BLUE DREAMS

オトバタケ

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狼の宴

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 サッカー日本代表の親善試合を終えて所属チームのあるドイツの自宅に戻ると、玄関の扉に凭れ掛かり、ふてぶてしい態度で俺を見つめる男がいた。

「何の用だ?」

 鞄を置き玄関の鍵を開けようとすると、コートから手を出したソイツが、いきなり俺の首を絞めてきた。

「なっ……」

 なにをしやがる、とソイツを睨みつけると、更に力を込めて絞め上げてきた。

「俺に殺されたら本望だろ。あっ、折角だからイク瞬間に逝かせてやるよ。俺しか見えてない時に逝けるなんて幸せだろ?」

 乾いた笑い声を上げたソイツは、俺の首から手を離す。

「何、アイツに触られて嬉しそうな顔してんだよ」

 大きな掌が、ゴホゴホと咳き込む俺の頬を包み込んでくる。
 睨みつけてくるその瞳は、少し寂しげな色を放っている。

「あの坊主のことを言ってるのか? まさかヤキモチ焼いて、わざわざドイツまで来たなんて言わないよな?」

 親善試合で、神童と呼ばれる高校生Jリーガーのアシストでゴールを決めた俺は、ゴール後にその坊主に髪がグシャグシャになるほど撫でられてしまった。
 別にそれが嬉しかったわけではなく、ゴールしたことが嬉しかっただけだ。今回は代表に召集されずに日本の所属チームでカップ戦を戦っていたが、代表でのゴールがどれほど嬉しいのか、代表経験のあるコイツならば分かるはずだ。
 潮笑ってやると、手をコートのポケットに戻したソイツは、ばつが悪そうに茶色くなり始めた草木に目をやった。

「入るんだろ?」

 鍵を開け、鞄を持ち上げて扉を開けようとすると、背中に温もりが広がった。

「お前の恋人は誰だ?」
「アンタだよ」

 耳元で聞こえる頼りない声に庇護心が沸いてきて、胸に回された掌に触れながら言うと、首筋を柔らかな感触が上下しはじめた。

「あっ……」

 久しぶりの愛しい感覚に、体中の力が一気に抜けてしまい、手から鞄が落ちる。
 俺の体を回転させ、玄関の扉に押しつけてきたソイツの唇が俺の唇を温め、口内を犯してくる。

「んっ……ふぁ……」

 いつ誰が目の前を通るかも分からないのに、理性を飲み込んだ本能のままにソイツの手慣れた舌遣いを楽しんでしまっている俺がいる。
 気付けばソイツの首に腕を絡めていて、ここがどこなのかさえ忘れかけていた。
 長い口付けを終えた唇が離れていくと、二人の間に細い糸が出来、太陽に照らされてキラキラ光っていた。綺麗だな……。

「なぁ……」

 ぼんやりとそれを見つめていると、目の前の顔が眩しそうに目を細めて話し掛けてきた。
 何だ?、と首を傾げると、何でもない、と首を振るソイツ。
 クスリと笑う俺の頭を、大きな掌が乱暴に撫でてくる。
 なんだか、凄く温かい。


「腹減った」

 家に入るなりキッチンに向かったソイツは、勝手に冷蔵庫を開けて物色し始めた。

「なんにもねーなー」
「食いたいんだったら、どっか行くか?」

 ジャケットを脱ぎ、冷蔵庫の前でしゃがみ込んでいるソイツの後ろに立つと、何かを取り出したソイツがゆっくり振り返り、意味深な笑みを浮かべた。

「まずは、お前を食ってからだな」

 そいつが手に持っているのは……キュウリ?

「ちょっ、なにする……」

 嫌な予感がして後ずさりしたが、ソイツに力ずくでベッドまで連れていかれて押し倒されてしまった。
 覆い被さってきたソイツが、俺の唇を乱暴に奪ってくる。
 これから待ち受けている事がなんとなく想像出来て、逃げなくちゃと思うのに体は正直で、コイツに触れられたい、コイツを感じたい、と必死でソイツに応えている。

「んっ……」

 ねっとりとした舌が、俺の存在を確かめるように体中を這いはじめ、俺の感じやすい箇所に赤い花を咲かせていく。

「っ……あぁっ……」

 ソイツを感じきっている俺の屹立が咥えられる。快感を期待して疼きはじめた蕾は、指で探られ始める。
 ソイツの骨張った指はソコを巧みに解して、トロトロに溶かしていく。焦らすようにイイトコを攻められ、先走りの蜜が止めどなく溢れてしまう。

「お前のココ、早く咥えたいってヒクヒクいってるぜ? 欲しいんだろ?」
「……欲しい」

 快感で頭が朦朧として、口からは正直な気持ちが、何の躊躇もなく出る。

「どうしよっかな。俺、ちょっと怒ってるから、すぐにはやらない」

 俺の鼻を摘まみ、意地悪な笑みを浮かべたソイツは、さっき冷蔵庫から出してきたキュウリを舐め始めた。わざと音を立てて、いやらしい舌遣いを俺に見せてくる。
 まんまとソイツの思惑に嵌まってしまった俺は、張り裂けそう体に堪えられず、ソイツの屹立に触れて早くと急かしてしまう。

「まだこれはやらねーよ」
「あっ……」

 ソコに冷たい感触が当たって腰が反る。
 楽しそうに笑ったソイツは、俺の中にキュウリを挿し込んできた。細かく動かし、俺のイイトコばかりを攻めてくる。
 久しぶりの感覚に、溜まっていた欲望がすぐにあがってきてしまう。でも……

「嫌だ……アンタのでイきたい……」

 体を捻って必死に懇願すると、満足そうな顔をしたソイツは俺からキュウリを抜いた。

「お望み通り、俺でイかせてやるよ」

 燃えたぎるような熱が、俺の中にゆっくり入ってくる。
 さっきとは比べものにならない程の快感に、俺はコイツから離れられないのか、と乱暴に腰を振るソイツを見上げた。

「あぁっ……」

 すぐに終わりは訪れる。本当にイク瞬間にコイツに殺されて逝くなら構わないかも、と思ってしまった。


 夕焼けの空の下、食事を終えて家へと続く道を二人並んで歩く。

「ピッチの上でも、こうやって一緒に並びたいな」

 俺達は、同じフォワードだからだ。
 呟いた俺の手を、大きな手が握ってくる。
 横を向くと、ソイツは顔を背けてしまった。あんな事は平気でする癖に、照れ屋なソイツに頬が緩む。

「なぁ……」
「ん?」

 声を掛けると、愛しい、という想いが伝わってくる優しい色の瞳が俺を見る。

「なんでもない……」

 満たされていく胸が擽ったくてクスクスと笑うと、ソイツも柔らかな笑みを浮かべた。
 本当に、凄く温かい。
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