覗かれて

ザボン

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「ドサッ」
駅前のコーヒーショップでモーニングを食べていたら、隣の席の人が鞄を落とした。
その人は、トレーにコーヒーとサンドイッチをもっていたので、何気なく鞄を拾い上げて向かいの空いている椅子に戻してあげた。「あっ、すみません。ありがとうございます」とお礼を言われ、俺は相手を見た。20代そこそこの男性で、スーツを着てるが俺より若そうだ。たまにこの店で見かける。俺はちょっと迷ったが声をかけた。
「その鞄についてるキーホルダー、先週のチームエルバの試合で限定で配られたやつですよね。行かれたのですか?」そう聞くと、「あなたもチームエルバのファンですか?」と逆に聞かれ、うなずくと「そうなんですよ、試合のチケット入手できたから、友達と見に行ったんですよ」と答え、少しチームエルバの話題で盛り上がった。
翌日、また同じコーヒーショップに行くと彼がいた。
「おはようございます」と、向こうから挨拶され、「いやーお会いできて良かった」と言った。「前にもこのコーヒーショップでお見かけしたことあったので、今日もいらっしゃるかなと思って」、そう言うと鞄からキーホルダーを差し出した。俺は「えっ」と言った。
「実は一緒に行った友達は、僕が無理矢理付き合わさせたというか、全く興味がないやつで、そいつの分をもらったんで2つあるんです。だからご遠慮なく」とその青年は言った。
俺はメチャクチャ欲しかったが、その青年に教えた。
「そのキーホルダーはネットオークションで1万くらいで取引されてますよ。要らないのなら売った方がいいですよ」
少し残念だったが、もらってしまってあとからこの青年が気がつけば、朝このコーヒーショップで顔合わせるのが気まずくなる。と考えていた。
「知ってますけど、僕もその友達もオークションはトラブルになるのが嫌なのでやらないんですよ。たまに安いものを買ったりはするけど」と言った。
オークションの情報を話したときは期待度のメーターが0近くまで落ちたが、今の返答で復活した。
「でも、見ず知らずの人にそんな高いものもらうわけには、やっぱり・・」と遠慮してみると、「それなら会社の帰りに駅前の“みなと屋”で1杯ご馳走してくれるのでどうですか?」と提案された。
駅前のみなと屋は、せんべろもある安っぽい立呑屋で、俺もたまに寄って帰る。
話が決まり、お互い自己紹介(名刺の交換)をして、夜7時に待ち合わせをした。
名前は、佐藤勇樹。23才だそうだ。
名刺を見ると、タカヤマ電機の営業らしい。同業だ。聞いたことがある社名だから、何かしら取引があるとは思う。その程度の関係の会社だ。あまり関係が深いと、それで上下関係ができてしまうので良かった。
そう思いながら、会社に向かった。

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