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1章
事の概要
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寒すぎるくらいにクーラーが効いたスティーブンの部屋。スティーブンはとにかく『落ち着け』となだめてくる。明るい日差しが入る窓際に置かれた丸テーブルとスツール。アンディはスツールに腰を下ろし、スティーブンが淹れた苦い珈琲を黙って飲んだ。スティーブンは朝食だろうか、ホットドッグを片手に、立ってテレビを見ていた。
「落ち着いてきたか?」
スティーブンはしつこく聞いた。
「ああ、落ち着けやしないけど、さっきよりましだ。助かったよ。教えてくれないか?とりあえず今の状況を知りたい。」
テレビを見て半ばパニックになって飛び出してきてしまったので、自分がどんな窃盗事件で追われているのか、全く把握していなかったのである。
「テレビで特集してるけど、見たくないよな。」
スティーブンがテレビを消し、立ったまま話し始めた。事の概要はこうだ。アンディが出所した日から連続窃盗が始まり、校長室の万年室、音楽室に展示されているストラディヴァリウス、創業者フレディ・アムスヨークの指輪が次々と姿を消していた。貴重なものを盗み出す犯人は証拠を一切残さず、捜査は難航していた。
「で、この前、生徒会長の部屋の宝石が盗まれたの。それで、これ、見て。」
部屋の中心に置かれたカウチに座って新聞を読んでいたミシェルは、立ち上がってアンディの元へ来て、丸テーブルに新聞記事を広げた。紙面を見てみると、写真がでかでかと掲載されている。そこには生徒会長室に侵入しようとする自分の姿だった。アンディの心臓は波打った。
思い出した。3週間前のたしか金曜日。妙な手紙が自室のドアの下の隙間から差し込まれた。内容は意味不明な要求と脅迫文だった。『来週の金曜、夜の10時に無人になる生徒会長室に銃を持って入り、3分滞在してから出てこい。さもなくば......』
スティーブンは続けた。
「さっき捜査員たちが君の部屋に捜索に入って、他の盗品が部屋から大量に出てきた。アンディ、今、君は指名手配犯だ。」
スティーブンにそう告げられ、アンディは片手で目を覆った。どうか悪い夢の続きを見ているだけであって欲しかった。この悪夢の始まりは?俺が何をした?
「そう落ち込まないで、アンディ。大丈夫よ私たちが付いてる」
ミシェルは優しくアンディの肩に手を置いた。ミシェルに触れられると、鋭く尖った気持ちがみるみる溶けて消えて行くような感覚を味わった。
「ありがとう。」
すると、外で車が止まる音がした。窓から下を見下ろしてみると、シルバーの日本車が一台。スーツ姿の大人が2人降りてきた。こんなに快晴なのに、胃に砂袋を詰めたような不快感だ。
「まずい捜査局だ。」
アンディはとっさに窓際から離れた。スティーブンもミシェルも驚いて、窓の外を覗いた。来たわねとミシェルが呟いた。
「君と僕が仲良かったのを突き止めたのかも。ここに来る。誰かの部屋に移った方がいい。僕に当てがある。ジャック・バーンってやつ。パソコンに詳しいから、なにか調べるのにも良いかも。ちょっと気性が荒いけどな。」
スティーブンは一息にそう言って電話をかけ始め、ミシェルはアンディがいた形跡を消そうと、慌ただしく珈琲の入ったマグカップを片付け始めた。驚くほどにテキパキと動く二人を横目に、アンディはさっき見せてもらった新聞記事をリュックへしまい、部屋を出る準備をした。
「彼と連絡が取れた。同じフロアの11号室だ。彼の部屋を3・3・7拍子でノックして。」
「恩に着る」
2人は心強い。アンディはリュックを片肩にかけ、スティーブンの部屋を飛び出した。
「落ち着いてきたか?」
スティーブンはしつこく聞いた。
「ああ、落ち着けやしないけど、さっきよりましだ。助かったよ。教えてくれないか?とりあえず今の状況を知りたい。」
テレビを見て半ばパニックになって飛び出してきてしまったので、自分がどんな窃盗事件で追われているのか、全く把握していなかったのである。
「テレビで特集してるけど、見たくないよな。」
スティーブンがテレビを消し、立ったまま話し始めた。事の概要はこうだ。アンディが出所した日から連続窃盗が始まり、校長室の万年室、音楽室に展示されているストラディヴァリウス、創業者フレディ・アムスヨークの指輪が次々と姿を消していた。貴重なものを盗み出す犯人は証拠を一切残さず、捜査は難航していた。
「で、この前、生徒会長の部屋の宝石が盗まれたの。それで、これ、見て。」
部屋の中心に置かれたカウチに座って新聞を読んでいたミシェルは、立ち上がってアンディの元へ来て、丸テーブルに新聞記事を広げた。紙面を見てみると、写真がでかでかと掲載されている。そこには生徒会長室に侵入しようとする自分の姿だった。アンディの心臓は波打った。
思い出した。3週間前のたしか金曜日。妙な手紙が自室のドアの下の隙間から差し込まれた。内容は意味不明な要求と脅迫文だった。『来週の金曜、夜の10時に無人になる生徒会長室に銃を持って入り、3分滞在してから出てこい。さもなくば......』
スティーブンは続けた。
「さっき捜査員たちが君の部屋に捜索に入って、他の盗品が部屋から大量に出てきた。アンディ、今、君は指名手配犯だ。」
スティーブンにそう告げられ、アンディは片手で目を覆った。どうか悪い夢の続きを見ているだけであって欲しかった。この悪夢の始まりは?俺が何をした?
「そう落ち込まないで、アンディ。大丈夫よ私たちが付いてる」
ミシェルは優しくアンディの肩に手を置いた。ミシェルに触れられると、鋭く尖った気持ちがみるみる溶けて消えて行くような感覚を味わった。
「ありがとう。」
すると、外で車が止まる音がした。窓から下を見下ろしてみると、シルバーの日本車が一台。スーツ姿の大人が2人降りてきた。こんなに快晴なのに、胃に砂袋を詰めたような不快感だ。
「まずい捜査局だ。」
アンディはとっさに窓際から離れた。スティーブンもミシェルも驚いて、窓の外を覗いた。来たわねとミシェルが呟いた。
「君と僕が仲良かったのを突き止めたのかも。ここに来る。誰かの部屋に移った方がいい。僕に当てがある。ジャック・バーンってやつ。パソコンに詳しいから、なにか調べるのにも良いかも。ちょっと気性が荒いけどな。」
スティーブンは一息にそう言って電話をかけ始め、ミシェルはアンディがいた形跡を消そうと、慌ただしく珈琲の入ったマグカップを片付け始めた。驚くほどにテキパキと動く二人を横目に、アンディはさっき見せてもらった新聞記事をリュックへしまい、部屋を出る準備をした。
「彼と連絡が取れた。同じフロアの11号室だ。彼の部屋を3・3・7拍子でノックして。」
「恩に着る」
2人は心強い。アンディはリュックを片肩にかけ、スティーブンの部屋を飛び出した。
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