続・二軍バスケ部寮性活

ザボン

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おいしいバイト

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俺たち3人のお仕置きが話題にも上がらなくなると、お盆休みとなった。
一週間、練習も休みだ。
寮にいてもよいのだがおばちゃんも休みのため食事や風呂の準備などは自分でしなければならない。
ほとんどのやつは実家に帰る。
ただ羽黒は、実は施設で育っていて帰る場所がない。
これは1年のみんな(たぶん赤井と白崎も!)は知らないが、後藤センパイが教えてくれたのだ。
「俺も今年は帰らないんだ、両親はちょうどこの時期旅行に行くと言ってて」俺は何となく羽黒と一緒に過ごそうときめ、少し嘘を言った。
羽黒は「そうなのですか、俺も帰らないけど寮にいてもしょうがないので、住み込みバイトを探したんです!」と教えてくれた。
俺は羽黒は寮にいるとばかり思っていたので、「あっ、そうなんだ」と少し拍子抜けしながら答えた。
「港からフェリーで15分の見延島にあるショーパブのボーイで、お盆の期間にイベントがあるとかで住込バイトを募集してたんです。まだ空きがあるみたいですよ」そして、「夕方から夜遅くまで仕事だけど、昼間あそべるから、おいしいバイトって先輩から聞いたんです」と続けた。
羽黒は俺が留年生と知ってから、話す言葉がヨソヨソしいのがたまに傷だが、一緒にいても苦にならない、と言うか、楽しい!
俺は「じゃあ俺も応募しようかな」と言っていた。

俺と羽黒はフェリーに乗っていた。
15分なので料金も450円と大したことはない。しかも交通費は別途もらえるとのことだ。
しかも時給は他の相場と比べて1.5倍だ!(羽黒にいいバイト紹介してもらった、確かにおいしいバイトだ)と、思っていた。
この島は本土に近いが橋がなく、唯一の交通手段がこのフェリーだ。
なので(近くて遠い島)と地元では言われている。
島の港につくと、少し厳つい男が待っていた。でも表情は笑顔で「ショーパブアイランドのバイトの人はこちらです」と言って“ショーパブアイランド”の文字を印刷した紙を掲げていた。
俺は「ちょっとトイレ」と言って先に用を足すことにした。
トイレを探していると隅の方でシクシクと泣いている少年が目に飛び込んできた。
早くしないとお迎えバスに取り残されちゃう!と考えながらも、「どうしたの」と声をかけていた。
「本土にいる母ちゃんが危篤だと連絡もらって慌てて港まで来たのだけれど、財布を忘れてフェリーに乗れないんです」と悔しそうに言った。
「次が今日の最終便だから、これを逃したら母ちゃんに最後に会えない、くそ、Suicaが使えれば」と悔しそうにつづけた。
確かにフェリーは現金だけで、スマホを握りしめて港に走っても乗れない。
俺は「何かの縁だ」と言って500円玉を渡した。
その少年(よく見ると俺と同じ年か、もしかしたら年上か、、)は涙を一杯ためて「ありがとうございます」と何度もお礼を言った。
そして「向こうについたらペイペイで返しますので、携帯番号を教えてください」と言われたが「いいよ、あげる。そんなことより早く乗りな」と促した。
その少年は何度もお礼を言ってフェリーに乗り込んだ。
少年が乗り込んですぐに「乗船終了します」とアナウンスが流れた。
「いいことしたな」と、たった500円で満足感を味わい、トイレに行き、出口に向かった。
羽黒が同年代の3人と話ながら待っていて「あ、田辺。こっちこっち」と俺を呼んだ。
名前だけは“さん”をつけずに呼び捨てにさせた。
「あ、彼らアイランドでのバイトで一緒何だって」と羽黒が言うと、その3人は俺に挨拶をしたので俺もした。
「迎えに来たスタッフの人は?」と聞くと、「なんかトラブルあったみたいで、“ここで待っててください”と言ってどこかへ行ったっきりなんだ」と不安げに言ったが、俺たちだけではないので大丈夫だろう。
俺も横に座って待っていた。
20分くらいしてスタッフの人が戻ってきたが、ずっとスマホで話している。
「何があったのだろう?」と俺がボソッと言うと「なんだか誰かが逃げたとか言ってた」と羽黒は興味無さそうに答えた。
スタッフの人は「すみません、もう少し待ってください。他のスタッフが到着したら案内しますので、えーと、田辺さんですね?」と俺の方を向いて言った。羽黒が既に受付を済ませたのだろう。「はい田辺です。よろしくお願いします」と俺は挨拶をした。
それからしばらくまたされたので、俺は羽黒にさっきの事を話した。「俺たちくらいの年齢の男が泣いてて、親が危篤なのに金がなくて最終便に乗れないって言ってたから、500円やったんだよ」と説明すると、それを聞いたスタッフが「お前、今の話本当か、それはこいつだったか?」とスマホの写真を見せられた。
それはまさしく、さっき俺が助けた青年だった。
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