覗かれて

ザボン

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勇樹はビールとワインとつまみをたくさん買ってきて「今日は僕が押し掛けたんだから、これは土産ですからね」と言った。
割り勘にしたくても金が払えない。
勇樹を迎え入れると、窓から隣のマンションを見上げ、「あの小窓ですね、名前もわかってるんだから警察に通報した方がよいんじゃないですか?」と言った。
「いやいや、大したことないから」俺は慌てていった。
この会話も様子もXに筒抜けだ。下手なことはできない。
「そうですかぁ」
せっかく自分が調べたので、残念そうだ。
「飲みましょうか!」
勇樹はそう言って缶ビールを開けた。
はじめのうちは、Xに監視されている事が気になり、勇樹との話もぎこちなかったが、段々と酔いもまわり、普段通りの会話になってきた。
突然、インターフォンがなりドアを開けると文雄が立っていた。
「なんの用だ」俺はぶっきらぼうに言うと、文雄は「Xからここに来いとの指示だ」とLINEを見せた。
すると俺にもLINEがきた。

X “勇樹の前で文雄に犯されろ

俺は青くなった。
文雄も自分のスマホをみて、「勇樹って?」と聞いた。
「いま、飲んでる友達だ」
と教えた。
俺は仕方がなく、勇樹に「文雄だ」と紹介して、3人で飲み出した。当然文雄はソフトドリンクだ。
指示に従わないという選択肢は、俺には残されていなかった。ただ、“勇樹の前で”という指示だったので、眠っていても“勇樹の前”と言える。
俺は勇樹に執拗にワインを勧めた。
「また僕を酔わせてキスする気でしょ」と笑いながら言ったが、そのワインが前回気に入ったらしく、ゴクゴクと飲んでいる。
段々と勇樹のろれつが回らなくなり、瞼が閉じていった。
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