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第三章◆◆◆夏輝
第二十四話
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入寮式とささやかな歓迎会が寮の食堂で行われた。
始まる前に「須藤先輩ですよね」と新入生に声を掛けられ「僕、先輩と同室になる、進藤夏輝です。よろしくお願いします」
夏輝はまだ幼さの残る可愛い顔立ちの子だった。顔立ちはどことなく伸一と似ている。
「おう、よろしくな」と返した。
新入生は、11人だった。
歓迎会が終わり、各自部屋に戻ることになった。
須藤の経験では、はじめての寮生活で、各部屋でどっちのベッドと机を使うかジャンケンとかで決めて、そのうちなんとなくどこかの部屋に集まり、「この寮は予想と違った」とか、「入学式はどうする」とか、他愛のない話で盛り上がるハズだ。
しかし、3年の部屋と1年の部屋は食堂を挟んで建物が違うので、夏輝だけは別だった。
「ベッドは俺が上を使ってるから、お前は下な。机は奥側を使ってくれ」
他の1年がわいわいガヤガヤやる内容も、これで終わってしまった。
夏輝が手持ち無沙汰にしているので、(話し相手になってやるか)と思い、「出身どこなの?」と聞いてみた。
「実は近所なんです」
ちょっと驚いた。
「大学が決まってから父親の転勤が決まって引っ越すことになったので、急遽寮に入れてもらったんです」
と夏輝が言った。
学務科は手違いと言っていたが、こういう事情だったのか。
「3年生との同室だったら、という条件で入寮が認められたんだろ」と聞くと、やはりそうだった。
「近所なので、ここも目白台大学の寮だってことは知ってたんです。高校の通学で毎日前を通ってたんで」
そして、「実は須藤先輩のこともお見かけしたことがあるんですよ」といわれ、びっくりし、警戒心を抱いた。「俺の何を見たんだ」と聞くと「夏に寮の庭でみんなで大騒ぎされてたでしょ」と、クスクス笑いながら答えた。
須藤は(あれを見られてたのか)と焦ったが、平然と「夏に大騒ぎ、、えーと、なんだっけな。あぁ、皆で脱がしっこして遊んでたあれかな?」と聞いてみた。
「脱がしっこには見えませんでしたけど、、確かに鈴木先輩は裸でしたね」と笑いながら答えた。
(鈴木先輩ってだれだ?)と少し考え伸一の名字が鈴木だったことを思い出した。普段は伸一としか呼ばないのでピンとこなかったのだ。
驚いて「お前、伸一を知ってるのか?」と聞くと「庭でお見かけする前に、一度会ってるんです。鈴木先輩は覚えてないと思いますが・・・」
今日の歓迎会に伸一は出席してたが、そんなこと言ってなかった。なのでやはり伸一は覚えてないと思うが、夏輝にあの姿を見られていたことを伸一に話すべきか、、
伸一も俺たちのお陰(?)で、性に対してずいぶんと免疫がついたからな。
こんなことを考えていると、「あの、このB棟の1階が2年の先輩達の部屋ですよね、鈴木先輩は何号室だかわかりますか?一応挨拶しとこうと思って」
と夏輝が言い出した。
「挨拶って、、」驚いて聞いてみた。
「あんな姿を見られた後輩に、挨拶されるってことになるよな?」
すると夏輝は、
「あんな姿って、脱がしっこの事ですか?」と聞き返され返事に困ってしまった。
部屋割り表は玄関に貼ってあり、すぐわかることなので、この部屋の真下の部屋だと教えてやった。
「ありがとうございます、じゃあちょっと行ってきます」そういうと、部屋を出ようとするので、慌てて「ちょっとまて、俺も行くから」と言い追いかけた。
部屋には斎藤しか居なかった。
俺から改めて夏輝を紹介した。
「コンビニに飲み物買いに行ったからすぐ戻ると思うよ、もうすぐ門限だし」
「じゃあ挨拶するだけだから玄関入った所のソファで待つことにします」
そう言って一人で出ていった。
斎藤と二人になったところで、夏輝が寮の庭での事を見ていた事を話した。
だったら先に伸一にその事伝えておいた方が良いという。伸一のスマホに電話を掛けようとしたとき、玄関から声が聞こえたので、慌てて玄関に向かった。
「あ、鈴木先輩。お帰りなさい。僕、1年で須藤先輩と同室の進藤夏輝です。よろしくお願いします」
伸一は、何でわざわざ自分に挨拶しに来たのかわからず、「は、はぁ。よろしく」とだけ言った。
俺と斎藤が集まってきたのも不思議なようで、目をキョロキョロさせている。
「鈴木先輩は覚えてらっしゃらないと思いますが、僕、前に鈴木先輩とお会いしてるんですよ」といわれ、伸一は怪訝そうな顔をして、「へぇ、いつ?」と聞きかえした。
「えっと、僕が喫茶コロンでバイトしてたときです」
その答えに俺と斉藤は意味がわからずにいたが、伸一の表情は、険しくなり、今にも泣きそうになっていた。
「あ、そう。じゃ明日早いんで」
伸一は何とかそのセリフを言うと、部屋へ戻って行った。
俺と夏輝も部屋に戻り、軽く夏輝に聞いてみた。
「喫茶コロンって言ってたけど、伸一が客としてお前のバイト先によく来てたってことか?」
「いえ、来てくれたことは無いですが、1度鈴木先輩の仕事先にコーヒーを出前をしたことがあったんですよ」と、夏輝は答えた。
「それで話が弾んだとか?」
「いえ、鈴木先輩とは話しませんでした」
俺はますますわからなくなった。
すると「じゃあ僕、お風呂行ってきます」と言って、夏輝は部屋を出ていった。
俺は、頭の整理をした。
まず、伸一の仕事先ってどこた?
たしか、前にスタバでバイトしてると聞いたことがあったが、スタバの人がコーヒーの出前を頼まないだろ。あと伸一のバイトって、、
俺はハッとして第2弾の編集前の動画が入ったSDカードを探し始めた。
始まる前に「須藤先輩ですよね」と新入生に声を掛けられ「僕、先輩と同室になる、進藤夏輝です。よろしくお願いします」
夏輝はまだ幼さの残る可愛い顔立ちの子だった。顔立ちはどことなく伸一と似ている。
「おう、よろしくな」と返した。
新入生は、11人だった。
歓迎会が終わり、各自部屋に戻ることになった。
須藤の経験では、はじめての寮生活で、各部屋でどっちのベッドと机を使うかジャンケンとかで決めて、そのうちなんとなくどこかの部屋に集まり、「この寮は予想と違った」とか、「入学式はどうする」とか、他愛のない話で盛り上がるハズだ。
しかし、3年の部屋と1年の部屋は食堂を挟んで建物が違うので、夏輝だけは別だった。
「ベッドは俺が上を使ってるから、お前は下な。机は奥側を使ってくれ」
他の1年がわいわいガヤガヤやる内容も、これで終わってしまった。
夏輝が手持ち無沙汰にしているので、(話し相手になってやるか)と思い、「出身どこなの?」と聞いてみた。
「実は近所なんです」
ちょっと驚いた。
「大学が決まってから父親の転勤が決まって引っ越すことになったので、急遽寮に入れてもらったんです」
と夏輝が言った。
学務科は手違いと言っていたが、こういう事情だったのか。
「3年生との同室だったら、という条件で入寮が認められたんだろ」と聞くと、やはりそうだった。
「近所なので、ここも目白台大学の寮だってことは知ってたんです。高校の通学で毎日前を通ってたんで」
そして、「実は須藤先輩のこともお見かけしたことがあるんですよ」といわれ、びっくりし、警戒心を抱いた。「俺の何を見たんだ」と聞くと「夏に寮の庭でみんなで大騒ぎされてたでしょ」と、クスクス笑いながら答えた。
須藤は(あれを見られてたのか)と焦ったが、平然と「夏に大騒ぎ、、えーと、なんだっけな。あぁ、皆で脱がしっこして遊んでたあれかな?」と聞いてみた。
「脱がしっこには見えませんでしたけど、、確かに鈴木先輩は裸でしたね」と笑いながら答えた。
(鈴木先輩ってだれだ?)と少し考え伸一の名字が鈴木だったことを思い出した。普段は伸一としか呼ばないのでピンとこなかったのだ。
驚いて「お前、伸一を知ってるのか?」と聞くと「庭でお見かけする前に、一度会ってるんです。鈴木先輩は覚えてないと思いますが・・・」
今日の歓迎会に伸一は出席してたが、そんなこと言ってなかった。なのでやはり伸一は覚えてないと思うが、夏輝にあの姿を見られていたことを伸一に話すべきか、、
伸一も俺たちのお陰(?)で、性に対してずいぶんと免疫がついたからな。
こんなことを考えていると、「あの、このB棟の1階が2年の先輩達の部屋ですよね、鈴木先輩は何号室だかわかりますか?一応挨拶しとこうと思って」
と夏輝が言い出した。
「挨拶って、、」驚いて聞いてみた。
「あんな姿を見られた後輩に、挨拶されるってことになるよな?」
すると夏輝は、
「あんな姿って、脱がしっこの事ですか?」と聞き返され返事に困ってしまった。
部屋割り表は玄関に貼ってあり、すぐわかることなので、この部屋の真下の部屋だと教えてやった。
「ありがとうございます、じゃあちょっと行ってきます」そういうと、部屋を出ようとするので、慌てて「ちょっとまて、俺も行くから」と言い追いかけた。
部屋には斎藤しか居なかった。
俺から改めて夏輝を紹介した。
「コンビニに飲み物買いに行ったからすぐ戻ると思うよ、もうすぐ門限だし」
「じゃあ挨拶するだけだから玄関入った所のソファで待つことにします」
そう言って一人で出ていった。
斎藤と二人になったところで、夏輝が寮の庭での事を見ていた事を話した。
だったら先に伸一にその事伝えておいた方が良いという。伸一のスマホに電話を掛けようとしたとき、玄関から声が聞こえたので、慌てて玄関に向かった。
「あ、鈴木先輩。お帰りなさい。僕、1年で須藤先輩と同室の進藤夏輝です。よろしくお願いします」
伸一は、何でわざわざ自分に挨拶しに来たのかわからず、「は、はぁ。よろしく」とだけ言った。
俺と斎藤が集まってきたのも不思議なようで、目をキョロキョロさせている。
「鈴木先輩は覚えてらっしゃらないと思いますが、僕、前に鈴木先輩とお会いしてるんですよ」といわれ、伸一は怪訝そうな顔をして、「へぇ、いつ?」と聞きかえした。
「えっと、僕が喫茶コロンでバイトしてたときです」
その答えに俺と斉藤は意味がわからずにいたが、伸一の表情は、険しくなり、今にも泣きそうになっていた。
「あ、そう。じゃ明日早いんで」
伸一は何とかそのセリフを言うと、部屋へ戻って行った。
俺と夏輝も部屋に戻り、軽く夏輝に聞いてみた。
「喫茶コロンって言ってたけど、伸一が客としてお前のバイト先によく来てたってことか?」
「いえ、来てくれたことは無いですが、1度鈴木先輩の仕事先にコーヒーを出前をしたことがあったんですよ」と、夏輝は答えた。
「それで話が弾んだとか?」
「いえ、鈴木先輩とは話しませんでした」
俺はますますわからなくなった。
すると「じゃあ僕、お風呂行ってきます」と言って、夏輝は部屋を出ていった。
俺は、頭の整理をした。
まず、伸一の仕事先ってどこた?
たしか、前にスタバでバイトしてると聞いたことがあったが、スタバの人がコーヒーの出前を頼まないだろ。あと伸一のバイトって、、
俺はハッとして第2弾の編集前の動画が入ったSDカードを探し始めた。
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