若者たち

ザボン

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第0章◆◆◆本郷物語

#9

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富永は奥の部屋で俺とマサさんと座っていた。
「おいお前、何でクラスメイトの明人君を刺そうとした」マサさんが聞くと、ポロポロと涙を流し、俺を見て「お前のせいで僕の高校生活は終った」と恨みのこもった目で言いながらにらんだ。そして、ポツリポツリと説明をはじめた。

村上たちは僕に毎日昼休みになるとパンを買いに行かせた。
しかも、「立て替えといて」と言われ、金を払ってもらったことはない。
村上たちはよく3人でつるんでいた。
紺野と川村だ。全員が水泳部で二人は隣のクラスだ。
僕の自撮りの女装肛門全開写真や、公園勃起写真、オナニー動画は、この三人で共有された。

村上のスマホで僕の写真を見せられたあと、すぐにそのスマホを取り上げて逃げ、校庭の池に投げ捨てた。村上は怒り狂い僕につかみかかった。僕は村上のスマホを弁償した。
しかし、村上の怒りはおさまらなかった。
写真を転送されてすぐにスマホを水没させたので、データは残ってないはずだった。
しかし、村上に見せられた新しく買ったスマホには、また僕の恥ずかしい画像が表示された。「また壊されたらかなわないから、リス ク分散しといたよ」と言うと、横で見ていた紺野と川村も自分達のスマホで僕の画像を見せた。
「おもしれー画像だったから、スマホ転送しないでクラウドに保存しといたんだ、残念だったな」と村上は言った。紺野も「村上も冗談でクラウドにあげて、そんなのすぐに消すつもりらしかったけど、スマホを壊されたら、そりゃ怒るよ、怒りが収まるまで、ちょっと言うこと聞いてやれよ」と言いながらニヤニヤした。
クラスの女子のグループがさっきからこちらをチラチラ見て、話している。
これ以上目立ちたくない。僕は「はい」と言った。

翌日の体育の授業は水泳だった。体育は男女別で隣のクラスと合同だ。
校庭の端にあるプールの更衣室で着替えていると、村上が入ってきた。「おまえ、フルチンで泳げ」
僕はなくなくしたがった。
まだ先生は来ていなく、「水泳部が中心になって、ウォーミングアップさせとけ」と言われていた。
フルチンで僕がプールサイドに行くと「おまえ、競パンは?」と目を丸くされ聞かれた。
僕は「忘れた」と顔を赤くして素っ気なく言った。
風邪のため見学届けを出していた紺野がスマホで撮影をしている。
村上が前の一段高いところに上がり、「じゃあならんで、プールにはいる前に体をほぐすから」と言い、「プールサイド狭いから、おまえ、もう少し奥に言って、そことそこの間隔あけて、あと富永はこっちだ」フルチンの僕は後ろの端にいたが、一番前の端に来させられた。
紺野がスマホをもって見学している真ん前で、校庭からもよく見える。
「じゃあ、はじめはその場に座って足を広げ開脚だ」
やりながら「おまえ、恥ずかしくないの」と俺の後ろのやつが聞いてきた。
次は隣のやっと二人一組で腕を組んで足を広げて。僕は隣をみて「あっ」と言った。隣は川村だった。ニタニタしてる。川村は僕の恥ずかしいところが紺野のカメラに写りやすいように誘導している。また後ろのやつが「肛門、見えてるよ」と親切に教えてくれた。僕は恥ずかしくて顔を真っ赤にしてストレッチを続けた。
一通り、水泳部でやっているストレッチがおわると、先生が来るのが見えたので、「じゃあプールに入って自由形で400m」と村上は指示を出した。
みんなプールに入りたかったので、「よっしゃ」と言い飛び込んだ。
僕もまだ水の中の方がよいので、すぐに入った。
先生がきて、しばらく泳ぐのを眺め、「そこ、もうちょっとばた足強く」など指導をはじめたが、フルチンの僕を見つけ、ぎょっとして、「おい、そこのフルチンのお前、ちょっと待て」と止められ、「クラスと名前は」「3組富永です」「競パンは?」「忘れました」「上がって更衣室に来い」とやり取りをして先生と更衣室に行った。プールは大爆笑となった。
僕は予備というか落とし物の競パンをかりて、それを履いて授業に戻った。

そこまで説明を聞き、「明人君は同じクラスですよね?この騒ぎは知らないのですか?」とマサさんに聞かれた。
「富永のスマホ開けてみたあとすぐに席替えがあって、富永とは席が離れたし、水泳の授業はダルいからサボったので。そういえばなんか“校庭から富永のフルチンが見えた”、て女子が話しているのを、聞いた気もする」
と俺は答えた。
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