最強使い魔軍団を従えて

K.K

文字の大きさ
上 下
48 / 54
水城の泉の家出事件

48

しおりを挟む
 目の前でスイナールが消えた。あと少し早く部屋に来たら助けられた。後悔の波がソフィアを襲う。

「スイナールを帰して。」

「いけません。」

 魔法を発動しようとしたソフィアをスイレンが抱き付いて止める。

「スイレン離して。」

「スイナールは復讐を望みません。」

 その言葉にソフィアはその場に崩れ落ちた。心配そうに自分を見上げるモコを抱き寄せる。涙が止めどなく溢れる。

『上級使い魔の強い呪いの魔法。貴女がソフィアね。』

「何を言っているの。意味が分からない。わたーー」

 (スイレンどうしてなの?)
 意識がゆっくりと遠退く。スイレンの辛そうな顔を最後に私は意識を失った。



スイレン視点

「女王様、お久しぶりです。」

『あら、お母様とは呼んでくれないの?』

 女王はクスリと妖艶に頬笑む。そこに自分がした事の罪悪感はない。

「女王様はスイナールの気持ちがそんなに理解できないのですか。」

『ええ、当然でしょう。呪われた運命を背負った子と一緒にいて傷付くのはあの子よ。前聖女と前勇者は邪神使い魔を倒そうとした。けど、結果は惨敗。邪神使い魔の封印には成功したが、聖女たちは大怪我。今も深い眠りに就いている。』

「何が言いたい。」

『新たに誕生した女神の使い魔をソフィアが契約した。これは邪神使い魔の復活の予兆。貴女でもあの戦いでは大怪我したのよ。あの子に堪えられるはずがない。』

 お母様がモコを睨む。母親としての判断としてなら、この人は正しいのかも知れない。けれど女王としては失格だ。女王なら勇者の最有力候補ハンナの契約を解除するのが、どれだけ愚かな行為なのか分かるはずだ。前最上級使い魔なら尚更だ。
 …違うな。元最上級使い魔だからこそ邪神使い魔の実力が分かっていた。だから自分がどうなってでも、スイナールを戦いから遠ざけたのだ。

「女王様。…いえ、前女王様お疲れ様でした。これからは僕が女王になります。」

『分かりました。女王様に従います。』

 この国の女王は最上級使い魔である僕であった。だが、私がソフィア様と契約して女王としての業務が滞るのを予想して、僕は女王をお母様に任せた。しかしそれが間違いだった。女王であったお母様の行動を誰も止められなかったのだ。

「サヨナラ。」

 使い魔と人間との契約を勝手に解除するのは、重罪である。この先お母様は離宮で一人寂しく暮らす事になる。その覚悟でお母様は今回の事件を引き起こしたのだ。
 僕は床で気絶しているソフィア様をそっと抱き上げると、何も言わずに離宮を後にした。





『これからどうするの。』

「水の使い魔たちにスイナールの捜索を依頼する。使い魔契約の解除はその日の内なら、無効にできる。」

 お母様はスイナールの契約を解除した後、時間を稼ぐ為に、水の渦でスイナールを遠くに飛ばした。水球の中にいるスイナールがケガをすることは絶対にない。しかし、スイナールの魔力はお母様より弱いので脱出は不可能。僕の魔力でスイナールを助けないと…。

「スイナールを捜索する必要はありません。」

「クロード!?それにーー。」

『ただいま。』

 ちょっぴり恥ずかしそうに僕の前に来るスイナール。

「おかえり。」

 僕はこの奇跡に感謝して、スイナールをそっと抱き締めた
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)

青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。 ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。 さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。 青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇

藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。 トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。 会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで

一本橋
恋愛
 ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。  その犯人は俺だったらしい。  見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。  罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。  噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。  その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。  慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──

処理中です...