27 / 31
太陽と向日葵2
しおりを挟む
今日は二月三日。
風水とか東洋の占いの世界では今日から一年が始まるんだって、そういうのを気にして会社を大きくした、うちのじいちゃんが言っていた。
やっぱり一年の始まりはハニーと迎えたいじゃん?
つーことで、愛しの陽太の部屋へ向かう。
コンコンコンコンコン……
ノック連打32打目で出てきてくれた陽太。
出てきてくれるまでのノックの回数が徐々に減っていっている。
確実に進歩している俺達の関係みたいに。
「陽太、会いたかったよぉー! アイラブユー!」
満面の笑みで愛の言葉を叫びながら抱きしめようとすると、
「痛っ、いでで……」
顔に小さな塊が当たった。
何? 銃弾?
そんなわけないか。俺、生きてるもん。
足元に落ちたそれを拾い上げてみる。
「あっ……」
それは、俺が食堂から持ってきたものと同じやつ。
鬼は外、福は内、のアレ。
「なーんだ。陽太も俺と豆まきするつもりだったんだ」
「……」
「でも、何で俺に投げるわけ?」
「……鬼は外」
「俺は福だろ?」
ちょっとお口の過ぎたハニーを、ぎゅっと抱きしめる。
最初はジタバタしていたものの次第に静かになった陽太は、髪に指を通す俺にされるがままにされている。
「太巻きも持ってきたから食べよ?」
「……あぁ」
か細い声が答える。
離してやると、俯いたままリビングへと出ていく陽太。
恥ずかしがっちゃって、本当に純情で可愛いんだから。
急いで俺も、その後を追う。
「これさ、今年の恵方を向いて、願い事を思い浮かべながら無言で丸かじりすると、その願いが叶うんだって」
陽太の前に座って、ガサゴソとビニール袋の中から太巻きを取り出す。
「ふーん」
陽太は、興味なさそうに太巻きに目をやる。
何だよ、願い事叶えて欲しくないのか? それとも、幸せすぎて願う事がないだけなのか?
くぅー、可愛いぜマイハニー。俺は、そんな陽太との永遠の幸せを願うからな。
太巻きを持って、いざ口に投入という直前に大変な事に気付いた。
恵方は、どこだ?
太巻きを口の前に持ったまま、部屋中を見渡す。
「陽太、恵方ってどこだ? って……」
陽太を見ると、包丁で太巻きを一センチ幅に切っていた。
「何やってんの?」
「食いやすいように」
「願い事叶えてもらわなくてもいいのかよ?」
「別に叶えて欲しい事なんてねぇし……」
やっぱり俺といられて満足なんだね。ジュテームだよ、ハニー。
太巻き片手に、また抱きしめ合おうとすると、
「痛っ」
再び顔に豆が飛んできた。
「何だよー」
「……」
知らん顔で太巻きを頬張る陽太。
もう、素直じゃないんだから。
願い事、変更しよ。
陽太がもっと素直になってくれますよーに!
結局、恵方が分からなかったので、ゆっくり回転しながら部屋の四方全てを見渡す形で太巻きをたいらげた。
どこかに恵方があったはずだ。
この際、多少効力が薄くても目を瞑ろう。
「おい……」
「ん?」
任務をやり遂げて満足している俺を呼ぶ声に振り向くと、伏し目がちの顔が近づいてきた。
なんかスローモーションみたいだなって思っていると、左頬に柔らかいものが当たった。
何が、起こった?
必死で状況を判断しようと少ない脳味噌をフル稼働させていると、顔を離した陽太がさっき頬に当たったものと同じくらい柔らかな笑みを浮かべて、お茶を差し出してくれた。
「陽太?」
「ご飯粒ついてたから……」
お茶をすする陽太が、俺から目を逸らす。
なんだ? 早速効果ありか?
凄いぜ恵方! 凄いぜ太巻き!
可愛い可愛いマイハニーをぎゅっと抱きしめても、今度は最初から静かに抱かれている。
「俺さ、陽太と俺の永遠の幸せを願って太巻き食ったんだよ」
「あぁ……」
「嬉しい?」
「……」
「嬉しくないの?」
「……嬉しくないことは、ない」
うぉ、こいつは春から縁起がいいねぇ!
「いでで……ごめんなさーい」
調子こいて押し倒したら、思いっきり豆を投げつけられてしまいました。
風水とか東洋の占いの世界では今日から一年が始まるんだって、そういうのを気にして会社を大きくした、うちのじいちゃんが言っていた。
やっぱり一年の始まりはハニーと迎えたいじゃん?
つーことで、愛しの陽太の部屋へ向かう。
コンコンコンコンコン……
ノック連打32打目で出てきてくれた陽太。
出てきてくれるまでのノックの回数が徐々に減っていっている。
確実に進歩している俺達の関係みたいに。
「陽太、会いたかったよぉー! アイラブユー!」
満面の笑みで愛の言葉を叫びながら抱きしめようとすると、
「痛っ、いでで……」
顔に小さな塊が当たった。
何? 銃弾?
そんなわけないか。俺、生きてるもん。
足元に落ちたそれを拾い上げてみる。
「あっ……」
それは、俺が食堂から持ってきたものと同じやつ。
鬼は外、福は内、のアレ。
「なーんだ。陽太も俺と豆まきするつもりだったんだ」
「……」
「でも、何で俺に投げるわけ?」
「……鬼は外」
「俺は福だろ?」
ちょっとお口の過ぎたハニーを、ぎゅっと抱きしめる。
最初はジタバタしていたものの次第に静かになった陽太は、髪に指を通す俺にされるがままにされている。
「太巻きも持ってきたから食べよ?」
「……あぁ」
か細い声が答える。
離してやると、俯いたままリビングへと出ていく陽太。
恥ずかしがっちゃって、本当に純情で可愛いんだから。
急いで俺も、その後を追う。
「これさ、今年の恵方を向いて、願い事を思い浮かべながら無言で丸かじりすると、その願いが叶うんだって」
陽太の前に座って、ガサゴソとビニール袋の中から太巻きを取り出す。
「ふーん」
陽太は、興味なさそうに太巻きに目をやる。
何だよ、願い事叶えて欲しくないのか? それとも、幸せすぎて願う事がないだけなのか?
くぅー、可愛いぜマイハニー。俺は、そんな陽太との永遠の幸せを願うからな。
太巻きを持って、いざ口に投入という直前に大変な事に気付いた。
恵方は、どこだ?
太巻きを口の前に持ったまま、部屋中を見渡す。
「陽太、恵方ってどこだ? って……」
陽太を見ると、包丁で太巻きを一センチ幅に切っていた。
「何やってんの?」
「食いやすいように」
「願い事叶えてもらわなくてもいいのかよ?」
「別に叶えて欲しい事なんてねぇし……」
やっぱり俺といられて満足なんだね。ジュテームだよ、ハニー。
太巻き片手に、また抱きしめ合おうとすると、
「痛っ」
再び顔に豆が飛んできた。
「何だよー」
「……」
知らん顔で太巻きを頬張る陽太。
もう、素直じゃないんだから。
願い事、変更しよ。
陽太がもっと素直になってくれますよーに!
結局、恵方が分からなかったので、ゆっくり回転しながら部屋の四方全てを見渡す形で太巻きをたいらげた。
どこかに恵方があったはずだ。
この際、多少効力が薄くても目を瞑ろう。
「おい……」
「ん?」
任務をやり遂げて満足している俺を呼ぶ声に振り向くと、伏し目がちの顔が近づいてきた。
なんかスローモーションみたいだなって思っていると、左頬に柔らかいものが当たった。
何が、起こった?
必死で状況を判断しようと少ない脳味噌をフル稼働させていると、顔を離した陽太がさっき頬に当たったものと同じくらい柔らかな笑みを浮かべて、お茶を差し出してくれた。
「陽太?」
「ご飯粒ついてたから……」
お茶をすする陽太が、俺から目を逸らす。
なんだ? 早速効果ありか?
凄いぜ恵方! 凄いぜ太巻き!
可愛い可愛いマイハニーをぎゅっと抱きしめても、今度は最初から静かに抱かれている。
「俺さ、陽太と俺の永遠の幸せを願って太巻き食ったんだよ」
「あぁ……」
「嬉しい?」
「……」
「嬉しくないの?」
「……嬉しくないことは、ない」
うぉ、こいつは春から縁起がいいねぇ!
「いでで……ごめんなさーい」
調子こいて押し倒したら、思いっきり豆を投げつけられてしまいました。
0
お気に入りに追加
150
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる