その男、幽霊なり

オトバタケ

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幽霊だった男

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 病院を訪れても雅臣に会えぬまま一週間が過ぎた夜、見知らぬアドレスからメールが届いた。
 『愛しい拓也へ』と記されたタイトルを見て、誰が送り主なのかが分かって、すぐに内容を読んだ。

『愛しい拓也へ
一条の者達が検査の為に僕を隔離してしまったので会えなくなってしまい、すいませんでした。
桃色の先輩に頼み、明日の夜の監視の目をなくして貰えることになりました。
明日の夜、いつもの病室で待っています。』

「桃色の先輩ってなんだよ」

 プッと噴き出しながらも、雅臣からのメールに言い知れぬ不安を抱いた。

 翌日の夜、通い慣れた病室に向かった。

「いらっしゃい」
「あぁ」

 ベッドに腰掛けていた雅臣が、両手を広げて出迎えてくれる。
 広げられた腕の中に体を入れると、ぎゅうっと抱きしめられた。
 雅臣を欲していた心が、満たされていく。

「明日の午後に退院することになりました」
「そうか。おめでとう」
「ですが一条の家のことでごたごたして、暫く拓也に会えなくなってしまいそうなんです」
「まぁ、半年も寝たきりだったんだから仕方ないだろ」

 淡々と交わされる、再会を前提にしたような会話。

「次に会える時まで耐えられるように僕に活力をくれませんか?」
「あぁ。退院祝いにやるよ」

 雅臣が欲しているものを理解し、ベッドに横になる。

「拓也、永久に貴方だけを愛しています」
「俺もアンタを、雅臣だけを愛し続ける」

 俺の上に重なった雅臣の唇がゆっくり降りてきて、俺の唇を優しく包む。
 互いの熱を分け合った後、熟れた唇の間から雅臣の舌が俺の口内に進入してきた。それを揚々と受け入れて、自分の舌を絡ませる。
 グチュリグチュリと濡れた音を立てて絡ませ合い、流れ込んで来る雅臣の唾液を一滴も逃さぬように飲み下す。
 チュウっと舌をきつく吸われて、背筋にピリピリと快感が走る。
 口内を隅々まで愛撫され、唾液でベトベトになった口の周りをミルクを飲む猫のように舐められて、雄の象徴が痛いほど膨張してきた。

「拓也の可愛い分身が大人になってしまいましたね」
「大人がすることしてるんだから仕方ないだろ」
「そうですね。だから僕のも大人になるはずだ」

 雅臣が硬くなった己の股間を、グリッと俺の太股に押し付けてきた。
 生身の体に戻っても俺に欲情してくれることが分かり、嬉しさが増してくる。
 俺のシャツを脱がせて上半身を裸にしてきた雅臣の唇が、首筋に押し当てられる。
 そして、左手で俺の髪を梳き、右手で乳首を摘まんできた。左手の優しい感触と、右手の淫猥な感触。
 劣情を刺激する濡れた唇の感覚が首から鎖骨へと移動していくと、チクリと痛みが走った。

「何だ?」
「拓也は僕のものだという印ですよ」

 チクリチクリと唇が動く度に、肌に甘い痛みを感じる。
 雅臣の所有物だという証が増えていき、胸が熱くなってくる。
 唇が左の乳首に辿り着くと、舌先でそれを転がされ、同時に右の乳首を指先で弄ばれて、過ぎた快感が走り抜けて腰が淫らに揺れてしまう。

「可愛い可愛い僕の拓也」

 クスリと笑う雅臣の息が乳首にかかり、馬鹿にするな、と文句を言おうとした口からは甘い吐息が漏れてしまった。

「可愛い拓也も素敵だけれど、男の拓也も見せてください」
「男? 今、見てるだろ?」

 俺の頬を掌で包み込んで懇願してくる雅臣を見上げて真意を問う。

「拓也の全てが欲しいんです。そして僕の全てを差し上げたい。残念ながら僕のは拓也だけしか知らないウブな分身ではないんです。でも、その後ろは誰も受け入れたことはない。拓也の大切な初めてを、ふたつとも僕に与えてくれませんか?」
「それって……」

 俺が雅臣に突っ込んで、その後に雅臣が俺に突っ込むということなのか?
 今の発言で雅臣の記憶が戻ったことが分かり、やはり雅臣には性的な経験があったのだと知りショックがなかったとは言えないが、なんとなく分かっていたので怒りなどは感じない。
 俺の初めてをどちらも欲しいと言ってくれた雅臣の気持ちが嬉しいだけだ。

「でも俺、どうやってやったらいいのか分からない」
「大丈夫、僕が優しく教えてあげますから」

 艶やかな表現を浮かべた雅臣が自らの衣服を脱ぎ捨てると、拓也の真の姿も見せてください、と濡れた声で囁いてきて俺の下半身を覆う布を剥いていく。
 生まれたままの姿に戻った男が二人、ベッドの上で重なりあう。

「まずは、拓也のを食べさせてくださいね」

 雅臣の掌が、ピンと天を向く俺の屹立を包む。
 そして俺に跨がって、俺の屹立を自らの後孔に当ててゆっくり沈んでいった。
 ズブズブ、と何の抵抗もなく、俺の屹立はそこに入っていく。

「しっかり解して、たっぷりローションを注いだ甲斐がありました」

 全てを飲み込んで安堵の笑みを浮かべている雅臣を見つめる俺の瞳は、切羽詰まっていることだろう。
 初めて臓器に包まれた感覚に、既に熱は放出を願っているからだ。

「まさおみぃ……」

 体中を駆け巡る熱をどうにかして欲しくて、雅臣を見上げる。
 すると、一瞬で雄の顔に変わった雅臣が、腰を上下に動かし始めた。
 すぐに射精感が高まってきて、必死で腰を振ってその動きに合わせる。

「あぁ……」

 雅臣の中に入って一分も経たぬ内に、快楽の証を吐き出してしまう。

「拓也の美味しいミルクを頂けて嬉しいです。口でも味わわせて」

 俺の屹立を後孔から抜いた雅臣が、初めての快感にぼうっとしている俺の屹立を口に含む。

「くっ……」

 放ったばかりで敏感になっているソコは、すぐに力を取り戻していく。

「待て」

 裏筋を丹念に舐め始めた雅臣の柔らかな茶色の髪を掴み、それ以上の行為をやめさせる。

「嫌でした?」
「違う。俺にも舐めさせろ」

 不安げに尋ねてくる雅臣に、不敵に笑い返す。
 俺の股間の前に自分の顔が、俺の顔の前に自分の股間がくるように体勢を変えた雅臣。
 雅臣の赤黒く俺より一回り大きい雄の象徴を、ゆっくり口に含んでいく。気持ち悪さなど微塵もなく、愛おしさしか感じない。
 ペロペロ舌を這わせたり吸ってみたりすると、先端から先走りが染み出してきた。それが嬉しくて、更に刺激を続ける。
 俺を口に咥えたまま動かず、自分の屹立を食べる俺を懸命に見ていた雅臣の顔に余裕がなくなり、耐えかねたように俺の屹立に愛撫を始めた。
 あまりの気持ちよさに口が疎かになりそうになるのを必死で耐え、雅臣にも自分と同じ快感を与える為に頑張る。

「……!」

 背筋を走った雷のような快感に耐えきれずに爆ぜてしまうと、同時に熱い液体が口内に吐き出された。
 雅臣が俺に感じてくれた証を、大切に全て嚥下する。
 股間からゴクリと喉が鳴る音が聞こえ、雅臣も俺と同じ気持ちでいてくれているのだと分かり、幸せで満たされていく。
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