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日向ぼっこ3
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最近、なにかと忙しくて、なかなか二人きりの時間がとれなかった。
今日は、一日ゆっくり出来る久々の休日。
胸躍る俺を嘲笑うかのように、鉛色の空からしとしとと滴が落ち始めた。
「ちぇっ、折角の休みなのにぃ」
「やっと降った恵みの雨なんだから喜んでやれよ」
窓にべたぁとくっついて外の様子を見ていたらガラスが曇って見えなくなったんで、薄明かりを灯した部屋の方に体を戻す。
このムシムシする湿気の中、涼しい顔をしてベッドに凭れ掛かって小難しい哲学書を読んでいる、ずーっと一緒に休日を過ごしたいと思っていた人。
ピッ
「何するんだよ」
その顔が頭にきて、エアコンの電源を切ってやった。
哲学書を置き、やっと俺の顔を見てくれる。明らかに怒った目だ。
いつも結構無表情な日向に表情を見つけると、嬉しくてにやけてしまう。
「はぁー」
深い溜め息をつく日向。今度は呆れ顔だ。
くるくる変わる表情に、また笑みがこぼれる。
ピッ
「あっ」
油断した隙に手の中のリモコンを奪われ、再び部屋に冷風が流れ始めた。
「寒いっ!」
仕返しに右腕を日向の左腕に絡めて、べたっと体をくっつけてやる。
激しく降り注ぎ始めた雨が騒がしく窓ガラスに当たり、絶えることなく水滴が流れ落ちていく。
「本格的に降ってきたよ。これじゃ外に出られないじゃん」
「部屋でおとなしくしてろってことだろ」
ちぇって頬膨らます俺をくっ付けたまま、ずずずっと後退してベッドに寄りかかる日向は、また余裕の涼しい顔に戻っている。
「デートしたかったのに……」
「はぁ?」
馬鹿にしたような半笑いの顔がこちらを見る。
俺の乙女な計画を聞かせて、キュンキュンさせてやるぅ!
「えっと、まず喫茶店に行って一つのクリームソーダを二人で飲んで、それから公園に行って手漕ぎボートに乗って、木漏れ日の中を二人の将来について語り合いながら歩いて……夜はどうしよーかな」
「本当に馬鹿だな、お前」
毎晩考えて立てた理想のデート計画を語る俺を憐れむように呟いた日向が、右手をゆっくり伸ばしてきた。
なんだ、本当は可愛い奴だなって思って抱きしめてくれるんだ!って期待したのも束の間、伸ばされた手はさっきまで読んでいた哲学書を掴んだ。
怒りと哀しみがぐーっと込み上げてくる。何だよ、いつも俺の独り相撲じゃん!
ガバッ
「おい、何するんだよ!」
「今すぐ晴れますよーに!」
絡めていた腕を乱暴に解いて、ベッドからシーツを思い切り引っ張り、日向をすっぽり覆い隠すように頭上から落とす。
「何だよ、これ?」
「てるてる坊主!!」
これだけでっかいてるてる坊主なら、すぐに雨もあがるはずだ。
願うように窓の外を見るが雨足は変わらず、むしろ激しくなってるような……。
ガクッと崩れ落ちる俺の体を覆うシーツ。今度は俺が、てるてる坊主状態。
「今度の休みが晴れだったら、お前のその頭の悪い計画に付き合ってやるよ」
「マジ!?」
予想外の言葉に急いでシーツを振り払う。
「でも雨だったら、一生そんな計画には付き合わないからな。それから、夜の計画は俺が立てるから」
哲学書から目を離さずにぶっきらぼうに言い放つ日向だけど、本当に?って覗き込んだら、優しい目をして頷いてくれた。
よしっ! 今日から、てるてる坊主を部屋中に溢れるくらいいっぱい作って、今度の休みは絶対デートを楽しむぞっ!!
今日は、一日ゆっくり出来る久々の休日。
胸躍る俺を嘲笑うかのように、鉛色の空からしとしとと滴が落ち始めた。
「ちぇっ、折角の休みなのにぃ」
「やっと降った恵みの雨なんだから喜んでやれよ」
窓にべたぁとくっついて外の様子を見ていたらガラスが曇って見えなくなったんで、薄明かりを灯した部屋の方に体を戻す。
このムシムシする湿気の中、涼しい顔をしてベッドに凭れ掛かって小難しい哲学書を読んでいる、ずーっと一緒に休日を過ごしたいと思っていた人。
ピッ
「何するんだよ」
その顔が頭にきて、エアコンの電源を切ってやった。
哲学書を置き、やっと俺の顔を見てくれる。明らかに怒った目だ。
いつも結構無表情な日向に表情を見つけると、嬉しくてにやけてしまう。
「はぁー」
深い溜め息をつく日向。今度は呆れ顔だ。
くるくる変わる表情に、また笑みがこぼれる。
ピッ
「あっ」
油断した隙に手の中のリモコンを奪われ、再び部屋に冷風が流れ始めた。
「寒いっ!」
仕返しに右腕を日向の左腕に絡めて、べたっと体をくっつけてやる。
激しく降り注ぎ始めた雨が騒がしく窓ガラスに当たり、絶えることなく水滴が流れ落ちていく。
「本格的に降ってきたよ。これじゃ外に出られないじゃん」
「部屋でおとなしくしてろってことだろ」
ちぇって頬膨らます俺をくっ付けたまま、ずずずっと後退してベッドに寄りかかる日向は、また余裕の涼しい顔に戻っている。
「デートしたかったのに……」
「はぁ?」
馬鹿にしたような半笑いの顔がこちらを見る。
俺の乙女な計画を聞かせて、キュンキュンさせてやるぅ!
「えっと、まず喫茶店に行って一つのクリームソーダを二人で飲んで、それから公園に行って手漕ぎボートに乗って、木漏れ日の中を二人の将来について語り合いながら歩いて……夜はどうしよーかな」
「本当に馬鹿だな、お前」
毎晩考えて立てた理想のデート計画を語る俺を憐れむように呟いた日向が、右手をゆっくり伸ばしてきた。
なんだ、本当は可愛い奴だなって思って抱きしめてくれるんだ!って期待したのも束の間、伸ばされた手はさっきまで読んでいた哲学書を掴んだ。
怒りと哀しみがぐーっと込み上げてくる。何だよ、いつも俺の独り相撲じゃん!
ガバッ
「おい、何するんだよ!」
「今すぐ晴れますよーに!」
絡めていた腕を乱暴に解いて、ベッドからシーツを思い切り引っ張り、日向をすっぽり覆い隠すように頭上から落とす。
「何だよ、これ?」
「てるてる坊主!!」
これだけでっかいてるてる坊主なら、すぐに雨もあがるはずだ。
願うように窓の外を見るが雨足は変わらず、むしろ激しくなってるような……。
ガクッと崩れ落ちる俺の体を覆うシーツ。今度は俺が、てるてる坊主状態。
「今度の休みが晴れだったら、お前のその頭の悪い計画に付き合ってやるよ」
「マジ!?」
予想外の言葉に急いでシーツを振り払う。
「でも雨だったら、一生そんな計画には付き合わないからな。それから、夜の計画は俺が立てるから」
哲学書から目を離さずにぶっきらぼうに言い放つ日向だけど、本当に?って覗き込んだら、優しい目をして頷いてくれた。
よしっ! 今日から、てるてる坊主を部屋中に溢れるくらいいっぱい作って、今度の休みは絶対デートを楽しむぞっ!!
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