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日向ぼっこ1
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「来週クリスマスじゃん?」
「……」
「パーティーとかしちゃう?」
「……」
話しかける俺を無視して小難しい歴史小説を読み続ける日向(ひなた)に、鼻先がくっつくくらいの至近距離まで顔を近付けてみる。
「お前、クリスマスがなんの日か知ってんのか?」
やっと小説から俺に視線を移してくれた日向が、溜め息混じりに言う。
「恋人がイチャイチャする日」
「じゃあ、俺達には関係ないだろ」
「俺達、恋人同士じゃん?」
「……」
え、なんでビックリした顔してんの? 俺達、エッチしてるじゃん。
一ヶ月前から体の関係が始まった俺達だけど、互いに好きだからそういうことしてるんだと思ってた。口では酷いこと言っても、重ねた肌からはいつも優しさが伝わってきてたし。
改まって告白とか日向はそういうの嫌がるかなって、わざと言わなかったし聞かなかった。
モデル体型で、切れ長の目の整った顔に、艶やかな黒髪。一匹狼で近付いてくるなオーラだしてて、日向って名前なのに日陰のが似合うミステリアスな雰囲気で、クールビューティーって言葉がピッタリの日向。
次の生徒会のメンバーに選ばれるんじゃないかって噂されてて、生徒会の親衛隊のチワワからノンケの野郎まで、様々な奴に何度も告白されているのを見た。街に行くと、女子からもよく声を掛けられていたのを知っている。
やりたきゃ他でいくらでもできるのに、俺以外には特別な関係の奴はいない。俺が知らないだけで、実は他にもいるのか?
俺は特別格好いいわけではないし、可愛いわけでもない。同室だから、手軽にやれるオナホ代わりなのか? 恋人だと思って浮かれているのは俺だけなのかよ?
「お前、やっぱり馬鹿だな」
「馬鹿ですけど、何か?」
馬鹿馬鹿言われまくって、もう慣れました。
恋人なのかどうかはっきり聞いて、違うとか言われたら死にたくなるんで聞くのはやめよ。
俺は日向が好きだから、日向に気持ちがなくてもこの関係を続けたい。なるようになれだ、こんちくしょう。
「お前、宗教は?」
「仏壇あるし、仏教なんじゃねぇ?」
馬鹿が馬鹿なりに考えてるのに、日向はいつもの涼しい顔で訳分かんねぇことを聞いてくる。
「クリスマスはイエス・キリストの誕生日だろ? 違う宗教の教祖の誕生日を祝ってどうする?」
「楽しけりゃいいじゃん。日向、キリスト教だった? 仏教徒がクリスマス楽しんじゃってるのにムカついてた?」
俺は、お前にムカついてます。
「ウチは禅宗だ。母親がこういう考えだからクリスマスなんてやったことがない」
「ツリーも? ケーキも? プレゼントも?」
「全部ない」
楽しいのにな。あの楽しさを知らないなんて、なんか可哀想。
今日は、クリスマスイブ。
実家からツリーを送ってもらい、折り紙で作った鎖を部屋中に飾り、お洒落な料理とケーキを用意した。
俺の手作りだ。これでも料理は得意なのだ。
委員会を終えた日向が帰ってきた。部屋の様子を見て固まっている。
喜んでくれるかな? あ、溜め息つかれた。
「なんだ、これは?」
「も、模様替えしたんだよ。いいインテリアだろ?」
「本当にお前は馬鹿だな」
あ、表情が緩んだ。
料理でいっぱいのテーブルに案内して、シャンメリーで乾杯。うん、クリスマスパーティーっぽいぜ。
「料理はどう?」
「馬鹿にも特技があるんだな」
それ、褒めてくれてるんですよね? よっしゃ、胃袋掴んだぞ。
「あれは、なんだ?」
「クリスマスツリーだけど?」
窓際に置いたツリーを、怪訝そうに指差す日向。
「なんで短冊が掛けてあるんだよ」
「ウチでは昔からそうだけど?」
憐れんだ目で俺を見る日向。
我が家では七夕飾りとクリスマスツリーの飾りは一緒だったんですが、何か問題でもありますか?
「馬鹿な願い事ばっかだな」
ツリーの前に移動した日向が、短冊を眺めて溜め息をつく。
『日向とずっと幸せでいられますように』
『日向がいっぱい愛してくれますように』
『日向ともっとラブラブしたい』
はいそうですよ、馬鹿ですよ。日向馬鹿で、悪かったですね。
「日向も書くか?」
「欲しいものは自力で手に入れるから、願うようなことなどない」
そんな格好いい顔で、格好いいセリフ吐かないでください。あなたになら抱かれてもいいわ、ってもう抱かれてるんだけどさ。
例のごとく口は悪いけど、日向の表情は終始にこやかで、なんだかんだでパーティーを楽しんでいるみたいだった。
「プレゼントやるよ」
赤いリボンを乗せた掌を差し出した俺を見て、日向ははてなマークを浮かべている。
「どうぞ」
リボンを自分の頭に乗せて、鏡の前で練習を繰り返したセクシーな表情を浮かべる。
「本当に馬鹿だな、お前」
「やっぱ、寒かった?」
俺がしたって萌えないよね。
アハハと照れ笑いしていると、ベッドに押し倒された。
「そんな顔して誘って、体がガタガタになっても文句言うなよ」
え、喜んでもらえちゃったの? 練習しといて正解でした。
って、なんか、いつもより激しくありません? 本当に体が持ちそうにないかも……。
一回戦終了後のベッドの上。
「俺達って恋人同士だよな?」
「言わないと分からないなんて、本当に馬鹿だな、お前」
それって、恋人同士だよってことですか?
「日向、大好き」
嬉しくて、日向にぎゅうっと抱きつく。
「好きじゃなきゃ、抱かねーよ」
その言葉、今までもらった中で一番嬉しいクリスマスプレゼントだよ。
「……」
「パーティーとかしちゃう?」
「……」
話しかける俺を無視して小難しい歴史小説を読み続ける日向(ひなた)に、鼻先がくっつくくらいの至近距離まで顔を近付けてみる。
「お前、クリスマスがなんの日か知ってんのか?」
やっと小説から俺に視線を移してくれた日向が、溜め息混じりに言う。
「恋人がイチャイチャする日」
「じゃあ、俺達には関係ないだろ」
「俺達、恋人同士じゃん?」
「……」
え、なんでビックリした顔してんの? 俺達、エッチしてるじゃん。
一ヶ月前から体の関係が始まった俺達だけど、互いに好きだからそういうことしてるんだと思ってた。口では酷いこと言っても、重ねた肌からはいつも優しさが伝わってきてたし。
改まって告白とか日向はそういうの嫌がるかなって、わざと言わなかったし聞かなかった。
モデル体型で、切れ長の目の整った顔に、艶やかな黒髪。一匹狼で近付いてくるなオーラだしてて、日向って名前なのに日陰のが似合うミステリアスな雰囲気で、クールビューティーって言葉がピッタリの日向。
次の生徒会のメンバーに選ばれるんじゃないかって噂されてて、生徒会の親衛隊のチワワからノンケの野郎まで、様々な奴に何度も告白されているのを見た。街に行くと、女子からもよく声を掛けられていたのを知っている。
やりたきゃ他でいくらでもできるのに、俺以外には特別な関係の奴はいない。俺が知らないだけで、実は他にもいるのか?
俺は特別格好いいわけではないし、可愛いわけでもない。同室だから、手軽にやれるオナホ代わりなのか? 恋人だと思って浮かれているのは俺だけなのかよ?
「お前、やっぱり馬鹿だな」
「馬鹿ですけど、何か?」
馬鹿馬鹿言われまくって、もう慣れました。
恋人なのかどうかはっきり聞いて、違うとか言われたら死にたくなるんで聞くのはやめよ。
俺は日向が好きだから、日向に気持ちがなくてもこの関係を続けたい。なるようになれだ、こんちくしょう。
「お前、宗教は?」
「仏壇あるし、仏教なんじゃねぇ?」
馬鹿が馬鹿なりに考えてるのに、日向はいつもの涼しい顔で訳分かんねぇことを聞いてくる。
「クリスマスはイエス・キリストの誕生日だろ? 違う宗教の教祖の誕生日を祝ってどうする?」
「楽しけりゃいいじゃん。日向、キリスト教だった? 仏教徒がクリスマス楽しんじゃってるのにムカついてた?」
俺は、お前にムカついてます。
「ウチは禅宗だ。母親がこういう考えだからクリスマスなんてやったことがない」
「ツリーも? ケーキも? プレゼントも?」
「全部ない」
楽しいのにな。あの楽しさを知らないなんて、なんか可哀想。
今日は、クリスマスイブ。
実家からツリーを送ってもらい、折り紙で作った鎖を部屋中に飾り、お洒落な料理とケーキを用意した。
俺の手作りだ。これでも料理は得意なのだ。
委員会を終えた日向が帰ってきた。部屋の様子を見て固まっている。
喜んでくれるかな? あ、溜め息つかれた。
「なんだ、これは?」
「も、模様替えしたんだよ。いいインテリアだろ?」
「本当にお前は馬鹿だな」
あ、表情が緩んだ。
料理でいっぱいのテーブルに案内して、シャンメリーで乾杯。うん、クリスマスパーティーっぽいぜ。
「料理はどう?」
「馬鹿にも特技があるんだな」
それ、褒めてくれてるんですよね? よっしゃ、胃袋掴んだぞ。
「あれは、なんだ?」
「クリスマスツリーだけど?」
窓際に置いたツリーを、怪訝そうに指差す日向。
「なんで短冊が掛けてあるんだよ」
「ウチでは昔からそうだけど?」
憐れんだ目で俺を見る日向。
我が家では七夕飾りとクリスマスツリーの飾りは一緒だったんですが、何か問題でもありますか?
「馬鹿な願い事ばっかだな」
ツリーの前に移動した日向が、短冊を眺めて溜め息をつく。
『日向とずっと幸せでいられますように』
『日向がいっぱい愛してくれますように』
『日向ともっとラブラブしたい』
はいそうですよ、馬鹿ですよ。日向馬鹿で、悪かったですね。
「日向も書くか?」
「欲しいものは自力で手に入れるから、願うようなことなどない」
そんな格好いい顔で、格好いいセリフ吐かないでください。あなたになら抱かれてもいいわ、ってもう抱かれてるんだけどさ。
例のごとく口は悪いけど、日向の表情は終始にこやかで、なんだかんだでパーティーを楽しんでいるみたいだった。
「プレゼントやるよ」
赤いリボンを乗せた掌を差し出した俺を見て、日向ははてなマークを浮かべている。
「どうぞ」
リボンを自分の頭に乗せて、鏡の前で練習を繰り返したセクシーな表情を浮かべる。
「本当に馬鹿だな、お前」
「やっぱ、寒かった?」
俺がしたって萌えないよね。
アハハと照れ笑いしていると、ベッドに押し倒された。
「そんな顔して誘って、体がガタガタになっても文句言うなよ」
え、喜んでもらえちゃったの? 練習しといて正解でした。
って、なんか、いつもより激しくありません? 本当に体が持ちそうにないかも……。
一回戦終了後のベッドの上。
「俺達って恋人同士だよな?」
「言わないと分からないなんて、本当に馬鹿だな、お前」
それって、恋人同士だよってことですか?
「日向、大好き」
嬉しくて、日向にぎゅうっと抱きつく。
「好きじゃなきゃ、抱かねーよ」
その言葉、今までもらった中で一番嬉しいクリスマスプレゼントだよ。
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