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神無月
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保健室に着くと、保健医の机に置かれた鉛筆立てから鋏を拝借した柚木が固く結ばれた襷を切り、やっと足が解放された。
「保健医はいないのか?」
保健室の中は閑散としていて、人がいた形跡もない。
「探してくる。君は横になって待っていろ」
柚木が指を差した部屋の奥を見ると、四方を白いカーテンで囲まれた空間があった。
あの中にベッドがあるから、寝ていろということか。
膝の血は滲む程度でタラタラと流れているわけではないので、横になってもシーツを汚すことはないだろう。
保健室から柚木が出ていくのを見届け、シャーッとカーテンを開けてベッドに横になる。
病院のベッドと似ているそこに、そういえば車に撥れられて入院していたんだよな、と命の危機に晒された一大事をすっかり忘れていたことに気付いて苦笑いをした。
すると、足がなんだか擽ったい気がして首を起こして見てみると、膝の擦り傷に舌を這わせている男の姿を捉えた。
「な、何してる?」
「消毒をしているんです」
「余計にバイ菌が増えそうだから舐めるな!」
上半身を起こし、体育座りをして膝を抱えて隠す。
舐められた膝が、燃えるように熱い。
男には舐められないはずなのに、変なバイ菌が入ったのだろうか?
ガラガラと保健室の扉が開き、棚を開ける音と瓶がぶつかりあう音がした後、ジャーっと俺の居るベッドを囲むカーテンが乱暴に開けられた。
カーテンを開けたのは柚木で、手には消毒の瓶と綿を挟んだピンセットを持っている。
「保健医はどうした?」
柚木の後方を見るが、誰もいない。
「熱中症にかかった生徒を病院に連れていくから自分で処置をしろとのことだ」
面倒臭そうにそう言った柚木は、予告もなく俺の膝に消毒液の付いた綿を押し当ててきた。
「った……」
シュワシュワと染みていく消毒の、細い針でチクチク刺すような痛みに顔を歪める。
痛がる俺を無視して消毒を続けた柚木は、膝から血と砂が消えたのを確認すると、保健医の机の後ろにある棚に向かった。
「自分で貼っておけ」
棚から取り出したガーゼとテープをベッドに投げつけてきた柚木は、ベッドと反対側の部屋の奥にある水道に向かっていく。
触りたくもない俺の傷を手当てして汚れた手を、綺麗にするつもりか?
傷の手当てくらい自分で出来たのに、柚木に恩を売らせるようなことをさせてしまったことに後悔しながら、傷口にガーゼを当ててテープで止めていく。
「痛みはどうですか?」
心配そうにその様子を見ていた男が、柚木がまだ水道のところにいるのを確認して聞いてくる。
「大した傷じゃないし大丈夫だ」
やんちゃな小学生なら毎日作ってきそうな軽い擦り傷だ。
暫くは風呂に入ると染みそうだが、子供じゃないし我慢はできる。
「痛み止めだそうだ。飲んでおけ」
戻ってきた柚木が、銀色のシートに入った錠剤と水の入ったコップを手渡してきた。
変な薬じゃないだろうな、と錠剤を確認すると、飲んだことのある市販薬だったので、膝よりも痛む足首の熱を治めたくて飲むことにした。
錠剤を舌に乗せ、水で流し込む。
走った後ということもあり、口が乾いていたので水を一気飲みをしてしまったせいか、肺に何かが詰まったような違和感がしてゴホゴホと咳き込んでしまう。
咳き込んだせいで、体が熱を帯びてきた。
ふぅっと息を吐いて肩の力を抜くが、体の熱は収まらず、どんどん熱さを増していく。
心音もどんどん早くなってきて、吐く息も異様に熱い。
インフルエンザにかかったような怠さで、視界が滲んでいく。
「苦しいか?」
心臓を押さえて熱に侵されている体に耐えていると、口許を弛めて薄ら笑いを浮かべた柚木が、苦しむ俺の顔を覗き込んできた。
「お前、何をした?」
薬は普通のものだったから、水に何か変な薬品でも混ぜたのだろう。
柚木が俺を目の敵にしているのを充分過ぎるほど知っていたのに、迂闊に飲んでしまった自分に蹴りを入れたい。
用心が足りなかった自分自身への苛立ちと、こんな卑劣な手段を使ってまで俺を痛め付けようとする柚木への怒りで、ギリギリと奥歯を噛みながら目の前の顔を睨み付ける。
「いつまでそんな顔をしていられるかな?」
フッと鼻で笑った柚木が、俺の肩を乱暴に掴んでベッドに押し倒してきた。
「何をする気だ?」
ギシギシと音を立て、押し倒した俺に覆い被さるようにベッドに上がってくる柚木。
俺の問い掛けには答えず、俺の両手を頭上で一纏めにして左手で押さえ付けてくると、右手で体操服を捲ってきた。
逃れたいのに、力が入らない。
柚木の掌が、露になった俺の腹に触れてくる。
すると、ビリビリと電気が走ったような痺れが走り、ゾワゾワ肌が粟立ち、下半身がザワザワと疼きだした。
何なんだ、これは?
柚木に触られて頭は気持ち悪くて吐きそうなのに、体は甘い痺れに快感を感じてしまっている。
ユルユルと腹を擦り続ける柚木に罵声を浴びせたいのに、口からは熱い吐息ばかりが漏れる。
「媚薬ですね」
憎しみの籠った男の声が聞こえるが、姿が見えない。
「媚薬?」
「そうだ、よく分かったな。君は今から、楽にしてくれと俺に媚びへつらうんだ」
「ふざけるな」
自分の思い通りにならないからといって、目の上のたん瘤の俺の本能を薬品を使って刺激して、熱に侵されて自分を頼るのを見て優越感に浸ろうだなんて狂っている。
「その目が気に入らない」
ギロッと睨み付けた俺を見下ろす柚木は眉を顰めると、腹を撫でていた掌を胸に移動させ、乱暴に乳首を摘まんできた。
「うっ……」
ビリビリビリと今までで一番の電気が走り、腰がむず痒いような甘い痺れで大きく跳ね、腹の底から熱い塊が沸き上がってくるのを感じた。
「体は素直に反応しているぞ」
柚木の掌が、俺の股間を撫でてきた。
「やめろ!」
得も言われぬ感覚に、俺の意思とは関係なくムズムズと起き上がってしまうソコ。
薄い生地の短パンでは変化は一目瞭然で、それを確認して満足そうに顔を綻ばした柚木が、先程とは反対の乳首を転がすように摘まみ始めた。
ゴリゴリと伝わってくる甘い痺れに、股間の反応は止まらない。
耐え難い屈辱に柚木が気を失うまで殴り倒したいと思うのに、目覚めてしまった性はこの先にある熱の解放と快楽を求めて、体中の血を卑しく立ち上がった一点に向かわせる。
「俺を求めろ。俺が欲しいと言え」
「誰が……言うか」
完全に立ち上がってしまったソコを指で弾かれ、甘い痺れが末端神経にまで走って女のような声が漏れそうになってしまったのを血が滲むくらい唇を噛んで耐え、お前の思い通りにはならないからな、と威嚇するように柚木を睨みつける。
すると、姿が見えなくなっていた男が柚木の腰にしがみついて、必死に俺から離そうとしているのが見えた。
俺は一人じゃないんだ。媚薬なんて卑怯な薬に負けて堪るか。
「強情だな、君は」
俺の顎を掴み、グイッと上に向かせてきた柚木の無防備になった腹に、渾身の力を込めて膝蹴りを食らわす。
柚木は、うっ、と低い呻き声を漏らして、腹を押さえて蹲った。
「拓也、逃げますよ」
「分かってる」
膝蹴りに全ての力を使ってしまい、なかなかベッドから起き上がれない俺を男が叱咤激励する。
転げ落ちるようにベッドから抜け出し、まだ痛みに悶えている柚木のいる保健室から逃げ出した。
「保健医はいないのか?」
保健室の中は閑散としていて、人がいた形跡もない。
「探してくる。君は横になって待っていろ」
柚木が指を差した部屋の奥を見ると、四方を白いカーテンで囲まれた空間があった。
あの中にベッドがあるから、寝ていろということか。
膝の血は滲む程度でタラタラと流れているわけではないので、横になってもシーツを汚すことはないだろう。
保健室から柚木が出ていくのを見届け、シャーッとカーテンを開けてベッドに横になる。
病院のベッドと似ているそこに、そういえば車に撥れられて入院していたんだよな、と命の危機に晒された一大事をすっかり忘れていたことに気付いて苦笑いをした。
すると、足がなんだか擽ったい気がして首を起こして見てみると、膝の擦り傷に舌を這わせている男の姿を捉えた。
「な、何してる?」
「消毒をしているんです」
「余計にバイ菌が増えそうだから舐めるな!」
上半身を起こし、体育座りをして膝を抱えて隠す。
舐められた膝が、燃えるように熱い。
男には舐められないはずなのに、変なバイ菌が入ったのだろうか?
ガラガラと保健室の扉が開き、棚を開ける音と瓶がぶつかりあう音がした後、ジャーっと俺の居るベッドを囲むカーテンが乱暴に開けられた。
カーテンを開けたのは柚木で、手には消毒の瓶と綿を挟んだピンセットを持っている。
「保健医はどうした?」
柚木の後方を見るが、誰もいない。
「熱中症にかかった生徒を病院に連れていくから自分で処置をしろとのことだ」
面倒臭そうにそう言った柚木は、予告もなく俺の膝に消毒液の付いた綿を押し当ててきた。
「った……」
シュワシュワと染みていく消毒の、細い針でチクチク刺すような痛みに顔を歪める。
痛がる俺を無視して消毒を続けた柚木は、膝から血と砂が消えたのを確認すると、保健医の机の後ろにある棚に向かった。
「自分で貼っておけ」
棚から取り出したガーゼとテープをベッドに投げつけてきた柚木は、ベッドと反対側の部屋の奥にある水道に向かっていく。
触りたくもない俺の傷を手当てして汚れた手を、綺麗にするつもりか?
傷の手当てくらい自分で出来たのに、柚木に恩を売らせるようなことをさせてしまったことに後悔しながら、傷口にガーゼを当ててテープで止めていく。
「痛みはどうですか?」
心配そうにその様子を見ていた男が、柚木がまだ水道のところにいるのを確認して聞いてくる。
「大した傷じゃないし大丈夫だ」
やんちゃな小学生なら毎日作ってきそうな軽い擦り傷だ。
暫くは風呂に入ると染みそうだが、子供じゃないし我慢はできる。
「痛み止めだそうだ。飲んでおけ」
戻ってきた柚木が、銀色のシートに入った錠剤と水の入ったコップを手渡してきた。
変な薬じゃないだろうな、と錠剤を確認すると、飲んだことのある市販薬だったので、膝よりも痛む足首の熱を治めたくて飲むことにした。
錠剤を舌に乗せ、水で流し込む。
走った後ということもあり、口が乾いていたので水を一気飲みをしてしまったせいか、肺に何かが詰まったような違和感がしてゴホゴホと咳き込んでしまう。
咳き込んだせいで、体が熱を帯びてきた。
ふぅっと息を吐いて肩の力を抜くが、体の熱は収まらず、どんどん熱さを増していく。
心音もどんどん早くなってきて、吐く息も異様に熱い。
インフルエンザにかかったような怠さで、視界が滲んでいく。
「苦しいか?」
心臓を押さえて熱に侵されている体に耐えていると、口許を弛めて薄ら笑いを浮かべた柚木が、苦しむ俺の顔を覗き込んできた。
「お前、何をした?」
薬は普通のものだったから、水に何か変な薬品でも混ぜたのだろう。
柚木が俺を目の敵にしているのを充分過ぎるほど知っていたのに、迂闊に飲んでしまった自分に蹴りを入れたい。
用心が足りなかった自分自身への苛立ちと、こんな卑劣な手段を使ってまで俺を痛め付けようとする柚木への怒りで、ギリギリと奥歯を噛みながら目の前の顔を睨み付ける。
「いつまでそんな顔をしていられるかな?」
フッと鼻で笑った柚木が、俺の肩を乱暴に掴んでベッドに押し倒してきた。
「何をする気だ?」
ギシギシと音を立て、押し倒した俺に覆い被さるようにベッドに上がってくる柚木。
俺の問い掛けには答えず、俺の両手を頭上で一纏めにして左手で押さえ付けてくると、右手で体操服を捲ってきた。
逃れたいのに、力が入らない。
柚木の掌が、露になった俺の腹に触れてくる。
すると、ビリビリと電気が走ったような痺れが走り、ゾワゾワ肌が粟立ち、下半身がザワザワと疼きだした。
何なんだ、これは?
柚木に触られて頭は気持ち悪くて吐きそうなのに、体は甘い痺れに快感を感じてしまっている。
ユルユルと腹を擦り続ける柚木に罵声を浴びせたいのに、口からは熱い吐息ばかりが漏れる。
「媚薬ですね」
憎しみの籠った男の声が聞こえるが、姿が見えない。
「媚薬?」
「そうだ、よく分かったな。君は今から、楽にしてくれと俺に媚びへつらうんだ」
「ふざけるな」
自分の思い通りにならないからといって、目の上のたん瘤の俺の本能を薬品を使って刺激して、熱に侵されて自分を頼るのを見て優越感に浸ろうだなんて狂っている。
「その目が気に入らない」
ギロッと睨み付けた俺を見下ろす柚木は眉を顰めると、腹を撫でていた掌を胸に移動させ、乱暴に乳首を摘まんできた。
「うっ……」
ビリビリビリと今までで一番の電気が走り、腰がむず痒いような甘い痺れで大きく跳ね、腹の底から熱い塊が沸き上がってくるのを感じた。
「体は素直に反応しているぞ」
柚木の掌が、俺の股間を撫でてきた。
「やめろ!」
得も言われぬ感覚に、俺の意思とは関係なくムズムズと起き上がってしまうソコ。
薄い生地の短パンでは変化は一目瞭然で、それを確認して満足そうに顔を綻ばした柚木が、先程とは反対の乳首を転がすように摘まみ始めた。
ゴリゴリと伝わってくる甘い痺れに、股間の反応は止まらない。
耐え難い屈辱に柚木が気を失うまで殴り倒したいと思うのに、目覚めてしまった性はこの先にある熱の解放と快楽を求めて、体中の血を卑しく立ち上がった一点に向かわせる。
「俺を求めろ。俺が欲しいと言え」
「誰が……言うか」
完全に立ち上がってしまったソコを指で弾かれ、甘い痺れが末端神経にまで走って女のような声が漏れそうになってしまったのを血が滲むくらい唇を噛んで耐え、お前の思い通りにはならないからな、と威嚇するように柚木を睨みつける。
すると、姿が見えなくなっていた男が柚木の腰にしがみついて、必死に俺から離そうとしているのが見えた。
俺は一人じゃないんだ。媚薬なんて卑怯な薬に負けて堪るか。
「強情だな、君は」
俺の顎を掴み、グイッと上に向かせてきた柚木の無防備になった腹に、渾身の力を込めて膝蹴りを食らわす。
柚木は、うっ、と低い呻き声を漏らして、腹を押さえて蹲った。
「拓也、逃げますよ」
「分かってる」
膝蹴りに全ての力を使ってしまい、なかなかベッドから起き上がれない俺を男が叱咤激励する。
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