その男、幽霊なり

オトバタケ

文字の大きさ
上 下
104 / 179
Let's party!(海老原視点)

しおりを挟む
「光の肌は白くて綺麗だね。きめ細やかだし陶器みたいで触り心地もいい」
「く、擽ったいからやめてください」

 肩を揉んでいた指が首筋を擽ってきて、身を捩ってしまう。劣情を煽るような不埒な指の動きのせいで、掌で隠している股間が成瀬さんの中に挿りたいとピクピク震えてしまう。

「擽ったいだけ? 変な気持ちにならない?」
「変な……気持ち?」

 耳許に熱い吐息を吹きかけられながら囁かれて、理性の糸が切れそうになる。どうかボクの想像してる答えは言わないで、と願いながら聞き返す。

「そう。お股がジャクジュク濡れて、何かを挿れて欲しくない?」
「なに言ってるんですか?」

 想像通り艶事を連想させる発言をしてきた成瀬さんだけど、ボクの思い描いていた妄想とは違う映像を浮かべているのだと分かり、冷静さが戻ってきた。
 ボクは雄として恋した相手と繋がりたいと願っていた。だけど客観的に見て、大人の成瀬さんが子供のボクを抱く方がしっくりくるのは分かる。
 好きな相手と繋がれるのならば、受け身でも構わないと思わなければ。男同士の繋がり方は知っているし、興味本意で自分の後孔を弄ったこともある。むず痒くて全然気持ちよくなかったけど、好きな人に触れられたら感じるのかもしれない。

「ほら、分かる? 僕の男の子が硬くなってるの。光の女の子に挿りたいよって言ってるんだよ」

 腰に硬いモノがグリグリと押し付けられる。
 挿れられるのは正直怖いが、好きな相手に興奮されて嬉しくないはずはない。いきなりの展開で覚悟なんて決まってないが、勢いに任せてしまった方が変に緊張をしなくていいのかもしれない。
 流されてみようかと思いつつも、成瀬さんの発言に引っ掛かりを覚えて問い掛ける。

「ボクは男ですよ?」
「嘘を言ったら駄目だよ。光は女の子でしょ? こんなに可愛くて華奢で肌がスベスベな男の子なんていないよ。先生が大事な一人娘に手を出されないように息子だなんて嘘をついてるけど、僕にはすぐに女の子だって分かったよ。僕が男の子を抱きたいだなんて思うわけないもの」
「違っ……ボクは男で、ちゃんと成瀬さんと同じモノが付いてます」
「まだ嘘をつくの? 確かめてあげる」

 ボクをベッドに押し倒してきた成瀬さんの目が怖い。ボクにボクの幻想を重ねているような焦点のあっていない瞳だ。成瀬さんは何を見ているの?
 成瀬さんの形をしているけど成瀬さんには思えない人を呆然と見上げていると、シャツの裾から手を差し込んできて乳首を摘まんできた。

「く、擽ったいんでやめてください」
「おっぱいがないから恥ずかしがってるの? 可愛いね、光は。いっぱい揉んだらすぐに大きくなるから心配しなくてもいいよ」

 フフッと楽し気に笑いながら、まっ平らな胸を揉んでくる成瀬さん。どれだけ揉んでも女の子のような膨らみなんてできるはずはないのに、本気でボクを女の子だと思っているのか、女の子だと思い込もうとしているのか、本当のボクを見ずに体を高めようとしてくる。
 ノンケなのに男のボクに欲情してしまった自分が信じられなくて、防衛本能から変なフィルターがかかっているのかもしれない。ボクが男だという証明を見せつければ、成瀬さんの目も覚めるかも。それで萎えてしまったら、成瀬さんとの恋愛は無理なんだって諦められる。
 元々叶うはずないと思っていた初恋だから、辛いけど想いは断ち切れる。男だって分かっても欲情し続けてくれたら、男同士として今は受け入れる側になる。男同士として恋愛して、ボクがもっと大人になったら成瀬さんにも挿れさせてもらって、同等の立場になりたい。

「成瀬さん、見て」

 ボトムスをずり下げ、成瀬さんを至近距離で感じて興奮し続けている男の証を見せつける。胸を揉んでいた手を止めた成瀬さんは、ピンと天を向くソレを凝視している。無表情のその顔からは、何を思っているのかは分からない。
 ちゃんと男だって理解してくれたのか必死で表情を探っていると、ソコからボクの顔に視線を移した成瀬さんがニッコリと微笑んだ。どういう意味の笑顔なんだろうと考える脳内には、良い意味も悪い意味も色んな可能性が高速で過っていく。
 すると急に体が浮いて、考えは中断されてしまった。何が起こったのか分からず数秒茫然としてしまったけど、視界に映っている水色のシーツで、ベッドにうつ伏せにされたんだと知る。

「お尻もスベスベだね。ちっちゃくて可愛い」

 お尻を撫で撫でしながらうっとりと告げてきた成瀬さんは、尻たぶを揉みだした。男だって見せつけたのに、女の子に対するような言葉遣いは変わっていない。
 見なかったことにしちゃったの? 男だって分かった上で、それでも抱きたいって思ってるの?
 瞳が見えないから真意が分からない。

「光の中、挿っちゃ駄目?」

 背中に覆い被さりお尻の間に硬くなったモノを擦り付けながら、また胸を弄ってくる成瀬さん。興奮しているのは、囁かれた声と擦り付けられたモノの熱さでいやというほど分かる。

「でも、まだ……」

 ボクが男だってちゃんと分かって挿れたいって言ってるのか分かりかねて躊躇する。

「大丈夫だよ。赤ちゃんが出来ないように、ちゃんとゴムは着けるからね」

 ジャケットのポケットにでも入れていたのか、避妊具の入っていると分かる包みを目の前に掲げてきた。
 赤ちゃん、という単語に、男の証を見たのはなかったことにしてボクを女の子だと思い込もうとしているのだと分かり、目の前が真っ暗になる。

「嫌です。やめてください」

 女の子のフィルターを掛けられて抱かれるのなんて絶対に嫌だ。体を捩って逃げようとするのに、腰をがっしり掴まれて動けない。

「怖くないから大丈夫だよ。可愛い光を傷付けたりしないから。光、大好きだよ。だから、力を抜いて。僕と一つになって」

 宥めるように背中を撫でられ切なげな声で懇願されて、暴れるのをやめる。本当のボクを見てくれていなくても、好きな相手に大好きだと告げられ、一つになりたいって泣きそうな声で言われたら、受け入れてあげなくちゃって思ってしまう。
 動きを止めたボクの後ろに、硬いモノを押し込んできた成瀬さん。一切解していないから無茶苦茶痛いし、全然挿ってはいかない。だけど、傷付けないって言葉通りに無理矢理押し込まず少しずつ進んでくれている。本当のボクを見てくれていなくても、ボクを愛しんで優しくしたいって気持ちは持っているんだって分かり、モヤモヤが少しずつ晴れていく。

「くっ……」

 いくらゆっくり進んでも、解さずに大人のモノを受け入れるのは無理があったようで、圧迫に耐えきれずに中が切れてしまった。流血のせいで滑りが良くなると、何を思ったのか成瀬さんは律動を始めてしまった。
 ガンガンと闇雲に突かれても痛みしか感じず必死に耐えていると、すぐに成瀬さんの動きが止まった。ズルッとモノが引き抜かれていき、成瀬さんが達したことを知った。

「あぁ、そうか。生理中ならちゃんと教えてくれたら良かったのに」

 傷口から流れ落ちる血液を見たんだろう成瀬さんの苦笑が聞こえる。
 好きな相手と繋がれたのに、ただただ虚しいこの気持ちは何なんだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

処理中です...