言ったでしょ?実力が拮抗しているって。間違って殺しちゃったりしたら誰が本気の私たちと相手できるっていうの?片方が死んだらもう片方も死んじゃうからね。退屈すぎて貴方達を殺して私も死ぬっていう爆弾になっちゃうよ」
雪梛は冗談めかして言った。
「わーったわーった。飛ばしはればええんやろ。ほれ」
てんちょうは文字を打ち込んで全員を亜空間へと飛ばした。



「ようやっと全員起きたか。まあこんなんには体が適応していない方がええからな。何が起きるかわかったもんじゃないしな」
てんちょうは全員を亜空間へと飛ばして意識を取り戻すまで待っていたようだ。
「じゃあ早速で悪いけどやらせてもらうわよ。準備しなさい。吹雪ふぶき
香澄は身体を伸ばしながら言った。
「もちろんだよ。久しぶりすぎる死合だね。紅葉こうよう
2人は特殊な呼び方をしているようだ。
「その二つ名は何かしら?あたしたちにはさっぱりわからないんだけれども」
朝月は誰もが思っていたことを聞いてくれた。
「吹雪と紅葉のことかしら?この呼び名は私達がタッグを組んでいて本気の殺し合いを毎日のようにしていた頃の呼び名よ。今じゃもう知っている人は昔の防衛団の人たちぐらいね」
紅葉は懐かしむように言った。
「そうだね。あの頃はもう生きている伝説みたいな感じだったらしいよ。私たちはそんなふうには思ったことは一度たりとも思ったことはないけどね。まあ最高に強い相棒程度には思っていたよ」
両者はサブマシンガンを抜銃してセーフティを外して構えた。
「そういえば銃について教えてくれたのは紅葉だったね。まあその代わりに私の剣術を伝授したんだけどね」
吹雪と紅葉は笑いながら計算をしているようだ。
「時は来たりし紅葉よ。我が銃弾の吹雪を味わうがいい」
「時は満ち足り吹雪よ。その白を我が赤に染め上げようではないか」
2人は芝居がかったセリフを言って動き始めた。
計算され尽くした角度に相手との位置関係、さらには相手の銃弾までもが当たらないように、もしくはこちらのキーやサブキーとして変換されていき通常モードではどちらも見切れないような軌道を描いて弾が飛び交っている。
「「ビリヤード」」
2人は立体的視認を発動させて全ての弾の軌道を読み取りキーとサブキーを弾きはじめた。
ミラーガンを使って吹雪は紅葉のキーを自らのサブキーにして、紅葉は吹雪のキーを完全に弾いているようだ。
両者迷いなく動いていて一瞬たりとも止まらずに常に変わり続ける数瞬先を読み続けているようだ。
「久しぶりね。この銃を使うのは」
「私もすごく久しぶりに使うよ。ところで紅葉、これは準備運動ということでいいよね?流石に私たちともいえど制限解除してすぐにとはいかないからね」
「そうよ。それに吹雪と違って私は本当に解除してすぐなのよ。だからもう少しだけ付き合ってくれないかしら?」
「もちろんだよ」
吹雪は多重ミラーガンでキーを一気に弾き包囲網を破壊した。
「見事な計算力ね。じゃあ今度は刀でいきましょうか」
「そうこなくっちゃね」
2人はホルスターに銃をしまって吹雪のみ抜刀した。
「やってみな。何年振りかねそれは」
「本当ね。もう数年振りかしら」
紅葉は心を落ち着けて無の境地へとゆき鞘を握った。
「受け流しだから気をつけなね」
「もちろんよ」
スッ
紅葉は静かに動き出し吹雪目掛けて超速の抜刀をした。
「マイゾーン」
吹雪は立体的視認で事前に行動範囲を絞っており一点に集中していたためそこに刀が来る時に正確な受け流しをしてカウンターをした。
紅葉はカウンターが来ることがわかっていたため見切りによる軌道把握をしてから体術で紙一重で避けた。
吹雪と紅葉は対照的に跳躍して距離をとった。
「流石だね。久々なのに全然速度が落ちていないよ。ここからさらに上がるとなると非常に面白そうだよ」
「ようやっと準備ができたわ。さあはじめましょうか1ターン目を」
「望むところだよ」
両者納刀して脱力して構えた。
紅葉は現在ようやっと覚醒状態、いやここからは色付きとでも言っておこう。
色付きの調整が完了して万全になったところだ。
この色付きの特性は脳の回転速度と計算速度の爆上げで刹那モードでは感覚のほうが強めであったがこちらは計算が強めということだ。
回避を行う時も結果的にはほとんど同じものだが、過程は全然違うということを知っておいてもらいたい。
この回転速度と計算速度によってコピーが実現されているというわけや。
以上、解説のてんちょうでした。
引き続きこの死合をどうぞお楽しみください。
今回は吹雪が動きはじめた。
その瞬間に未来の読み合いがはじまった。
吹雪はゆっくりと歩きながら紅葉に向かっている。
紅葉は迫り来る吹雪を見ながら無数の攻撃パターンへの警戒を始めた。
吹雪は立ち止まると同時にショートマイゾーンを放った。
紅葉は吹雪が立ち止まった瞬間に見切り不可の攻撃が来るとわかったため衝撃吸収をすることを選択した。
吹雪はショートマイゾーンで殴る直前に衝撃吸収からのミラーが来ることがわかったためあえてそれをさらに吸収することにした。
紅葉はミラーが完全に衝撃吸収で吹雪に取り込まれることがわかったため一度後ろへ跳躍して距離を取ることを選択した。
吹雪は紅葉が離れると知っていたためその隙に速撃を身体に入れることにした。
吹雪の身体にはすでに速撃5発相当の衝撃が入っている。
「珍しいわね。貴方が攻めてくるなんて」
「そういう紅葉こそ守りなんてらしくないじゃない」
「まあこの死合はたっぷり時間があるからゆっくりといきたいだけよ」
吹雪は再び紅葉に向かって歩き出した。
紅葉は新しい返し技を思い出だし、そのシュミレーションを始めた。
「今度はどんな技を見してくれるの?」
「ふふ、びっくりな大技よ」
吹雪は返し技が来るとわかったのでさらにあと5発速撃を入れて10発分にして歩いている
「いいわ。来なさい。刹那モードの見切りの具合が知れるわ」
「それは非常に面白いね」
吹雪は新技を思いついたらしく歩いてきている。
吹雪は紅葉の前まで来ると自身の拳を紅葉の腹に当てて静止した。
紅葉は吹雪の技の内容を予想している。
「いくよ」
吹雪はそう言った瞬間保留していた衝撃を全部解放して重くそして非常に速い拳を紅葉に入れた。
紅葉は吹雪がしゃべった際に技の内容、タイミング、速度、パワーを計算して的確に動きはじめた。
紅葉は事前に身体の重心を中心に持っていき、吹雪の拳から絶大な力が送られた瞬間に反対側の足を軸にして衝撃透過で大体の威力を無効として残りを受け流しの要領で運動エネルギーの吸収を行いそのまま吹雪に蹴りを入れた。
吹雪は攻撃した瞬間に立体的視認を発動させて紅葉の反撃範囲を絞りそこからさらに見切りを発動させて紅葉の行動を把握して脱力をした。
ドーーン
「あら、カウンターを入れなくてよかったのかしら?」
「時間はたっぷりあるんでしょ?もっと楽しんでいこうよ」
吹雪は衝撃透過でダメージをほぼ無効にして今の紅葉の返しをやり過ごしてようだ。
「それにしてもあのカウンターなんて名付けようかしらね?」
「回転カウンターだから撃回げっかいとでも言っておけば?」
「いいわね。採用よ」
両者喋りながら抜刀した。
「いいわね。刀で貴方と相対するなんて久しぶりすぎて高揚するわ」
「紅葉と掛けたつもりかな。まあ楽しんでいこうよ。2ターン目だ」
2人は全く一緒の中段構えをしている。
今回は紅葉が動き出した。
紅葉はショートマイゾーンを移動に使って距離を詰め、シンプルな斬撃を放った。
吹雪は紅葉が超速で接近すると知っていたため受け流しつつの観察を選択した。
紅葉はカウンターがないと知っていたのでもう一撃斬り込むことにした。
吹雪は攻撃が来るとわかったので見切りで回避して先読み斬撃をすることにした。
紅葉は先読み斬撃が来ると知っていたのでその斬撃をカウンターすることにした。
吹雪はカウンターが来ると知っていたためあえて受け流しをせずに体術で避けることを選択した。
紅葉は刃が触れないと知っていたから見切りで吹雪の行動を読みそこに先読みの攻撃を入れることにした。
吹雪は打撃が来ると知っていたため衝撃透過でやり過ごすことを選択した。
紅葉は打撃が無効化されると知っていたので速撃を逆ベクトルでかけて距離を取ることにした。
吹雪は紅葉が距離を取ると知っていたので自分も同じく距離を取ることにした。
そこでようやく死合が一時停止した。
「いいね。全然動きが鈍ってないしむしろ良くなっているね」
「そういう貴方こそ前とは見違えるほど強くなったじゃない。私も亜空間でミラー戦やりたかったわ」
「まあ後で脅してでもやれば?どうせそうするだろうけど」
「あら、バレてたのかしら」
両者は同時に納刀して間合いをとった。
「久々にあれをやりましょう。まあ今では何をしても久々になってしまうのだけれどもね」
「いいよ。私に勝てるかな」
2人は重心を低くしてマイゾーンの構えになった。
「雪は穏やかに舞い降りる」
「緑から徐々に変化し」
2人は同時に詩のようなものを読みはじめた。
「しかし時折吹き荒れる」
「やがて全体を色取り染まる」
2人の発する音以外がないかのように静まっている。
「この吹雪の中」
「この紅葉の中」
やがて柄を優しく握り
「貴方は前が見えるかな」
「貴方は前が見えるかな」
シュ
両者の本気のマイゾーンの速度対決だった。
わずかに吹雪の方が速かったため紅葉の服に少しの切れ目が入っていた。
「流石ね。まあ本家と対等はもう少し先ってところね」
「今のでも十分速いんだけどね。まあもうビター程度なら私たちは瞬殺レベルまでようやっと戻ってきた感じだね」
吹雪は中段構えをしながら言った。
「さて、そろそろ始めようかしら?お互いの命を本気で取りにいくバトルを」
「そうだね。本格的に身体も馴染んできたからね」
紅葉は納刀してサブマシンガンとハンドガンを抜銃した。
「さあいきましょう。この物語最後の白熱したバトルへと」
紅葉はセリフを言い終わるとゆっくりと吹雪の方へと歩き出した。
「やっぱり紅葉はそうでなくちゃね。結局私たちは昔と変わらないね」
吹雪は観察眼を発動させて紅葉を観ている。
紅葉は吹雪と一メートル程で止まり吹雪を観察している。
最終戦とだけあって両者とも威圧感が圧倒的で忘れ去られているてんちょうたちは一歩も動けないようだ。
シュ
唐突に対戦ははじまった。
紅葉はショートマイゾーンで急接近してハンドガンによるゼロ距離射撃を選択した。
吹雪は紅葉の行動直前に見切り不可なのでショートマイゾーンが来ると推測したため立体的視認の線の中から一つを選択してさらに先ほどのマイゾーンからショートマイゾーンの速度を割り出してそれを発動と同時に脳内で流すことによって脳内での見切り可能なショートマイゾーンが完成するためそれに対して見切りを発動させることによりショートマイゾーンの見切りに成功させた。
そしてそのまま先読み斬撃を選択した。
紅葉はショートマイゾーンを見切られることは想定済みだったため先読み斬撃をハンドガンで逸らすことを選択した。
吹雪は刀がハンドガンで逸らされるのでサブマシンガンを警戒して速撃で距離を取ることにした。
紅葉は吹雪が速撃を使うので速撃中にサブマシンガンで狙い撃ちをすることにした。
吹雪は後退中にサブマシンガンが来ると知っていたので回避特化の見切りを発動させて避けることにした。
紅葉は2丁ともホルスターにしまい抜刀した。
吹雪は紅葉が抜刀するまでの時間を使用してマイゾーンを選択した。
紅葉は剣先を地面に向けてどこか神々しくたっている。
シュ
吹雪は視認不可の領域まで辿り着いたマイゾーンで紅葉にきりかかった。
紅葉は目を閉じて感覚を研ぎ澄まし風、気を感じて吹雪の刀と刃を合わせた。
吹雪は少々厳しさを感じながらも少し落ちた程度の速度で無月乱舞を開始した。
もはや目を閉じているので死角もないのだが紅葉は確実に正確に流している。
吹雪はこの技を知っているが紅葉から繰り出されるのが興味深くてあえてパターン化させている。
「是非よく観ておくと良いわ」
紅葉は目を開いて最も隙の大きいタイミングでマイゾーンおも越した速度で繰り出した。
「演舞:新月斬」
吹雪は想像以上の速さに冷や汗をかきながらも防撃を使った受け流しを発動させて流そうとしてた。
パキッ
「「!?」」
両者は動きながらも大層驚いていた。
吹雪の刀にヒビが入ったのだ。
「貴方の刃にヒビが入るなんて見たことないわ。よっぽどこの技が速かったのね」
「初めてだよ。私の使用している刀に相手が要因でヒビが入るなんていう事態は。そろそろ厳しくなってきたのかな?」
吹雪は丁寧に納刀して腰から外し、てんちょうに預けた。
「どうするのかしら?またあの時のように手刀かしら?」
「それしかないからね。戦場では相手の状態なんてお構いなしに殺しにかかってくるからね」
そう言って吹雪は手刀を構えた。
そして後ろからの投擲物の気配を感じて見切りからのキャッチをした。
「それを使いな。私の愛剣だけど貴方の愛剣でもあるでしょ?」
極限向上はてんちょうたちの方へと歩きながら言った。
「ありがとね。これならまだ戦える」
吹雪は抜刀して刀を確認してから納刀した。
非常に手に馴染む懐かしい感触だ。
「よかったわね。これで最終決戦ができるわ」
紅葉は剣先を地面に向けて構えながら言った。
「そろそろケリをつけようよ。10年程度にも及んだ最強のバトルの」
吹雪は優しく柄を握り紅葉をしっかりと見据えながら心を落ち着け脳内をクリアにし、回転速度をさらに高めた。
「いいわね。最強の攻撃は私の最強の防御にかなうかしらね」
紅葉は今までの返し技から流し技、カウンター系統の数々を思い出し確実な技の作成を開始した。
「届くよ。現環境最強格だろうとなんだろうと何人たりともこの刀を止めることができないと断言できるよ」
吹雪の中から帰ってきた雪梛はニッと笑いながら言った。
「きなさい雪梛。私の生涯最高の相棒よ」
「受けてみな香澄。至高の相棒よ」
両者一度深呼吸してコンディションを整えた。
「雪よりも白く 吹雪よりも吹き荒れる この白く光る雪景色の一閃の後に 貴方は 何が見えるかな」
雪梛は地面を蹴った。
その瞬間に光が走った。
雪梛の姿は見えないがその代わりと言わんばかりに一閃がはしっていた。
香澄見切り不可攻撃であり尚且つ立体的視認を使用しても防げないと判断したため自身の培った感覚のみを頼りに受け流しのための刃を出した。
香澄の感覚はとても精度が良く刃を合わせることに成功した。
しかしそこまでだった。
「くっ」
パタ
雪梛はあまりにも高負荷すぎて耐えられず崩れてしまった愛剣を非常に珍しく感傷に浸りながら見ていた。
「ありがとね。最高で最強の刀だったよ。愛剣:桜吹雪」
雪梛は刀を抜き身のまま持ちてんちょうたちの方へと向かった。




「お疲れちゃんや。すっごくええ対戦しとったで」
「まさかあんな速度が出るとは思わなかったわ」
香澄は亜空間パワーで復活していた。
「それで、この物語のオチはどうするの?あと私一人じゃなくて香澄と一緒につぐことにしたからね」
それを聞いててんちょうは雪梛の桜吹雪を再生成させながら言った。
「ああそれなら心配はいらへんで。ちゃんと形成させて別の物語を展開させたらおしまいや」
「これって続編あるのかよ…」
りえは呆れながら言った。
「じゃあとりあえずそのスマホちょうだいよ多分やり方知っているから」
「流石の雪梛でも厳しいと思うけどなあ。まあええわ。つこーてみ」
雪梛はてんちょうから渡されたデバイスを起動させて中身を確認した。
「なるほどね。このメモアプリに絶対に外せない進めたい方向性を最初に書いてそこからはメンバーをそこに強引に持っていくためのみ行動の強制化というかなんというかができるというわけだね。だから蘇生も可能なんだね」
てんちょうは感心しながら頷いた。
「その通りや。よくわかったな。じゃあどういう物語の形成をする?」
てんちょうは興味本位で聞くことにした。
「そうだね。まずはこの物語と全く異なる戦闘方法を採用している世界を形成させてそこの私と香澄を持って行って戦闘させるって感じでいいかな。まあどうせ途中で変更が入るだろうけどね」
雪梛は考えながら話した。
「ええなぁ。じゃあ適当にやっといてくれや。ちなみになんかイレギュラーとかが起きたらそのメモアプリに聞きたい内容を書いといてくれや。そーしたらわたしがなんかええ感じに返信するから」
「案外便利なのね貴方」
そんな会話をしながら各自自宅へと帰って行った。




「さてと、じゃあ物語の舞台となる世界を生成しよう」
雪梛は自宅に帰って香澄とてんちょうを呼んで最終の仕上げに取りかかろうとしている。
「じゃあまずは設定を細かくしといたほうがええで。なんか変な抜け道を見つけられでもしたら面倒やからな」
てんちょうは雪梛を面白そうにみながら言った。
「じゃあまずはどんな戦闘形式を取らせようかしら?もうベタではあるけれど魔法使いとかでいいんじゃないかしら。そうすればまともな未知との対戦ができるわよ」
「それはいいね。じゃあ魔法使いがいるとして基本的には魔法の制限はいいかな。まあ精神干渉魔法は無しでいこうかな。実際描写が難しいからね。後は即死魔法と蘇生魔法は消しておこうか。死体が蘇っても仕様がないからね」
雪梛は基本的な主軸の形成が完了したようだ。
「ええのか?攻撃魔法の制限をかけなくて。爆裂なんてくらったら流石にめんどくさいやろ」
「大丈夫よ。そんな爆発程度で死ぬような私たちじゃないわ。まあ後で雪梛に私の最強防御を伝授してからマイゾーン:一閃をもらう予定だし」
香澄は異論はないようだ。
「じゃあ世界観の作成に移るで。どんな世界の状況にするかや。例えばこの世界なら反社勢力がちょっといる剣術をみんなが嗜んでいる平和な世界となっているわけなんやがどうする」
雪梛は少々考えてから話し始めた。
「うーん…じゃあ合意バトルが主流の世界にしようかな。具体的には両者が間合いをとって構えたら戦闘ができるという形の世界。これなら被りもないだろうから大丈夫そうだしね」
「いいわね。休憩も確実に取れていいと思うわ」
香澄は頷きながら同意した。
「じゃあほぼほぼ終わりやな。後はキャラクターシートの作成やがもしあれならこっちでやっといて後からPDFで送ったろうか?」
「じゃあそれでお願いね。香澄、物語の題名は?」
香澄は少々真剣な顔つきをしながら考えている。
「そうね…雪梛の一閃:魔法使い編よ」
香澄が宣言すると同時に雪梛の部屋の扉から異質な気配が発せられた。
「お疲れさんや。これでようやっと行けるようになったで。あとこれな、50%のときの愛剣と桜吹雪や」
雪梛はてんちょうから受け取り桜吹雪を新規生成した亜空間に投げた。
「乱暴に扱って大丈夫なのかしら?またヒビが入るわよ」
「大丈夫だよ。中には極限向上がいるからね。あとてんちょう、キャラクターシートは送らなくていいからサポートだけしてくれればいいよ」
「おーけーや。まあナビゲーションというかアドバイザーというかはまかしとけ」
てんちょうは胸を張りながら言った。
「じゃあ行こっか。作成した物語へと」
そう言って香澄と雪梛はゲートに入って行った。





「なにここ?まあ進めってことかしら」
「そうじゃないの?なんか一応先に光があるけど」
二人は地面とも取れない謎の空間の中で歩を進めていた。
「ここを伸ばしてもしょうがないから脳の使用制限だけ決めて次作に移ろう。50%の継続でいい?」
「もちろんよ。万が一があるものね」
「じゃあそういうことでいってくるね」
おう。先で待っとるでー。
まあ実際おるわけとちゃうがな。
会話を終えた二人は光へと入っていった。

原初編終了
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