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第1話 「義妹の引き立て役、辞めます」
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アイネス王国唯一の公爵家の長女、
ファナティア・フラールシアは王太子アモリオの
婚約者の最有力候補の内の一人。
しかし、学園では彼女のことは『見窄らしい』と
言われ、笑われるほど容姿が平凡だった。
対して義妹のピティー・フラールシアは
容姿端麗で成績優秀。学園一の人気者だった。
何故公爵令嬢である私が
義妹よりも成績が下なのかと言うと、
学園に入学する前に義妹から、
「私より目立つことはしないでよね」と、
ものすごい剣幕で言われ、
反射的に頷いてしまったからである。
まぁ、学園に通う
生徒も教師さえも知らないでしょうね。
成績優秀な義妹は、
ただ単に私の真似をしているだけだってこと。
■
元々、ピティーは公爵家の娘ではなかった。
私の母であり、公爵家の当主であった
エフティーア・フラールシアが病により急逝した後に
私の父であるカーティオ・フラールシアに
連れてこられた愛人の娘なのだ。
今ではその愛人が公爵夫人のように振舞って
舞踏会などで散々好き勝手している挙句、
ピティーも高価な宝石やドレスを買いまくっている
公爵家にとっては最も邪魔な存在なのだ。
「見て、ファナティア様よ。
今日も相変わらず見窄らしい格好ね」
「そりゃあピティー様に比べればねぇ。
どうしてあんな人が
王太子様の婚約者候補なのかしら?」
「さぁ?ピティー様よりも
格上であることを見せつけたいんじゃない?」
廊下を歩いているとくすくすと笑い声を上げながら、
私にわざと聞こえるように陰口を叩いてくる。
まぁ正直慣れたからどうでもいいんだけど。
それより、基礎知識が欠落しているピティーよりも、
私の方が馬鹿だと思われるのは癪ね。
私がわざとあの子の引き立て役をしているのに、
誰一人として気付きやしないのだから、
私の演技力が凄まじいのかしら?
今日は二学期最初の授業がある日。
長い期間の夏休みが終わり、
また学校が始まるのかと思うと憂鬱ではあるものの、
きちんと出席しなければ卒業ができないので、
仕方なくこうしてやって来ている。
教室にたどり着き、自分の席に近付くと、
机の上に『無能な公爵令嬢』と言う文字が、
魔法により刻み込まれていた。
この文字は魔法自体を消せば簡単に消える。
書いた生徒が誰なのかは分からないけれど、
公共施設の物を傷付けるのは罪に罰せられることを
知っていての反抗なのでしょうね。
私は学園内では無能だと思われている。
だから、この魔法自体を消すことさえ叶わないと、
誰しもが思っている。本当、下に見られたものね。
どんな魔法にも詠唱が必要になる。
それは魔法技術を学ぶ上での基礎知識だ。
けれど、私にはそんな手間のかかるものは必要ない。
こちらを馬鹿にしながらクスクスと笑って見ている
多数の生徒の前で、私は、
詠唱無しでその魔法を消し去ってやった。
「はッ!?」
案の定、私の憐れな様子を楽しんで見ていた
生徒たちは目を丸くして驚いている。
私は魔法が使えないと思われていたらしい。
まぁ、確かに実技試験でも
そんなに大した魔法は披露していないから、
当たり前かもしれないが。
さて、夏休みの期間に決めたことがある。
それは義妹の引き立て役なんて面倒なものを
さっさと辞めて、私を馬鹿にしてくる連中に、
本当の実力を見せてやることだ。
「う、嘘だろ……!
詠唱無しであの魔法を消しやがった!」
「ちょっと!!
何かのインチキをしたんじゃないの!?」
先程のことを見ていた生徒たちが
ようやく我に返ったようで次々と私に責め立ててくる。
「いいえ?私は”ごく当たり前”のことをしただけです」
「嘘よッ!!
詠唱無しで魔法が使えるはずないでしょ!」
「それは貴女が詠唱有りでなければ
魔法が使えないだけでしょう?」
「なッ……!?」
今まで言い返したこともなかったためか、
言い返されたことに驚いているのと同時に、
自分が馬鹿にされたことに腹を立てたのか、
顔を真っ赤にして私を睨んでいる。
その様子をほくそ笑みながら見つめていれば、
いつの間にか教室中の視線がこちらに向いていた。
彼らが大声で騒いだことで、何があったのかと、
気になってこちらを見つめているのだろう。
もちろん、教室中の生徒たちも
私の発した言葉を聞いていたはず。
その証拠に全員が呆然と突っ立っている。
「はいはーい!ホームルームを始めるよ~」
元気よくバタンッと大きな音を立てて扉を開いた
担当教師が立っている者は席に戻るよう促す。
こうして、二学期の学校生活が始まった。
ファナティア・フラールシアは王太子アモリオの
婚約者の最有力候補の内の一人。
しかし、学園では彼女のことは『見窄らしい』と
言われ、笑われるほど容姿が平凡だった。
対して義妹のピティー・フラールシアは
容姿端麗で成績優秀。学園一の人気者だった。
何故公爵令嬢である私が
義妹よりも成績が下なのかと言うと、
学園に入学する前に義妹から、
「私より目立つことはしないでよね」と、
ものすごい剣幕で言われ、
反射的に頷いてしまったからである。
まぁ、学園に通う
生徒も教師さえも知らないでしょうね。
成績優秀な義妹は、
ただ単に私の真似をしているだけだってこと。
■
元々、ピティーは公爵家の娘ではなかった。
私の母であり、公爵家の当主であった
エフティーア・フラールシアが病により急逝した後に
私の父であるカーティオ・フラールシアに
連れてこられた愛人の娘なのだ。
今ではその愛人が公爵夫人のように振舞って
舞踏会などで散々好き勝手している挙句、
ピティーも高価な宝石やドレスを買いまくっている
公爵家にとっては最も邪魔な存在なのだ。
「見て、ファナティア様よ。
今日も相変わらず見窄らしい格好ね」
「そりゃあピティー様に比べればねぇ。
どうしてあんな人が
王太子様の婚約者候補なのかしら?」
「さぁ?ピティー様よりも
格上であることを見せつけたいんじゃない?」
廊下を歩いているとくすくすと笑い声を上げながら、
私にわざと聞こえるように陰口を叩いてくる。
まぁ正直慣れたからどうでもいいんだけど。
それより、基礎知識が欠落しているピティーよりも、
私の方が馬鹿だと思われるのは癪ね。
私がわざとあの子の引き立て役をしているのに、
誰一人として気付きやしないのだから、
私の演技力が凄まじいのかしら?
今日は二学期最初の授業がある日。
長い期間の夏休みが終わり、
また学校が始まるのかと思うと憂鬱ではあるものの、
きちんと出席しなければ卒業ができないので、
仕方なくこうしてやって来ている。
教室にたどり着き、自分の席に近付くと、
机の上に『無能な公爵令嬢』と言う文字が、
魔法により刻み込まれていた。
この文字は魔法自体を消せば簡単に消える。
書いた生徒が誰なのかは分からないけれど、
公共施設の物を傷付けるのは罪に罰せられることを
知っていての反抗なのでしょうね。
私は学園内では無能だと思われている。
だから、この魔法自体を消すことさえ叶わないと、
誰しもが思っている。本当、下に見られたものね。
どんな魔法にも詠唱が必要になる。
それは魔法技術を学ぶ上での基礎知識だ。
けれど、私にはそんな手間のかかるものは必要ない。
こちらを馬鹿にしながらクスクスと笑って見ている
多数の生徒の前で、私は、
詠唱無しでその魔法を消し去ってやった。
「はッ!?」
案の定、私の憐れな様子を楽しんで見ていた
生徒たちは目を丸くして驚いている。
私は魔法が使えないと思われていたらしい。
まぁ、確かに実技試験でも
そんなに大した魔法は披露していないから、
当たり前かもしれないが。
さて、夏休みの期間に決めたことがある。
それは義妹の引き立て役なんて面倒なものを
さっさと辞めて、私を馬鹿にしてくる連中に、
本当の実力を見せてやることだ。
「う、嘘だろ……!
詠唱無しであの魔法を消しやがった!」
「ちょっと!!
何かのインチキをしたんじゃないの!?」
先程のことを見ていた生徒たちが
ようやく我に返ったようで次々と私に責め立ててくる。
「いいえ?私は”ごく当たり前”のことをしただけです」
「嘘よッ!!
詠唱無しで魔法が使えるはずないでしょ!」
「それは貴女が詠唱有りでなければ
魔法が使えないだけでしょう?」
「なッ……!?」
今まで言い返したこともなかったためか、
言い返されたことに驚いているのと同時に、
自分が馬鹿にされたことに腹を立てたのか、
顔を真っ赤にして私を睨んでいる。
その様子をほくそ笑みながら見つめていれば、
いつの間にか教室中の視線がこちらに向いていた。
彼らが大声で騒いだことで、何があったのかと、
気になってこちらを見つめているのだろう。
もちろん、教室中の生徒たちも
私の発した言葉を聞いていたはず。
その証拠に全員が呆然と突っ立っている。
「はいはーい!ホームルームを始めるよ~」
元気よくバタンッと大きな音を立てて扉を開いた
担当教師が立っている者は席に戻るよう促す。
こうして、二学期の学校生活が始まった。
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