王道学園に通っています。

オトバタケ

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岬と佐々木と向井の近況

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 帰りのホームルームの直前、保健医に付き添われて現れた佐々木の左足首には固くテーピングが巻かれていて、とても痛々しかった。五時限目の体育のサッカーで、向井のタックルを受けて倒れたのだ。

「佐々木、大丈夫か?」

 佐々木が席に着くと、向井が今にも泣きだしそうな顔で聞く。

「あぁ。全治一週間の捻挫だから大したことない」

 なんてことないという感じで、無表情で素っ気なく返す佐々木。自分が怪我をさせたと落ち込む向井に対して、大したことはない風に装う佐々木なりの気遣いだ。向井の狼狽ぶりを見た佐々木の瞳が一瞬、困惑して申し訳なさそうに揺らいだのを見逃さなかった。

 ホームルームが終わっても、辛そうに眉根を寄せてテーピングの巻かれた足を見ている向井が、佐々木から離れようとしない。
 佐々木が、ちらっと俺の方を見る。

「佐々木、部屋に戻る?」
「あぁ」

 ゆっくり立ち上がった佐々木に肩を貸して歩き始める。

「俺も付き添うよ」

 慌てて席に戻って鞄を持ってきた向井が、後を追ってくる。

「向井は生徒会室に行くんだろ? 今日は部活が休みだから俺に任せといて」
「でも……」
「二人きりになりたいんだ。気ぃ遣ってくれよ」

 もごもご口籠もっている向井の耳許で、甘い雰囲気を漂わせた声で頼む。カーッと顔を赤らめて俺と佐々木の顔を交互に見た向井は無言で頷くと、お大事に、と早口で告げて生徒会室に向かっていった。

 向井には俺達の関係を話した。そっか、と言っただけでそれ以上は何も聞かず、普通の友人として接してくれている。
 俺達も向井の前で恋人同士らしい振る舞いはしていない。向井が転校してくる前から、二人きりの部屋でしか恋人モードには入らなかったから特別意識しての行動ではない。
 俺はいつでも恋人モードに入りたいし、佐々木は俺の恋人だ!と叫びたいのだが、佐々木がそれを嫌がるので無理矢理やることはしない。だから向井も頭では俺と佐々木の関係を理解しているが、実際にそういう雰囲気を見たことはないので動揺したんだろう。そういう雰囲気を見たところで俺達への接し方が変わる奴ではないので特に心配はしていないのだが。

 それよりも向井自身の方が心配だ。
 転校して早々に生徒会の面々と親しくなってしまった向井。友人的な意味での親しさだと向井のことをよく知る俺達なら分かるのだが、生徒会の面々を必要以上に偶像化して恋に恋しているような頭の沸いた奴等にはそうは見えていないのだ。
 他の生徒は知らないが、俺達には理事長の甥だとこっそり教えてくれたので、最悪の事態になる前に食い止める術はあるのだが、あざとい奴等は陰で何をやってくるか分からない。
 今はまだ友人関係の生徒会の面々の誰かと恋仲になったりなんかしたら、向井に刃が向けられるのは確実だろう。でも、相手が男でも女でも生徒会のメンバーでも、恋をするのは素敵なことだし、その時は向井を応援したいと思っている。

「どうした?」

 部屋に入った途端、佐々木は立ち止まって動こうとしなくなった。

「歩けない……」

 さっきまでとは明らかに違う表情だ。漆黒の双眸が物欲しそうに俺を見上げている。

「何? さっきまでは、ちゃんと歩いてたじゃない。ソファーまで後何メートルもないよ」
「歩けないって言ってるだろ!」

 駄々っ子のように首を振る佐々木をひょいっと抱き抱え、お姫様抱っこをしてしてソファーまで運ぶ。何も言わずに静かに抱かれている佐々木をソファーに座らせようとすると、違うだろと言うように首を左右に振られた。

「眠い」
「はいはい、ベッドですね」

 お望み通り行き先を変更して佐々木の部屋に向かう。そっとベッドに寝かせると、佐々木はパンパンと自分の右側を叩きだした。

「何? 一緒に寝て欲しいの?」
「違う……」

 不機嫌そうに言った佐々木は、俺に背を向ける。

「俺、佐々木と一緒に寝たいんだけど、入ってもいい?」

 背中を撫でながら甘えた声で頼むと、振り返った不機嫌そうな顔が一瞬嬉しそうにはにかんだ。

「好きにしろ」

 ぶっきらぼうにそう言った佐々木は、また背中を向ける。ちゃんと俺が入れるように空けられたスペースに横になり、細い背中をぎゅっと抱きしめる。

「本当に大丈夫? 俺、凄い心配したんだから」

 佐々木が倒れて苦痛に顔を歪めているのを見た時、無意識に向井の胸倉を掴んでしまった。泣きそうな向井の顔を見てすぐに我に返って手を放したが、佐々木を守れなかった自分に腹が立ってギリギリ鳴るほど奥歯を噛み締めた。

「あぁ。ありがとう」

 ゆっくり振り返った佐々木の顔は、俺を欲しがっていた。
 俺に、その痛みを全部頂戴。佐々木の痛みを吸いとって、代わりに俺の有り余る元気をあげるから。

「んふっ……」

 佐々木の唇を塞ぎ、痛みを吸いとっていく。満足そうに鼻から息を漏らした佐々木を、快楽だけで満たしてあげたい。
 シャツの裾から手を差し込み、乳首に触れる。触れられることを待ち望んでいたのか、既に硬く勃ち上がっている。

「ん、むふっ」

 もっと、と強請るように胸が押し当てられる。激しく舌を絡め合いながら、二つの粒を同時に摘まんで引っ張る。
 刺激が走り抜けたのか、大きく背中を反らした佐々木の股間が、俺の腹に当たった。興奮していることを伝えてくる、硬い感触がする。
 そんな佐々木に煽られた俺の股間も、ズボンの生地をグッと押し上げる。

「ひゃっ……あぁっ」

 キスを続けたまま佐々木の服を脱がせていき、露になった肌に唇を移動させていく。佐々木の悦ぶ箇所を舐めて吸い上げ、チェック済みだというように痕を残していく。

「みさ、きぃ……」

 上半身の悦ぶ箇所を全てチェックし、下半身のチェックに移った唇が、トロトロと蜜を垂らしているモノを包もうとすると、切なげな声に呼び止められた。顔を上げると、潤んだ瞳が一心に俺を見ていた。早く俺が欲しい、と懸命に瞳が訴えている。

「佐々木……」

 愛しい相手の名を呟く自分の声の熱さに、自分がどれほど飢えているのかを知る。
 佐々木の足を開いて後孔を舐め、たっぷり唾液を注いでいく。しとどに濡れたそこに指を挿し込むと、欲しいのはそれではない、と非難するように肉襞が締め付けてきた。手早く解して、興奮でボタボタと先走りを垂らしている肉棒を、佐々木の中に埋めていく。

「痛みを忘れるまで、いつまででも繋がってるから」
「み、さき……あぁぁっ!」
「俺のあげる快楽だけで満たされて」

 左足首に気を遣いながらもたくさん繋がり、佐々木の痛みと俺の元気を交換した。
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