若者たち

ザボン

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第一章◆◆◆伸一

第六話

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気がついたか?
目を開けるとまっ裸のまま床に寝かされていた。
しかし、バケツから溢れでた糞は片付けられ、撮影機材もなく、スタッフも男優もマスクたちもいなかった。
やっと自由になった手足をさすりながら、(暴行で訴えてやる)、と怒鳴りたかったがその元気もなかった。黒スエットは、「ほら、今日のモデル代だ、途中で気絶して最後まで撮れなかったが特別払ってやる」といって、現金を差し出した。
「3時間だから3万円、あと契約書に書いてあるとおり、SMのM手当てが2万円だ」

契約書を確認すると、確かにSMプレイの場合、S役のときは1万円M役の時は2万円を別途支給する。ただし、役は株式会社ゴトーが指定する。とも記載されていた。

伸一はなにも言い返せなかった。
ただ帰り道、ふと、どうでもよいことを考えてしまった。
(あの男優は、僕をあんなにいたぶって、1万円の手当てをもらったのかな)


今度は前回よりも傷が深かった。
あんなことをされて、生きていく自信もなくなった。
ずっと寮の部屋にこもり布団を被っていた。
暖人先輩が心配して、俺の部屋を訪ねてくれた。暖人先輩も同じ寮だった。
「おーい、伸一、どうしたんだよー、部活出てこいよ」
暖人先輩は部活どころか大学の授業も出ていないことを知っている。
(第2弾のこと、先に暖人先輩に相談すれば良かった)
伸一は拳を固く握りながら後悔した。
大学の授業は、これまで真面目に出席してたため、ある程度の欠席猶予があったが、そろそろまずい頃だった。伸一は頭の整理をはじめた。
(前回の撮影は、アラブでパスワードつきで公開されたが、その映像は一瞬しかみていない。どのように編集されたかも、自分は把握してない。
そんなことより、早く忘れたい。という気持ちが先走っていた。しかし今回のは、どのようにカメラに映っているのか、どのように編集されたのか、把握しておく必要があるのではないか?)
思い立った伸一は、暖人先輩を探すため、あわてて寮の部屋を出ていった。

部室に着くと挨拶をした。
「お疲れ様です、暖人先輩」
「おーやっと出てきたか、大丈夫か?」
「先輩に聞きたいことがあるんです。例の件で」
伸一がそう言うと、暖人先輩の笑顔が消え、「あっちで話そう」と、営業時間外の学食の片隅に誘った。
「例の件のメールは部共有のパソコンアドレスにきたのですよね?メールアプリを使って確認したと思いますが、web上でも見られるのではないかと思って心配してるんです。アプリ上ではあの場で削除してくれたけど、web上では残ってるのではないかって」
「そうか、それは考えなかったな」と暖人先輩は言った。
「調べて、もしあったら削除しますので、IDとパスワード、教えてもらえますか?」
そう言って、教えてもらえた。
早速寮の部屋に戻り、パソコンを立ち上げた。
部のアドレスはyohooなので、サイトにログインし、メールサーバを確認してみると、やはりメールが残っていた。
早速、そのURLとパスワードをコピペして、webサーバー上からも削除した。
そして、そのサイトにアクセスしてパスワードをいれてみた。
(ずいぶん経ってるけど、まだパスワードは有効か?)
ドキドキしながらアクセスすると、会員ページが開いた。
前回はファイルが1つだけだったが、今は2つある。
まず、初回の映像を確認した。
第2弾の撮影があまりにショックだったため、初回の撮影はどーでもよく思えていた。
しかし、画面に大きく映し出される自分の勃起したペニス、肛門、悶絶してよだれを垂らす自分の顔のアップを次々映し出されると、映像が万一拡散されたら、という心配もあるなか、あのときの快感が甦り、自然とペニスに右手をあてていた。
映像のなかの自分が肛門に指を突っ込まれ悶絶している。それと同じように、今、自分はズボンもパンツも脱ぎ捨てて、左中指を肛門にあてながら、ペニスをしごいている。
なかなか入らない左中指を唾液でドロトロに濡らしながら、根元までさし込み、関節を曲げて自分自身の内部を確認している。
(気持ちが良いのは、ここかっ、それとも、こっちか!)
そして、映像のなかの自分が、指のピストン動作に感じて、ペニスの先っぽから粘液を垂らすシーンで我慢できなくなり、射精した。
射精すると、我に帰り、自分の動画でオナニーしたことを後悔した。
(なにやってんだ、第2弾を確認するぞ)
そう思い、二つ目のファイルをクリックした。

見終わって、猛烈に後悔した。
初回の映像は、恥ずかしいが、自分でも興奮してしまう、人間として、男としての欲求を全快にして、ある意味見た人が共感してくれる可能性がある映像だった。
しかし、第2弾は、憎悪でしかない。
何度も映像をとめ、嗚咽し、泣き叫びながら、最後まで確認した。
今回も同じように無修正、個人情報付だ。
こんな映像が知り合に見られたら、拡散されたらと思うと、立ち直りかけていた精神が、また崩れてしまう。
絶対に周囲の目に触れないようにしないと。
ただ妙案が浮かぶこともなく悶々としていた。
(ん、まてよ?)
伸一はマウスをカチカチする癖を止め、考えだした。
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