若者たち

ザボン

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第一章◆◆◆伸一

第一話

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「伸一、次回の遠征費の一万円は、いつ頃払えそうか?」
2年の先輩、萩原暖人が遠征の集金担当だった。
「遅れててすみません、今度の日曜、バイトする予定だったんですが、バイト先の手違いで断られて、これから探すとこなんすよ」伸一がいいわけがましく言った。
僕はこの目白台大学保育部の1年だ。保育士を目指している。
「なんだ、バイトだったらバスケ部で紹介してやるよ。俺、バイト先との連絡役もやってるんだ」
そう言うと暖人はバスケ部共用のパソコンをたたき出した。
「今度の日曜なら、肉体系のバイトで日給1万円のがあるけど、どーする?」
肉体系というと、引っ越しかな?ちょっと気が引けるけど、暖人さんがせっかく探してくれたから、それでよいか。と思った。
暖人さんには金がないとき学食でおごってもらったり、シューズ買うのに付き合ってもらったり、なにかと世話になってるんだ。顔も整っていて、女にもてるんだろうなぁ、と前から思ってるのだか、彼女がいる様子もなく、よく遊びに誘ってくれる。
「やります」と伸一は言った。
「それなら学生証、登録するから出して」といわれ、定期入れから出すと、デジカメで撮影し、メールでバイト先に申し込んでくれた。
「携帯番号も連絡しといたんで、木曜までに連絡くるから」
と言われ、バイト先からの連絡を待つことになった。

日曜の午後、伸一は大野宮駅の前にいた。
日給なのに仕事が午後からなのはラッキー、紹介してくれた暖人先輩に感謝だな。
そんなことを考え待っていると、「目白台大学バスケ部の鈴木君だね?」と少し変わったイントネーションで声をかけられた。
黒いスエットをきた、少し怖そうな人だ。よく見ると顔は整っている。30才前だろうか?どこか疲れた感じだが、若い頃はカッコ良かったんだろう。
それにしても、どこの地方のイントネーションだろうな。と一瞬で考えながら「そうです」と答えた。
大きめのバンにのせられ、連れていかれたのはマンションの一室だった。

その部屋にはおじさん3人と、少し若めで、色黒のガッチリ系イケメン男性1人がいて、なにやら準備をしていた。
ベッドに照明が向けられ、カメラが数台セッティングされていた。
「すみません、仕事の内容をよく聞いてないのですが、どんなことをやるのですか?肉体系とは聞いてたので引っ越しか何かと思ってるのですが」
状況が把握できないまま、連れてこられた黒スエットの男に聞いた。
「何をいってるんだ、君、モデルだろ、なかなかのイケメンだから、男優も張り切ってるよ」
そう答えると、照明のスイッチを確認しながら更に言った。
「君、はじめてだろ。今日の男優はベテランだから体を任せていればいいよ。うまくやってくれるから」ニタニタしながらなめるように伸一の頭のてっぺんから足の先まで眺め、「本当にかわいい顔してんな、ちょと先に脱いでみて、毛深さとかぺニスの大きさとか確認しておきたいから」と少し興奮ぎみに言ってきた。
「ちょっと待ってください、肉体系でも思っていたのとジャンルが違います。暖人先輩に確認します」と言い、あわてて携帯をかけたが、電源が入ってないのか、圏外なのか繋がらない。
伸一は焦って、「すみません、今日は帰ります」といい、玄関へ向かって歩き出そうとすると、黒スエットの男が立ちはだかり、キッチンの椅子に座らされ、さっきよりドスの効いた声で言われた。「この部屋や機材を借りて、スタッフや男優がこれだけ時間をかけて準備している。だから、今さら撮影中止はできないぞ。もし中止するなら、100万単位の請求を萩原さんにすることになるが、それでもよいのか?」
伸一はビビりまくって、
「ちょっとまってください、もう一度電話してみます」と言うとあわてて暖人先輩の携帯へ掛けまくるが、機械的なアナウンスが聞こえるばかりだった。
「中止じゃなくても、撮影が遅れれば、スタッフや男優の超過料金として、安くない金額が請求となってしまうから、早くしたほうがお前のためだぞ。俺たちも忙しいんだ」と、淡々と言われて、半泣きの状態で契約書にサインをした。
説明では、
撮影した映像の著作権は株式会社ゴトー(という会社らしい)に属し、放映や配信、映像の譲渡の権利は株式会社ゴトーにある。
撮影にさいし、時給1万円をモデルに支払う。
といった内容だった。
そして、恥ずかしい撮影が始まった。


「じゃあ、全裸になって」
サインした契約書をカバンにいれながら、黒スエットが言った。
「えっ」
とベッドの横で立ちすくしていた僕は聞き返した。
「まず体の状況を確認してから、撮影用のパンツに履き替えるんだよ、もたもたしてると本当に追加料金になるからな」と強めに言われて、僕は服を脱ぎ出した。
照明があてられ、カメラが3方向から向けられている。
全裸になると、黒スエットが言った。「結構、毛深いな」

そう、僕は毛深いことがコンプレックスだった。大学生になったら脱毛を考えていたが、まだしてなかった。胸毛はうっすら生え、腹毛が陰毛と繋がっている。おしりの割れ目からも毛がはみ出しており、太ももからスネ、足先まで黒々とビッシリはえている。
友達と寮の風呂で一緒になると、「顔はなかなか甘いマスクなのに、脱ぐと凄いなあ!」といつも言われて、恥ずかしい思いをしている。
男優がニタニタしながら、「なかなか興奮する体だよ、ぺニスは勃起したら剥けるんだろ?」
と聞いてきた。
毛深さと、もうひとつのコンプレックスは仮性包茎であることだ。これは、手で簡単に向けるので、風呂に入るときはパンツを脱ぐ前に必ず剥いていたが、今日は放心状態でそのままパンツを脱いでしまった(まぁ、剥いたところで、そんなことよりも遥かに恥ずかしいことをさせられるんだろうな、と思っていたからでもある)
僕は恥ずかしさで、小さな声で「はい」と答えるのが精一杯だった。
「君は対象は、女か?それならやられてる最中、もし勃たなければワイヤレスイヤホンで女のあえぎ声を聞かせてやる」
そう言うと黒スエットが僕のぺニスをニュッと剥いた。
「あっ」と言ったきり、僕は無言でいた。
「じゃあ撮影を始めるか、このパンツを履いて服を着て」と言われた。
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