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翼を広げて4
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転校初日の授業が終わった。課題もそんなにないし、今日は早く寝ることにしよう。
部活に行くという岬と、図書室に行くという佐々木に手を振り、のんびり教科書を鞄に仕舞っていると、急に周りが騒がしくなった。
「キャー、会計様!」
「今夜のお相手は僕でお願いします」
クラスメイトの何人かが顔を赤く染め、クネクネと腰をツイストしている。目線の先の廊下には、チャラ男みたいな見た目の生徒会会計がいた。
「ごめんね。今日の相手はもう決まっちゃってるんだ。また今度誘ってあげるから、今日は我慢してね」
相手を申し出た、俺につまんねぇと言ったチワワ君にウィンクをしながら断りを入れた会計。ウィンクを投げ掛けられたチワワ君は茹でダコみたいになって、ヘナヘナと座り込んでしまった。あのチワワ君は、そんなになるくらい会計が好きなのか。
つーか、会計は見た目通りのチャラ男なんだな。モテるのは羨ましいけど、節操がないのは嫌だな。お互いがそれで満足してるならいいのかもしんねぇが、俺には分かんねぇ感覚だ。
「あっ、転校生くん、みーつけたぁ」
会計がヘラヘラ笑いながら、俺に近付いてくる。
「俺、生徒会会計で隣のクラスの愛甲斗真(あいこうとうま)。転校生くん、会長も副会長も手懐けちゃったんでしょ? 俺、転校生くんに興味が沸いちゃったんだよねぇ。ちょっとお喋りしない?」
手懐けたってなんだ? 仲良くなったのは確かだけど。
チャラいのは気に食わないけど、会長や修司と生徒会にいるってことは、おかしい奴ではないのだろう。話してみないとどんな奴なのか分かんないし、今すぐやらなきゃいけないことも特にないから、誘いを受けてみるか。
「いいよ。どこで喋るの?」
ここだとチワワ君達が五月蝿くて、上っ面の会話しか出来ないからな。
「えっ、いいの? 俺のこと、嫌そうに見てたのに」
断られると思っていたのか、目を丸くする会計。
「チャラいのは好きじゃないけど、話してみないとアンタの中身は分かんないからさ」
「アンタじゃないよぉ。斗真って呼んでね。じゃあさ、生徒会室行こうよ。みんな揃ってるから」
チワワ君達の斗真への歓声と俺への罵倒に耳を押さえながら、スキップするように歩く斗真に付いて生徒会室を目指す。
エレベーターで五階まで昇り、赤い絨毯が敷かれた廊下を進み、生徒会室へと通される。普通の教室を想像してた俺は、社長室みたいな室内に目が点になった。
「転校生くん連れてきちゃったぁ」
テヘッと笑いながら斗真が言うと、紙の山が載った机で黙々と作業をしていた他の三人がこちらを見た。
「いらっしゃいませ」
修司が、素の時と同じ笑顔で俺を見る。喜んでくれてるのかな?
「忙しいから、構ってやれないからな」
言い終わると、すぐに机上に目を戻した会長。
「転校せ……俺……書記……園田(そのだ)……瑞樹(みずき)……よろし……」
優しそうな雰囲気の書記がニコッと微笑みかけてくれる。
言葉がたどたどしいのは、なんか理由があるんだろう。でも心と心で話し合えば、何の問題ない。今だって、笑顔と笑顔で会話してるしな。
「お茶……する」
そう言って立ち上がった書記が、部屋の右壁にある扉の中に入っていった。
「そうですね。少し休憩しましょうか」
「俺は、もう少し切りがいいところまで片付ける」
席を立って背伸びをした修司から問い掛けられた会長が、机から目を離さずに答える。
「そこに座って」
斗真が指差す応接セットに向かうと、テーブルを挟んで向かい合う黒革の高そうなソファーの一方に俺と斗真、もう一方に修司が座った。このソファー、固すぎず柔らかすぎず、座り心地がいいな。
「おま……たせ」
書記が紅茶とスコーンをテーブルに置いた。なんかイギリスのティータイムみたいじゃん。
「いただきます」
書記が修司の横に座ったのを確認して、さっそくスコーンを頬張った。甘すぎなくて旨い!
「生徒会って何やってんの?」
ほんのり甘い香りの紅茶を啜りながら斗真に聞く。
「学園の運営みたいなこと」
「なんで生徒がそんなことすんの?」
「生徒会のメンバーは将来社長になる人ばっかだから、経験を積む為みたいだよ」
そうか、この人達は将来が決めつけられてるのか。
「勉強はどうすっの?」
「教室にはたまにしか行けないけどちゃんとしてるよ。それに俺達が教室に行くとハニーちゃん達が大喜びして、授業の妨げになっちゃうでしょ?」
ふむ、確かに。
「何がハニーだ……」
会長が仕事を続けながら、心底嫌そうに呟いた。修司と書記は苦笑いしてる。
「会長はファンの子達が嫌いなんですか?」
「慕ってくれるのは嬉しいが、男に抱いて欲しいと言われても気持ち悪いだけだ」
「まぁ確かに俺も男相手にそーゆーことする気にはならないけど、男とか女とか関係なく会長が好きだって言ってくれてるんだっていうのは分かってあげてくださいね」
チワワ君達の恋する健気な瞳は怖いことの方が多いけど、たまに切なく見えたから。
「なーんだ、転校生くんはノンケなのか」
「ノンケ?」
NON毛……毛がない……毛が生えてない……まだ子供……
童貞だろって馬鹿にしてんのか?
「あ、ノーマルってことね。男には興味ないんだって言ったの」
そーゆーことね。でも、なんでそんなこと言うんだ?
え……まさか……
「斗真、俺とやりたいとか思ってんの?」
こいつ、やっぱり中身もチャラ男なのか? 疑いの眼差しを向ける俺を見て、斗真は腹を抱えてゲラゲラ笑い、他の三人も俯いて肩を震わせている。俺、変なこと言った?
「転校生くんに手を出そうなんて思ってないよぉ。転校生くんだけじゃなく、学園の子達に手を出すつもりなんてないしね」
目尻に溜まった涙を中指で拭いながら斗真が言う。
「え、お前チャラ男じゃないの?」
「俺のこと想ってくれる気持ちは嬉しいんだけどさぁ、その気持ちには応えてあげられないから、優しい言葉をかけてあげることしか出来ないんだよねぇ。その気がないのに気がある振りしちゃってるから、チャラ男って言われたら否定出来ないかもねぇ」
「そういう優しさって、あんまり嬉しくないな」
真綿で首を絞めるような優しさだよな。俺が斗真のことを好きだったら、はっきりと拒否してくれた方がいい。
「それ、晶(あきら)にも言われた。あ、晶って俺の恋人ね」
「斗真、恋人いんの?」
驚いてるのは俺だけだから、他のメンバーは知ってたんだろう。まぁ、こんなイケメンだから、恋人がいても不思議じゃないけど。
「写真見せてあげるねぇ」
見て欲しくて仕方ないって感じで、写真を差し出してきた斗真。
ヒマワリ畑をバックに幸せそうに笑う斗真に寄りかかって微笑んでいるのは、純白のワンピースを着た長い黒髪のモデルみたいな女性だ。
「凄い綺麗な人……」
「だろ? 男の子の体のままなのに、こんなに綺麗なんだよ」
「男の子?」
「体は男の子だけど、生まれた時から心は女の子だったんだって。まぁ、男でも女でも晶は晶だから関係ないんだけどね」
他の三人は、いつものことかって顔をしてるけど、全然嫌そうじゃない。斗真と晶さんの話は、聞いている者を幸せにしてくれるものなんだろうな。
性同一性障害で辛いこともあっただろう晶さんは、斗真に会えて幸せなんだろうな。晶さんのことを話す斗真と、二人の写真で、それが伝わってくる。
「うわー、すげーノロケ。また会わせてよ」
「うーん、それは無理。だって、晶、半年前に交通事故で死んじゃったから」
「「「「え……」」」」
笑顔でサラッと言った斗真以外の全員が固まる。生徒会の他のメンバーも知らなかったんだ。
「ずっと一緒に居ようって誓い合ってたのに、晶の後を追わない俺って卑怯だよね」
自嘲気味に笑う斗真。ずーっと一人で抱えていたんだ。哀しみに飲み込まれないように、ずーっと笑っていたんだ。
それなのに、哀しい自分には優しさを向けず、他人を哀しませないように優しさを向けていただなんて……。
「もし、斗真が晶さんの立場だったらどうする?」
「え?」
「斗真が晶さんを残して突然死んじゃったら」
俺の質問を聞いた斗真は、目を閉じて考えている。
「後を追わないで欲しい。生きて欲しい。泣かないで欲しい。笑って欲しい。忘れないで欲しいけど、幸せになって欲しい」
ゆっくり瞼を開けた斗真が、苦しそうに言葉を絞りだした。
「それが、晶さんの斗真に対する気持ちなんじゃねぇのかな」
俺は、こんな哀しい経験をしたことがないから、どう言えばいいのか分からない。だけど、そうであって欲しいなって思った。
「それに、死んでも記憶が残るか分かんねぇじゃん。死んだら無になる可能性もあるんだから、生きて晶さんのことを覚えててやるのが愛なんじゃねぇの?」
肉体が無くなるのが最初の死なら、誰の記憶の中からも無くなるのが最後の死なんだと思うんだ。
「こうやって、俺に晶さんのことを伝えてくれたから、晶さんは俺の頭の中でも生きていけるようになったんだよ」
晶さんの幸せそうな姿を見て、俺も幸せになれたから。
「ありがと。部屋に忘れ物してたの思い出したんで、ちょっと戻るね」
精一杯作っているのが丸分かりの笑顔でそう言った斗真が、生徒会室を出ていく。
「すまなかったな。その……俺達は、明日からアイツにどうやって接すればいいんだ?」
眉を下げた会長が、頭をボリボリ掻きながら聞いてくる。
「今まで通りに接して、斗真のノロケを笑顔で聞いてやればいいと思いますよ」
笑顔で言うと、三人も笑顔を浮かべて頷いた。
部活に行くという岬と、図書室に行くという佐々木に手を振り、のんびり教科書を鞄に仕舞っていると、急に周りが騒がしくなった。
「キャー、会計様!」
「今夜のお相手は僕でお願いします」
クラスメイトの何人かが顔を赤く染め、クネクネと腰をツイストしている。目線の先の廊下には、チャラ男みたいな見た目の生徒会会計がいた。
「ごめんね。今日の相手はもう決まっちゃってるんだ。また今度誘ってあげるから、今日は我慢してね」
相手を申し出た、俺につまんねぇと言ったチワワ君にウィンクをしながら断りを入れた会計。ウィンクを投げ掛けられたチワワ君は茹でダコみたいになって、ヘナヘナと座り込んでしまった。あのチワワ君は、そんなになるくらい会計が好きなのか。
つーか、会計は見た目通りのチャラ男なんだな。モテるのは羨ましいけど、節操がないのは嫌だな。お互いがそれで満足してるならいいのかもしんねぇが、俺には分かんねぇ感覚だ。
「あっ、転校生くん、みーつけたぁ」
会計がヘラヘラ笑いながら、俺に近付いてくる。
「俺、生徒会会計で隣のクラスの愛甲斗真(あいこうとうま)。転校生くん、会長も副会長も手懐けちゃったんでしょ? 俺、転校生くんに興味が沸いちゃったんだよねぇ。ちょっとお喋りしない?」
手懐けたってなんだ? 仲良くなったのは確かだけど。
チャラいのは気に食わないけど、会長や修司と生徒会にいるってことは、おかしい奴ではないのだろう。話してみないとどんな奴なのか分かんないし、今すぐやらなきゃいけないことも特にないから、誘いを受けてみるか。
「いいよ。どこで喋るの?」
ここだとチワワ君達が五月蝿くて、上っ面の会話しか出来ないからな。
「えっ、いいの? 俺のこと、嫌そうに見てたのに」
断られると思っていたのか、目を丸くする会計。
「チャラいのは好きじゃないけど、話してみないとアンタの中身は分かんないからさ」
「アンタじゃないよぉ。斗真って呼んでね。じゃあさ、生徒会室行こうよ。みんな揃ってるから」
チワワ君達の斗真への歓声と俺への罵倒に耳を押さえながら、スキップするように歩く斗真に付いて生徒会室を目指す。
エレベーターで五階まで昇り、赤い絨毯が敷かれた廊下を進み、生徒会室へと通される。普通の教室を想像してた俺は、社長室みたいな室内に目が点になった。
「転校生くん連れてきちゃったぁ」
テヘッと笑いながら斗真が言うと、紙の山が載った机で黙々と作業をしていた他の三人がこちらを見た。
「いらっしゃいませ」
修司が、素の時と同じ笑顔で俺を見る。喜んでくれてるのかな?
「忙しいから、構ってやれないからな」
言い終わると、すぐに机上に目を戻した会長。
「転校せ……俺……書記……園田(そのだ)……瑞樹(みずき)……よろし……」
優しそうな雰囲気の書記がニコッと微笑みかけてくれる。
言葉がたどたどしいのは、なんか理由があるんだろう。でも心と心で話し合えば、何の問題ない。今だって、笑顔と笑顔で会話してるしな。
「お茶……する」
そう言って立ち上がった書記が、部屋の右壁にある扉の中に入っていった。
「そうですね。少し休憩しましょうか」
「俺は、もう少し切りがいいところまで片付ける」
席を立って背伸びをした修司から問い掛けられた会長が、机から目を離さずに答える。
「そこに座って」
斗真が指差す応接セットに向かうと、テーブルを挟んで向かい合う黒革の高そうなソファーの一方に俺と斗真、もう一方に修司が座った。このソファー、固すぎず柔らかすぎず、座り心地がいいな。
「おま……たせ」
書記が紅茶とスコーンをテーブルに置いた。なんかイギリスのティータイムみたいじゃん。
「いただきます」
書記が修司の横に座ったのを確認して、さっそくスコーンを頬張った。甘すぎなくて旨い!
「生徒会って何やってんの?」
ほんのり甘い香りの紅茶を啜りながら斗真に聞く。
「学園の運営みたいなこと」
「なんで生徒がそんなことすんの?」
「生徒会のメンバーは将来社長になる人ばっかだから、経験を積む為みたいだよ」
そうか、この人達は将来が決めつけられてるのか。
「勉強はどうすっの?」
「教室にはたまにしか行けないけどちゃんとしてるよ。それに俺達が教室に行くとハニーちゃん達が大喜びして、授業の妨げになっちゃうでしょ?」
ふむ、確かに。
「何がハニーだ……」
会長が仕事を続けながら、心底嫌そうに呟いた。修司と書記は苦笑いしてる。
「会長はファンの子達が嫌いなんですか?」
「慕ってくれるのは嬉しいが、男に抱いて欲しいと言われても気持ち悪いだけだ」
「まぁ確かに俺も男相手にそーゆーことする気にはならないけど、男とか女とか関係なく会長が好きだって言ってくれてるんだっていうのは分かってあげてくださいね」
チワワ君達の恋する健気な瞳は怖いことの方が多いけど、たまに切なく見えたから。
「なーんだ、転校生くんはノンケなのか」
「ノンケ?」
NON毛……毛がない……毛が生えてない……まだ子供……
童貞だろって馬鹿にしてんのか?
「あ、ノーマルってことね。男には興味ないんだって言ったの」
そーゆーことね。でも、なんでそんなこと言うんだ?
え……まさか……
「斗真、俺とやりたいとか思ってんの?」
こいつ、やっぱり中身もチャラ男なのか? 疑いの眼差しを向ける俺を見て、斗真は腹を抱えてゲラゲラ笑い、他の三人も俯いて肩を震わせている。俺、変なこと言った?
「転校生くんに手を出そうなんて思ってないよぉ。転校生くんだけじゃなく、学園の子達に手を出すつもりなんてないしね」
目尻に溜まった涙を中指で拭いながら斗真が言う。
「え、お前チャラ男じゃないの?」
「俺のこと想ってくれる気持ちは嬉しいんだけどさぁ、その気持ちには応えてあげられないから、優しい言葉をかけてあげることしか出来ないんだよねぇ。その気がないのに気がある振りしちゃってるから、チャラ男って言われたら否定出来ないかもねぇ」
「そういう優しさって、あんまり嬉しくないな」
真綿で首を絞めるような優しさだよな。俺が斗真のことを好きだったら、はっきりと拒否してくれた方がいい。
「それ、晶(あきら)にも言われた。あ、晶って俺の恋人ね」
「斗真、恋人いんの?」
驚いてるのは俺だけだから、他のメンバーは知ってたんだろう。まぁ、こんなイケメンだから、恋人がいても不思議じゃないけど。
「写真見せてあげるねぇ」
見て欲しくて仕方ないって感じで、写真を差し出してきた斗真。
ヒマワリ畑をバックに幸せそうに笑う斗真に寄りかかって微笑んでいるのは、純白のワンピースを着た長い黒髪のモデルみたいな女性だ。
「凄い綺麗な人……」
「だろ? 男の子の体のままなのに、こんなに綺麗なんだよ」
「男の子?」
「体は男の子だけど、生まれた時から心は女の子だったんだって。まぁ、男でも女でも晶は晶だから関係ないんだけどね」
他の三人は、いつものことかって顔をしてるけど、全然嫌そうじゃない。斗真と晶さんの話は、聞いている者を幸せにしてくれるものなんだろうな。
性同一性障害で辛いこともあっただろう晶さんは、斗真に会えて幸せなんだろうな。晶さんのことを話す斗真と、二人の写真で、それが伝わってくる。
「うわー、すげーノロケ。また会わせてよ」
「うーん、それは無理。だって、晶、半年前に交通事故で死んじゃったから」
「「「「え……」」」」
笑顔でサラッと言った斗真以外の全員が固まる。生徒会の他のメンバーも知らなかったんだ。
「ずっと一緒に居ようって誓い合ってたのに、晶の後を追わない俺って卑怯だよね」
自嘲気味に笑う斗真。ずーっと一人で抱えていたんだ。哀しみに飲み込まれないように、ずーっと笑っていたんだ。
それなのに、哀しい自分には優しさを向けず、他人を哀しませないように優しさを向けていただなんて……。
「もし、斗真が晶さんの立場だったらどうする?」
「え?」
「斗真が晶さんを残して突然死んじゃったら」
俺の質問を聞いた斗真は、目を閉じて考えている。
「後を追わないで欲しい。生きて欲しい。泣かないで欲しい。笑って欲しい。忘れないで欲しいけど、幸せになって欲しい」
ゆっくり瞼を開けた斗真が、苦しそうに言葉を絞りだした。
「それが、晶さんの斗真に対する気持ちなんじゃねぇのかな」
俺は、こんな哀しい経験をしたことがないから、どう言えばいいのか分からない。だけど、そうであって欲しいなって思った。
「それに、死んでも記憶が残るか分かんねぇじゃん。死んだら無になる可能性もあるんだから、生きて晶さんのことを覚えててやるのが愛なんじゃねぇの?」
肉体が無くなるのが最初の死なら、誰の記憶の中からも無くなるのが最後の死なんだと思うんだ。
「こうやって、俺に晶さんのことを伝えてくれたから、晶さんは俺の頭の中でも生きていけるようになったんだよ」
晶さんの幸せそうな姿を見て、俺も幸せになれたから。
「ありがと。部屋に忘れ物してたの思い出したんで、ちょっと戻るね」
精一杯作っているのが丸分かりの笑顔でそう言った斗真が、生徒会室を出ていく。
「すまなかったな。その……俺達は、明日からアイツにどうやって接すればいいんだ?」
眉を下げた会長が、頭をボリボリ掻きながら聞いてくる。
「今まで通りに接して、斗真のノロケを笑顔で聞いてやればいいと思いますよ」
笑顔で言うと、三人も笑顔を浮かべて頷いた。
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